香川県まんのう町に本社を構える有限会社味源(以下、味源)は、菓子類、麺類、健康食品など自社ブランド商品の製造・販売のほか、他社ブランドの企画・開発を主な事業としています。近年は「自然の館」という屋号でEC事業にも注力し、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールで商品を販売しています。
同社では販売促進を目的として2020年頃から順次、ECモールごとにLINE公式アカウントを導入し、2021年10月にはYahoo!ショッピングのLINE公式アカウントを開設しました。運用する味源 EC事業部の石原悠資氏(以下、石原氏)に、その活用方法や成果、今後の販売戦略について話を聞きました。
- 開封率、クリック率、経由売り上げが低迷するメールマガジン(メルマガ)に代わるツールを導入したい
- 2021年10月に「自然の館Yahoo!ショッピング店」のLINE公式アカウントを開設
- 配信頻度をセール当日1回のみの配信から、セール前日の事前告知と当日午前のクーポン配信、当日午後のリマインド配信へ変更
- リッチメッセージやカードタイプメッセージを用いて最適な配信内容や効果を検証
- 事前告知とリマインド配信の実施により、メッセージ配信経由の売り上げが5倍に増加
- カードタイプメッセージを活用したところ、リッチメッセージに比べてクリック率が2倍、メッセージ経由の売り上げが3倍を記録
メルマガに代わる、情報発信ツールを見つけたい
1994年に観光土産卸として創業した味源は、麺類、菓子類の製造を始め、食品製造卸を中心に事業を拡大してきました。近年は魚チップスの「SABACHi(サバチ)」や「TUNACHi(ツナチ)」が大ヒット。さらに「自然の館」の屋号で展開するEC事業でも、4種のミックスナッツ「ラッキーミックス」や万能和風だし「味源のだし」などのオリジナル商品の売れ行きが好調で、業績を大きく伸ばしています。
「特に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大後は巣ごもり需要が増加した影響で、ECモールの売り上げが急増しました」
有限会社味源 EC事業部 石原悠資氏
石原氏はECモールの売り上げ増加に寄与しているのが、「LINE公式アカウント」だと明かします。
味源は楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールごとに「自然の館」のLINE公式アカウントを開設し、それぞれの担当者が各モールへ誘導するためのメッセージ配信などを行っています。ECモール事業全体の売り上げの約3割を占める「自然の館Yahoo!ショッピング店」では、2021年10月からLINE公式アカウントを導入しました。
「もともと、Yahoo!ショッピングを利用するユーザーへの情報発信にはメルマガを使用していましたが、開封率やクリック率、メルマガ経由の売り上げが低迷していました。メルマガよりも情報を届けられるツールとして注目したのが、LINE公式アカウントです。LINE公式アカウントであれば一斉配信だけでなく、ターゲットを絞った配信も行えます」
運用に際してのKPIは、「開封率55%」と「クリック率15%」に設定しました。「メッセージ経由でECモールに遷移するユーザーが増えれば、自ずと売り上げも増加すると見込んだ」と、石原氏は説明します。
「国内の月間利用者数9,000万人(2021年12月末時点)が日常的に使用しているLINEはいまや生活インフラとなりつつあります。LINE公式アカウントはプッシュ型のメッセージが配信できますし、開封率の向上はもちろん、サイト流入数や購買数の増加につなげられるのではないかと考えました。私は『友だち』を『自社のファン』と捉えているのですが、ファンに確実にメッセージを届けられるLINE公式アカウントは、これからの時代、EC事業の販促に欠かせないツールとなるでしょう」
事前告知とリマインド配信により売り上げが5倍以上に増加
Yahoo!ショッピングでは、毎週日曜日により高いポイント還元や割引セールが開催されています。日曜日のキャンペーンを狙って購入するユーザーも多いことから、出店している企業にとって、日曜日は1週間で最も売り上げが見込める販促効果の高い日です。
実際に「自然の館Yahoo!ショッピング店」のLINE公式アカウントでも、メッセージ配信は週末が中心です。「ユーザーにとって有益な情報を小まめに配信することで、売り上げは確実に増加する」と石原氏は力説します。
「導入当初は日曜日のみ、お買い得情報や割引クーポンの配信を行っていましたが、配信タイミングの効果検証を行ってみることにしました。例えば、前日の土曜日にセールの事前告知としてメッセージを配信し、当日の午前中にクーポンを配信。さらに当日の午後に駆け込み購入を狙ったリマインド配信を行ったところ、売り上げは5倍以上に増加しました」
リマインド配信の一例。機械的なテキストではなく、友人から届くメッセージのように親しみやすいテキストを心掛けている
検証によって、石原氏は「小まめなメッセージ配信が成果につながる」ことを実感します。しかし、頻繁に配信することで、ブロックされてしまうリスクも高まります。そこで効果検証を繰り返し、現在は「土曜日に事前告知を1回、日曜日の夕方にリマインド配信を1回」行っています。リアルタイムな情報が届いているという「ライブ感」を出すため、あえて厳密な配信時刻は決めていないそうです。
カードタイプメッセージの活用で、クリック率と売り上げが増加
配信タイミングだけでなく、配信内容についても検証を重ね、「メッセージ内容はとにかくシンプルに分かりやすく」「リッチメッセージの訴求や遷移先はなるべく一つに絞る」「情報量が多い場合は、メッセージを分ける」など、効果的な運用方法を追求してきました。
「特にユーザーの反応が良いのが、カルーセル形式で複数の情報を配信できる『カードタイプメッセージ』を用いた配信です。カードに掲載する情報は、絶対にタップしてもらいたい情報を1枚目に配置するというように、並べる順番も模索しています。試行錯誤を重ねた結果、リッチメッセージと比較して、クリック率は2倍、メッセージ経由の売り上げは3倍以上を記録しました」
事前エントリーが必要なキャンペーンや期間限定の割引クーポンなど、クリックしてほしい情報を前に配置
こうした工夫が功を奏し、同LINE公式アカウントではクリック率が20%以上となる配信が多数で、30%を超えることも珍しくありません。また、Yahoo!ショッピングへの遷移数はメルマガの約2倍を記録しています。運用結果を踏まえ、石原氏はLINE公式アカウントを「メルマガの上位互換的なツール」と表現します。
「ECモールへの新たな流入経路としてLINE公式アカウントが加わったことで、売り上げは大幅に増加しました。運用面から見ても、メッセージの作成や配信設定が簡単で、経験がない人でもすぐに運用できるようになると思います。現在、メルマガを軸に販促を行っているのであれば、LINE公式アカウントを活用しない手はありません。メルマガの文面をメッセージに流用することでさらに運用の手間も省けるので、メルマガの開封率やクリック率の低さで悩んでいるマーケティング担当者の方は、ぜひLINE公式アカウントを試してみてください」
LINE公式アカウントの導入によって新たなユーザー層にもリーチ
LINE公式アカウントの運用開始から約半年、売り上げだけでなく、購買層も拡大しています。
「もともと当社の商品は40~50代が主な購買層ですが、LINEの導入によって若年層の購買が増えたように感じています。『メッセージを見たのですが、この商品にクーポンは使えますか?』といったメッセージ内容に関する問い合わせも増えました。メルマガでは訴求できなかった新たなユーザー層にリーチでき、しっかりメッセージも読んでいただいているという実感があります」
石原氏はLINE公式アカウントを活用した今後の構想として、チャットボットを活用したレコメンド機能の実現を描いています。例えば、リッチメニューをタップすると、「お好みの味は?」「いまの気分は?」などの文章とともにいくつかの商品が表示され、それを選択していくと、ユーザーに最適な商品が見つかるという仕組みです。
「主力商品である菓子類や麺類は、単価が安く、気軽にリピートしやすい商品でもあります。ユーザー一人ひとりに合ったメッセージを送ってリピーターを育成し、LTVを高める方法についても検討していきます。そのために当社の持つ顧客データとLINEアカウントのIDを連携して、より精度の高いセグメント配信にも取り組んでいきたいです。丁寧な運用を地道に続けていけば確実に売り上げにつながるので、今後もLINE公式アカウントを販促の主力ツールとして活用していきたいと思います」
(公開:2022年3月/取材・文:相澤良晃)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は有限会社味源調べです