業界最大規模の品揃えを誇る電子書籍配信サイト「コミックシーモア」は、LINE広告やLINE公式アカウントをはじめ、LINEのさまざまなサービスをマーケティングに活用しています。同サイトの運営会社であるエヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社(以下、ソルマーレ)の坪井茂昭氏に、デジタルマーケティングの中心としてLINEを活用する理由や得られた成果などについて話を聞きました。
- マーケティング戦略の中心にLINEを据え、ユーザーとのコミュニケーションを強化する中で、コミックシーモアのファンを増やしたい
- 自社で保有するLINE広告で高LTVユーザーや初課金ユーザーのデータを基にした類似配信のほか、LINE公式アカウントのクリックデータをターゲティングに活用して、LINE広告を配信
- LINE公式アカウントのメッセージ配信以外にも、リッチメニューからユーザーをコミックシーモアのサイトに誘導
- ソーシャルログインの活用のほか、ユーザーメリットや特典を訴求する専用LPを設けてID連携を進める
- LINE広告で獲得したユーザーのARPU(ユーザー1人当たりの売上金額)は、他のSNS広告と比較して平均1.2倍を記録
- コミックシーモアの全来訪ユーザーの10%以上が、リッチメニュー経由で流入
- ID連携ユーザーへのセグメント配信は一斉配信と比較して、CTR(クリック率)で約337%、CVR(コンバーション率)で約167%アップ
- LINEを活用した一連のマーケティング施策で、コミックシーモアのLINE公式アカウント経由のLTVは前年比で約117%アップ
デジタルマーケティング戦略の中心としてLINEを活用
ソルマーレが運営するコミックシーモアは、2003年にサービス提供を開始した電子書籍配信サイトです。各出版社が発行する漫画やライトノベル、小説などの電子化作品を幅広く取り扱うほか、自社レーベルのオリジナル作品も多数配信しています。そのラインナップは業界最大級で、ユーザーはコミック約50万冊を含む、約84万冊(2021年9月末時点)をいつでも好きなときに読むことができます。
同サイトのデジタルマーケティング戦略には、3本の柱があります。
1つ目は「認知・ブランディング」です。テレビCMやWeb動画をはじめとするマスメディアを活用して、広くコミックシーモアをPRしています。オリジナルコミックのメディア化にも積極的に取り組んでおり、これまで『私の家政夫ナギサさん』(原作『家政夫のナギサさん』)『この男は人生最大の過ちです』など5作品がドラマ化され、話題となりました。
2つ目は「新規顧客獲得」です。LINE広告のほか、SNS広告、リスティング広告、アドネットワークを駆使して広告を配信し、新規ユーザーの獲得を行っています。
3つ目は、「来訪促進」です。本棚アプリ*のプッシュ通知やメルマガを活用してユーザーに有益な情報を届け、サイトへの来訪を促進。サイト内ではユーザーの嗜好に合わせたレコメンドや、「1巻無料」といったお得なキャンペーン情報を訴求するなどして、継続的にサービスを利用してもらえるよう工夫を行っています。
本棚アプリ…インターネット接続なしの環境でも作品を読めるように、ダウンロードした作品を格納する同社の自社アプリ
そして、2018年2月にLINE公式アカウントを開設し、これらのデジタルマーケティング施策の中心に据えました。
「それまでユーザーとのコミュニケーションにはメルマガを使用していましたが、徐々に開封率が下がり、課題に感じていました。LINEは8,900万人(2021年6月末時点)の月間利用者数を誇り、毎日利用するユーザーも多いことから、今後、弊社にとって重要なコミュニケーションツールになると思い、導入を決めました」(坪井氏)
LINE公式アカウントの運用データを活用して、質の高いユーザーを獲得
現在、認知から購買、CRMまでフルファネルでLINEを活用しているコミックシーモアは、「新規顧客獲得」の領域でLINE広告を運用しています。静止画、動画、カルーセルなどの複数のフォーマットに合わせて、より作品の魅力が伝わりやすいクリエイティブを制作。配信頻度やセグメント設定なども変えて、効果の検証・改善を繰り返しています。
「LINE広告のKPIは、『新規初課金』に設定しています。バナーからサイトに誘導し、興味関心から購入まで一気につなげるのが狙いです。結論から言うと、他のSNS広告と比較して、LINE経由で獲得できたユーザーのARPU(ユーザー1人当たりの売上金額)は、平均1.2倍を記録しています」(坪井氏)
LINE広告で質の高いユーザーを獲得できているのは、ターゲティングにおける工夫が大きいようです。年齢、性別、興味・関心などでセグメントを設定するほか、自社で保有する高LTVユーザーや初課金ユーザーのデータを基にした類似配信、LINE公式アカウントで配信したメッセージのクリックデータをターゲティングに活用するなどして、LINE広告の配信効果を高めています。
LINE公式アカウントの運用データを活用した広告配信で作品の認知拡大をしつつ、
多くの新規会員獲得につなげた
「LINEの広告配信やメッセージ配信における基本スタンスは、最初からターゲットを絞り込むのではなく、広くリーチさせて反響があった属性にターゲットを寄せていくというものです。今後は、若年齢層の女性に人気の特定ジャンルに着目して、そのジャンルが好きそうなユーザーに向けて集中的に広告配信することも検討しています」(坪井氏)
自社に適した広告運用について専門家に相談してみませんか?
→LINE広告について相談する
ソーシャルログインの活用やキャンペーンでID連携を促進
コミックシーモアはLINE公式アカウントのKPIを、配信メッセージに対するユーザーのクリック率に設定しています。さらに「LINE経由で流入したユーザーの売り上げも重視している」と坪井氏は話します。
「マーケティングで最終的に重要になるのは、やはり費用対効果です。そのため、旧LINE@からLINE公式アカウントへの移行に伴いメッセージ配信が従量課金制になったときは、運用に苦心しました。メルマガよりも配信単価がかなり高くなってしまったためです。
しかし、ユーザーと長期的に良好な関係を築いていくためにLINEの活用は欠かせないと考え、2020年8月からは代理店と連携して、LINE公式アカウントの効率的な運用に取り組んでいます。ここ1年は、LINE経由の新規獲得で一定の成果をあげられているので、今後は既存ユーザーのARPUを上げることを目指したいと思います」(坪井氏)
さらに、コミックシーモアはID連携にも注力しています。サイト会員登録の際、ソーシャルログインを活用してLINEで手軽にログインできるようにしたり、ID連携のメリットや特典をユーザーに訴求するために専用のLPを設けています。
ID連携ユーザーに対しては、会員属性や課金状況などのデータを元にセグメント配信を実施。これが「大きな売り上げアップにつながっている」と坪井氏は語ります。
「友だち全員への一斉配信と比べて、ID連携ユーザーへのセグメント配信はCTR(クリック率)で約337%、CVR(コンバーション率)で約167%も効果が高いことを確認しています。また、一時的に費用対効果が逆転していたメルマガと比較しても、現在、CTRは約250%、CV数は約142%、ARPUは約180%と、さまざまな指標でLINE公式アカウントがメルマガを圧倒しています」(坪井氏)
また、LINE公式アカウントのリッチメニューからのサイト流入率の高さにも注目していると坪井氏。
「コミックシーモアのサイトを来訪する全ユーザーの10%以上が、リッチメニュー経由での流入です。Webサービスという性質上、日常的に来訪いただくのが難しいという課題を、アクティブ率の高いLINE内のリッチメニューが補完し、『来訪促進』につながっています。サイト利用の入り口を広げるところから、その中における売り上げアップまで、LINE公式アカウントが大変有効に機能していると考えています」(坪井氏)
Talk Head Viewで日本人女性の半数を超える3,500万人にリーチ
2020年12月には、メインユーザーである女性をターゲットにテレビCMの認知向上を目指し、CM放映タイミングに合わせてTalk Head Viewを実施。さらに、LINE広告の友だち追加とダイレクトスタンプ*1 にも出稿して、そこから新規の友だち集客を行いました。年末シーズンの盛り上がりもあり、結果として、Talk Head Viewは日本の女性人口の50%を超える3,500万人以上にリーチで*2、リーチ単価は約0.7円。友だち追加とダイレクトスタンプの施策では、7.2万人の友だちの獲得につながりました。
1 ダイレクトスタンプ…LINEの広告枠から直接スタンプのダウンロードページに遷移できるLINEプロモーションスタンプのメニューの1つ
2 男女別人口(2021年4月平成27年国勢調査を基準とする推計値、2021年9月概算値)より算出
「Talk Head Viewは、それ単体でも爆発的なリーチが魅力のサービスです。しかし、同時期に複数サービスに出稿することで、LINEスタンプをフックにしたサイトへの訪問、Talk Head Viewの動画閲覧などの効果もあり、この時期に会員が大幅に増加したことに大変驚きました」(坪井氏)
その後、2021年3月にはスポンサードスタンプ*の配信も実施。ダウンロード数162.1万人、有効友だち数58.3万人、新規友だち率90.7%と高い成果が出ました。
スポンサードスタンプ…スタンプショップに掲載され、さまざまな属性のユーザーへのリーチが見込めるLINEプロモーションスタンプのメニューの1つ
一連のLINEを活用したマーケティング施策が功を奏し、コミックシーモアのLINE公式アカウント経由のLTVは前年比で約117%アップを記録。今後のLINE活用について、坪井氏は次のように語ります。
「LINEは多彩な法人向けサービスを備えながらも、それらの中心となるLINE公式アカウントは他のツールと違って自由度が高く、リッチな情報をお届けできるのが強みです。ID連携でも上々の成果が出ているので、さらに活用度を高めてユーザー1人ひとりの行動や趣味趣向に合わせたOne to Oneマーケティングを実施していきたいと思います。
また、LINEプロモーションスタンプを積極的に活用したり、他メディアと連動したりしながら、単に漫画作品を提供するだけではなく、もっとワクワクするような情報をユーザーに届けていきたい。これからもデジタルマーケティングの要として、LINEを活用していきます」(坪井氏)
(公開:2021年10月/取材・文:相澤良晃、写真:中村宗徳)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※LINE活用の成果に関する数値は、すべてソルマーレ調べです
自社に適した広告運用について専門家に相談してみませんか?
→LINE広告について相談する