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LINE公式アカウント LINEミニアプリ

自社EC購入者の1〜4割がLINE経由!LINE公式アカウントで実現するELCジャパンの「ソーシャルコマースエコシステム」

ELCジャパン合同会社(エスティローダーカンパニーズ合同会社)

2024.08.01

ELCジャパン合同会社
Senior Director, Digital Commerce and Business Development(Online & Omni)
Tinglong DONG氏

スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケアにおいて複数のブランドを展開するELCジャパン合同会社(以下、ELCジャパン)は、2013年からLINE公式アカウントを開設し、各ブランドの訴求に利用してきました。近年は、「ソーシャルコマースエコシステム」という独自のデジタルマーケティング及びEC戦略を打ち出し、各国でシェア拡大を実現しています。「その戦略を日本で成功させるには、LINE公式アカウントの活用がカギになる」と語る同社のTinglong DONG氏(以下、ドン氏)に、LINEを使った取り組みや得られた成果について話を聞きました。

目的
  • 伸び代の多い日本のプレステージ・ビューティー市場において、ブランド自らユーザーに近づき、サービスの利便性の高める「ソーシャルコマースエコシステム」を推進したい
施策
  • リーチや開封だけでなくCRM(顧客関係管理)も見込めるLINEを活用して、各種施策を設計・実行
  • 10ブランドでLINE公式アカウントを開設して友だちを集め、一定数以上の友だちを集めたブランドではさまざまなセグメントと訴求内容でメッセージを配信
  • サンプルプレゼンやスタンプラリーなどの施策を通じてID連携を強化
  • 2024年3月に「トムフォードビューティー」でLINEミニアプリを活用した自社ECをローンチ
効果
  • ID連携済みのユーザーは、未連携ユーザーと比べてLTVが数倍高い
  • ブランドごとに差があるものの、自社ECサイトの購入者のうち1~4割がLINE経由
  • トムフォードビューティーのLINEミニアプリでは、既存顧客と異なるユーザー層がECを利用し、売り上げの底上げにつながった

最重要市場の1つである日本では、LINEがマーケティングの柱になる

アメリカに本社を置くELCは、スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケアなどのカテゴリーで20以上のブランドを持つグローバルカンパニーです。その日本法人であるELCジャパンは、「エスティローダー(Estée Lauder)」や「クリニーク(CLINIQUE)」など、12のブランドの製造・輸出入・販売を行っており、国内のプレステージ・ビューティー(※1)市場を牽引しています。

  • 1 高価格帯の化粧品

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同社でオンラインセールスおよびオムニチャネル(※2)を統括するドン氏は、「日本は最も重要な市場の1つ」と断言します。

  • 2 店舗、ECサイト、SNSなどオンライン/オフラインを問わず、あらゆる顧客接点でコミュニケーションを行い、販売促進につなげる戦略

「日本のビューティー市場規模は約2兆円を超えており、これは世界でも最大級です。ここ数年は、特にフレグランスの需要が伸びており、訪日インバウンドの購買意欲も旺盛です。一方、ELCはプレステージ・ビューティーのカテゴリーにおいて、グローバルでも、APAC(アジア太平洋)でもトップシェアを獲得していますが、日本単体ではまだまだ伸び代が多い状況です。強力なライバルメーカーもあるなかで、いかに他社との差別化を図っていくかが今後、日本でシェアを拡大していくためのポイントになると考えています」

インタビューカット
ELCジャパン合同会社(エスティローダーカンパニーズ合同会社)
Senior Director, Digital Commerce and Business Development(Online & Omni)
Tinglong DONG氏

ELCはブランドが持つ価値を最大化するために、マーケティング施策をブランドごとに設計しています。特に、デジタル領域では各ブランドの成長段階に合わせて施策を実行するのが重要で、そのために「コミュニケーションを軸としながら、拡張性のあるLINEのようなアプリケーションが必要不可欠だ」とドン氏は力説します。

 

「従来、ECサイトのマーケティング施策は、ディスプレイ広告などを介して“いかにお客様にサイト訪問してもらうか”に焦点が置かれていました。しかしELCでは、“ブランド側からお客様に近づいて、ユーザー視点でサービスの利便性を高める”という考え方で施策を設計しています。私たちは、これを『ソーシャルコマースエコシステム』と呼び、LINEヤフーの掲げる『Connect One』の構想にとても近いと捉えています」

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LINEヤフーが2023年10月に発表したConnect Oneは、「LINE公式アカウントがすべてのLINEヤフーの法人向けサービスの起点となり、集客から予約、購買、CRMまであらゆる顧客接点を一気通貫で実現し、LTVを最大化させるプラットフォームを目指す」という構想です。

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「LINEヤフーが掲げるConnect One構想を、私たちのビジネスコンキテクストに落とし込み、具現化したものがソーシャルコマースエコステムです。実際、中国では『WeChat』、韓国では『カカオトーク』など、いわゆる“スーパーアプリ”といわれるアプリケーションを活用したソーシャルコマースエコシステムを推進しおり、すでに大きな成果を上げています。

 

日本でその中核を担うのは、幅広いユーザーを擁しており、リーチや開封だけでなくCRM(顧客関係管理)も見込めるLINEであると考えています」

ID連携を強化して、LTVが数倍に向上したブランドも

ELCジャパンでは日本で展開する12ブランドのうち、10ブランドでLINE公式アカウントを開設し、ブランドごとに運用しています(2024年5月時点)。

 

LINE公式アカウントを運用する際は、ブランドの顧客単価、エンゲージメント、ROI(投資収益率)などの指標を参考にしながら、「重視するのはやはり友だち数」とドン氏は明かします。

 

「友だちとつながってLTVを高めていくことが、ソーシャルコマースエコステムには一番大切なことです。ですから、どのブランドでも『友だちの獲得』に力を入れています。店舗で友だち追加のポップアップを設置したり、ECサイトでLINEログイン機能を導入したりと、さまざまなタッチポイントで友だち追加を促しています」

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そして、一定数以上の友だちを集めたブランドでは、地域や年代などのデモグラフィックデータや、購入した商品、頻度、金額などの多彩なデータに基づいてセグメントを設定して、メッセージを配信しています(※3)。

  • 3 LINEログインの際、ユーザーの同意を得た上でデータを活用

メッセージでは新製品やキャンペーンの情報、特別セールの案内、商品の使い方など、さまざまなコンテンツを届けることでブランドを効果的に訴求。「配信効果が高かったセグメントや訴求は、他のブランドで試すこともある」とドン氏は話します。

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そのほか、オフラインイベントの予約をLINE内で受け付けたり、周年記念サイトと連動してギフトクーポンを配布したりと、メッセージ配信以外でもLINE公式アカウントを積極的に活用しているそうです。

 

「『1.友だちの獲得』『2.メッセージ配信によるコミュニケーションを通じてユーザーとブランドの相互理解を促進』『3.エンゲージメントをさらに高めるためにイベントなどの施策を実施』。この3ステップで顧客ロイヤリティーを段階的に高めていくことが、LINE公式アカウントを中核にしたELCジャパンのマーケティング施策です。

 

そのなかで、自社の会員情報とLINEのユーザーアカウントをID連携し、お客様の解像度が高めながら施策を効果的に打つことで、LTV向上につながります。実際、あるブランドで、ID連携済みのユーザーは、未連携ユーザーと比べてLTVが数倍高いことがわかりました。そのため、ID連携を促すサンプルプレゼントやスタンプラリーのキャンペーンなど、連携率を高める施策に注力しています」

LINEミニアプリを活用した自社ECで新たな顧客層を得て、売り上げアップ

ELCジャパンが保有するブランドのうち、「エスティローダー」で最初にLINE公式アカウントを開設してから約10年。現在、ブランドごとに差があるものの、「自社ECサイトの購入者のうち、1~4割がLINEを経由している」といいます。

 

「LINE公式アカウントの成果は年々上がってきており、十分な手応えを感じています。2024年3月には、ECをお客様に一層近づけるための施策として、『トムフォードビューティー(TOM FORD BEAUTY)』でLINEミニアプリを活用した自社ECをローンチしました。まだ数カ月しか経っていませんが、限定アイテムなどを用意するなどの施策が功を奏し、売り上げは好調に伸び続けています」

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「LINEミニアプリで自社ECを設けたことで、別アプリのダウンロードやブラウザ遷移せず、購買から決済までLINE上で完結するようになりました。

 

今後、他のブランドでもLINEミニアプリを活用した自社ECを検討するかもしれませんが、ブラウザベースのECサイトは共存させる予定です。重要なのは、ユーザーにとってストレスの少ない購買体験を提供することなので、好きな販売チャネルを選択いただけるようにしていきたいと思います。

 

実際に、トムフォードビューティーでは既存顧客と異なるユーザー層がLINEミニアプリのECを利用しているようで、全体の売り上げの底上げにつながっています」

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LINE公式アカウントを軸にソーシャルコマースエコシステムを推進するドン氏は、今後の展望について次のように語ります。

インタビューカット

「今後、LINE公式アカウントを友だち追加しなくても簡単にアクセスでき、設計や使用感に関してネイティブアプリと変わらない自由度の高さを持つLINEミニアプリが実現できないか、LINEヤフーとの連携を強めていければと思います。


また、自社のデータとLINEヤフーのデータを掛け合わせることで、広告や施策の精度向上にも取り組んでみたい。せっかくLINE とYahoo! JAPANが1つの会社になったので、たとえば、『Yahoo! JAPANでトムフォードビューティーの商品を検索すると、LINEミニアプリがスムーズに立ち上がり、そのまま商品を購入できる』といった体験を提供できるようになると面白いですよね。LINEヤフーが掲げるConnect One構想の今後に期待しています」



(公開:2024年7月、取材・文/相澤良晃、写真/山﨑美津留)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です

企業ロゴ
企業名 ELCジャパン合同会社(エスティローダーカンパニーズ合同会社)
所在地
東京都千代田区丸の内3丁目2番3号 丸の内二重橋ビルディング20階
事業内容
プレステージ・ブランドの製造・輸出入・販売
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