「GANMA!」は10代から20代のユーザーを中心に支持される人気マンガアプリです。これまでに170を超えるオリジナルマンガが公開され、連載中のオリジナルマンガは、第1話から最新話までを全話無料で読むことができます。サービスの運営元はインターネットマーケティング事業を中心に手がけるセプテーニグループのコミックスマート株式会社(以下、コミックスマート)。
「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」への広告出稿で新規ユーザー獲得を行う同社の取り組みについて、同社デジタルプロモーション担当・伊崎祐介氏と、同社のデジタルマーケティングの取り組みをサポートするSepteni Japan株式会社(以下、Septeni Japan)の梅沢真実氏に話を伺いました。
- 新規ユーザーを獲得したい
- 若年層へのリーチを最大化したい
- 広告運用の自動最適化により、インストール単価を抑制したい
- LINE広告のAPIを活用した広告の自動運用ツール「PYXIS」(ピクシス)の導入
- 広告運用レコメンドツールと類似配信機能を掛け合わせた配信
- サービスの特徴を際立たせるための、広告クリエイティブ改善
- 広告配信の効率化・最適化に成功
- KPIとして設定したCPIが大幅に改善
ユーザーの生活に根付いたSNSであることが大きな魅力
コミックスマートはGANMA!のローンチ以来、同社プラットフォームへの集客のためにさまざまなプロモーションを実施しており、現在は新規ユーザーの多くを運用型広告経由で獲得しています。
「サービスローンチ当初から、各種デジタルメディアにおいて、GANMA!のターゲットになりうるユーザーに効率良くリーチできるよう広告戦略を練ってきました。そして、5年ほどが経過し、より競合環境も激化する中で、ある課題が上がるようになりました。それは、GANMA!のコアターゲット層、特に10代から20代のユーザーに対して、どのようにすれば的確かつ深くコミュニケーションを取れるか、GANMA!の魅力を正しく理解してもらえるか、というものです」(伊崎氏)
そのような状況の中、同社はLINE広告の運用を開始しました。出稿メディア決定にあたり、2つの決め手があったといいます。
「1つ目は、LINEがユーザーの日常的な利用回数が非常に多いメディアであることです。この特性により、広告出稿を通じてLINEユーザーとの接触頻度を戦略的に高めることができます。もう1つは、他SNSに比べてアプリの重複利用率が低く、“LINEにしかいない”かつ“若い”ユーザーにリーチできる点です」(伊崎氏)
広告運用を自動化したことで質を高めるための取り組みが可能に
LINE広告の運用を担当するのは、Septeni Japanの梅沢氏。導入当時について次のように振り返ります。
「連載中の作品が全話無料で読めるGANMA!は、広告のCTR(クリック率)が他のアプリと比較して高くなる傾向にありました。全話無料であることはユーザーの注目を集める要素ですので、KPIを達成していれば問題ないのですが、CVR(コンバージョン率)が低い広告の配信量が急増してしまった場合など、急激に変化する広告のパフォーマンスをコントロールするには人的な運用調整だけでは不十分という課題を抱えていました」(梅沢氏)
そこで同社は、グループ会社の株式会社セプテーニ・オリジナルが開発した運用支援ツール「PYXIS」(ピクシス)を導入。
「PYXISを導入して、KPIとして設定しているCPI(インストール単価)に応じて入札単価を自動変更する機能や、目標のCPIをオーバーしている広告を自動的に停止する機能を活用しました。これにより運用調整作業を効率化しながらも、KPIを大幅に改善することができました」(梅沢氏)
梅沢氏は「ツール活用で生まれた時間を活用し、インストール数の最大化を目的としたプロモーションだけではなく、アプリを沢山利用してくれるユーザーの獲得を最大化することを目的とした施策に取り組めるようになった」と、Septeni Japanが開発した独自ツールと、LINE広告の類似配信機能を組み合わせた新たな施策について話してくれました。
「極力多くのLINEユーザーにリーチしたい気持ちがありますが、全てを配信対象としてしまうと、当社が理想とするユーザーは獲得できません。GANMA!の広告運用では、ユーザーのアプリ内の行動履歴から、理想とするユーザーをAIで予測するデータソリューションツール『Precog for APP(プリコグ フォー アップ)』を導入しているのですが、このツールで『インストール後、翌月にもアプリを起動してくれる確率の高いユーザー』を予測し、LINE広告の類似配信機能のシードデータとして配信を行うことで、よりアプリを繰り返し利用してくれるユーザーを獲得することを目指しています」(梅沢氏)
サービスの特徴を際立たせたクリエイティブ施策でCTRが向上
獲得件数を増加させるための“クリエイティブ”は、コミックスマートとSepteni Japanの協議により手掛けられます。「自社でオリジナルのコンテンツを保有し、広告使用における連携がとりやすいため、スピーディーなクリエイティブ制作ができる点も我々の強み」と語る伊崎氏。サービスおよび作品の魅力を伝える際の工夫についてこう語ります。
「広告・コンテンツいずれの場合も、ユーザーの限られた時間、そして限られたフォーマットの中で作品の魅力を感じてもらえるかが大きな鍵です。かつては、インパクトのある作画とキャッチコピーを付けたバナー広告でいかにユーザーの“引き”をつくるかを重点的に考え配信していましたが、やはりパフォーマンスやその後の継続率に限界がありました。現在はそれ以上に、広告上でマンガ購読を疑似体験してもらいながら、作品の魅力だけでなく、サービスそのものの強みや魅力と結びつけてもらえるようなクリエイティブが必要だと考えています」(伊崎氏)
梅沢氏と伊崎氏は、クリエイティブの改善を行った結果、特にCTRが高まった事例を紹介してくれました。
「例えば、ある人気サイコホラー作品を用いたクリエイティブでは『全話無料だけど怖すぎて読み切れない』というキャッチコピーを用いた結果、従来型の作品の内容だけを伝えたクリエイティブに比べ、CTRに顕著な違いが現れました」(梅沢氏)
「マンガアプリに限らず、多くのユーザーが無料のサービスに慣れ、目が肥えているため、どれだけ『全話無料』というベネフィットを伝えても『結局は課金が必要なんでしょう?』と疑心暗鬼で正しく理解されない事も多い。そこで、このクリエイティブのように、『“本当に無料”なんだけど“怖すぎて読み切れない”』という風に作品自体の面白さとサービスの特性を結びつける事で、より自分ごと化してもらえ、興味を引くことができたと考えています」(伊崎氏)
最後に、両氏は今後の期待ついてこう語ります。
「LINE広告では2018年8月に広告配信プラットフォームの大幅刷新を行ったことを皮切りに、「自動最適化配信」や「LINE Dynamic Ads」などさまざまな機能やメニューがリリースされています。今後も、自動化が進むLINE広告とPYXISの独自機能を組み合わせることで、LINE広告のパフォーマンスを最大限引き出し、広告主の課題解決のサポートができるようなサービスを提供していきたいと思います」と梅沢氏。さらに伊崎氏は、今後の展望も踏まえながらLINEに対する期待をこう述べます。
「GANMA!は現在全話無料で読める連載オリジナルマンガコンテンツに加え、12月のメジャーアップデート以降、「連載が終了した完結作品」、「外部パートナー様の作品」などの有料コンテンツ(月額有料会員登録をするとGANMA!上のすべての作品が読み放題になるサブスクリプションモデル)も展開しています。将来的には、LINE Payを含めた決済情報とも掛け合わせられる新しい運用型広告の可能性について期待しています」(伊崎氏)
(公開:2019年4月/取材・文:安田博勇、写真:小川孝行)
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