ウエルシア薬局株式会社(以下、ウエルシア薬局)は、調剤併設型のドラッグストアを全国に約1,800店舗展開する国内有数のチェーンドラッグストアです。同社では2018年11月からLINE公式アカウントを、2019年11月からLINEチラシを導入し、One to Oneコミュニケーションを基にした販促活動を目指しています。ウエルシア薬局の商品本部 販促企画部長・清田明信氏に、同社がLINEのサービスを導入した経緯や取り組み内容、今後の展望などについて話を聞きました。
- 従来のマスからOne to Oneへとコミュニケーションをシフトし、効率的な販促活動を展開したい
- One to Oneマーケティングの実現にあたり、お客さまと「友だち」としてつながることができる「LINE公式アカウント」を導入。友だち獲得の起爆剤として、数回にわたってLINEプロモーションスタンプを実施
- 友だちになったユーザーにお得な情報を届けるためのリッチメニューの改良や、1商品10%引きのクーポンなどを配信
- 実施にかかるスピード感があり、新聞の折込チラシでは接触できなかった層へリーチできる「LINEチラシ」を導入
- 紙のチラシがない週には、掲載商品を絞ったミニチラシ的な扱いでLINEチラシを活用
- 2020年3月末時点で、LINE公式アカウントは約680万人の友だちを獲得
- クーポンの配信翌日に、平時と比べて確実な売上増が見込められた
- 導入から約半年が経過したLINEチラシについては、その効果を分析中。今後、1人ひとりに合ったお得な情報を届けられないか検討中
One to Oneコミュニケーションを基にした、効率的な販促活動を目指す
ウエルシア薬局は、地域密着型のドラッグストアとして調剤薬局の併設や夜間営業の実施、薬剤師や登録販売士、ビューティーアドバイザーによるカウンセリングを店内で受けられるなど、特色のあるサービスを展開しています。
これまで、販促活動についてはテレビCMや新聞の折込チラシといったマス広告を主体に、自社アプリやTカードを活用した施策を実施してきました。
「マスの広告に力を入れてきましたが、いくつかの課題がありました。テレビCMや折込チラシなどは膨大な経費がかかる上、人口減少や競合の増加を考えると、今まで以上の効果が見込めません。より効率的に販促活動を行うためには、お客さま1人ひとりに合った情報を届け、不要な情報は徹底的に省くOne to Oneマーケティングに力を入れるべきではないかと考えました。そこで注目したのがLINEです」
商品本部 販促企画部長 清田明信氏
LINEは8,400万人(2020年3月末時点)という月間利用者数や高いアクティブ率、届いたメッセージをすぐに開封してもらえる即時性が特長です。また、企業・店舗が保有する顧客IDとユーザーのLINEアカウントを連携すれば、LINE公式アカウントから個々のユーザーに合ったメッセージを配信することも可能です。つまり、LINEのサービスはコミュニケーションにおいて「マス」と「One to One」の両方の側面を持ち合わせています。
「One to Oneマーケティングを実現するには、継続的なコミュニケーションが前提となります。そのため、LINEユーザーと『友だち』としてつながることができるのは大きなメリットになると考え、2018年11月にLINE公式アカウントを導入しました」
LINE公式アカウントのクーポンで確実な売上増を見込む
LINE公式アカウントの開設にあたって、ウエルシア薬局はそのKPIを「友だち数1,000万人」に設定しました。友だち獲得施策の1つとして、同社の人気キャラクターである「うえたん」を起用したLINEプロモーションスタンプを、アカウント開設以来、数回にわたって出稿。ユーザーがスタンプをダウンロードする際の友だち追加効果もあり、約680万人の友だちを獲得しています(2020年3月末時点)。
(ダウンロード期間はすでに終了しています)
また、LINE上で行う施策については、月1回の定例会で実施の検討から振り返りまで行っています。その中で、ユーザーのニーズに応えるべく改良を続けているのが、トーク画面下部分に表示される「リッチメニュー」です。
リッチメニューには、お気に入り店舗の登録、店舗ごとのチラシ検索、クーポンサイトへのリンクなど、ユーザーにとってお得感のある情報を中心にコンテンツをまとめています。
「その他、LINE公式アカウントで評判が良いのは『クーポン』の配信です。毎月末、金土日の『お得デー』や売り上げの山場をつくりたいときなどに、LINEの友だちと自社アプリの登録者に限定して1商品10%引きのクーポンなどを配信しています。こうした機能を使うことで確実な売上増が見込める点を評価しています」
LINEチラシの魅力は、実施までのスピード感
ウエルシア薬局では2019年11月にLINEチラシを導入し、LINE公式アカウントと合わせて販促ツールとして恒常的に活用しています。
「LINEチラシの魅力は、何といっても実施におけるスピード感です。紙のチラシは制作から配布までに数週間かかりますが、LINEチラシは準備次第では翌日に広告を配信することができます。また、新聞購読をされていないお客さまや折込チラシに興味が無かった若年層のお客さまなど、これまで紙のチラシを届けられなかった層にリーチできる点や、デジタルならではの高い費用対効果にも期待しています」
現在、紙のチラシを配布しない週に、掲載商品を6~10品に絞ったミニチラシ的な位置付けでLINEチラシを活用。その内容を訴求するため、店頭でもPOPやポスターを設置してユーザーにLINEチラシの利用を促すなどの工夫をしています。
LINEチラシの導入から約半年が経った現在、「さらなる活用を目指した試行錯誤を重ね、結果を分析している段階にある」と清田氏は語ります。
「LINEのウォレットタブ内に出ているLINEチラシが、アクティブ率の高いその他の面にも表示されれば、ユーザーの認知もさらに高まるのではないでしょうか。将来的に紙のチラシを削減した分、SNSやデジタル販促へのリプレイスを狙っています。そのためスピード感以外の面でも、ユーザー1人ひとりに合った配信など、紙のチラシにはない可能性を模索している最中です」
ID連携でOne to Oneマーケティングの推進を目指す
LINE公式アカウントの「友だち数」という、今後の販促につながる地盤を得たウエルシア薬局は、One to Oneマーケティングを強化していく方針です。
「具体的には、自社アプリやポイントカードなどで取得するウエルシアIDと友だちになってくれたユーザーのLINEアカウントの連携を促進し、セグメント配信に力を入れたい。先述したように、LINEチラシについても、たとえば若い女性であれば好みに合った化粧品など、個々に最適化したお得な情報を届けていきたいと考えています」
本格的にLINEのサービスを活用した販促活動をスタートして1年半、清田氏はLINE公式アカウントとLINEチラシの活用には、「まだまだ伸び代がある」と感じています。
「LINE公式アカウント経由で、自社アプリをご利用いただくようになったお客さまも一定数います。そこからID連携を進め、セグメントされたメッセージの配信や、よりパーソナライズされたチラシ情報を届けていきたい。調剤薬局を併設し、店舗によっては夜間営業を行うなど、『困ったときこそお客さまのそばにある』という弊社のポリシーを、One to Oneマーケティングにおいても反映し、実践したいと思います」
(公開:2020年5月/取材・文:中野渡淳一、写真:中村宗徳)
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