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LINEミニアプリで効率的に会員データを取得!アールベイカーのマーケティング戦略

株式会社アールベイカー

2022.06.14

株式会社アールベイカー 商品開発・外販グループ 販促企画 販売促進リーダー 長谷川朋実 氏
北海道デジタル・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役 石堂 修氏

ベーカリーカフェ「R Baker」を運営する株式会社アールベイカー(以下、アールベイカー)は、2022年2月のLINE公式アカウント開設と同時に、LINEミニアプリを活用したデジタル会員証を運用しています。会員数は着実に増加し、購買データの取得も進んでいるという取り組みについて、同社の長谷川朋実氏(以下、長谷川氏)とLINEミニアプリの導入をサポートした北海道デジタル・アンド・コンサルティング株式会社の石堂修氏(以下、石堂氏)に話を聞きました。

目的
  • 会員登録数を増やすため、デジタル会員証を導入したい
  • POSレジとデータ連携を行い、取得した購買行動データを情報発信に活用したい
施策
  • LINE公式アカウントの開設と同時にLINEミニアプリでデジタル会員証を導入
  • LINE連携システム「EDWARD」を活用し、POSレジとLINE公式アカウントを連携
効果
  • LINE公式アカウントとLINEミニアプリの運用開始から3カ月で、仮会員となる友だち数は1万人を突破
  • LINE公式アカウントのメッセージ配信でポイント5倍の告知を配信したところ、会員数の伸びは前週比較で125%を記録

「仮会員」から「本会員」へ。段階的な誘導で着実に会員数が増加

R Baker」は、花や果実、野菜などから抽出した自然酵母を使ったパンが人気のベーカリーカフェで、直営店と加盟店を合わせて全国32店舗(2022年5月末時点)を展開しています。

「R Baker」 エキアプレミエ和光店

同社は2022年2月にLINE公式アカウントを開設。同時に、LINEミニアプリでポイントカード機能を備えたデジタル会員証を実装しました。その狙いについて、同社のマーケティング戦略を統括する長谷川氏は「LINEの会員獲得効果に期待した」と話します。

 

「これまで、簡易的なスタンプカードを発行してお客さまのリピート化に努めた店舗もありましたが、活用しているユーザー属性や利用状況まで把握できませんでした。デジタル化すればデータは蓄積できますが、一般的にアプリの場合はダウンロードまでのハードルが高く、その後の情報発信にも課題がありました。その点、LINEは若者から年配の方までユーザーの年齢層も広く、利用率も高いため、新たにアプリをインストールするといった手間もなく、気軽に会員登録をしていただけます。結果的にユーザーの購買データなども取得しやすくなると考え、LINEミニアプリの運用に踏み切りました」(長谷川氏)

 

会員登録の流れは、まず店内でLINEミニアプリのデジタル会員証発行を案内。仮会員として登録され、LINE公式アカウントから表示できる会員証を商品購入時に提示すると、購入金額に応じてポイントが貯まります。その後、居住地域などの基本情報を登録して本会員になると、貯めたポイントが使用できるという仕組みです。

発行された会員証を会計時に提示するとポイントが蓄積されていく

「いきなり本会員登録をしていただくのはハードルが高いのですが、LINEミニアプリの仮会員から段階的に誘導することで、本会員の登録数は着実に増えています」(長谷川氏)

 

月間利用者数9,200万人(2022年3月末時点)を有するLINEを活用し、効率よく会員を獲得しようという戦略の通り、LINE公式アカウントでは運用開始から約3カ月で仮会員並びに友だち数が1万人を突破。その多くが、本会員に転換しているといいます。

POSレジとの連携で会員の購買行動データを効率的に取得

さらに、長谷川氏がLINEに期待したのが、効率的な購買行動データの取得です。「R Baker」では、LINEミニアプリの運用を始めるにあたって、北海道デジタル・アンド・コンサルティングが提供するLINE連携システム「EDWARD」を導入しました。

 

EDWARDを介してLINE公式アカウントとPOSレジを連携させることができるため、LINE公式アカウントで取得した会員データと、店舗のPOSレジで取得した購買行動データを紐づけて管理・運用が可能になります。

「R Bakerさんが店舗で使用しているクラウド型のPOSレジ『スマレジ』にEDWARDが対応していることもあって、導入いただくことになりました。EDWARDによって、デジタル会員証を提示したお客さま(仮会員・会員)の購買行動データがスマレジに蓄積されていきます。そのデータに基づいてターゲットを絞り、EDWARDの管理画面を通じてLINE公式アカウントからメッセージを配信することもできます」(石堂氏)

 

現時点ではまだ購買データに基づくセグメント配信は行っていませんが、「LINE公式アカウントのメッセージ配信による販促効果には手応えを感じている」と長谷川氏。

 

「ある店舗で、実験的にモーニングセットを紹介するメッセージをLINE公式アカウントから配信したところ、前週の3倍まで売上が伸びました。特にインセンティブをつけたわけではありません。商品画像とともにメッセージが配信できること、プッシュ通知による開封率の高さにより、何気なくメッセージを見て購入に至ったお客さまが多かったのだと思います。配信のタイミングやインセンティブを工夫すれば、さらに販促効果は高まるのではないかと期待が膨らみました」(長谷川氏)

 

そして、2022年4月19日から5月8日のゴールデンウイーク期間中には、全店舗でポイント5倍アップのキャンペーンを展開。その告知をLINE公式アカウントのメッセージで配信したところ、会員数の伸びが前週に比べ約125%増を記録しました。

2022年のゴールデンウイーク中に配信した「ポイント5倍」を告知するメッセージ

「今回は一律でキャンペーンを展開しましたが、今後、蓄積した購買データを分析して、1to1でより効果的なマーケティング施策を展開していきたいと思います。例えば、特定の商品を購入していただいた方だけに類似商品を割引する案内を送ったり、一定の金額以上を購入していただいた方に割引クーポンを配布したりなど、購買行動データを販促に生かし、会員のロイヤリティーを高めていきたいと思います」(長谷川氏)

拡張性と運用の簡便性を兼ね備えたLINEミニアプリ。その効果に今後も期待

新しい領域への挑戦を常に続けているアールベイカー社は、2022年5月20日に新ブランドのベーカリー『YOUR OVEN』(東京都世田谷区)をオープンしました。主力商品はオーダーを受けてから焼き上げるパンと、自宅で手軽にリベイクできる冷凍パンで、パンの売れ残りを出さない形態になっています。

東京都世田谷区に新規オープンした新ブランド「YOUR OVEN」の店舗外観

焼き立てパンは来店前の事前オーダーが可能で、現在、受付は自社アプリと電話に加えてLINEミニアプリを活用。店内告知を中心に取り組んだ結果、10日間で会員数は1,000人を突破しました。

 

「一般的にネイティブアプリの開発はオリジナリティーが確立でき、よりコアなお客さまを取り込めるというメリットもあると思いますが、iOSとAndroidそれぞれの仕様で準備する必要があり、膨大な費用がかかってしまいます。さらに、リリース後もOSのアップデートに合わせて改修作業などが必要です。その点、LINEミニアプリはLINEのプラットフォームに合わせて開発するだけでいいので、コストは大きく抑えられます。アップデートにも自動で対応してくれるので、リリース後の改修作業も最小限で済むのも助かります」(長谷川氏)

 

LINEを活用して商品の訴求やフェアの案内を送信したり、LINEミニアプリ会員限定の商品を販売するなど、ユーザーに「R Bakerに行こうかな」と思ってもらえるような仕掛けを展開しながら、顧客単価や来店回数の増加につなげていきたいと意気込む長谷川氏。商品の売れ行きや来客数の状況に応じて、即時性のあるメッセージ配信を行うことが次のステップだと語ります。

 

「今はリソースの問題もあり、私がクリエイティブや配信タイミングを考えて一括でメッセージを配信していますが、将来的にはそれぞれの店舗スタッフに担当してもらうことを考えています。パンの売れ行きは、天候や気温などの外部要因によっても左右されるので、例えば、売れ残りが多いときに緊急セールを開催してその情報をお知らせするなど、店舗ごとの状況に応じて即時性あるメッセージを配信するのも有効ではないかと思っています。さまざまな活用方法が考えられるので、LINEの効果を最大化するためにも、まずは蓄積した購買行動データをしっかり分析していきます」(長谷川氏)

 

※LINEアカウントと紐づいたユーザー行動データの取得・活用には利用者の許諾が必須となります。

 

(公開:2022年6月、取材・文/相澤良晃、写真/中村宗徳)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です