名古屋市に本社を置く株式会社エイチームウェルネス(以下、エイチームウェルネス)は、自社で企画・販売を手掛ける化粧品・エイジングケアブランド「lujo」(ルジョー)の販促において LINE広告を活用。3カ月でコンバージョン数が約10倍になるなど、高い成果を上げた運用テクニックについて、同社の河野光志氏(以下、河野氏)と植木園竜矢氏(以下、植木園氏)に話を聞きました。
・エイジングケアブランドの新規顧客を獲得したい
・LINE広告の効果を高めるために、さまざまな角度から検証と改善を実施
・3カ月でコンバージョン数が約10倍
・他媒体ではリーチできない層を獲得し、他媒体比で約15%高い顧客単価
前日の売り上げ20倍も。爆発的なリーチ力がLINE広告の魅力
エイチームウェルネスは、「IT総合商社」を標榜する株式会社エイチームのグループ企業で、スキンケアブランドやペットフードブランドを展開しています。
中でも、2020年5月からLINE広告の運用を開始し、着実に売り上げを伸ばしているのがエイジングケアブランドの「lujo」です。
「lujoは、“最新テクノロジーによる高実感のエイジングケア”をコンセプトに掲げ、ファンデーションや化粧水、オイル美容液などを展開しています。看板商品の『ニードルセラム』は、微細な“針”が肌の深部まで美容成分を送り届けるという画期的な美容クリームで、40代以上の女性を中心に好評をいただています」(河野氏)
これまで同社は、主に運用型広告で新規顧客を獲得し、商品発送時の同梱物で他商品の追加購入やリピート購入を促すという手法で、LTVの最大化を目指してきました。
「ニードルセラムは、目新しさから購入いただくお客さまが多いので、使用後の感動が残っているうちに、lujoブランドの他商品も試してもらうことを意識しています。そのためのツールとして、メールやLINE公式アカウントを活用してきました」(河野氏)
LINE広告の運用も新規顧客の獲得が主な狙いで、「売り上げを伸ばすために運用を開始した」と植木園氏は明かします。
「LINE広告は、月間9,500万人(2023年6月時点)という圧倒的なユーザーにリーチできるのが最大の魅力です。広告がヒットすれば、一気に前日の10倍、20倍という売り上げを叩き出せる。ほかの広告媒体ではまず不可能な数字です。また、LINE広告経由の購入者は多媒体よりも“平均年齢が5歳ほど高い”という結果が出ており、他媒体では獲れていない層にリーチできていると感じています。年齢が高いほど購入単価が高い傾向があるので、LTVの底上げにつながっていると思います」(植木園氏)
失敗しないLINE広告の4つの改善テクニック
エイチームウェルネスのLINE広告運用の特徴は、さまざまな角度から検証と改善を行い、高い成果を実現したことです。
改善テクニックその1:キャンペーンは「複数作成するべき」
1つ目は、「キャンペーンの複数作成」です。LINE広告のアカウント構造は、4つの要素から構成されています。キャンペーンは目的、広告の予算、期間を設定する要素です。
キャンペーンの数は多くなるほど運用が複雑になってしまうというデメリットがあります。しかし、同社では「ウェブサイトコンバージョン」という同じ目的で10個前後のキャンペーンを作成しているといいます。その理由について植木園氏は「個々のキャンペーンの成果は日によって大きく変動するため、キャンペーンを複数つくることで、パフォーマンスを安定させている」と説明します。
「実際、キャンペーンが2個のアカウントと、10個のアカウントを比較すると、前者は一度、CV(コンバージョン)数が低下してCPO(顧客獲得単価)が高騰してしまうと、なかなか元に戻りません。しかし、後者は数日で以前の高い水準までパフォーマンスが回復しました」(植木園氏)
キャンペーンの数が多ければ多いほど安定性が増すため、一時は100個ほどのキャンペーンを作成してみたそうですが、検証の結果「運用の手間と安定性のバランスを考えると10前後がベターだった」と最適解を導き出しました。
また、パフォーマンスが悪化したキャンペーンの改善施策として「キャンペーンの一時停止と復活」が効果的といいます。植木園氏は「CV数が減少した際に、キャンペーンを1週間ほど停止してから再開すると復活することが多い」と話し、実際にCV数が2.5倍に回復したといいます。
- キャンペーンは複数作成でパフォーマンスが安定
- キャンペーンの改善は「一時停止&復活」
改善テクニックその2:広告グループは「複製」で改善の可能性
2つ目の改善テクニックは「広告グループの複製」です。広告グループは、ターゲティング、入札などを設定する、キャンペーンの下の階層に位置する要素です。
LINE 広告では、広告グループ単位で機械学習が働き、自動入札の精度が向上します。機械学習が働くには1カ月で約40イベント(CVなど)のデータ蓄積が必要なため、広告グループを細かく分けすぎるとパフォーマンスが悪化することがあります。
エイチームウェルネスでは、広告グループの実績が悪化した場合、「広告グループを複製して同じ設定で作り直すことによって効果が戻ることがある」といいます。
同社の検証によると、広告グループを作り直した結果、CV数が約8倍に伸長し、CPOは75%抑制しました。
- 広告グループは「複製」で改善の可能性あり
改善テクニックその3:3段階のターゲティング戦略
3つ目の改善テクニックは「3段階に分けたターゲティング戦略」です。
エイチームウェルネスは、配信を3つのフェーズに分けて、それぞれのフェーズでターゲティング戦略を変えているといいます。
最初のフェーズで活用するのは、類似配信による「電話番号類似」ターゲティングです。自社サイトで保持している、lujoを購入したことがある会員データの電話番号を使用してオーディエンスを作成し、CVの確度が高い「lujoの既存購入者に似ているユーザー」に配信します。
※類似オーディエンスには、ソースオーディエンスに含まれるユーザーは除外されています
「すでに会員となっているオーディエンスの電話番号が基になるので、すぐに成果につながりやすく、早期に広告ランク(※)を上げられるというメリットがあります。しかし、基となるオーディエンスデータがずっと変わらないので、同じユーザーに広告が当たり続ける恐れもあり、運用していると徐々に効果は低下します」(植木園氏)
ランクは入札額とクリック率やコンバージョン率などの広告の予測値から構成される
パフォーマンスの低下を避けるために次のフェーズで活用するのは、同じく類似配信による「コンバージョン類似」ターゲティングです。
コンバージョン類似は、広告によってCVしたユーザーを基にオーディエンスを作成し、「広告からlujoを購入した人に似ているユーザー」に配信します。
最初の電話番号類似ターゲティングで安定したCVが獲得でき、データが蓄積されたことで活用できるターゲティングです。電話番号類似ターゲティングと同じく、CVの確度が高いユーザーに効率よく配信できます。
「配信初期はCVデータが蓄積されていないため、ターゲティングの精度は高くありませんが、CV件数が増えていくと精度が上がり、パフォーマンスが高まっていきます」(植木園氏)
類似配信でCV件数が安定してきた段階で、さらに幅広く新規顧客を獲得するために活用するのがオーディエンスセグメント配信です。
オーディエンスセグメント配信は、性別・年齢、趣味・関心、購買意向などからターゲティングし、条件に合致したユーザーに配信します。オーディエンスデータを基にする類似配信と違い、配信対象の母数が大きいため、広く配信できるのが特徴です。同社では、lujoのターゲットとなる性別・年齢でターゲティングしています。
※これらのオーディエンスデータはLINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類した「みなし属性」および、実購買の発生した購買場所を「購買経験」として個人を特定しない形で参考としているものです(「みなし属性」にはOSは含まない)。「みなし属性」とは、LINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類したものです。(分類の元となる情報に電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含まれません)なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主等)の提供は実施しておりません。
「CVが進むにつれて広告ランクが安定してさらに配信の精度が上がるため、CPOを低く抑えたまま配信できます。この3つのターゲティングを配信期間の序盤、中盤、後半と段階的に使うことでCV数の最大化を実現しています」(植木園氏)
- ターゲティングはフェーズに応じて使い分ける
改善テクニックその4:客観的な指標で “勝ちクリエイティブ”を判断
4つ目の改善テクニックは「客観的な指標で“勝ちクリエイティブ”を判断する」こと。LINE広告で成果を上げるためには、検証を繰り返して“勝ちクリエイティブ”を見つけることが重要なポイントです。
同社では、下記のレギュレーションに従って、個々のクリエイティブの配信を継続する/継続しないを決めています。
まず、3日間配信して40クリックに到達しないクリエイティブは配信を停止します。40クリックを超えたクリエイティブは配信を継続し、CTR、CPOの目標値(広告主で設定)をクリアできるか否かを見極めます。いずれの目標もクリアしたクリエイティブを“勝ちクリエイティブ”と判定します。
「もし、〈CTRが目標以下でもCVがついている〉〈CPOが目標の1.5倍に収まっている〉という“勝ちクリエイティブの一歩手前”の状態であれば、継続配信して最適化させていきます。反対に、これら条件に当てはまっていないクリエイティブは、どんどん変更します」(植木園氏)
同社では明確な指標を判断軸にすることで、担当者の“思い入れ”や“期待”といった感情に左右されず、良質なクリエイティブを見極めることに成功しています。
オンラインセミナーでは、同社が実践するクリエイティブの改善方法についても紹介します。
3カ月でCV数10倍を達成
数々の検証を重ねた結果、同社は3カ月(2022年4月~7月)でCV数10倍、CPO40%抑制という成果を上げました。また、以前はLINE広告経由の売り上げは、デジタル広告全体の売り上げの2~3割ほどでしたが、現在は5割ほどにまで増加。しかも「他媒体と比べて、LINE広告経由の顧客単価は15%ほど高い」という成果も出ているとのことです。
「LINE広告の運用のポイントは、いかに機械学習にいいデータを与えられるかどうかだと思います。最初に質の高いユーザーデータを与えれば、その後の最適化もスムーズにいきます。今回、さまざまな検証を行って再現性のある効果的な運用方法を発見することができたので、ほかの事業部やパートナー企業さんにも活用してもらいたいですね」(植木園氏)
今後について河野氏は、広告運用だけでなく商品開発にもLINEを活用していきたいと語ります。
「LINEの一番の強みは、双方向のコミュニケーションツールであることだと思います。LINEでユーザーの声を聞いて、それを商品開発に生かすという取り組みもしていきたい。また、LINEはひとつのアプリケーションでありながら、LINE NEWS、LINE VOOMなど多彩な配信面を持っているのが特徴だと思うので、配信面の特性を意識したクリエイティブ制作を継続して、さらにLINE広告の運用成果を高めていきたいと思います」
(公開:2023年10月、取材・文/相澤良晃、写真/小川孝行)
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