宮崎県都城市は、ふるさと納税の寄付額において日本一に4度輝くなど(2023年時点)、取り組みが全国的に注目される自治体です。2014年にふるさと納税を「対外的PRのツール」と位置付けてブランディング戦略を大幅刷新し、それ以降に寄附額が急増しました。さまざまなプロモーションを展開する中、LINE広告の活用を始めた理由について、都城市ふるさと産業推進局・野見山修一副課長(以下、野見山氏)と、都城市ふるさと納税振興協議会・石川洋美事務局次長(以下、石川氏)に話を聞きました。
- ふるさと納税に興味があるユーザーに広くリーチしたい
- 「肉と焼酎のふるさと都城」をブランディングするためのクリエイティブを制作
- 趣味・関心セグメントでふるさと納税ターゲティングを活用
- ふるさと納税ターゲティングにより、クリック率は2.3倍に増加
- ほかの広告媒体と比較しても優れたクリック率と新規率を記録
ふるさと納税の寄付額で4度の日本一
宮崎県の南西端に位置する都城市は、豊かな水資源を有することから農業が盛んで、2021年の市町村別農業産出額(推計)は、901億円で全国1位(3年連続)です。とくに畜産部門の産出額は764億円で、品目別でも豚が281億円、肉用牛が215億円といずれも全国1位となっています。また、市内には「焼酎メーカー売上高ランキング」(帝国データバンク調べ)において11年連続で日本一を獲得している霧島酒造株式会社があることから、全国有数の焼酎の産地としても知られています。
さまざまな特産品を有する同市は、ふるさと納税でプロモーションに成功した自治体としても有名です。2014年以降、9年連続で寄付額の全国トップ10入りを果たし、全国最多となる4度の日本一を達成。2022年度の納税受入額は、約196億円に上ります。
躍進のきっかけはブランディング戦略と官民一体の体制
都城市のふるさと納税に関する業務を担当するのが、都城市ふるさと産業推進局です。同局で副課長を務める野見山氏は、2014年に「ふるさと納税は納税受入額を集めるためでなく、市のプロモーションとして活用する」という戦略に転換したことが、現在の躍進につながったと話します。
「当時、都城市の知名度は全国的に低く、焼酎の『黒霧島』は知っているものの、酒造がある都城市はあまり知られていませんでした。市の知名度がなければ、観光客の誘致も難しく、特産品も買ってもらえない。そこで、ふるさと納税をPRツールとして活用し、都城市を知ってもらおうという戦略を立てました。
その戦略に基づき、ふるさと納税制度を導入している1,700以上の自治体の中で差別化を図るため、“肉と焼酎のふるさと・都城”というキャッチフレーズでブランディングし、返礼品を『肉と焼酎』に特化しました」(野見山氏)
都城市のふるさと納税躍進を支えるもう一つの要素が、官民一体の強固な連携体制です。
返礼品を「肉と焼酎」に特化したことで、それ以外の特産品を扱う地元事業者の反発を招く可能性があり、市と民間事業者の理解と協力が不可欠となっていました。そこで重要になってくるのが、市と足並みを揃え、民間からふるさと納税のプロモーションを行っている「都城市ふるさと納税振興協議会」(以降、振興協議会)です。
同協議会は、都城市のふるさと納税の返礼品を出品する民間事業者が加盟している任意団体です。事務局次長を務める石川氏は、「自治体だけではできないPRがある」と語ります。
「協議会では、市のプロモーションの方向性に合わせて民間の事業者が同じ方向を見るよう調整し、ふるさと納税の対外的なPRを行っています。規約上、市では実施できないふるさと納税関連の広告宣伝も、民間の任意団体である振興協議会であれば出稿することができます。それ以外にも、招待制のイベントを開催したり、ふるさと納税川柳コンテストを運営するなど、都城市に寄付いただいた方を“ファン化”するための取り組みを推進しています」(石川氏)
LINE広告活用の決め手は“経済圏”の垣根を越えるリーチ力
都城市では、ふるさと納税のポータルサイト、市が運営する特設サイトにユーザーを集客するため、さまざまなWeb広告や紙面広告を展開しています。そんな中、LINEのユーザー属性に着目し、LINE広告を本格的に活用し始めたのが2022年からです。
「実は2017年にもLINE広告に出稿したのですが、当時のLINEは若年層のユーザーの割合が多く、ふるさと納税の中心世代である30代~50代のユーザーをうまく誘引できませんでした。しかし、現在は幅広い世代のユーザーがLINEを利用しています。加えて、LINEユーザーは特定のポータルサイトに依存せず、あらゆる “経済圏”につながっていることに気づきました。ふるさと納税に興味がある人に広くリーチできると考え、2022年から本格的に活用を再開しました」(野見山氏)
LINE広告でも「肉と焼酎のふるさと都城」をブランディングするため、クリエイティブには市のPRロゴを使用し、返礼品をシンプルに訴求する表現を徹底しました。
ターゲティングでは、ふるさと納税に興味があるユーザーに効率よくアプローチするため、オーディエンスセグメント配信(※1)の趣味・関心セグメントで「ふるさと納税」項目を活用しました。(※2)
1.オーディエンスセグメント配信=年齢・性別、地域、趣味・関心などでターゲティングし、条件に合致したユーザーに広告を配信する機能
2.これらのオーディエンスデータはLINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類した「みなし属性」および、実購買の発生した購買場所を「購買経験」として個人を特定しない形で参考としているものです(「みなし属性」には携帯キャリア・OSは含まない)。
「みなし属性」とは、LINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類したものです。(分類の元となる情報に電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含まれません)なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主等)の提供は実施しておりません
配信効果を高めるための検証も繰り返し行っており、ターゲティングの項目にふるさと納税を追加したセグメントでは、追加していないセグメントよりクリック率が約2.3倍高かったといいます。
「自治体あるあるかもしれないですが、施策を実行しても、効果検証をしないケースが散見されます。例えば、PRのためのパンフレットでも、1種類だけ作成するのではなく、2種類作って評判が良い方を残していくことを繰り返せば、より効果的なものを作ることができます。LINE広告で検証を繰り返し行うのも、こうした狙いがあるためです」(野見山氏)
LINE広告は他媒体より「クリック率が高く新規率が高い」
都城市は、デジタル広告の出稿に際してクリック率をKPIに設定しており、LINE広告を継続して活用する理由も「クリック率の高さ」にあるといいます。
「LINE広告はほかの広告媒体と比べてクリック率がとても高いです。LINE広告は広告審査をクリアするための水準が高く、“クリーンな広告”が表示されるので、ユーザーも信頼してクリックしてくれるからではないでしょうか。また、ユーザー層が幅広いからか、他媒体では獲得できていなかった新規層を獲得できているという感覚があります」(野見山氏)
今後もLINE広告を活用すると同時に、 “都城市のファン”を増やすためにLINE公式アカウントを活用したコミュニケーションにも取り組んでいきたいと話します。
「いまのLINE広告は、ふるさと納税の寄附につながる導線が整っているので、とても頼もしい存在です。今後は、LINE公式アカウントをより有効活用して、寄付をしてくれたユーザーとの関係をさらに深めていきたいです。独自アプリを検討している自治体も少なくないようですが、すでに多くのユーザーが利用しているLINEを活用すれば、よりスムーズに情報を届けられると思います」(野見山氏)
石川氏も「LINE公式アカウントのさらなる活用を考えていきたい」と意気込みます。
「ファンの形成は指標や数字になって表れにくいため、自治体の予算として確保しづらいのが実情です。そこで、私たちのような民間団体が、ふるさと納税の寄附者と交流イベントを開催したり、返礼品を使ったレシピを紹介したり、ファンとの交流を図っています。今後、地域や時間に捉われないオンラインのコミュニケーションツールとして、LINE公式アカウントをもっと活用していきたいと思います。都城を身近に感じてもらえるよう、これからも積極的なPR活動と情報発信を行っていきます」(石川氏)
(公開:2024年2月、文/相澤良晃)
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