ビアホール「銀座ライオン」を運営する株式会社サッポロライオン(以下、サッポロライオン)は、2023年11月に新業態のビヤバー「体験型ビヤスタンド L LAB(エルラボ)」を東京・新橋にオープンしました。店舗運営に一役買っているのが、モバイルオーダーシステム「QR Order」のLINEミニアプリです。このLINEミニアプリを通じて自店のLINE公式アカウントの友だちになったユーザーにメッセージを配信、再来店を促すことで売り上げを向上につなげています。L LABの運営を担当する船田大斗氏に、その活用のポイントと成果について詳しく伺いしました。
- 少人数運営で店舗オペレーションを効率化したい
- 来店客のLTV(Life Time Value)を向上させ、リピーターを増やして売り上げを伸ばしたい
- QR OrderのLINEミニアプリを導入し、セルフオーダー方式をより促進
- LINEミニアプリで取得したデータを基に、来店頻度に合わせたメッセージ配信
- 限定クーポンやショップカード機能を活用し、リピーター集客を促進
- スタッフ2名体制でも安定した店舗運営が可能に
- 2回目の来店ユーザーの約26%がクーポンを利用して再来店
- 総客数に占める4回目以上の来店ユーザーの割合が10カ月で約7倍に増加
低コストで効率化を実現!モバイルオーダーシステム「QR Order」
サッポロホールディングスのグループ会社であるサッポロライオンは、日本初のビアホール「恵比壽ビヤホール」(1899年オープン)の流れをくむ総合レストランチェーンです。現在は、「銀座ライオン」や「ヱビスバー」をはじめ、全国で約100店舗を展開。その同社が新たな試みとして、2023年11月にJR新橋駅から徒歩1分の立地にオープンしたのが「体験型ビヤスタンド L LAB(エルラボ)」です。
「L LABは、“生ビールを注ぐ喜び”をコンセプトにしたビヤバーで、お客さまご自身でサーバーから生ビールを注いでもらいます。形状の異なる3種類のグラスと5種類の生ビールを自由に組み合わせていただき、ブレンドも可能。ラボの研究員になったつもりで、自分にぴったりの美味しい生ビールを探求していただきたいと思います」

至福の一杯を自分の手で

(左の大きいグラスは特典グラス)
同店の30席はすべてスタンディングで、フードメニューもユーザー自身がカウンターに受け取りに行くスタイルです。20~30代の若年層をメインターゲットとして、会計は現金使用不可のキャッシュレス限定。こうした実験的な店舗運営の軸となっているのが、「QR Order」のLINEミニアプリです。
QR Orderは、株式会社BlueIslandが提供する飲食店向けのモバイルオーダーサービスです。テーブルに設置されたQRコードを読み込めば、ユーザー自身のスマートフォンがセルフオーダー端末に早変わり。メニューを選択すると、厨房のプリンターにオーダーが直接送信される仕組みです。LINEミニアプリとの連携も可能で、QRコードを読み込むと自動的にLINEミニアプリが立ち上がり、LINE上から注文が可能になります。その際、ユーザーが許諾すればLINE公式アカウントの友だち追加がされます。
「お客さま自らカウンターに足を運んでいただくというオペレーション上、モバイルオーダーの導入は必要不可欠でした。数年前まではモバイルオーダーの操作にとまどう方もいましたが、今はかなり普及していますから、抵抗感を持つ方はほとんどいないと感じています。とくに若年層では“紙のメニューより便利”という意見が大半ではないでしょうか」
L LABでは、呼び出しブザーにQRコードを張り付けています。そのブザーを入店時にユーザーに渡し、席についてもらいます。あとはユーザーがスマホでQRコードを読み込んで、LINEミニアプリ(QR Order)から注文。料理が完成したらブザーがなり、カウンターまで取りに来てもらうというオペレーションです。
「オーダーをとるためのホールスタッフが不要のため、2名体制でも十分に営業できます。QR Orderは、ほかのモバイルオーダーシステムと比べて、導入コスト、ランニングコストともにかなり割安です。その上、LINE公式アカウントの友だち追加が自動でされるとあって、長期的な店舗運営を考えると、QR Orderの導入がベストだと判断しました」
友だち追加には、ユーザーの同意が必要です


クーポン活用で土曜日の売り上げが2倍に!
L LABは、グルメ媒体への広告出稿を行っていません。船田氏はその理由について、「新規ユーザーの集客にもまして、一度来店されたお客さまのLTVを高めていくこと、つまり、リピート率や客単価を向上させて、長期的な売り上げにつなげることを重視している」と明かします。
「いまL LABでは、SNSで認知を獲得して新規来店を促し、LINE公式アカウントのメッセージ配信でリピート利用を促進するというマーケティング手法を採用しています。立地や店舗規模、ターゲット層などさまざまな条件を考慮すると、ほかの店舗以上に、いかにLINEを活用してリピーターを集客できるかがL LABの店舗運営のカギになります」
LINE公式アカウント運用の土台となる「友だち数」は、QR OrderのLINEミニアプリ利用時に、ユーザーの許諾を得た上でスムーズに追加されます。開店からの累計は2483名(2025年2月時点)に達し、順調に増加しています。
「グループで来店されたお客さまの中には、代表者一人が注文を取りまとめてQR Orderを利用されるケースがあります。なるべく全員にQR Orderを使ってもらう(=友だち追加をしてもらう)ために、QRコードを読み込むと、その場で使えるクーポンが抽選で当たるキャンペーンを行っています。また、来店回数に応じてポイントが貯まるLINE公式アカウントのショップカード機能も利用していて、なるべく多くの方に友だち追加していただく工夫をしています」
こうして集客した友だちに向けて、ドリンクが半額になる「曜日別クーポン」や「雨の日クーポン」などを配信し、再来店を訴求しています。とくに新橋という立地上、苦戦していた土曜日は、土曜日限定のクーポンを配布することで、売り上げが倍増。「今では金曜の売り上げを超えることも珍しくない」といいます。

また、来店回数に応じたセグメント配信も実施。例えば、来店回数が1回の友だちに限定して、「同行客も利用できるドリンク半額クーポン」を配信した結果、2回目の来店数のうち約26%がクーポン経由で再来店しました。同行客も来店することで新規顧客の集客も効率的に促進しています。

「飲食店には“2回目来店の壁”があります。初回来店後に割引などの確度の高いクーポンを配信して再来店していただければ、3回、4回……とその後の来店にもつながります。こうした来店回数などの顧客データに基づいて、柔軟にメッセージ配信ができるのも、LINE公式アカウントと相性の良いLINEミニアプリの魅力だと思います」
“4回以上の来店者”の割合が10カ月で約7倍に
このようにL LABでは、店舗オペレーションとリピーター集客の両面でLINEをうまく活用しています。「そしてその成果は数字にもはっきりと表れている」と船田氏はきっぱりと断言します。
「まず、店舗全体の売り上げは着実に増加しています。それはやはり、新規よりもLTVの高いリピーターを効果的に呼び込めていることが大きいと思います。リピーターは1回あたりの顧客単価が高い傾向があり、さらに継続的な来店によって累積売上も伸びやすいため、店舗経営において重要な存在です。具体的には、“総客数に占める4回目以上の来店者の割合”は、2024年1月には2.4%でしたが、2024年10月には、16.7%と約7倍に増えました。リピーターのお客さまたちが新規のお客さまを連れてきてくれるという、とてもいいサイクルがまわっています。今後は、ステップ配信機能を使って、来店翌日に感謝の気持ちを伝え、再来店をお願いするメッセージを自動的に送る施策なども実施していきたいと思います」
最後に改めてQR OrderのLINEミニアプリの魅力について伺いました。
「飲食店の中でも、とくにスタッフ数の少ない小規模店舗に向いていると思います。弊社は自社アプリも運用しているのですが、圧倒的に導入ハードルが低いのがLINEミニアプリです。LINEユーザーのお客さまは新たにアプリをダウンロードする手間がなく、利用方法も簡単ですから、スタッフが詳細に説明する必要はありません。友だちも、驚くほど簡単に集客できる。今後、より効果的な運用方法を試しながら、さらにリピーター率を増やしていきたいと思います。L LABで蓄積したLINE活用の知見を、ほかの業態の店舗にも活用していきたいですね」

企業名 | 株式会社サッポロライオン |
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所在地 | 東京都中央区
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事業内容 | 総合レストランチェーンの運営
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サービス | 体験型ビヤスタンド L LAB(エルラボ) |
(公開:2025年3月、取材・文/相澤良晃、写真/慎芝賢)
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