宮崎のソウルフード「辛麺」メニューが支持され、九州エリアを中心に店舗展開する「辛麺屋 桝元」は2023年4月からラゾーナ川崎プラザ店独自の施策としてLINEミニアプリを導入しました。同サービスで提供する「スタンプカード」やクーポンが当たる「抽選ガチャ」機能、そしてLINE公式アカウントと連携したメッセージの自動配信で多くのリピーターを獲得しています。株式会社桝元(以下、桝元)取締役兼首都圏事業部長の長曽我部隼平氏(以下、長曽我部氏)と、同社が導入した飲食店向けLINE運用ツール「Ziinie(ジーニー) for Restaurant」のLINEミニアプリ提供と運用支援を行うDOTZ株式会社(以下、DOTZ)執行役員COO兼本部長の宮本晋一郎氏(以下、宮本氏)に、LINEを活用した取り組みや得られた成果について話を聞きました。
- 店舗の全国拡大を見据えて、特に首都圏や関東地方での認知拡大とリピーター増加を目指したい
- LINEミニアプリを導入し、スタンプカードと抽選ガチャ機能を実装
- LINEミニアプリの利用時に、店舗のLINE公式アカウントをスムーズに友だち追加してもらう
- 再来店を促すシナリオに基づき、クーポン利用に関するリマインドやランクアップをお知らせするメッセージを自動配信
- LINE経由のリピーター数が、2023年4月9名から7月176名と爆発的に増加
- 抽選ガチャ機能の実装後、LINEミニアプリの利用者やリピーターが急増。それに伴いLINE経由の売上が、2023年5月〜7月の3カ月で約70万円に上った
- LINE公式アカウントの友だち数が4,000名に増加するとともに、ブロック率は1桁台で推移
LINEミニアプリでスタンプカードと抽選ガチャ機能を提供
辛麺屋 桝元は宮崎県延岡市に拠点を置くラーメンチェーン店です。唐辛子、ニンニク、ニラ、ひき肉、卵といった具材を使用し、秘伝のスープと絡み合う麺が多くユーザーに支持されています。現在は30辛まで選べる定番の「元祖辛麺」のほか、さまざまなアレンジメニューや麺のバリエーションも選択でき、来店者の半数近くを女性客が占めています。
桝元は直営店・FC店を主に宮崎県・福岡県を中心とした九州地方で展開していますが、近年は全国展開を見据えて、首都圏や関東地方への出店に注力しています。なかでも、神奈川県川崎市にある「ラゾーナ川崎プラザ店」(以下、川崎店)では、より多くのファンをつかむためのマーケティング施策を先行導入しています。
桝元で出店拡大やデジタルマーケティングを担当する長曽我部氏は、川崎店でのLINE導入の狙いについて次のように語ります。
「コロナ禍の直近3年間でも順調に出店数を伸ばしてきましたが、首都圏や関東地方では地元・宮崎ほど『桝元』の名前は知られていません。そこで、今や利用していない人の方が少ないと言っても過言ではないLINEに注目しました。LINEを通じてうまく情報発信すれば認知拡大だけでなく顧客獲得にもつながり、さらにお客様とコミュニケーションを重ねることでファンを増やしていけるのではないかと考えたのです」(長曽我部氏)
川崎店では2023年4月からDOTZが提供する「Ziinie for Restaurant」のLINEミニアプリを導入しました。導入支援を行なった同社の宮本氏は経緯について振り返ります。
「『Ziinie for Restaurant』は、多忙な飲食店が最小限の負荷で最大限の売上を出せる、弊社独自のサービスです。ラーメン店とも非常に相性が良く、さまざまなラーメン店にお声がけするなかで桝元様と出会い、それ以降LINE公式カウントの運用を含めてご支援しています」(宮本氏)
当初、川崎店はZiinie for RestaurantのLINEミニアプリを、導入スピード最重視での提供をしていました。リピーターを早期に育成することを狙った取り組みでしたが、導入初月の利用率はいまいちだったといいます。
「初動の数値を見て、LINEについてお客様に周知するポスターの貼り方一つとっても『テープが見えないように。POP設置も整然とお願いします』など、かなり踏み込んだアドバイスをさせていただきました。
同時に、お客様の興味関心を更に引き上げるためには“エンタメ性”の要素の追加が必要と考え、主に初回来店ユーザーに向けた『抽選ガチャ機能』を提案したのです。これは、LINEミニアプリを運用開始したあとすぐに行った提案でしたが、長曽我部様はいつも即断即決。すぐに追加機能の開発・実装に取りかかることができました」(宮本氏)
貼り付ける際は角度やテープ留めにも気を遣い、お客様の目に入りやすいようにしている
自動配信だから、LINEの運用にかける手間はほぼゼロ
川崎店の抽選ガチャ機能は、ユーザーの参加ハードルをとことん下げる形で提供されています。
まず、店舗スタッフが来店客に向けてLINEミニアプリの利用を促すお声がけを行います。ユーザーは商品の待ち時間や会計時、店内ポスターや卓上POPに掲載されたQRコードをスマホで読み取ると、LINEミニアプリが立ち上がり、「辛麺屋 桝元 ラゾーナ川崎プラザ店」のLINE公式アカウントがスムーズに友だち追加されます(※)。
LINE公式アカウントの友だち追加にはユーザーの許諾が必要です。
同時に、LINEミニアプリ内の「スタンプカード」に初回来店ポイントが付与され、抽選ガチャが自動でスタートする仕組みです。
「抽選に当たれば『辛麺1杯無料』ですが、外れても『ドリンク1杯無料』のお得なクーポンを提供しています。取得したクーポンはLINEミニアプリ内の『マイクーポン』タブに格納され、次回以降の来店時に使用することができます」(長曽我部氏)
抽選ガチャは主に初回来店ユーザーに向けた機能ですが、来店2回目以降もQRコードを読み取れば、スタンプカードに来店ポイントが付与されます。ポイントが貯まると、4段階でランクアップし、取得できるクーポンもより豪華になります。
「初回来店からしばらく足が遠のいてしまった場合、お客様のご利用状況に合わせて友だち追加した『辛麺屋 桝元 ラゾーナ川崎プラザ店』のLINE公式アカウントから、抽選ガチャが自動配信され、再来店を促す取り組みも行なっています」(宮本氏)
この自動配信がZiinie for RestaurantのLINEミニアプリ最大の利用メリットです。DOTZは約20億通の配信実績と、LINE公式アカウントの運用ノウハウを活かして、飲食店の売上アップに貢献するメッセージ配信の“シナリオ”を用意しています。
「たとえば、LINE公式アカウントで配信するメッセージも、テキストのみの簡素な内容ではなく、『カードタイプメッセージ』を活用して視覚的に訴求しています。先述した抽選ガチャの他にも、期限付きクーポンを配信して再来店を促すこともあるのですが、クーポン利用がない場合はリマインドメッセージが自動配信されます。このように、売上効果最大化に向けて、より効果的なシナリオに基づいたメッセージの配信設計を行っています」(宮本氏)
桝元の長曽我部氏は、LINEミニアプリとLINE公式アカウントの運用における“省力化”などを高く評価します。
「DOTZ様が持つ再来店を促すシナリオに基づき、一連のメッセージ配信は全て自動化されているので、LINEの運用にほぼ手間がかからず非常に助かっています。
また、Ziinie for RestaurantのLINEミニアプリは、飲食店にとって有用な基本機能がパッケージ化されているため導入がスピーディーなことや、LINEミニアプリの初回利用時に基本情報として取得する(※)属性データで、店舗を利用いただくお客様を『可視化』できるようになった点も大きいですね」(長曽我部氏)
LINEミニアプリ上での各種データの取得はユーザーの許諾を得た上で行われます。
LINEミニアプリによる圧倒的な売上貢献と、LINE公式アカウントのブロック率は驚異の1桁台
2023年5月に抽選ガチャ機能を実装した後、LINEミニアプリの利用者や店舗のリピーター数は短期間で急増していきました。また、それに比例して店舗売上にも好影響を及ぼしています。
「LINEミニアプリを導入した2023年4月は、わずか9名だった2回目の来店者数は7月には176名と右肩上がりに増加しており、3回目の来店、4回目の来店者数についても好調です。
リピーター数に比例して、LINEを経由した店舗売上は2023年5〜7月の3カ月で約70万円を売り上げました。Ziinie for RestaurantのLINEミニアプリとLINE公式アカウントの運用にかかるコストは月に約4万円ですから、費用対効果でも圧倒的に売上に貢献できていると考えています」(長曽我部氏)
また、LINEミニアプリの利用時にスムーズに友だち追加される同店のLINE公式アカウントの友だち数は抽選ガチャ機能の実装後に約600人でしたが、わずか半年後には4,000人を突破しました(2023年10月時点)。
「LINE公式アカウントは、クーポンだけ使ってすぐにブロックされるケースも珍しくありません。しかし、最適なタイミングで最適な内容のメッセージを送り、闇雲に送らないことでそうしたリスクを軽減することができます。
具体的には、『辛麺屋 桝元 ラゾーナ川崎プラザ店』のLINE公式アカウントでは、友だち追加時の『あいさつメッセージ』もあえて送っていません。LINEミニアプリの利用状況を基に、実際に来店した数時間後にお礼とともにメッセージを自動配信する方が、よりお客様にフィットしたLINEの運用になると考えています。
“エンタメ性”ある抽選ガチャ機能を提供すると同時に、友だち追加したユーザーを不快にさせないよう徹底することで、現在、同LINE公式アカウントのブロック率は1桁台とかなり低い水準で推移しています」(宮本氏)
桝元の長曽我部氏は、今後のLINEの法人向けサービス運用の展望について以下のように結びます。
「デジタル化がますます進むいま、私ども飲食店も集客や販促にかける施策をデジタル化していかなければならず、それを行う際やはりLINEは最適なツールだと確信しています。川崎店で成果の上がった取り組みを、他の店舗に積極的に展開していく予定です。
また、今後はLINEミニアプリで取得するデモグラデータを組み合わせ、お客様の年代や来店する時間帯をふまえて成果を最大化させる配信シナリオをDOTZ様と考えていきたい。LINE運用をより省力化しつつ、より多くのお客様に弊社の辛麺を楽しんでいただけると嬉しいです」(長曽我部氏)
(公開:2023年11月、取材・文/安田博勇、写真/中村宗徳)
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