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ファネル全体を俯瞰したストーリー性のあるコミュニケーションの実現を目指す、アサヒビールの道のり

アサヒビール株式会社

2025.01.16

アサヒビール株式会社 理事 マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 部長 望月省二氏

2024年4月、アサヒビール株式会社(以下、アサヒビール)は宣伝部とデジタルマーケティグ部を統合して「コミュニケーションデザイン部」を新設。これまで以上にファネル全体を俯瞰したストーリー性のあるコミュニケーションの実現を目指しています。Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)LINE公式アカウントをはじめとするLINEヤフーの法人向けサービスは、実現に向けてどのように貢献できるのか。アサヒビールの望月省二氏(以下、望月氏)に話を聞きました。

目的

・ユーザーごとに最適化しながら、ファネル全体を一気通貫するコミュニケーションを実現したい
・広告宣伝領域とCRM領域でデータを相互活用し、循環型の施策を行いたい

施策

・Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)でキャンペーンの情報を配信し、LINE公式アカウントへ誘導。ターゲットごとにメッセージを配信し、態度変容や購買に寄与するのか検証
・アサヒビールが持つ1st partyデータと、LINEヤフーが持つデータを掛け合わせてユーザーをセグメント化し、類似拡張を行ってLINEアプリのトークリスト上に表示される「Talk Head View Custom」を出稿

効果

・認知獲得からファン化まで、ファネル全体を俯瞰したストーリー性のあるコミュニケーションを実現
・アサヒビールの1st partyデータとLINEヤフーのデータを掛け合わせた配信でのキャンペーン参加率が、最も高い結果を記録

宣伝領域とCRM領域の部署を統合し、コミュニケーションデザイン部を新設

店で飲む生ジョッキと同じ感覚でビールを楽しめる「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」、フタを開けると弾ける炭酸の泡と共に、生のレモンスライスが浮かび上がってくる「未来のレモンサワー」など、話題の商品を次々に展開しているアサヒビール。同社のマーケティング本部において、2024年4月に新設されたのが「コミュニケーションデザイン部」です。

 

コミュニケーションデザイン部は、広告宣伝活動を担ってきた宣伝部と、既存顧客とのCRM(顧客関係管理)構築等、デジタル技術を活用したマーケティング施策を担ってきたデジタルマーケティグ部を統合して新設された部門です。認知獲得からユーザーのファン化までのファネル全体を俯瞰しながら、各ファネル(ターゲット)や、時期、タイミング等に応じたストーリー性のあるコミュニケーションを実現することをミッションとしています。

同部で部長を務める望月氏は、2005年から2024年3月まで宣伝部に所属し、主にユーザーのインサイトを追求したコンテンツ開発やメディア展開の最適化を目指してきました。今回のコミュニケーションデザイン部新設は、組織面の課題とユーザーを取り巻くコミュニケーションのあり方の変化が背景にあると語ります。

 

「以前から両部門とも『お客さまを全ての活動の中心に置く』ことを前提に、商品ブランドやコーポレートブランド価値の向上に励んできました。新しい組織でもお客さまの心を動かすコミュニケーションの実現を志していることは変わりません。


コミュニケーションデザインとは、お客さまと双方向でつながり、ストーリー性をもって共感を創造していくことだと解釈しています。前提として、当社はBtoBtoC企業のため全てのお客さまとOne to Oneでつながっていないという難しさがありつつ、コミュニケーションデザインを実行していくうえで組織面の課題が大きく二つありました。


一つは、宣伝部の領域である新規ユーザー獲得を目的とした情報発信活動と、デジタルマーケティング部の領域であるユーザーと長期的な関係構築を目指すCRM活動が分断されていたことです。お客さまごとに一気通貫したコミュニケーションがなかなか実現できていないという課題がありました。


もう一つは、データ活用における課題です。デジタルマーケティング部の領域で、せっかく多くのCRMデータを保有しているのに、宣伝部の領域ではうまく活用できていないなど、データの有効活用ができていなかったのです」

アサヒビール株式会社 理事 マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 部長 望月省二氏

また、広告コミュニケーションの変化として、望月氏はインターネットやSNSの発展によって既存マスメディアの影響力が分散し、ユーザー側からの情報発信やレビューが大きな力を持つようになってきたと説明します。

 

「従来は企業が価値を規定して一方的に情報を発信していましたが、これからは企業とお客さまが共に新たな価値をつくる時代になっていくと言われています。
これまでのように宣伝領域とCRM領域が分断している状態では、ファネル全体がつながって最適化されたコミュニケーションは実現できません。新設されたコミュニケーションデザイン部では、お客さまを中心に置きながら、ファネル全体を俯瞰したストーリー性と驚きのあるコミュニケーションデザインを目指しています」

統合前は宣伝領域でYahoo!広告、CRM領域でLINE公式アカウントを活用

アサヒビールでは、以前からLINEヤフーの法人向けサービスを活用した施策を行っています。例えば、宣伝領域では、新商品や新プロモーションの立ち上げに合わせて「Yahoo!広告 ディスプレイ広告(予約型)」への出稿を展開。また、「Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)」のターゲティング精度を向上させるため、3rd party データとLINEヤフーのデータを掛け合わせ、実際の購買者分析や広告施策も実施しています。

 

分析を行う中で、例えば同じノンアルコールビールである「アサヒゼロ」と「アサヒドライゼロ」でも、一方は「情報通でお酒にこだわりがある層」、もう一方は「アウトドアに関心が高く、お酒で太ることを気にし始めた層」など購買ユーザー層に違いがあることを可視化。ターゲットに合わせた広告を配信することで広告効果を向上しました。

そしてCRM領域では、商品や店頭、施設などのあらゆるユーザー接点の入口にLINE公式アカウントを活用してきました。例えば友だちのLINEアカウントのユーザーIDを取得し(※1)、キャンペーン参加状況やメッセージの反応状況、アンケート回答などのデータをAIも用いながら分析。分析結果を基にしたセグメントを設計し、メッセージ配信に活かしてきました。

 

※1 LINEユーザーのデータ取得・活用には、ユーザーの許諾が必要です。

「LINE公式アカウントはファンづくりの基盤であると考えています。LINEは圧倒的なユーザー数を擁していることもあり、LINEのユーザーIDを中心とした施策を設計してきました。さまざまな接点から取得したデータを基に、お客さまにとって魅力的なコミュニケーションとはどのようなものなのかを分析しています。分析にAIを用いるなど精度を高めることで、より有益な情報を届け、お客さまとの絆を深めることを目指しています」

 

2021年7月に開設したLINE公式アカウントの友だち数は、2024年10月時点で約2095万人に上ります。年間購入金額も、アサヒビールの購入者全体と比較してLINE公式アカウントの友だちは151%、よりエンゲージメントが高い「友だち高解像度層(※2)」では167%向上するという成果が出ました。

 

※2 「友だち高解像度層」は、アサヒビール独自の定義です。

組織の統合後はデータの循環・相互活用による一気通貫した施策を実行

コミュニケーションデザイン部では現在、広告宣伝領域とCRM領域でデータを相互活用し、循環させていく施策に注力しています。その一環として行っているのが、LINEヤフーの法人向けサービスを活用した二つの取り組みです。

一つは、広告宣伝領域からCRM領域まで一気通貫したコミュニケーション施策です。同社の発泡酒「アサヒ スタイルフリー<生>」の購買者分析を行って設計したターゲットに対し、Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)でキャンペーンを告知する広告を配信。広告に反応したユーザーには、キャンペーン参加時にLINE公式アカウントの友だち追加を促しました。その後、友だちに対してターゲットごとにメッセージを配信し、態度変容や購買に寄与するのか検証を行っています。

もう一つが、CRM領域のデータを活用して広告のターゲティング精度を効率化する施策です。同社のチューハイブランド「アサヒ贅沢搾り」のプロモーションとして、アサヒビールが持つ1st partyデータと、LINEヤフーが持つデータを掛け合わせてセグメント化し、類似拡張を行ってLINEアプリのトークリスト上に表示される「Talk Head View Custom」を出稿しました。

これにより、キャンペーン参加率は向上。Yahoo! JAPAN共通オーディエンスによる購買意向ターゲティングに比べ、Yahoo!検索とYahoo!ショッピングの持つデータを掛け合わせたターゲティング配信は162%、アサヒビールの1st partyデータとLINEヤフーのデータを掛け合わせると、さらに176%も向上するという大きな成果が得られました。

「2023年10月にLINEヤフーが誕生しましたが、現在フルファネルで一気通貫できるサービスを持つのはLINEヤフーしかないと思います。多くのユーザーにリーチできる広告宣伝力があるヤフーと、きめ細かいコミュニケーションでCRM構築に強いLINE公式アカウントがつながったことで、一気通貫したコミュニケーションが実現できると思います。

 

実際、目指しているOne to Oneのつながりに近い体験がありました。当社では製造後3日以内のスーパードライを『工場できたて』として月末に販売しているのですが、過去の購入者の方を対象にLINE公式アカウントからも案内を送っています。ある時、その配信をしなかったら、配信がなかったことについて問い合わせがあったんです。届けたい情報がその情報が必要なお客さまにちゃんと届いていると感じましたね」

今後は、蓄積している1st partyデータに加え、メディアや広告のデータ、流通・決済などの3rd partyデータを掛け合わせて分析し、各ファネルに応じた最適なコミュニケーションを模索していくといいます。その一環としてLINEヤフーの保有する多様なデータを活用しながら顧客理解にも取り組んでいく予定です。

 

「私たちは、最終的には『お客さまの態度変容』を目指しています。そのためには自社内はもちろん、外部データとの連携は欠かせません。また、“(無駄のない)筋肉質”で“循環性が良い”フルファネルを構築することが重要であるとイメージしています。広告宣伝領域とCRM領域のファネルでの精度の高い取り組みがうまく繋がれば、お客さまに“最適”なコミュニケーションを無駄なく“効率的”に提供し続けることができるはずです。これからも、お客さまに共感して、買ってもらって、ファンであり続けてもらえるようなコミュニケーションを試行錯誤していきたいと思います」

 

(公開:2025年1月、取材・文/岩﨑史絵、写真/慎芝賢)

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です

企業名 アサヒビール株式会社
所在地
東京都墨田区
事業内容
ビール類、ビール類以外の酒類(洋酒、RTD、ワイン、焼酎)及びアルコールテイスト飲料の製造・販売