スマートフォン向けゲームアプリを中心としたネットワークコンテンツや家庭用ゲームなどを展開するバンダイナムコエンターテインメントは、LINEアプリ内やLINEのファミリーサービスに広告が配信できる運用型広告「LINE広告」を活用している。事前登録から休眠復帰など、ターゲットのフェーズに合わせた広告戦略を立てることで、ROASやLTVの改善のほか、既存ユーザーのゲームプレイ状況にも効果が得られたと話す同社の取り組みについて、担当者の橋本氏に話を聞いた。
精緻なターゲティングが行える「LINE広告」に期待
——バンダイナムコエンターテインメントの広告戦略について教えてください。
橋本:ネットワークコンテンツ事業では、多くのファンを抱えるIP(知的財産)を用いたゲームの展開と、自社開発のゲームタイトルの二軸で、数々のコンテンツを展開してきました。モバイルゲーム市場は2019年に約7兆円の市場規模を超える(※1)など、レッドオーシャン化が進んでいます。そのため、ターゲットを明確にした精緻な広告戦略を練らなければ、マーケティングやプロモーションの効果を向上させることができません。
たとえば、自社開発のゲームの場合は、市場の見極めやターゲットユーザーの特定。IPを活用したゲームの場合は、ファン層の洗い出しやターゲットとなるユーザー像に合わせたアプローチなど、それぞれのターゲットに合わせた広告配信が必須になってきています。
広告配信に用いるデータに関しても、取得したユーザーデータを自社で蓄積・分析し、広告を配信するプラットフォームが持つ外部のデータと掛け合わせながら、有効活用して最適化していきたいという方針があります。
——そうした広告戦略の中で「LINE広告」の活用を決めた理由を教えてください。
橋本:「LINE広告」の活用を決めたのは、主に3つの理由からです。1つ目は、8,400万人(2020年6月末時点)ものユーザー数を抱えるLINEは、ユーザー層が幅広く、かつ、モバイルゲームの利用者も多いことがわかっているため。
2つ目は、ユーザーの属性データを基に、さまざまなターゲティング配信が行えることです。LINEのデータと自社で保有するデータを掛け合わせることで、獲得したいユーザーだけを狙った精度の高い配信が実現できます。
そして3つ目は、LINE公式アカウントと連動した広告配信が行えることです。当社ではユーザーとのコミュニケーションツールとしてLINE公式アカウントを活用しているゲームタイトルが多く、LINE公式アカウント運用で得たデータを広告配信にも利用しています。
他のLINEサービスと掛け合わせ、LINE広告の効果を高める
——LINE広告の運用方法について、具体的に教えてください。
橋本:当社ではユーザーの活用状況や課金状況といった日々更新されるデータを有効活用するためにも、LINE広告の運用は自社内で行い、ゲームタイトルごとに緻密なターゲットを設定し、広告を配信しています。
配信方法やKPIの設定ついては、タイトルやユーザーによって、ゲームとの関わり方やフェーズが異なるため、広告配信の狙いも新規ユーザーの獲得から既存ユーザーのモチベーション向上、休眠復帰の促進などさまざまです。そこで毎回「誰に向けて、どのような目的で」広告を配信するのかを明確にしてから行っています。
たとえば、新規ユーザーの獲得が目的の場合、自社で取得したユーザーデータ以外にも、他媒体での広告配信のデータ、ゲームのホームページやキャンペーンページなどのサイトへのアクセスデータなどを分析・統合して広告を配信します。具体的には、ジャンルやターゲットが近しいタイトルの既存ユーザーデータを基に類似配信機能を活用し、「そのタイトルの新規ユーザーになりやすい」層へ効率的なアプローチを重視しています。この場合の広告評価は、アプリのインストール数や、ゲーム内課金などのROASを見ていきます。
休眠しているユーザーへの復帰を促すリテンション施策としては、LINE広告の「リエンゲージメント配信」機能(アプリをインストールしたまま休眠状態になっているユーザーを対象に広告を配信できる機能)を活用することもあります。休眠ユーザーの中でも、休眠期間や休眠以前のゲームの活用状況などで復帰しやすいユーザーを抽出し、そのユーザーへ向けたアプローチをしています。
アプリをインストールしたまま休眠状態になっているユーザーを対象に広告を配信できる「リエンゲージメント配信」機能
さらに、LINEの持つ属性データを用いて、ゲームタイトルごとに、もともとターゲットとしていた年齢や性別に限定した「LINEデモグラフィックデータ配信」を行うこともあります。この場合、もっとも重視する評価軸はCPAです。このように、広告配信の目的に合わせてKPIも変えています。
年齢、性別、地域、興味関心などでターゲットを指定して配信できる「LINEデモグラフィックデータ配信」機能
——LINE広告以外に活用しているLINEのサービスはありますか?
橋本:主にLINE公式アカウントを活用しています。LINE広告だけでなくLINE公式アカウントを併用することで、事前登録からモチベーションの向上、休眠復帰まで、ゲームやユーザーそれぞれのフェーズに合わせて情報を発信しながら継続的なつながりを持つことができます。
たとえば、あるタイトルではLINE公式アカウントをリリース前の事前登録に活用しました。特にモバイルゲームは、最初の集客やリリースまでの話題づくりが非常に重要です。LINE公式アカウントの魅力は、ユーザーの身近な存在であるLINE上で事前登録を促すことで、ユーザーのハードルを上げずに訴求ができることです。また、継続的なコミュニケーションが行えるため、リリースまでの情報をメッセージで配信するなどしてユーザーが離れないように関係を構築しつつ、アプリのインストールを促しています。
同社のスマートフォン向けゲームアプリ「テイルズ オブ クレストリア」のLINE公式アカウント
©いのまたむつみ ©藤島康介 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
そのほかにも、当社ではLINEのトークリストの最上部に動画広告が配信できる「Talk Head View」をこれまでに3回ほど活用しています。Talk Head Viewの活用にあたっては、ゲームの特徴をユーザーに印象付けることで認知率の向上をKPIに設定しています。
Talk Head Viewを活用した同社のスマートフォン向けゲームアプリ「ミニ四駆 超速グランプリ」の掲載広告
©小学館 ©ShoPro ©TAMIYA ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
※ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。
また、認知獲得以外にも、ゲームのイベント告知などで既存ユーザーに対してTalk Head Viewを活用することで、話題づくりを目的とした演出も行えます。Talk Head Viewはユーザーが多く訪れるトークリストに表示されるため、その広告を見たユーザー同士が話題にするなどの副次的効果にも期待できます。さらに、動画によって、ゲームそのものの動きやイメージを想起してもらいやすいという利点もあります。
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既存ユーザーのプレイ状況やブランディングにも効果のあった、LINEの広告サービス
——緻密なターゲット戦略を用いたLINE広告の活用、関連サービスとの掛け合わせによって、どのような成果が出ていますか?
橋本:3ヶ月ほどの長期期間で見たときに、顧客一人あたりの利益(LTV)やROASが向上するという成果が出ています。LINEユーザーには、ゲームが好きな層・ゲームをプレイしている層が多いため親和性があり、成果につながりやすいのではないでしょうか。ゲームタイトルによっては、広告に接触したユーザーのLTVが、広告に接触していないユーザーの2倍以上を記録したケースもあります。
Talk Head Viewの反響は特に大きく、他の認知を狙った広告メニューと比べて、2.5倍のリーチ数(※2)を記録しています。さらに、Talk Head Viewで動画広告を視聴した休眠ユーザーは、動画を視聴していないユーザーと比較して5倍の復帰者数(※3)を記録したという結果が出ました。このほかにも、掲載直後の1時間のプレイユーザー数が約2倍(※4)になるなど、既存ユーザーのゲームプレイ状況にも影響している様子が見られています。
また、 Talk Head Viewと併せてLINEリサーチを活用した効果検証を行ったところ、ゲームタイトルの認知度が広告非接触者と比較して37ポイント高く、プレイ動向も20ポイント高いという結果が出ました。ブランディングの観点からもTalk Head Viewは効果があることがわかっています。
モバイルゲーム市場は、今後競争がより激しくなり、それに伴いますますデータ戦略の必要性が増してくると感じています。そのためにもデータを起点とした施策の分析、また市場のリサーチなどにも力を入れていきたいと考えています。LINEではリサーチのメニューも充実しているので、ぜひ今後もご協力をいただいて、より良い活用法を一緒に模索していけたら嬉しいです。
(公開:2020年8月)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
【注釈】
※1:7兆1,840億円 出典:ファミ通ゲーム白書2020
※2、3、4:同社調べ
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