2019年8月より、LINEはアドネットワーク事業「LINE広告ネットワーク」を開始します。スマートフォン向けの動画広告プラットフォームの開発・販売・運用を行ってきたファイブ株式会社(以下、ファイブ)とLINEは、2017年12月、相互の広告プラットフォームの強化を図って資本業務提供を結び、互いのリソースやノウハウを結集してLINE広告ネットワークを立ち上げました。
本記事では、ヘルスケア/フィットネスアプリ「FiNC」を開発・運営し、ファイブのアドネットワークサービスを通じて広告運用に注力してきた株式会社FiNC Technologies(以下、FiNC Technologies)の代表取締役 CTOの南野充則氏に、自社の広告戦略やLINE広告ネットワークに寄せる期待について話を聞きました。
ユーザー視点に立った動画コンテンツで健康を訴求
2017年3月にローンチされたヘルスケア/フィットネスアプリ「FiNC」は、歩数や体重、睡眠、食事の情報など、カラダに関するさまざまなデータを整理するライフログ機能を備えるほか、最先端の人工知能(AI)がユーザー一人ひとりに合った健康・美容・ヘルシーレシピなどのメニューを紹介してくれます。
「当社CEOの溝口勇児はもともとフィットネスクラブのトレーナーをしており、17年にわたるキャリアの中で健康づくりに関するノウハウを蓄えてきました。しかし、対面式のトレーニングでは、サービスを提供できる人数に限りがあります。これまで自分が提供してきた1対1のサービスを『手間なく、ラクに、楽しく、安価で、個人に最適なもの』を、より多くの方に提供できれば、健康な世の中をつくることができるのではないか。そう考えた溝口が、多くの方に均一したサービスを届けるために立ち上げたモバイルアプリがFiNCです」
FiNCはアプリ内で配信するフィットネスやマッサージ、レシピなどのコンテンツ制作において、動画形式を重視してきました。
「ユーザーに“楽しさとお得さ”を感じてもらえるように意識してアプリを運用しています。健康管理やトレーニングには、継続性が求められます。ユーザーが途中で挫折しないことを意識し、記事コンテンツよりも見てすぐに伝わりやすい動画コンテンツに力を入れてきました」
アプリ成長の背景にユーザー視点のアドマネタイズ戦略
ユーザーに寄り添ったコンテンツづくりを心がけ、ローンチから2年で630万(2019年6月末現在)ダウンロードを達成したFiNCの成長の背景には、広告戦略も大きく寄与しています。
FiNCは無料プランと有料プランを用意していますが、ローンチ当初は有料ユーザーではなく無料ユーザーを集めることに比重を置き、アプリダウンロード数を増やすためにユーザーの抵抗感が薄いFacebookやGoogle、YouTubeなどのペイドメディアにインパクトのある動画広告を掲載していました。
株式会社FiNC Technologies 代表取締役 CTO 南野 充則氏
「すべてのサービスを無料で提供したいという思いから、ローンチ当初は無料プランのユーザー獲得に注力していました。ユーザー数を増やせばアプリ内に掲載する広告だけでマネタイズできると考えていましたが、より質の良いサービスを提供するため、2017年の秋からサブスクリプションプランを用意し、広告とハイブリットでマネタイズしていく方法を取り入れました」
無料ユーザーにFiNCのファンになってもらい、有料プランへ移行してもらうには顧客視点でのユーザー体験が求められます。そのため、コンテンツだけでなく、アプリ内に掲載する広告においてもクリエイティブや訴求内容がFiNCの世界観とマッチしているか、ユーザーの負担にならないかを考慮してきました。その工夫のひとつとしてFiNCの純広告ではユーザーのライフログに合わせてクリエイティブを出し分けるなどの施策を展開しています。
例えば、「肌をきれいにすること」を目的に利用しているFiNCのユーザーがいれば、美肌プログラムや関連する広告が表示されるように調整しています。ユーザーメリットの高いアドマネタイズ戦略に徹したことがファンの獲得につながり、サブスクリプションと広告が共存したアプリとして成立していると南野氏は語ります。
LINEとの連携で新たなユーザー・企業との出会いに期待
アプリ内に掲載する広告の質を保つために純広告の営業を強化し、クリエイティブの自社制作なども行ってきたというFiNCにおいて、アドネットワーク経由での配信比重はまだ大きくありません。
「現時点では、まだ運用型の広告を自社で配信するシステム構築ができるフェーズには達していないと思っています。そのため運用型の広告主の獲得については、アドネットワークなどの外部パートナーの力を借りて取り組んでいきたいと考えていました。FiNCのローンチ当初からファイブさんと手を組んでいますが、他社と比較してもSDK(Software Development Kit)の実装がしやすく、動画広告のパフォーマンスも優れていると感じています」
アドネットワークにおいても出面や広告の質に関しては妥協せずに取り組んでいきたいと話す南野氏は、2019年8月にローンチするLINE広告ネットワークについての期待を次のように述べます。
「アプリ内に掲載する広告に関して、今後もユーザーに寄り添った運用を大切にしていきます。実現に向けては十分なデータ量と、そのデータを活用してユーザー一人ひとりに合わせた情報を提供するターゲティング精度が重要となります。その点でLINE広告ネットワークにはファイブさんと同様、基本的なプロダクトの仕様やパフォーマンス面でも期待していますが、なによりもLINEの持つ膨大なデータを活用したターゲティング配信や、LINEの掲載基準に沿ったクリエイティブのみが配信されるという信頼性などは、当社のビジネススタイルによりマッチしていると考えています。LINE広告ネットワークを介して、これからアプリ内で新たなユーザー体験が創出できることを願っています」
(公開:2019年7月/取材・文:中野渡淳一、写真:高橋枝里)
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