株式会社GRACEは、リユース事業の一つとして運営しているWebサイト「オーディオの買取屋さん」への集客を目的に、以前からYahoo!広告を活用してきました。一方、当初は苦戦したというLINE広告の運用では、「Yahoo! JAPAN共通オーディエンス」の利用で配信効果が改善。その施策の詳細について、同社で広告運用を担当する田中啓裕氏(以下、田中氏)と南ちひろ氏(以下、南氏)に話を聞きました。
・CV(コンバージョン)として設定しているオーディオ機器の買取査定申し込み数を増加させたい
・LINE広告、LINE公式アカウントなど、LINEサービスの横断活用でROI(投資利益率)を向上させたい
・LINE広告の配信にYahoo! JAPAN共通オーディエンスを活用
・配信の結果、インプレッションが従来の2倍以上に拡大、CPAも50%削減
インプレッション2倍以上
CPA50%削減
潜在層に「オーディオの買取屋さん」の認知を広げるためにディスプレイの可能性を模索
株式会社GRACEは、楽器事業、リユース事業、カフェレストラン事業など、多様な事業を展開しています。リユース事業の一つである「オーディオの買取屋さん」では、ユーザーからオーディオ機器を買い取り、修理やクリーニングを経て国内外に再販売しています。
「『オーディオの買取屋さん』というサービスを通じて、お客さまの大切なオーディオ機器に新たな価値を見出し、次の所有者へつなげるお手伝いをしています。さまざまな広告を通じてお客さまとの接点を増やしながら、弊社のサービスについて知ってもらい、お問い合わせしていただく機会を創出することに努めています」(南氏)
以前まで、広告は検索広告を中心に運用し、Yahoo!広告 検索広告でも一定の配信量を確保してきました。しかし、検索広告はニーズが顕在化しているユーザーに向けた広告です。潜在層向けに認知を拡大する必要性が出てきた際、ディスプレイ広告を活用するようになったといいます。
「オーディオの買取屋さんのお客さまは、趣味として若いころからオーディオに親しんできたという方々で、50代以上の男性が多くを占めています。そうしたお客さまは、パソコンでYahoo! JAPANを頻繁に閲覧している傾向があるため、Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)を通じてアプローチできるのではと考えました。私自身、日常的にYahoo!ニュースを利用していたということもあります」(南氏)
Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)の運用では、ユーザーの興味関心や購買意向、ライフイベントに基づいたオーディエンスリストターゲティング、Webサイトに訪れたことがあるユーザーへ再配信できるサイトリターゲティングを中心に配信していました。
「オーディオ買取の場合、一度広告を見ただけですぐに『査定をしてみよう』と行動する方は少なく、『2日以内に申し込む人』『10日後くらいに申し込む人』『申し込まない人』の3パターンほどに分かれます。そのため、特にサイトリターゲティングは重要です。ディスプレイ広告の運用も、リターゲティング広告の配信機会を増やすためという目的がありました」(田中氏)
LINE広告に関する悩みを打開した「Yahoo! JAPAN共通オーディエンス」の活用
Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)の成果が出始めてくると、2020年にはさらなる配信拡大のためにLINE広告の運用を開始しました。
「高年齢層の方々にもLINEの利用が広がっていく中、LINEの圧倒的なユーザー数と目に触れる頻度の高さにポテンシャルを感じ、LINE広告も活用していくことにしました。また、リユース業界で査定申し込みをLINEで受け付ける企業が出始めてきたため、他社に遅れてはならないという気持ちもありLINE公式アカウントも開設しました」(田中氏)
結果、LINE広告の運用と同時に、LINE公式アカウントを活用した買取査定をスタートさせました。
「Yahoo!広告では遷移先をLPに設定していましたが、LINE広告の場合はLINE公式アカウントの友だち追加を促すための広告を配信しています。また、友だち追加をしてもらうことで、そこから気軽に査定の申し込みができるようにしました。友だち追加はしたものの査定申し込みにまでは至らないというお客さまには、オーディオの買取屋さんのサービスについて理解を深めてもらうための情報を配信しています」(田中氏)
しかし、LINE広告の運用については、Yahoo!広告と同一クリエイティブにも関わらず、CVが伸びずにしばらくの間は苦しんだといいます。試行錯誤を続ける中、2024年にYahoo! JAPAN共通オーディエンスが登場したことで、LINE広告の活用に希望が見えました。
「お世話になっているLINEヤフー社の担当営業さんから、『朗報があるんです』とYahoo! JAPAN共通オーディエンスを教えてもらったとき、『突然チャンスが訪れた!』と思いました。ダメ元での挑戦だという気持ちもありつつ、うまくいくんじゃないかという予感もしていました」(田中氏)
Yahoo! JAPAN共通オーディエンスとは、Yahoo! JAPANユーザーの興味関心や購買意向、属性、ライフイベントなどのオーディエンスリストデータが、LINE広告にも活用できる機能です。例えば、「最近家を買った人」「最近子どもが生まれた人」「孫と一緒に暮らしている人」など、さまざまなターゲティングが可能です。
「はじめは、Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)で設定していたターゲティングカテゴリーを、そのままLINE広告の配信に活用しました。興味関心は『音楽好き』『クラシック音楽好き』で、購買意向に『オーディオ機器』があるという、誰でも思いつくような設定です。すると、すぐにインプレッションが2倍以上になりました。これまで接触できていなかったターゲット層に向けて広告を配信できるようになったことで、一気に突破口が開けたと感じました」(田中氏)
LPと導線の改修によりCPA50%削減を実現
LINE広告での配信量は増加した一方、CPAがYahoo!広告に比べて高くなってしまうという課題も出てきました。というのも、Yahoo! JAPAN共通オーディエンスは潜在層への配信で、その場で買取査定を依頼(CV)しない人も多かったためです。
「そこで、Yahoo! JAPAN共通オーディエンスを使った広告配信でLP改善を行い、その場での査定を促すだけではなく、興味を持ってくれたユーザーがLINE公式アカウントを友だち追加しやすいような仕組みに変更しました。具体的には、LP上部には査定申し込みフォーム、下部にサービス内容が分かる説明を記載し、離脱時に友だち追加を促すポップアップバナーが表示されるような仕組みにしました。つまり、LINE広告からワンクリックで、査定申し込みや情報収集、そしてLINE公式アカウントへの友だち追加ができるよう設計しました。さらに、LPを閲覧したお客さまへは、リターゲティング広告も配信。CVに向けた導線を各所に設置したことでCPAは50%削減し、Yahoo!広告と同水準まで改善することができました」(田中氏)
現在、LINE広告、LINE公式アカウントの成果については、まとめて「LINE」という評価軸に統一し、1カ月ごとにトータルでROIを計算して判断しているといいます。
「LINE公式アカウントは、メッセージ配信をしたタイミングでCVが増えれば効果も予測できます。一方、LINE広告は常に広告を配信しているため、すぐにCVにつながるユーザーもいれば、10日後にCVするユーザーもいます。また、オーディオの買取屋さんの場合、取り扱う商品の単価が変動するため、査定の結果、粗利の高い商品を売却する人が増えればROIも大きく変わってしまいます。そうした諸々の数値を考慮して成果を見極めるには、『月単位でROIを出すと大きな齟齬がでない』という結論に達しました。それをLINE全体で判断し、さまざまな施策を検討しています」(田中氏)
オーディオの買取屋さんの今後の展開について、田中氏はこう語ります。
「リユース業界は現在、B to B、B to C、C to B to Cなどの業態も広がり、過去最高の盛り上がりを見せています。日本の各家庭にはまだまだ『埋蔵資産』が眠っていて、それが海外、特に東南アジアの親日国において、『Made in JAPAN』のブランド価値やモノづくりの技術、日本人のモノを大切に扱う精神とともに、高く評価されているのです。今後もオーディオ買取の専門店として認知度を高め、比較検討時にポジティブなイメージで想起してもらえるような広告配信を実現していきたいと考えています」(田中氏)
(公開:2024年10月、取材・文/小泉明奈、POWER NEWS編集部、写真/新谷敏司)
企業名 | 株式会社GRACE |
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所在地 | 神奈川県横浜市
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事業内容 | 楽器事業、リユース事業、カーリユース事業、ビジネスコンサルティング事業、DX推進事業、カフェレストラン事業
出張買取サービス「オーディオの買取屋さん」「楽器の買取屋さん」、カーリユース「buv japan」、リユースショップ「錬金堂」、カフェレストラン「UNI COFFEE ROASTERY」「Re:Journal」「Re:Wharf」などを運営。 |
サービス | オーディオの買取屋さん |