大阪市内で7店舗の業務用スーパーを展開するエンド商事株式会社(以下、エンド商事)は、来店促進のための特売情報を幅広い年代のユーザーに届けるため、2020年にLINE公式アカウントを開設しました。
積極的な店内告知やクーポン施策により、1年間で友だち数8,000人を超えるまでに成長させた同社の友だち追加の方法について、同社が展開する業務用スーパー「C&Cエンド 九条店」の店長を務める天谷晶氏(以下、天谷氏)に話を聞きました。
- コストがかさむ折り込みチラシ以外にも情報を届ける方法を検討したい
- 既存ユーザーの来店を促したい
- 大阪市内7店舗でLINE公式アカウントを開設
- お買い得商品のタイアップキャンペーンや店頭告知で友だち追加を案内
- 開設から1年間で全店舗の総友だち数が8,000人を突破
- LINE公式アカウントの成長によって折り込みチラシなどのコスト削減に成功
幅広い年代層のユーザーに情報を届けるため、LINE公式アカウントを開設
1969年創業のエンド商事は、大阪市内でスーパーマーケット/ディスカウントストアの「C&Cエンド」と「業務用食品館」の2ブランド・7店舗を展開する食品製造・販売事業者です。一般向けの生鮮食品や冷凍食品、酒類などのほか、業務用食品や外食産業向け食材などを幅広く取り扱い、飲食店への配送も行っています。
店舗のユーザー層は、日常の買い物を目的とする一般客のほか、飲食店や居酒屋などでの仕入れを目的とした業者に分かれます。面積が小さな店舗では一般客が6~7割を占め、2階建ての大型店では業者が6割と、商圏や店舗の大きさで違いがあります。
C&Cエンド 九条店
仕入れを目的とした業者は基本的に毎日来店する一方、一般客は特売などの情報をきっかけに来店することが多い傾向にあります。これまで、エンド商事では新聞の折り込みチラシを商圏内に配布して来店を促していましたが、チラシは印刷費などのコストが発生し、情報の自由度にも限界がありました。そこで導入を検討したのが、LINE公式アカウントです。
「TwitterやInstagramなども活用していましたが、社内からLINEを使った配信や来店促進に取り組んでいくべきではないかという意見が出ていました。店舗でお客さまとお話をすると、やはり他のSNSのユーザー層は若年層が多く、年配の方にはメッセージが届きにくいという印象がありました。一方、LINEは年齢を問わずに使っている方が多いため、店舗に利用いただいている多くの方に情報が届けられると考えました」
2020年に7店舗でLINE公式アカウントとLINE Payの導入を開始し、発信する情報の内容や日程は天谷氏が決め、実際の配信設定は各店舗で行うように体制を整備。先行して開設したTwitterとInstagramでは既存商品の情報発信に特化し、LINE公式アカウントからは月2回配布しているチラシ情報のほか、特売商品やお買い得商品に関する情報発信で来店を促進しました。
店内告知とクーポン機能の活用で友だち数が急増
アカウント開設当初、LINE Payの決済時に友だち追加が促される仕様もあり、本格運用を開始する前に全店舗合算で350人を超える友だちが集まっていましたが、店舗によってばらつきがありました。そこで、本格的な運用を始める前に友だちを増やすことに注力し、店舗内での告知やキャンペーンを展開しました。
レジ前に友だち追加を促すQRコード付きのポスターを掲載したほか、店舗の床や壁など、来店したユーザーの目線を意識してPOPやポスターを配置。また、毎日来店する業務系のユーザーに対しては、従業員が直接、声をかけて友だち追加を促すなど、地道な活動で友だち数を増やしていきました。
店内で大々的にポスターを掲示したほか、来店ユーザーの目線を意識して店内の床や上方にもポスターを設置
中でも、大きな効果があったのは、各メーカーからの協賛商品を使ったキャンペーンです。業務用スーパーの利点である大量仕入れによる特化商品を販売する際、友だち追加によるインセンティブとしてクーポンを付与しました。
「炭酸ジュースやボトルコーヒー、チョコレート菓子、袋ラーメンなどの商品を、1,000ケース、2,000ケースという単位で入荷することがあります。通常であれば1個100円のところを『LINEの友だち追加をすれば、2個で100円』などの特化価格で購入できるクーポンを配信することで友だち追加を促しました」
友だち追加のインセンティブとして配信していたクーポン内容。
※画像は配信当時のもので、現在の仕様と一部、異なる箇所があります。
取り組みの結果、友だち集めを本格化させてから2カ月経過時点で増加率が急激に上昇。特にクーポン配信による成果が高く、全ての店舗で150人以上、多い店舗では260人を超える友だち追加がありました。
メッセージ配信を工夫してユーザーの利便性を向上
友だち数の増加に従い気になるのが、ブロック率です。天谷氏はさほどブロック率を気にしていなかったと振り返りますが、業者を対象としたメッセージを配信すると、一般客のブロックが増える傾向があったといいます。
「業者の方々、一般の方々に向けた情報と掲載先を整理し、メインでは一般のお客さま向けにメッセージを配信するようにしました。業者の方に対しては、リッチメニューに設置した導線から異なるメッセージを閲覧してもらうなど、小さな工夫を積み重ねていきました」
また、メッセージ配信でも、画像を目立たせたい時にはリッチメッセージを、複数の目玉商品を紹介したい時にはカードタイプメッセージを活用するなど、使用する画像やテキストを含めて検証を繰り返しました。結果、ターゲットリーチは少ない店舗でも1,000人以上、多い店舗では1,200人を超えるなど、安定した運用が実現しています。
LINE公式アカウントとLINEチラシの併用でコスト削減に成功
今後、エンド商事では店舗別に目標の友だち数を設定し、メッセージ内容や配信先を出し分けるなど、立地やユーザー層に合わせた運用にシフトしていくといいます。
また、2021年11月からは「LINEチラシ」の活用をスタート。そもそも、LINE公式アカウントを開設した2020年4月は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が始まった時期で、多くの店舗でチラシによる集客をストップさせた時期でもありました。そんな経緯もあり、月半ばと月末の2回配布していた折り込みチラシについて、月半ばのチラシ配布をデジタルに切り替えたいという意図がありました。
「2021年の夏、紙のチラシにクーポンを付け、同じクーポンをLINE公式アカウントから配信し、どちらの利用率が高いか調査しました。結果は7人差とほぼ同じということがわかり、紙のチラシをデジタルに置き換えるためにLINEチラシを導入しました」
LINEチラシに切り替えることで、印刷費用やデザイン制作などを含め、大きなコスト削減につながりました。また、LINE公式アカウントに関しても「お客さんが店舗に来なくても、伝えたいメッセージを届けられる」という利点を実感していると天谷氏。
「これまで、店舗からの告知や情報発信手段は、折り込みチラシに限られていました。しかし、チラシは特売商品やセールの案内が中心となり、配布するまでの準備にも時間がかかります。業者のお客さまも多い中、飲食店や居酒屋の応援フェアなど、タイムリーな発信にチラシは不向きです。LINE公式アカウントによって、そうした取り組みが可能になったと思います」
ユーザーがお得に感じる情報はもちろん、困っている居酒屋、飲食店の応援につながるフェアをLINE公式アカウントから告知することで、多くの人が反応し、応援購入をしてくれる——。天谷氏はこれからも、LINEを通じて来店促進とともに店舗のファンを増やしていきたいと語ります。
(公開:2022年2月、取材・文/岩崎史絵)
※実績数値については全てエンド商事株式会社調べとなります。
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです