オープンハウスグループは、戸建事業・マンション事業・収益不動産事業・米国不動産事業を展開する総合不動産会社です。同社は2018年よりLINE広告に出稿していますが、2021年10月に広告運用をインハウス化するにあたってクリエイティブ改善に踏みきり、大幅なCVR(コンバージョン率)、CPA(コンバージョン単価)改善を達成しました。株式会社オープンハウスグループ(以下、オープンハウスグループ)の多田翔氏(以下、多田氏)、同グループのデザインエージェンシーである株式会社プラスディー(以下、プラスディー)の福島征央氏(以下、福島氏)、クリエイティブ改善でサポートを行なったLINE株式会社(以下、LINE)の相樂長宏(以下、相樂)に、取り組みの内容や得られた成果について話を聞きました。
- 潜在層獲得が見込める新規媒体に広告を出稿し、戸建事業のWeb会員登録者数をアップさせたい
- 2018年3月にLINE公式アカウントを開設し、8月からLINE広告の運用を開始した
- 2021年10月からLINE広告の運用をインハウス化するにあたってクリエイティブ改善に着手した
- 各エリアの顧客データ分析と、エリアごとの営業担当にヒアリングを実施し、得られたデータと“現場の声”をデジタル施策に反映した
- 運用のなかでクリエイティブの摩耗(配信効果が薄れること)が起こりにくくなり、CVRは前年比158%改善、CPAは前年比68%抑制した
- 資料請求数は通常時と比較し142%増加、CPAは82%抑制した
戸建物件購入の潜在層にリーチし、新規会員の登録促進を目指す
『好立地、ぞくぞく。』のタグラインで知られるテレビCMでお馴染みのオープンハウスグループ。同社で、主に20〜40代のファミリー層をターゲットとした戸建事業を担当する多田氏は「お客さまにとって好立地な物件を、手の届く値段で提供することをコンセプトに事業展開している」と話します。
「認知・集客はまちなかでのお声がけに始まり、仕入れ物件の情報収集も“待ち”ではなく“取りに行く”姿勢の営業を徹底しています。
また、独自の営業スタイルに加えて、SFA(顧客支援システム)をはじめとしたITシステムの自社開発にも長らく取り組んできましたし、お客さまに最適なコミュニケーションを展開するために、広告・SNS運用をはじめとしたデジタルマーケティングの社内運用にも力を入れています。
そうした足で稼ぐ営業スタイルと積極的なデジタル戦略が、私どもオープンハウスグループの強みだと考えています」(多田氏)
マーケティング本部 マーケティング部 広告戦略G 多田翔氏
2018年3月には、「CRM戦略を見据えたお客さまとのコミュニケーションツール」としてLINE公式アカウントを開設。さらに、同年8月には潜在層のWeb会員登録の促進を目指してLINE広告の運用も開始しました。
戸建事業のWeb会員とは登録無料のサービスで、会員には居住するエリアや個々のニーズに合わせて、日々さまざまコンテンツ情報を届けるとともに、新築一戸建・中古一戸建・土地などの問い合わせ対応、エリア各店への来店誘導などが行われています。
「今から4年ほど前、LINE広告よりも先に出稿していた広告媒体だけでは費用対効果が悪化するようになり、潜在層の獲得を目指して新規媒体への出稿を検討し始めました。特に重視したのは、リーチできる規模と広告媒体が持つ機械学習の精度の2つ。情報収集を進めるなかで、チーム内で『LINE広告がうってつけ』という結論に至りました」(多田氏)
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LINE広告の運用をインハウス化するとともに、“現場の声”をクリエイティブ制作に反映
オープンハウスグループの戸建事業では、LINE広告のKPI(重要業績評価指標)をWeb会員登録のCPAに設定しています。「Web会員さまの登録促進は、その先にある『ご契約』という真のゴール達成に欠かせないものなので、エリアごとにKPI進捗を確認しながら日々運用している」と多田氏は語ります。
ターゲティングは、主に不動産購入に前向きそうな興味・関心セグメントを設定する(※1)ほか、類似配信も実施しています。
「最近では、ターゲティングの詳細設定に加わった『住宅展示場を訪れた可能性が高い』という新たな行動セグメント(※2)にも、大いに期待しています。LINE広告は機械学習による自動最適化も優秀なので、通常のブロード配信だけでも目標とするCPAを達成、維持できて助かっています」(多田氏)
- 1,2 LINE広告のターゲティングで利用する
オーディエンスデータについて、詳しくは記事末を参照ください。
また、多田氏とともにLINE広告の運用を担当するプラスディーの福島氏は、LINE広告の運用における“気づき”について、次のように語ります。
「LINE広告は爆発的なリーチ力が魅力の半面、クリエイティブの摩耗が早いように感じました。配信効果を高く保ち続けるためには、やはり効果的なクリエイティブを多く用意することが必要だと考えています」(福島氏)
デザインエージェンシー事業本部 アカウントリレーション局 福島征央氏
2021年10月にLINE広告の運用をインハウス化する際、各エリアの営業担当にクリエイティブの改善に向けたヒアリングを行いました。
「例えば、あるエリアが『高級感』を重視する土地柄だと分かれば、同エリア内で使用する広告のクリエイティブも高級路線に寄せなければ、配信効果は見込めません。
とはいえ、高級感というワードはあくまで入り口に過ぎず、『バナー内に駐車場が写っていないと興味を持たれない』『3階建より2階建のほうが営業をかけやすい』『この地域では特定の配色をしたバナーデザインが好まれ、住宅にもこだわるお客さまが多い』などの意見を営業担当から吸い上げ、クリエイティブ制作に生かしました。
お客さまを最もよく知る“現場の声”をデジタル施策に盛り込んでいる点は、クリエイティブ改善がうまくいった要因の1つと言えるかもしれません」(福島氏)
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一方、同社のLINE公式アカウントは友だち数が約38万人に達しています(2022年9月時点)。
「友だち追加後は、あらかじめ用意した内容・タイミング・期間でメッセージを自動配信する“ステップ配信”を活用し、週1〜2回、住宅に興味を持っていただけるようなコンテンツを提供しています。
それとは別に、当社のWeb会員登録から○ヵ月以内のお客さま、直近でサイト訪問した顧客や物件情報を閲覧したお客さまなどでセグメントを作成し、それぞれに適したメッセージを配信しています」(多田氏)
「トレンド」と「顧客理解」の掛け合わせで、広告の訴求軸をぶらさない
先述した“現場の声”を反映しながら、1つのキャンペーンあたり常時50〜80パターンのクリエイティブ入稿を行なっています。クリエイティブは、カラーバリエーションの変更、成果の良かったバナー同士の掛け合わせ、競合他社のクリエイティブ分析をもとに作成することで、多いときは月あたり700点近くを制作することもあるそうです。
「クリエイティブ改善の前後で、コンバージョン数が前年比で158%伸長、CPAも同じく前年比で68%抑制できました。また、私どもが注視する指標の1つに『資料請求数』がありますが、これも142%伸長、CPAは82%抑制することができました。
改善後はいずれのクリエイティブも摩耗しにくくなり、お客さまに指を止めていただける期間が長くなりました。特に“新聞記事風”にデザインしたクリエイティブは最初の出稿から約3ヵ月間、高い配信効果を記録しました」(多田氏)
訴求したいテキストを大きく目立たせることで、スマホ環境における視認性を高めている
大きな成果を上げたオープンハウスグループのクリエイティブ改善について、同社の取り組みを支援したLINEの相樂は次のように語ります。
「クリエイティブ改善を成功させるには、まずはLINE広告における傾向を掴んでいただくことが大切です。そのためLINE社からは配信効果の高いクリエイティブなどについて知見をまとめ、『トレンド』などの形でお客さま企業に提供・共有させていただいております。
さらに、私どもがお伝えするトレンドに関する情報だけではなく、企業様における『顧客理解』が何よりも重要だと考えています。オープンハウスグループ様は各エリアの担当営業の皆さんとの意見を交わしながら、お客さまのニーズ理解を深めてこられました。
このように、『トレンド』と『顧客理解』を掛け合わせたからこそ広告の訴求軸がぶれず、かつ実際の配信効果を踏まえてアクションを繰り返したことで、クリエイティブ改善が成功したのだと思います」(相樂)
最後に多田氏は、今後のLINEの法人向けサービス活用について次のように総括します。
「クリエイティブをはじめとした運用改善をさらに進めて、より多くのお客さまに弊社のサービスをご利用いただきたいと考えています。今後はLINE公式アカウントの活用度をさらに深めて、例えばエリア店の近くを訪れた際、戸建購入の興味・関心を喚起するようなメッセージを配信して来店を促すような、オフラインとオンラインをマージした広告施策も検討していきたいと思います」(多田氏)
(公開:2022年11月、取材・文/安田博勇、写真/小川孝行)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です
LINE広告のターゲティングで利用するオーディエンスデータについて、LINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに 分類した「みなし属性」および、実購買の発生した購買場所を「購買経験」として個人を特定しない形で参考としているものです(「みなし属性」には携帯キャリア・OSは含まない)。「みなし属性」とは、LINEファミ リーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類したものです。(分類の元となる情報に電話 番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含まれません)なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主 等)の提供は実施しておりません。