リユース事業を展開する株式会社エコリング(以下、エコリング)は、2020年にLINE公式アカウントを開設し、ユーザーが売りたい物の査定がLINE上で完結する「LINE査定」を始めました。その利用者を増やすためにLINE広告の「友だち追加」の運用をスタート。2022年10月にLINEヤフーマーケティング株式会社(以下、LINEヤフーマーケティング)に運用代行を依頼してからは、抜群の成果を上げています。「いまやLINE査定経由の売り上げは10億円を突破している」と語る株式会社エコリングCSの川崎佑太氏と、LINEヤフーマーケティングで営業を担当する横谷亜希、運用を担当する村上美雪に話を聞きました。
『LINE査定&かんたん買取』の利用者を増やす
・LINE公式アカウントの友だちを増やすため、LINE広告「友だち追加」を実施
・LINEヤフーマーケティングに運用代行を依頼
・運用代行前と比べ、友だち追加単価が50%減の150円前後、CTRが3~5倍の0.10~0.15%ほどに
・LINE査定経由で買い取った商品の売り上げが倍増、年間10億円超に
LINE上で査定から買い取りまで完結!「LINE査定&かんたん買取」
兵庫県姫路市に本社を置くエコリングは、全国に280超の店舗(2025年2月現在)を展開する買い取りの専門店です。「感動買取」「なんでも買い取る」をスローガンに、ブランド品や貴金属だけでなく、使用感がある日用品や雑貨など、一般的なリユース業者があまり引き取らないものまで幅広く取り扱っています。年間の買い取り件数は95万件超、販売件数は115万件以上にのぼり、取り扱いアイテム数は約440万点に達します。

その中で、オンラインでの査定を行うグループ会社が「エコリングCS」です。同社は、数年前まではテレビCMなどのマス広告で認知拡大を図る一方、新聞折り込みチラシで各店舗に利用者を呼び込むというマーケティング手法を取ってきました。
「当社のメインターゲットは50代以上の女性で、その層の方々には新聞折り込みチラシでの訴求が効果的です。しかし、アナログのマーケティング手法では限界があるため、ここ数年、徐々にWeb広告などデジタルマーケティングの比率を増やしてきました。2020年にはLINE公式アカウントの本格運用をはじめ、『LINE査定&かんたん買取』というサービスをスタートしています」(川崎氏)
『LINE査定&かんたん買取』は、ユーザーが売りたい物の写真をLINEで送ると、最短5分で買い取り金額を査定してもらえるという無料のサービスです。ユーザーが査定金額に納得した場合は、そのままLINE上で買い取り依頼をすることが可能。後日、自宅に届けられた梱包資材で品物を発送すれば、LINE査定で保証された金額が指定口座に振り込まれるという仕組みです。

同業他社と査定金額を比較しながら、売り先を検討されるお客さまが多く、利便性を高めて買い取り依頼を増やすためには、オンラインの査定サービスが必須だった、と川崎氏は話します。
「当初は自社アプリに査定機能を持たせることも検討しましたが、まず自社アプリをダウンロードしてもらわなければならないという高いハードルがあります。その点、LINEは大半の日本人のスマートフォンにすでにインストールされていて、日常のコミュニケーションツールとして使われている。家族や友人などとの普段のトークの延長で、気軽にエコリングに接してもらえるのではないかと考え、LINE上で査定サービスを展開することにしました。自社アプリもありますが、そちらは主に会員カード機能、LINEは査定&買い取りをはじめとするオンラインサービスの提供ツールとして使い分けています」(川崎氏)

電話番号オーディエンスの利用でCTRが飛躍的に向上
LINE公式アカウントを重要なチャネルと位置付ける同社は、その利用者を増やすためにLINE広告の「友だち追加」の運用を始めました。LINE広告の「友だち追加」とは、LINE公式アカウントの友だちを効率的に増やすことができる広告メニューです。接点を持たない見込み顧客にアプローチできるため、友だち数を増やしてビジネスを成長させたい場合に有効です。現在、エコリングで「友だち追加」の運用代行をしているのが、LINEヤフーの100%子会社であるLINEヤフーマーケティングです。
「最初は自社でLINE広告の運用を始めたのですが、思うような成果を上げることができませんでした。そこで、以前からLINE公式アカウントの運用をサポートしていただいていたLINEヤフーマーケティングさんに、2022年10月からLINE広告の運用代行もお願いすることにしました」(川崎氏)
さっそくLINEヤフーマーケティングがエコリングのLINE広告の運用状況を分析したところ、「広告グループのターゲティング設定に改善できる部分があった」と担当の村上は振り返ります。
「当社が運用代行をするまでは、ブランド用品やホビー用品といった「興味・関心」と「年齢・エリア」で、比較的広いターゲティング設定をされていました。特に年齢に関して言えば、コアターゲットとなる“50歳以上”ではなく、“20歳以上”という幅広いユーザーに広告配信される設定になっていました。そこでまず、利用確度の高そうなユーザーに接触するためにターゲットを絞り込んで、広告のクリック率(CTR)は向上、友だち追加単価(1人あたりの友だち追加にかかる費用)は下げられるよう、どういったターゲティングが効果的なのかを探ることから始めました」(村上)

そのターゲティングの絞り込みに活用したのが、LINE広告の類似配信です。類似配信は、広告主が持つ顧客データを活用して、似た特徴を持つ新しいユーザーに絞って広告配信ができる機能です。例えば、「以前に自社の商品・サービスを利用したことがあるユーザー」というオーディエンス(特定のグループ)を基に類似配信することで、コンバージョン(CV)の確度が高い新規ユーザー(見込み顧客)にだけ広告配信できるため、高い費用対効果が見込めます。
「今回のエコリングさんのケースでは、まず①宅配買い取りサービスを利用したユーザー群の電話番号を用いて類似配信をしました。それによってCTRは向上したものの、ターゲットを絞り込みすぎたため広告配信対象となるユーザー数が少なくなり、友だち追加単価が高騰してしまいました。そこで次は、②LINE査定を利用したユーザー群の電話番号、③店舗買い取りを利用したユーザー群の電話番号も用いて類似オーディエンスリストを作成し、そこにもともと設定されていた商品カテゴリー別の興味・関心を組み合わせました。高いコンバージョン(CV)の確度は維持したまま、広告配信対象のユーザー数を増やすという方法です」(村上)
さらに、広告クリエイティブの改善にも着手。「キャッチコピーや色使いなどを試行錯誤して効果を検証していった」と横谷は明かします。
「当社での運用代行後、まずはクリエイティブの要素を見直しました。運用代行以前は、エコリングさんのコーポレートカラーである緑色をベースに、『LINE査定』『安心買取』といった短文のコピーで、シンプルなクリエイティブを作成されていました。そこで、買い取りまでの具体的なステップやLINE査定の利用を具体的にイメージさせるようなイラストとコピーを用いてみたところ、CTRの向上が見られました。とくに“断捨離”というワードに、ターゲット層の50代以上女性がよく反応している結果が出ましたね」(横谷)
また、いくつかの色違いのクリエイティブを作成し試したところ、暖色系カラーのクリエイティブのCTRが高いことがわかり、この2点を基本としたクリエイティブで広告を展開するようになったといいます。
LINE広告経由で友だち追加したユーザーの6割が「LINE査定」を利用
こうした改善が実を結び、現在は運用代行前と比べて、友だち追加単価は50%減の150円前後、CTRは3~5倍の0.10~0.15%ほどで推移しています。
「LINE広告の効果改善により、友だち数も順調に増えています。月間の友だち追加数は平均すると約6,000人で、うち半数がLINE広告経由です。しかも、その新規の友だちの約6割がLINE査定を利用してくれています。月間のLINE査定の利用件数は、2年前と比べて約2倍になりました。それにともなってLINE査定経由で買い取った商品の売上も倍増し、年間10億円を突破する見込みです」(川崎氏)

LINE広告の活用後、友だち数の増加だけでなく、大幅な売り上げアップも実現したエコリング。その成功要因について、横谷はこう分析します。
「短期で大きな成果を出すことはなかなか難しいので、年単位で継続して運用代行をお任せいただいたことが大きかったと思います。エコリングさんの場合は、LINE広告の運用代行開始から数か月で成果が見え始めましたが、その後も継続していだいたことで機械学習の精度も高まり、クリエイティブの勝ちパターンも見つけることができました。長い目で見ていただいた川崎様に感謝します」(横谷)
この言葉を受けて、川崎氏は次のように話します。
「LINE広告の運用に関してはLINEヤフーマーケティングさんにお任せしっぱなしで、私はレポーティングを確認させていただくだけです。やはり自社で運用するとなると手間もかかりますし、じっくり効果を分析する時間もありません。クリエイティブ作成のノウハウもないですから、ここまでの成果を上げることはできなかったと思います。今後も継続して運用代行をお願いし、LINE査定経由の売上をどんどん伸ばしていきたいと思います」
(公開:2025年2月、取材・文/相澤良晃)
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