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アサヒビールの家庭用生ビールサービス「THE DRAFTERS」が、 LINE公式アカウント起点で設計されている理由とは

アサヒビール株式会社

2022.07.26

アサヒビール株式会社 新規事業部 次長 兼 デジタルマーケティング部 担当部長 西村 拓哉氏(中央)
株式会社ZEALS 取締役COO 遠藤 竜太氏(左)
株式会社ZEALS チャットコマース事業本部 福山 哲平氏(右)

アサヒビール株式会社は2021年5月、家庭用生ビールサービス「THE DRAFTERS(ドラフターズ)」をリリース。サービスの申し込みやCRM施策など、ユーザーとのコミュニケーションをLINE公式アカウントに集約しています。その背景や活用方法などについて、同社「THE DRAFTERS」のブランドマネージャー西村拓哉氏(以下、西村氏)と、運用をサポートする株式会社ZEALSの遠藤竜太氏(以下、遠藤氏)と福山哲平氏(以下、福山氏)に話を伺いました。

目的
  • 新たな家庭用生ビールサービス「THE DRAFTERS」(ドラフターズ)の会員向けプラットフォームを構築したい
  • ユーザーとなる会員と直接コミュニケーションを図りながら、取得したデータを各施策で活用したい
施策
  • 「THE DRAFTERS」のLINE公式アカウントを開設し、サービスの申し込みからCRM(カスタマーリレーションマネージメントの略)などをLINEに集約
  • 株式会社ZEALSが提供するチャットコマース「ジールス」を導入し、チャットボットでユーザーとのコミュニケーションを行いながら取得したデータを可視化
効果
  • 集客のための広告から申し込み、情報発信からCRMまで、一連の取り組みをLINEのプラットフォームで展開することで、シームレスでストレスのないユーザー体験を提供
  • サービスのローンチから1年で約2万人の会員数を記録

サービスのインターフェースをLINEに集約

「THE DRAFTERS(ドラフターズ)」は、アサヒビール社がこれまで業務用で培った技術を結集した「本格泡リッチサーバー」で注ぐ、本当にうまい生ビールを、家庭で楽しむことができる会員制生ビールサービスです。会員には「本格泡リッチサーバー」がレンタルされ、月2回、自宅に2Lの生ビールが届きます。

 

「日本のアルコール市場は縮小傾向にあると言われていますが、それ以前から消費者の価値観は多様化し、アルコール度数の選択肢が増えてきたように、欲しいものを好きなように選べる時代になっています。そんな中、メーカーとしては消費者と直接的な接点を持ち、実際のユーザーと一緒に新たな価値を創造することで、これまでより小さな量の価値であっても、そこに高いニーズがあり、的確に求める人に届けることが可能であれば、新しい価値を還元していく持続可能な仕組みをつくることができます。商品をつくる、というメーカーとしての使命はもちろん変わりませんが、つくるまでの共創のプロセス、モノだけではなくサービスとしての側面を育てることで、未来に向けて変革していくことが必要になりました。そうした背景からユーザーと直接、つながることができるサービスとしてドラフターズをローンチしました」(西村氏)

アサヒビール株式会社 新規事業部 次長 兼 デジタルマーケティング部 担当部長 西村 拓哉氏

サービス立ち上げに当たり、西村氏はドラフターズのLINE公式アカウントを開設。「アサヒビール」という企業としてのLINE公式アカウントは既に存在していましたが、ブランドアカウントとしての開設は会社としても初の試みだったといいます。そこには、ドラフターズというサービスのタッチポイントを「LINEに集約させたい」という思惑がありました。

 

LINEに集約してCRMを実現させたい――。西村氏からの要望に応えたのが、現在もドラフターズのLINE公式アカウント運用をサポートする株式会社ZEALSでした。

 

「ユーザーが慣れ親しんでいるLINEですべてを完結させることができれば、よりシームレスな体験が実現できます。LINEの役割を『あくまでマーケティング手法の一つ』と考える企業もいる中、西村さまの要望は革新的かつユニークな決断だと思いました」(遠藤氏)

株式会社ZEALS 取締役COO 遠藤 竜太氏

親指の可動域で全てが完結するシームレスな設計

ドラフターズを立ち上げる前、デジタルマーケティング部で「アサヒビール」のLINE公式アカウントにも関わっていた経験から「メッセージ配信の開封率の高さ、LINEだからこそ可能になるコミュニケーションの特長は把握していた」と話す西村氏。当初から「ユーザーの要望をLINEで簡易に実現させる」ことにこだわった理由を、以下のように振り返ります。

 

「立ち上げを任された当初、リリースまでに与えられた期間は半年程度。その期間内に登録までの導線や会員に対するコミュニケーション施策などの全てを整える必要がありました。その状況下において、なんでも中途半端にやるのではなく、エッセンシャル思考でLINE公式アカウントを中心にLINEというプラットフォームをフル活用すれば、集客、接客、会員CRMといった一連の流れを全て完結させることができる上、ユーザーにとってもストレスのないシームレスな体験が提供できると思い至りました」(西村氏)

 

現在、ドラフターズというサービスへの登録、CRMを含めたユーザーとのコミュニケーションの各ファネルが、LINE公式アカウントに集約されています。リッチメニューからは、生ビールを配送する日時が変更できるほか、おつまみレシピサイトやYouTubeページ、会員専用のマイページ、FAQ(よくある質問)にも遷移できるようにしています。これは、「親指の可動域で全てが完結できる設計を重視したい」という西村氏の要望に応え、ZEALSが設計・開発を進めた結果だといいます。

LINE公式アカウント「ドラフターズ」のリッチメニュー。「本会員」と「未登録」によって表示されるメニューが異なる

また、CRM施策ではZEALSが開発・提供しているチャットコマース®︎「ジールス」を導入。ジールスは高度なコミュニケーションデザインが可能なAIチャットボットサービスです。ドラフターズでは、ユーザーの入会前から入会後のナーチャリング施策を機能させることが目的だったといいます。

チャットボットデータで「CVRの傾向が浮かび上がる」

そもそも、ドラフターズ本会員への申し込みはLINE公式アカウントの「簡単アンケート登録」からになっています。

 

「申し込みはLINE公式アカウントを友だち追加することから始まります。追加するとアンケートが提示され、回答するだけで申し込みが完了し(簡単アンケート登録)、その後、案内に従って本会員登録に進む流れです。この一連のコミュニケーションを、ジールスのチャットボットが行っています。アンケートの途中で離脱させないためのシナリオ検証も組み込んでいて、今ではアンケート回答を始めたほとんどのユーザーが簡単アンケート登録まで進んでいます」(福山氏)

本会員登録後には、LINE公式アカウントから「ユーザーの属性に適した」コンテンツが定期配信されます。その数、常時10種類以上。それだけ充実したコンテンツを配信できる理由もジールスによるものです。

 

「例えば、登録間もない初期のユーザーに対しては、サーバーの取り扱い動画やFAQが必要です。一方、登録からある程度の期間が経っているユーザーであれば、そうしたコンテンツよりもクリエイターさんとコラボしたYou Tube動画などのほうが適しています。また、友だち追加したものの申し込みに至っていないユーザーには、サービスの魅力を伝える必要があります。こうした配信設計は登録期間や購入回数を確認すれば実現できるものもありますが、ドラフターズの場合、そこにアンケートで取得したチャットボットデータを組み込んでいます」(西村氏)

 

ユーザーが最初に入力するアンケートでは、「自宅でお酒を飲む頻度・量」「よく飲むビールの銘柄」「ビールを一緒に飲むときの相手」……などの設問に回答してもらいます。こうした「サイコグラフィックデータ」の取得により、ユーザーのインサイトが導き出されるといいます。

 

「従来のWeb広告で取得可能なデモグラフィックやジオグラフィックと異なり、ニーズ・嗜好性・行動特性・態度などの心理的要素であるサイコグラフィックデータを取得しています。サイコグラフィックを取得することでユーザー像を導き出すことができ、なぜ買うのか・買わないのかといったインサイトを深堀りすることができます。インサイトを活用することで、今後のプロモーションの方向性はもちろんですが、サービス内容のアップデートにも活用することができます」(福山氏)

株式会社ZEALS チャットコマース事業本部 福山 哲平氏

「通常のマーケティング活動で、『普段どういう人とビールを飲みますか?』などの設問に対する回答を取得するのは難しいと思います。しかし、チャットボットデータを活用すればコンバージョンの傾向を探り、広告施策やコンテンツ配信など次なる打ち手につなげることができます」(遠藤氏)

 

さらに、会員同士が交流できるオープンチャット「乾杯!広場」も開設。広場では会員同士がサーバーの使い方に関する悩みを解決するためにコミュニケーションを取ったり、ビールに合うおつまみに関するトークが繰り広げられたりすることも。

ドラフターズ会員限定のオープンチャット

「ドラフターズでは、会員を継続していただくため、チャーンレート(サービス利用停止のパーセンテージ)を気にしています。離反防止のためには、コンテンツ配信などの一方的なコミュニケーションだけでなく、会員同士で盛り上がってもらう必要があると考えオープンチャットを開設しました。正直、当初は『本当に自主的に交流が行われるのだろうか』と半信半疑でしたが、開設初日に大勢の会員が集まり、私のスマホの通知が止まらないほど盛り上がっていて驚きました」(西村氏)

 

数々の施策の結果、ドラフターズはローンチから1年後の現在(2022年6月時点)、約2万人の会員数を記録。西村氏はこれまでの1年間を次のように総括します。

 

「LINE公式アカウントと『AIチャットボット×コミュニケーションデザインでユーザーに新たな接客体験・購買体験を届ける』というZEALSさまの強みが最大限に発揮され、広告からアンケート、本会員登録、本会員へのメッセージ配信からオープンチャットという、一連の取り組みを同一プラットフォームで提供することができました。結果、会員さまにとって間が分断されてないスムーズな顧客体験につながり、私の当初の構想を実現することができたと考えています」(西村氏)

 

 

 

(公開:2022年7月、取材・文/安田博勇、写真/小川孝行)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です

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