アプリゲーム「逆転オセロニア」など、数多くの人気ゲームタイトルを手がける株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。LINEの運用型広告プラットフォーム「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」を活用し、最新機能をいち早く取り入れながら、独自の仮説を持って検証を繰り返すことで、アプリインストールの新規顧客の獲得および休眠顧客の復帰において効果を上げています。
今回は、LINE広告の運用方法について、DeNAでLINEを活用したマーケティング施策を担当する齋藤岳氏(以下、齋藤氏)に話を伺いました。
- 新規顧客を獲得したい
- 休眠顧客を復帰させたい
- 「LINE広告」の類似配信を活用してさまざまなデータソースで配信を実施
- 掲載面を意識したクリエイティブの改善
- 運用型広告経由の獲得において「LINE広告」のシェアが継続的に一位
- クリエイティブを変えたことでCTRが200%改善
LINE広告で効率を維持しながらの大量リーチを実現し続ける「DeNA」
昨今、顧客獲得が激化しているアプリゲーム業界では、新規顧客のアプリインストールだけでなく、休眠顧客(一定期間アプリを起動していない顧客)をターゲットとした掘り起こし施策に注力する企業が増えています。DeNAでは、新規顧客の獲得や休眠顧客の掘り起こし施策としてWeb広告を積極的に活用しています。配信タイトルや時期によって異なるものの、Web広告経由の獲得成果の内、9割ほどを運用型広告が占めるケースもあり、Web広告の中でも運用型広告に特に比重を高くおいて取り組んできました。数ある運用型広告の中でも今回、LINE広告の運用を開始した理由について齋藤氏はこう語ります。
「新しい広告媒体が出た時は、利用者観点からも珍しく、目に留まりやすいという利点があるため基本的にすぐにチャレンジするようにしています。特にLINEは圧倒的なユーザー数を抱えているため、多くの新規顧客へリーチすることができると期待して開始しました」
運用後、その効果は数値として目に見える形で現れます。
「運用型広告全体の中でLINE広告が占める比率は、あるゲームタイトルの直近実績にて新規獲得、復帰獲得共に全媒体の中で一番のシェアとなっており、CPIも安く大量にとれています。特に復帰顧客の獲得においては、休眠顧客のリストに対して、コストを抑えながらきちんとリーチすることが重要なので、LINE広告のCPMの安さは重宝しています」
また、復帰顧客の獲得を目的とした配信を行う中で、新たな発見もあったそうです。
「もともと、休眠顧客を対象にLINE広告で復帰配信することで、オーガニックの復帰件数が増えているように感じていました。ビュースルーコンバージョン(広告に接触したもののその場ではクリックせずに、別のルートでコンバージョンに至った数)の効果があるという仮説のもと、時間帯を絞って復帰配信を行い検証した結果、配信と連動してオーガニックのコンバージョンが増加するという仮説が裏付けられました。LINEに配信ボリュームがあったからこそ気付けたことですが、ビュースルーコンバージョンが多いことが証明され、計測できているコンバージョン以上の価値があることがわかりました」
「類似配信」で「データソースをずらす」ことで、高パフォーマンスを維持
齋藤氏は、LINE広告の効果をさらに高めるため、「類似配信」の運用上においても工夫があることを明かします。
「ユーザー群をデータソースとして登録し、似たような人々に拡張して配信しています。一般的なインストール類似や課金類似に加え、初日課金や重課金の類似など、コアなユーザー像についての仮説を立ててさまざまなパターンをテストしており、これまでに20パターン以上のデータソースを試しています。同じデータソースを連続して使い続けると広告接触頻度が高まり獲得効率が落ちてしまうので、毎回少しずつデータソースを変えることで摩耗を防いでいます。実際に、効果が落ちていたところが復活することもあり、それによりLINE広告で高いシェアの獲得を維持できています」
勝ちパターンのデータソースを見つけてそれを使い倒すのではなく、データソースをずらすことで、効率良く運用できているようです。なお、一つのデータソースで継続して配信するかどうかについては、基準を設けているといいます。
「一つのデータソースで継続して配信するかの基準としては、まずは初速のCPIを指標にしています。ただし、実際にはもっと個別に細かく見ていて、インストール後のLTVを見た上で、良さそうであれば初速ではCPIが合わなくても継続するなどの対応をしています。データソース次第ではありますが、コアユーザーの特徴をうまくとらえてデータソースを作成できたときは高LTVユーザーの獲得につながっており、類似配信の精度の高さを実感しています。また、データソースのボリュームがどのくらいあれば高い精度で配信できるかを検証するため、母数が少ない場合と多い場合のリストで類似配信を行って精度を比較したところ、CTR、CVR、CPI、LTVいずれの指標においても大差はありませんでした。新規のタイトルなど、リストの母数がたまっていないような場合においても高い精度で配信できることがわかったので、データソースのさまざまなパターンの仮説検証を行いやすいと思っています」
さらに、クリエイティブの面でもデータソースを意識した工夫がなされているそうです。
「ターゲットに合わせて、どのようなクリエイティブが効果的なのかを考え、データソースと組み合わせて運用しています。例えば、スコアを競い合うゲームにおける課金ユーザーには、ハイスコアが出た時の達成感を味わいたいというニーズがあります。それを踏まえ、課金類似拡張に対して最高スコアのゲーム画面を見せたクリエイティブを配信したときは、良い結果が出ました。ターゲットが何を求めているかの仮説を立てて、そこにフォーカスしたクリエイティブを提供することで、より効果的な広告配信が可能になると考えています」
クリエイティブのPDCAを回し続け、効果最大化を実現
獲得件数を増加させるために重要なクリエイティブにおいては、常にPDCAを回して改善を行っています。特に目覚ましい改善があったのは、アプリゲーム「逆転オセロニア」で実施したキャラクターの「闘化解放」を訴求するキャンペーンだと齋藤氏は語ります。
「最初のクリエイティブでは、3体の有名キャラクター画像にコピーを15文字程度載せていました。しかし、LINE NEWSに掲載するカード型広告の限られたスペースでは視認性が低いことに気が付き、掲載キャラクターを1体に絞り、コピーも4文字に削減しました。その結果、CTRが200%以上改善し、CVRも110%以上改善しました。結果的にCPIも改善し、掲載面を意識したクリエイティブの重要性を改めて実感しました」
齋藤氏曰く、クリエイティブを作成する際に特に意識しているのは、訴求やコピーなどの媒体横断的なことに加えて、媒体ごとのユーザー特徴を意識することだといいます。今後もさまざまな角度からテスト的に数種類のクリエイティブを試しながらLINEユーザーへの理解を深め、LINE広告に特化したクリエイティブがつくれるようになりたいといいます。
今後もLINEを通じて新たな価値創出を目指す
最後に、LINEを活用してさらに取り組んでいきたいことについてお聞きしました。「LINE広告での初速が現時点では優れているため、ロジックが大きく変わっているとは思いますが、仮説をもって攻略していきたいと考えています。また、LINE公式アカウントとLINE広告を連動させてLINEのプロダクトを一気通貫で活用したマーケティングにも挑戦していきたいので、今後予定されているLINEの法人向けサービスの展開にも期待しています。ゲームをインストールした後により満足いただけるよう、広告を活用してインストール前後に関わらずさまざまなコミュニケーションができればと思っているので、ユーザー数も多く、サービスも多様なLINEをもっと活用していきたいと考えています」
(公開:2018年10月)