ファミリーレストラン「ステーキのどん」を展開する株式会社アークミール(以下、アークミール)は、2019年にLINE公式アカウントを開設し、ユーザーへの情報発信のメインツールとして活用してきました。
さらに2021年には、LINE上で来店予約ができる「LINEで予約」を導入しています。導入の背景と現状の成果、友だちを増やすことの重要性について、同社 営業企画部 どん業態担当の三俣憲司氏(以下、三俣氏)に話を聞きました。
- コロナ禍でユーザーの来店動向が変化したため、新規顧客獲得に向けた新たな施策を実施したい
- 「ステーキのどん」の1店舗で「LINEで予約」をトライアルとして活用
- トライアル後は全店舗で「LINEで予約」を導入
- 「LINEで予約」の活用によってリピーターを獲得
- 全店舗で「LINEで予約」を導入後、最初の5日間で約650組が「LINEで予約」を利用。1店舗あたり、平均10組程度が「LINEで予約」経由で来店
LINE公式アカウントはリピーター獲得にも不可欠なツール
「ステーキのどん」「ステーキハウス フォルクス」「しゃぶしゃぶすき焼 どん亭」「ドン・イタリアーノ」の4ブランドを展開しているアークミールは、ユーザーへの情報発信ツールとしてSNSやメールの活用に注力してきました。2019年にそれぞれのブランドのLINE公式アカウントを開設して以降、ユーザーとのコミュニケーションツールとしてLINE公式アカウントを活用しています。
現在は全ブランド・計142店舗それぞれのLINE公式アカウントを開設し、新メニューや割引キャンペーンなどの情報を発信しています。「ステーキのどん」のマーケティング戦略を統括する三俣氏は、「ブランドごとのイメージや顧客層に合わせ、親しみやすいメッセージの配信を心掛けている」と話します。
「全国に58店舗を展開している『ステーキのどん』では、月3~5回ほどLINE公式アカウントからメッセージを配信しています。『ステーキのどん』は4ブランドの中では最も客単価が低く、日常的にご利用されるお客さまも多いので、あえてフランクな言葉でテキストを作成し、読んでいて楽しい気分になる内容を意識しています」
株式会社アークミール 営業企画部 どん業態担当 三俣 憲司氏
友だちは主に店頭での声がけによって追加を促し、その後の来店を促すために毎月1日にドリンクバーのクーポンを配布しています。
「友だちを増やすには、直接スタッフがお客さまとコミュニケーションをとることが最も効果的だと考えています。そのため、お客さまを席にご案内する際などに友だち限定の割引サービスがあることを説明して、追加を促しています。
LINE公式アカウントを導入した当初は友だちの重要性がまだ社内でも広がっていなかったのですが、エリアマネージャーや各店長に『LINE公式アカウントの友だちは、ブランドのファンと同じような存在だ』と繰り返し説明したことで、各店で積極的に友だち追加を促すようになりました。『私のお店と友だちになって、これからもお店に来てくださいね』という気持ちで声がけをすれば、ホスピタリティーも向上していくと考えています。現在は友だち数も増えてきて、来店客数のうち約5%がその場で友だち追加をしてくれます」
「ステーキのどん」のメインユーザーは30~40代のファミリー層ですが、次世代のユーザーのファンづくりという観点から、最近は10代、20代のリピーター獲得にも力を入れています。若年層を中心に日常生活に浸透しているLINE公式アカウントの活用は、リピーター獲得のためにも欠かせないツールとなっています。
「現在は、全社的にLINE公式アカウントをどんどん活用していこうという方針でマーケティング戦略を進めています。ユーザーの属性を限定してメッセージを配信するなど、細かい設定をすることで配信コストを抑えつつ、ユーザーに合わせたコミュニケーションを行えることがLINE公式アカウントの魅力だと感じています」
リピーターを獲得し、「LINEで予約」の効果を実感
「ステーキのどん」では、LINE上で簡単に店舗の予約ができる「LINEで予約」を2021年8月から全店で導入しています。
「LINEで予約」は、パートナー(ぐるなび、GATE、ebica)加盟店を対象としたLINE上で予約が完結できるサービスです。ユーザーは各店舗のLINE公式アカウントのプロフィール、メッセージなどから、別のブラウザやアプリに切り替えることなくLINEの中で来店予約を完結させることができます。
「LINEで予約」の遷移イメージ
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「LINEで予約」を導入したきっかけについて、三俣氏は次のように話します。
「コロナ禍の緊急事態宣言によって営業時間やサービス内容の変更を余儀なくされた時期もあり、来店客数が大きく減少しました。何か打開策はないかと思っていたところ、LINE社から『LINEで予約』を導入してキャンペーンを実施してみてはどうかという提案をいただいたのです。そこで、2021年6月14日から7月13日にかけて、ステーキのどん高槻店(大阪府高槻市)でトライアルを実施しました。その結果、予想以上の成果を得られたため、全店での導入に踏み切りました」
「ステーキのどん」では、もともとWebサイトから店舗予約ができる仕組みを採用していましたが、「LINEで予約」のトライアル実施にあたり、同社はグルメサイトの「ぐるなび」と連携しました。
「高槻店のトライアルでは、『LINEで予約』を利用したお客さま限定で、ポテトフライを無料でプレゼントしました。店頭でLINE公式アカウントの友だち追加を呼びかけ、友だちになっていただいた方が『LINEで予約』を活用してくださることによって、着実にリピーターの獲得につながっていると思います」
8月25日から全店舗で導入開始した際にも同様のインセンティブを設定した結果、最初の5日間で約650組が「LINEで予約」を利用しました。1店舗あたり、平均10組程度になる計算です。
「全店舗導入にあたっては、店舗側のオペレーションを特に変更する必要もなく、導入から稼働までスムーズに進みました。告知はリッチメニューに予約ボタンを追加して、ユーザーの目を引くようにしました。インセンティブの配布期間が終わったあとも『LINEで予約』経由の予約数は安定していて、12月9日時点で、2,500組7,000名以上のお客さまがLINEから予約しています」
リッチメニューに「LINEで予約」の導線を設置
友だちとの関係構築に向け、LINEを通じたコミュニケーションを充実化
「LINEで予約」の導入から約5カ月が経過し、緊急事態宣言も明けたことで利用者数も順調に伸長しています。
「全店舗への導入当初は、『前日まで』『当日10時まで』などと、店舗ごとに予約受付時間がバラバラだったため、お客さまから問い合わせをいただくことがありました。しかし、『LINEで予約』は当日の予約にも対応できます。オーダーストップの時間まで予約できるように設定にしたことで、お客さまの利便性も高まっていると思います」
外食需要が戻りつつある今、時間帯によっては満席になる店舗も多くなりました。しかし三俣氏は、「まだお客さまが以前のようには戻っていない店舗もあるので、新規顧客を獲得するための施策にも取り組んでいきたい」と意気込みを語ります。
「今後はLINEチラシを活用して、新規顧客をどんどん獲得していきたいと考えています。その一方で、現在友だちになってくれているユーザーとの関係構築にもより力を入れていきます。クーポンなどのインセンティブを受け取った後にブロックされるというのは、飲食業に限らず共通の悩みだと思いますが、たとえば自動でメッセージを配信できる『ステップ配信』機能を活用して友だち追加をしていただいた当日、3日後、10日後……と、お得な情報を配信することで、ブロック率を下げられるのではないかと期待しています。『LINEを開けば、いつでもお得な情報が受け取れる』と友だちに思われるよう、さらにLINEを通じたコミュニケーションを充実させていきたいです」
(公開:2022年1月/取材・文:相澤良晃)
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