医療クリニックの開業・運営支援を始め、マーケティング戦略立案や広報支援事業を展開している株式会社IDEAでは、ニキビ治療専門皮膚科「アクネクリニック」の新規ユーザー数や予約数増加のため、2015年にLINE公式アカウントを開設。友だち追加広告とステップ配信を併用することで、新規ユーザー(友だち数)は約350%、予約数は約120%増加と着実な成果を残しています。具体的なLINE公式アカウントの運用法について、同社の大竹舞氏(以下、大竹氏)に話を伺いました。
- 予約受付の窓口としてLINEを活用したい
- 新規のユーザー数や予約数を増加させたい
- LINE公式アカウントを開設、チャットボットを活用して予約対応を効率化
- 新規の友だち数を増やすため「友だち追加広告」で広告を出稿
- 「友だち追加広告」で友だち追加されたユーザーを対象にステップ配信を設定
- LINE公式アカウントから予約を受け付けることで、受付時間を24時間に拡大しながら対応にかかる工数を削減
- 「友だち追加広告」の活用で実施前と比較して友だち数が約350%、その後の「ステップ配信」でクリニックの予約数も約120%まで増加
クリニック予約の効率化を目的にLINE公式アカウントを開設
新宿・横浜・名古屋にあるニキビ治療専門の美容皮膚科「アクネクリニック」は、さまざまなニキビのタイプやニキビ跡の症状に応じて豊富な治療メニューを取り揃え、幅広い年代の患者が来院します。患者の約4割は男性のため、仕事帰りでも立ち寄れるよう平日は夜9時まで診療するなど、ニキビや肌に悩みを抱える多くの患者から支持されてきました。
アクネクリニックがLINE公式アカウントを開設したのは2015年。大竹氏は当時の開設理由として、クリニックの予約受付を効率化することが目的だったと振り返ります。
「アクネクリニックはニキビの悩みを解決する専門クリニックで、治療は完全予約制です。以前まで新規の予約受付手段は電話かメールが中心でしたが、対応する人員には限界があり、営業時間の問題もあって効率的に予約受付ができていない状況でした。ニキビの悩みを持つ方は多いですが、LINEは幅広いユーザーが使い慣れていますし、チャットボットと組み合わせて活用すれば予約受付の対応時間も拡大できると考えてLINE公式アカウントを開設しました」
株式会社IDEA 第二事業本部 第2マーケティング部 大竹 舞氏
LINE公式アカウントでは、リッチメニューに設定された予約のボタンをタップするとチャットボット(他社提供ツールによる機能)が起動し、「年齢」や「氏名」といった基本的な問診に回答していくだけで予約が完了します。基本的には有人対応の必要がなくなるため、対応工数を削減することができました。また、これまでは予約しても実際には来院しない患者もいたそうですが、LINE公式アカウントの導入によって来院率も向上したといいます。
LINE公式アカウントのトーク画面。リッチメニュー右側の「予約」をタップすることでチャットボットが起動する
「ニキビの悩みは緊急度が高いため、予約を取っても日時が離れているとほかのクリニックに行ってしまうケースがあります。LINE公式アカウントの導入によって営業時間外でも予約受付が可能になり、ユーザーの利便性が向上したことが来院率の向上にも貢献していると考えています」
友だち追加広告で新規ユーザー数が急増!来院促進が課題に
アクネクリニックでは予約数増加を目的に、LINE公式アカウントの運用に当たって友だち数を重視してきました。そのため、Webサイトやランディングページ、SNSにもLINE公式アカウントの友だち追加URLを設置し、クリニック内のポスターにもQRコードを記載して友だち追加を促すなど、LINE公式アカウントの認知を高めてきました。こうした施策の結果、月700人ほどのペースで友だちが増えるようになりました。
その後、友だちに対してメッセージ配信でクーポンを送ったり、季節イベントごとに抽選キャンペーンを行ったり、アンケートを実施したりなど、積極的にLINE公式アカウントを活用した施策を展開しています。さらに、2021年11月からは「友だち追加広告」への出稿をスタートしました。
「広告出稿における医療系広告のガイドラインは厳しいものの、審査を通過して掲載に至った広告の反響は非常に大きいと実感しています。獲得単価も、他の広告と比較してLINE公式アカウント経由の場合は3分の1ほどで推移しています」
結果、友だち追加広告の開始によって、月間の友だち追加数もそれまでの約10倍となる5,800人から7,000人ほどまで増加しました。しかし、友だち数は急増したものの、新たに友だちになったユーザーに予約や来院を促す必要が出てきました。そこで活用したのが、2021年2月にリリースされた新機能「ステップ配信」です。
ステップ配信で来院を促進、予約件数が120%増
大竹氏はステップ配信を導入したきっかけについて、次のように話します。
「WebサイトやSNSから友だち追加したユーザーは悩みが顕在化しているため、予約や来院につながる率も高いのですが、広告経由の場合、潜在的な悩みを抱えている方や興味本位の方などもいます。ステップ配信であれば、友だち追加広告経由のユーザーだけを対象に、予約や来院につなげるためのシナリオを組んで、複数のメッセージ配信を自動化することができます。友だち追加広告とは非常に相性の良い機能だと考え、広告配信と同時にステップ配信の活用もスタートしました」
アクネクリニックでは「友だち追加広告経由」のユーザーに限定してステップ配信を設定し、下記、5種類のメッセージ配信を設定しています。
- 1通目:ニキビの進行度について解説し、放置すると悪化していくという「放置危険度」の紹介と無料クーポンを配信
- 2通目:対症療法になりがちなニキビの保険診療と、根本治療を目指す自由診療の違いを解説
- 3通目:ニキビのタイプ別のおすすめ治療法を紹介
- 4通目:患者の声や治療のビフォーアフター写真を紹介
- 5通目:カウンセリング内容を説明した上で無料カウンセリングのクーポンを配布
結果、LINE公式アカウントを経由した予約数はステップ配信の実施前と比較して120%まで増加。友だち追加広告による母数拡大の影響は無視できませんが、クリニック内部からもステップ配信の効果を裏付けるような反響がありました。
「例えば、男性の友だち追加が増えた時には、クリニックの予約や来院者も男性患者が増えるといったように、実際の来院者とLINEの成果には相関関係があります。そして、問い合わせ件数や予約が増えたことで売上も向上しました」
引き続き効果的なステップ配信を検証中、今後の機能進化に期待大
ステップ配信を始めた当初、メッセージ配信の間隔は友だち追加の翌日、3日後、6日後、14日後、28日後と時間を空けて設定していました。しかし、「6日目を境に離脱するユーザーが目立ってきた」という課題が浮上し、2022年2月からは友だち追加から毎日、1通ずつ配信する設定に変更。それに伴いクリエイティブも変更し、実際に大竹氏がモデルとなって施術を受けているシーンを使うなど、ユーザーが投稿したような画像を使用しています。
また、友だち追加広告で使用しているクリエイティブをメッセージ配信にも流用するなど、引き続き、効果的な方法を模索し続けています。
「LINE公式アカウントは次々に新機能が出てくるので、その進化に合わせてさまざまな施策に挑戦していきたいです。ステップ配信についても、エリアごとにユーザーを分類して設定したり、年代や性別の違いで配信する内容を変えたりなど、さまざまな可能性を考えながら運用していきたいと思います」
(公開:2022年4月、取材・文/岩崎史絵、写真/佐坂和也)
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