奈良県内に美容サロン16店舗を展開する株式会社ジャパンプロデュース。創業から40年ちかくにわたり、地域密着型サロンとして信頼を積み上げてきました。
その同社がお客さまとの関係を一層深めるために導入したのが、株式会社ハイパーソフトが提供する予約機能や会員証機能を備える「LINEミニアプリ」。POSシステムや自社のLINE公式アカウントと連携して顧客にアプローチすることで、次回予約客数、リピート率、紹介客数の増加という結果につなげています。
「LINE公式アカウントの友だちが1万2000人を超え、その90%以上がLINEミニアプリを利用している」というジャパンプロデュースの黒木裕勝社長に、友だちの増やし方やLINEミニアプリの活用法を聞きました。
目次
①3世代が通う老舗サロン、年齢問わずLINEの友だちに
SNSやITに強いサロンというと、客層の若い業務委託美容室やシェアサロン、情報発信力の高いスタイリストをそろえるブランドサロンなどを思い浮かべがちだが、ジャパンプロデュースは地域に密着した老舗の教育サロン。
商業施設にテナントとして入っているサロンを除き、駐車場を備えた路面店を郊外に構える。いずれも30~50坪にセット面8~13席を備える大型店だ。
1984年(昭和59年)創業の同社は、親子3世代で通う人もめずらしくない。「長年のお客さまだと80歳、90歳の方もいます。今では、ご本人、娘さん、お孫さんと3世代で来店いただいていますね」(黒木社長)。
幅広い世代の顧客を抱える同社が、新たなコミュニケーションツールとして選んだのは、国内月間の利用者が9000万人(2021年12月末)に上り、人口の約7割が利用しているLINE※。実際、どの世代にもスムーズにLINEの友だちになってもらえているという。
LINEの国内月間利用者数 9000万人÷日本の総人口1億2555万9000人(人口は総務省統計局確定値より/2021年9月1日現在)
性別や年齢を問わず利用されている(2021年1月LINE調べ)
②「使わないと損!」で友だちの9割がLINEミニアプリ利用
「LINE公式アカウント」は2021年8月、「LINEミニアプリ」は翌9月から、アイラッシュサロンをのぞく14店舗でスタートしたばかりだが、すでにLINE公式アカウントの友だちは1万2000人を突破し、その90%以上がLINEミニアプリを利用している。
お客さまへ案内する際は、「LINEから予約できる」「紙のポイントカードに代わってスマホが会員証になる」「ポイントや来店履歴を見られる」「お知らせが届く」などのメリットをしっかり伝えるだけ。特典を用意することなく、この数字を達成したという。
右下のマイページではポイントや来店履歴、予約日を確認できる。 ※初回起動時のみ、ユーザー認証が必要
「年配の方も、クーポンがもらえるからとドラッグストアのアプリをスマホに入れている人が結構いらっしゃいます。美容室もアプリを使わないと損ですよ、今はそういう時代ですよと丁寧に説明すれば、LINEの友だちになって、そこからLINEミニアプリも利用していただけます」(黒木社長)。
③予約ポータルサイトで集客、LINEでリピート
多くのサロンと同じく、同社の集客も大手の予約ポータルサイトが中心。集客力は高いが、毎回手数料がかかる、価格で比べられやすいなどのデメリットがある。
そこで、「新規集客は予約ポータルサイト、次回からはLINEミニアプリ経由の予約へ」という戦略をとっている。
効果はてきめんで、導入前後を半年単位で比較すると、次回予約客数と紹介客数がそれぞれ20%増、リピート率が3ポイント増となった。
① 次回予約客数
導入前:約200名
導入後:約240名
※6カ月間の比較で40名増(20%増)
② 紹介客数
導入前:約200名
導入後:約240名
※6カ月間の比較で40名増(20%増)
③ リピート率
導入前:88%
導入後:91%
※6カ月間の比較で3ポイント増
※比較期間は、③が2020年9月~2021年2月/2021年9月~2022年2月。システム移行があったため①②は同月対比ではなく2021年2月~7月/2021年9月~2022年2月での比較
紹介客の増加で新規集客にも効果
LINEミニアプリ導入後に紹介客が2割増となった要因としては、LINE公式アカウントのリッチメニューに「友だち紹介クーポン」への導線を常時表示していることが大きい。
続いて、紹介したい店舗を選べば、該当店舗のLINE公式アカウントを友だちに追加できる
「類は友を呼ぶというのでしょうか。当店の常連さんと似たところのある方なので、定着率が高いんです。予約ポータルサイト経由とは全然違います」と手応えを感じている。
ポータルサイトに頼らない新規集客として、今後も一層、紹介客を増やしていく方針だ。
リマインドで無断キャンセル減少
また、無断キャンセルが減ったことも、うれしい効果だという。
次回予約を取ったお客さまのLINEには、予約の1週間前と2日前の2回、自動的にリマインド通知が届く。
これは、POSと連携したLINE公式アカウント経由のメッセージ配信機能を活用したもの。スタッフが個別にメッセージを送る必要がないので労力がかからず、それでいて効果は抜群だ。
「メールは埋もれがちですがLINEなら見てもらえます。LINE公式アカウントを導入してから、無断キャンセルが明らかに減りました」(黒木社長)
POSからは来店履歴や年間利用額などの顧客データを簡単に抽出できる。今後は、休眠顧客や来店間隔の空いたお客さまへのメッセージ配信、年間利用額の大きいVIPへの特別クーポン配信などにも活用していく予定だ。
④「みんなが使うLINE」で顧客接点
以前はオリジナルアプリを使っていたというジャパンプロデュースだが、LINEを活用したCRM(顧客関係管理)を強化していきたいと考え、新たなPOSシステムとその機能に優れたLINEミニアプリへ切り替えたのだという。
LINEミニアプリは名称にアプリとあるが、お客さまのスマホにLINEさえ入っていれば特に別のアプリをダウンロードする必要はない。
黒木社長は「スマホを持っている人のほとんどはLINEを使っていると思いますので、1分もあれば、LINE公式アカウントの友だち追加とLINEミニアプリの利用開始までしてもらえます」と話す。
オリジナルアプリはダウンロードしてもらうというハードルが高く、“時間とお金をかけて開発したのに使ってもらえない”というケースが散見されるが、LINEミニアプリは初めからこの問題をクリアしている。
LINEミニアプリの導入方法は大きく2通りあり、自社だけのカスタマイズされた機能がほしい場合は「個別開発」も可能だが、まずは、より安価かつ短期間で導入できる「パッケージ」がおすすめだ。
導入にあたっては、まず開発会社(POSシステム運営企業)を選定する。
ジャパンプロデュースが利用しているPOSシステム「Salon de Net(サロン ド ネット)」のLINEミニアプリの場合は、初期費用3万円、月額8000円(株式会社ハイパーソフトが開発・提供)。
※画像は「はじめてみよう!LINEミニアプリ」からの引用
⑤「真実の瞬間」と「凡事徹底」で現場に落としこむ
ジャパンプロデュースでは、LINE公式アカウントの友だち1万2000人のうち、実に90%以上がLINEミニアプリを利用して予約機能や会員証機能などを利用している。
POSシステム「Salon de Net(サロン ド ネット)」の運営会社であるハイパーソフトによると、「当社顧客サロンの中で、ジャパンプロデュース様はLINEミニアプリの有効会員数1位、有効会員率2位。店舗数やスタッフ数を考慮すると、驚異的な数値の成功サロン」だという。
凡事徹底で着実に結果を出す
Salon de NetのLINEミニアプリを活用する美容室の中でも、なぜジャパンプロデュースはダントツに結果を出せているのか。黒木社長は、その秘訣を次のように語る。
「朝礼で未登録の方がいるかを確認し、カウンセリングの前にまずLINEミニアプリをご案内するよう徹底しています。また、スタッフ全員で毎月の登録状況を共有しているんです」
まさに、凡事徹底。基本的で当たり前だが続けるのは難しいことを徹底して行っている。「LINEの友だちを増やそうと言ったら、スタッフが徹底的にやってくれる。それがうちの風土なのだと思います」
①朝礼
当日の予約客にLINEミニアプリを使っていない方がいるかを確認。受付担当のアルバイトスタッフらが予約帳に記入する。
②受付
荷物を預かる際、「スマートフォンは席にお持ちください」と伝える。
③カウンセリング
髪について話すよりも先に、まずLINEミニアプリを案内する。「QRコードの入ったPOP」からのアクセスでスムーズに登録をうながす。
④ミーティング
毎月、LINEミニアプリの登録状況を報告。店舗ごとに数字を把握する。
真実の瞬間を逃さない
カウンセリングの最初にLINEミニアプリを紹介するのは、「真実の瞬間」と呼ばれる、“企業のイメージはとても短い時間で決まってしまう”というマーケティング思考からだ。
「カラーの待ち時間といってもスタイリストは別の施術で忙しいですし、施術後のお客さまはもう帰る気分になっています。だからこそ来店してすぐ、『真実の瞬間』に徹底してご案内することが大切です」と、黒木社長は熱を込める。
⑥電子化で数百万のコスト削減
LINEミニアプリ導入後の変化については、コスト削減効果も見逃せない。
ジャパンプロデュースでは、誕生日特典として50%OFFクーポンをプレゼントしている。以前はDMの制作と発送に月間20万円、年間240万円ほどかかっていたが、今はLINE公式アカウントからのメッセージ配信で済むため、コストを大幅に削減できたという。
また、LINEミニアプリの会員証機能を使い、ポイントカードや次回予約カードなどの紙類がいらなくなった分も、経費が浮いたことになる。
「電話での予約対応が減ったり、スタンプを押す手間がなくなったり、スタッフの労力が減ったのもプラスの効果ですね」(黒木社長)
「スマホひとつで済む」はお客さまのメリット
さらに、サロンだけでなく、お客さまのメリットも大きい。
LINEミニアプリなら24時間いつでもオンラインで予約可能。予約の変更も、対面や電話より気を使わないで済む。POSレジと連携しているので、施術料金や店販購入に応じてポイントも貯まる。
1~3カ月に一度使うだけのポイントカード類を財布に入れておく必要がなく、スマホひとつで、いつでもLINEミニアプリのマイページから予約日やポイント残高を確認できる。
お客さまの利便性が向上すれば、自然とリピートにつながりやすく、結果的にサロンのメリットになっている。
と言われることも多く、これもうれしいですね」
顧客との関係深化へ
ジャパンプロデュースは、新年度となる2022年4月から、LINEを通じた顧客とのコミュニケーションに一層力を入れるという。
「本部スタッフに加えて、店を横断して運用担当者を募っています。専門のチームをつくり年間スケジュールを立てて、よりメッセージの配信効果を高めていきます」(黒木社長)
POSシステムと連携することで、お客さまの属性や履歴などに応じて配信リストを抽出し、それぞれに最適なメッセージを配信できる。この強みを活かし、多種多様なプロモーションやマーケティングを展開していく考えだ。
強みのヘッドスパ、春夏秋冬を感じるメッセージ
たとえば、同社が得意とするヘッドスパ。「カミカリスマ2022」の地域を代表するグレイティー インフィニティ賞を、グループの本店であるJAPAN HONTENが、トリートメント技術に優れた店として受賞しているほどだ。ヘアケアに関する情報発信は、戦略的に増やしていくという。
また、梅雨どきに縮毛矯正やスタイリング剤を紹介するなど、季節性のあるメッセージも予定しており、YouTubeやInstagramとの連動も視野に入れている。
「洋服店が春物、冬物と一目で季節がわかるのに対して、美容室という空間は季節を感じにくいですよね。その分、LINEで春夏秋冬を感じるような配信をしていきたいです」(黒木社長)
やはり、LINEの強みは顧客にじかに情報を届けられるコミュニケーション。LINEミニアプリが予約やリマインド、ポイント管理などに役立つのはもちろんのこと、地域密着型サロンがお客さまとの関係を深めるツールとして、ますます欠かせない存在になっていくことになりそうだ。
※文中の数値や価格は取材時のものです
編集・取材・文/大徳明子