1899年の創業以来、100年を超える歴史を持つ食品・飲料の大手総合メーカー、カゴメ株式会社(以下、カゴメ)では、LINEの運用型広告プラットフォーム「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」を活用して、自社通販「カゴメ健康直送便」で販売している野菜飲料「つぶより野菜」の広告を展開しています。
広告では商品の「定期お届けコース」加入につながる新規顧客の獲得を目的としていますが、どのようにKPIを設定して運用を行っているのでしょうか。同社 マーケティング本部 通販事業部の勝丸透氏(以下、勝丸氏)と、広告運用を担当する株式会社デジタルガレージ マーケティングテクノロジーカンパニーの五井伴之氏(以下、五井氏)に伺いました。
- 通販限定商品の定期購入コースの新規顧客を獲得したい
- 類似配信を活用し、コンバージョンユーザー類似拡張配信を実施
- 機械学習を促進するため、必要以上にセグメントを切らず、広告セット一つ一つに対して適正な予算を投下
- CVRが高まり、機械学習による広告配信の最適化について効果を実感
- LINE広告でリーチできる圧倒的なユーザーボリュームは新規顧客獲得に欠かせないものに
アクティブユーザーの多いLINEは新規顧客獲得に欠かせない媒体
カゴメの通販事業は約20年前にスタートし、野菜飲料とサプリメントをメインに販売、売上の大半を野菜飲料が占めています。店頭で販売していない通販限定商品を扱っており、なかでも主力の「つぶより野菜」はスムージーのような食感が特長の人気商品です。
メインの顧客層は健康志向が強く、アクティブな50代〜70代のシニア層で、継続飲用のために「定期お届けコース」を利用する人が多いそうです。
「通販事業におけるECの存在感は高まっており、インターネットを通じた新規顧客の獲得は大きなテーマの一つです。これまでも主要メディアで運用型広告を実施してきた流れで、2018年3月にLINE広告による運用型広告の配信を開始しました。定期お届けコースへの加入につながる新規見込客獲得のためのメディアとして、多くのユーザーが存在するLINEを利用することは当然の選択だと考えています」(勝丸氏)
また、配信する広告の内容については、以下のように説明します。 「つぶより野菜の特長は6種類の国産野菜を350g分使用した野菜ジュースである点と、通販限定商品である点です。バナーのクリエイティブでは、商品に対するこだわりや、プレミアム感を訴求するようにしています。また、バナーからの遷移先の記事LPでは、健康や野菜ジュースについての興味を喚起するメッセージ発信を心がけています」(勝丸氏)
アルゴリズムにできるだけ寄り添うことで、データの学習を促進
カゴメが広告配信のKPIとして設定しているのは、定期CPO(定期顧客獲得単価)です。
「定例ミーティングを通じて、新規顧客獲得の引上率を含む定期CPOの数字を見ながら、どの媒体にどの程度広告予算を投下すべきかの全体方針を決め、実際の広告運用はデジタルガレージにお願いしています」(勝丸氏)
そして、LINE広告の運用については、類似配信機能を利用して広告配信効果を高めていると説明します。
「現在、リターゲティング広告はほとんど行わず、類似配信機能を活用してLINE広告経由でコンバージョンしたユーザーに類似したユーザーへの配信を主に行っています。特に、カゴメのコアターゲットである50代以上にセグメントを切った上で、過去に購入につながった人をデータソースにオーディエンス拡張を実施することが効果的だと感じています」(五井氏)
また、2018年8月に実施されたLINE広告のシステムの大幅刷新以降の広告運用について、五井氏は以下のように語ります。
「LINE広告のシステムの刷新以降は、広告配信における機械学習のアルゴリズムがより最適化、精緻化されたと感じています。運用面では、アルゴリズムにできるだけ寄り添うために、データの学習を促進することを意識しています。そのため、必要以上にセグメントを切らないこと、広告セット一つ一つに対して適正な予算を投下することを心がけています」(五井氏)
LINEの圧倒的なユーザーボリュームは新規顧客獲得に欠かせない
LINE広告における広告配信の効果について、五井氏は「プラットフォーム刷新後はCVRが高まり、機械学習による広告配信の最適化について効果を実感している」と説明します。
一方、LINE広告に限らずSNS広告で獲得したユーザーは、レコメンドウィジェット広告からの誘導に比べると、どうしても定期の引き上げ率が低い傾向にあるそうです。その理由について勝丸氏は「ユーザーがコンテンツに接する傾向としてSNSは直感的、衝動的な傾向があるのではないか」と分析した上で、LINE広告の価値について語ります。
「SNS広告は、1件あたりの新規獲得予算をより安く抑えることが求められてきます。その点、LINE広告は新規顧客の獲得コストが低くて獲得効率は高く、ほぼ全年代にリーチできる強みもあります。LINE広告の圧倒的なユーザーボリュームは、新規顧客の獲得のためのSNS広告として欠かせないものだと考えています」(勝丸氏)
LINE公式アカウントの活用も 今後のカゴメの LINE活用の展望とは
また、カゴメでは「健康直送便」のLINE公式アカウントの運用も開始しました。
「試験的に運用している状況ですが、メルマガを補完するツールとして期待しています。LINE公式アカウントの告知は主にメルマガ等の既存顧客との接点で行なっており、友だち追加してくださったお客様に対して、商品に関する情報などを定期的に送っています」(勝丸氏)
「健康直送便」のLINE公式アカウント
そして最後に、LINE広告を活用していく上で、今後のLINEに対する期待を語っていただきました。
「今後も獲得効率を維持していくために、LINE広告の各配信面がますます充実していくことを期待しています」(勝丸氏)
「LINE広告は圧倒的なユーザーボリュームと機械学習アルゴリズムを武器に、今後も積極的に活用したい媒体です。今後期待するのは、CRM領域のさらなるサービス強化です。特に新規顧客獲得から定期お届けコースへの引き上げにつながる機能拡張に期待したいです」(五井氏)
(公開:2019年4月/取材・文:安田博勇、写真:小川孝行)
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