LINE株式会社(以下、LINE)は2019年9月24日、『金融業界向け LINE活用セミナー』を開催しました。LINEの金融サービスである「LINE Pay」のマーケティング戦略のほか、実際にLINEを活用している金融企業の担当者が登壇し、「LINE公式アカウント」やLINEの運用型広告プラットフォーム「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」を活用したプロモーション事例を紹介しました。
セミナーに登壇したライフネット生命保険株式会社(以下、ライフネット生命)マーケティング部の奧康隆氏(以下、奥氏)と、同社で奥氏と共にLINE戦略を担う川端麻清氏(以下、川端氏)に、ブランド認知から契約獲得までフルファネルで行ったLINE活用法について話を伺いました。
- 自社サービスへの興味喚起や長期的な関係を構築してコミュニケーションを図りたい
- 認知から獲得まで一気通貫したマーケティングプロモーションを実現したい
- 2016年からLINE公式アカウントの運用を開始し、LINEのトーク機能を利用した『ほけん相談』や『お問い合わせ受け付け』の24時間サービスを提供
- マーケティングファネルごとの目的に合わせてLINE公式アカウントとLINE広告を活用
- LINEの中ですべてのコミュニケーションが完結するため、運用の手間が削減できた
- LINEを通じて24時間質問を受け付けることで、ユーザーの安心感や信頼感が得られ、かつ、オペレーターの業務が効率化できた
- テレビCMとLINEを併用して広告施策を行うことで、最も高い広告効果が得られることが判明した
マーケティングファネルの上流から下流まで一気通貫した施策を実施
ライフネット生命は2008年に開業したオンラインの生命保険会社で、「子育て世代の保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産んで育てられる世の中にしたい」という創業の思いを大切にしながら、20~40代をコアターゲットに保険を提供しています。
現在、国内に42社ある生命保険会社(2019年10月時点/金融庁Webサイトより)のうち、保険料の内訳を公表しているのはライフネット生命だけです(同社調べ)。商品の透明性に加え24時間365日、パソコンやスマホから手軽に契約申し込みができる利便性が好評で、2019年1月には保有契約件数が30万件を突破するなど、テレビCMを中心にプロモーションを展開して順調に契約件数を伸ばしています。
しかし、近年のテレビ離れによって若年層へのリーチに課題を感じ始め、その打開策のひとつとして2016年7月にLINE公式アカウントの運用を開始します。
ライフネット生命保険株式会社 営業本部 マーケティング部 マネージャー 川端 麻清氏
「LINEのほかにも、若年層のユーザーを多く抱えるSNSも運用していますが、LINEは日常生活に浸透して身近な存在となっているため、エンゲージメントの効果が他社SNSサービスよりも強いように感じます。さらに、LINEの大きな特徴は継続して長期的に関係を構築できる点です。LINE公式アカウントの友だちは、当社に興味を持ってくれている方と想定されるため、継続してコミュニケーションを行うことで、当社の生命保険にご契約いただける可能性も高まると考えています」(川端氏)
また、奥氏は「LINEは幅広い層にリーチできるうえに多彩なサービスを兼ね備えているため、認知から獲得まで一気通貫したプロモーション施策を行うことができる点で大きな魅力を感じた」と話します。中でもLINE広告を活用したプロモーションは、ユーザーの認知獲得から申し込みまでのコミュニケーションにおいて有効だったといいます。
ライフネット生命保険株式会社 営業本部 マーケティング部 マネージャー 奧 康隆氏
同社は、プロモーションスタンプやLINE広告の「友だち追加」を利用して友だちを増やしました。友だちになってくれたユーザーとOne to Oneコミュニケーションを行うことで、難しい印象を抱かれがちな生命保険のハードルを下げ、サービス理解を深めてもらうことを狙いとしたそうです。そうして関係を構築したユーザーへは同社のキャラクターを使った見積り促進バナーやブランディング訴求メッセージ等を配信し、刈り取りだけではない中期的な成果を目的としたコミュニケーションを設計しました。奥氏は「LINEという一つのツールの中で、ユーザーごとのファネルに合わせた施策が展開できるため、高い効果を維持しつつ運用の手間は最小限に抑えられています」と語ります。
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「24時間問い合わせサービス」はLINEのトーク機能を活用
LINE広告のほかにも、LINE公式アカウントを活用してLINE専用のFAQ botをつくり、2017年1月から一問一答形式のFAQ機能も導入しました。しかし、運用しているうちに想定外の事態に陥り2018年7月にサービスを停止しました。
「チューニングが思うように運用できておらず、お客さまの希望する回答とは関係のない返答をbotがしてしまうなど、ツールの想定を上回る多様な質問が寄せられたため適正な即時返答ができず、という状態が長らく放置されていました。この失敗を基に『なぜFAQ botが必要なのか』という根本に立ち返り、サービス設計全体を見直すことで、大幅なツールのリプレイスメントを実施しました。その結果、無理な運用は行わずに、2019年1月からシンプルにLINEのトーク機能を利用した『ほけん相談』にしぼった現在のスタイルに落ち着き、『お問い合わせ受け付け』の24時間サービスを2019年5月からスタートしました」(川端氏)
ユーザーから寄せられた質問へオペレーターが個別に対応する
ユーザーから寄せられた質問への回答はオペレーターが、平日の営業時間内に順次、個別に返答しています。営業時間外の問い合わせには、自動応答で質問を受け付けた旨を返信します。
「LINEですと、電話でいう折り返しコールのように、リアルタイムでなくともメッセージをあとで送ることができるので、こういった運用が可能です。質問に対して丁寧な回答が用意できるのでオペレーターさんの負荷もだいぶ下げることができました」(川端氏)
一見するとメールでも設計できそうなサービスですが、奥氏は「ユーザーの日常に入り込んだLINEというツールだからこそ、ユーザーも気軽に質問をすることができる」と話します。サービスや商品と無関係な質問は10%以下と少なく、ユーザーの窓口として機能しています。
データを活用し、よりOne to Oneマーケティングの実現へ
今後もLINEのフルファネル活用を見込んでいる同社は、より効率的な運用方法を探るために、テレビCMとLINEの接触率における効果を測定しました。
「テレビCMとLINEの接触率によると、テレビCMとLINEの両方に接触したユーザーがもっともCV率が高いという結果になり、テレビCMとLINEを連動させた施策を行うことで、さらに広告効果を高められるのではないかという見通しが立ちました」(奧氏)
また、同社はLINE自体の価値を可視化するために、「他媒体とのブランドリフト効果の比較」や「LINE接触による獲得への影響」なども調査しているといいます。
「特に後者は他媒体と連動して施策を実施するためにも重要な調査で、ユーザーが当社ブランドを認知してから申し込みに至るまで、どの段階でLINEに接触すれば最も効果が高まるのか、間接効果も測定しています。LINEの運用効果が高いことを客観的な数値で証明できれば、社内承認を得て予算を獲得しやすくなり、さまざまな施策を打ち出せるようになります」(奧氏)
さらに、契約獲得からすでに契約者となっている顧客のサポートまで、より一人ひとりのユーザーに寄り添ったコミュニケーションを促進するためにLINEを活用したいと奥氏は展望を語ります。
「そのためには、当社のシステムで持つ顧客情報とLINEアカウントを紐づけるなどして、友だちが保険契約者なのか、非契約者なのかを判別できるようにする必要があります。また、友だちになったタイミングや経路の分析ができるようになれば、友だち獲得のための効果的な施策を実施しやすくなります。いずれにしてもテレビのようなマスメディアやSNSなどを利用して、『不特定多数に向けて一斉に広告配信をして終わり』という手法だけでは、マーケティング活動が十分とは言えなくなってくるため、個人情報の取り扱いの制限がとくに厳しい金融業界でも、LINEを活用したマーケティングは、必須のものになっていくのではないでしょうか」(奧氏)
(公開:2019年12月/取材・文:相澤良晃、写真:中村宗徳)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
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