1916(大正5)年に創業した外食チェーンなどを運営する株式会社入船は、「ごちそう村」をはじめ複数の飲食ブランドでLINE公式アカウントを導入し、ユニークなメッセージ配信で店舗への来店促進を実施しています。2021年からは「LINEで予約」の活用を開始するなど、ファンの満足度を高めるための取り組みについて、同社のレストラン事業本部 執行役員本部長 兼 広報室 執行役員室長の浦上幸太郎氏に話を伺いました。
- 高コストのハガキ・DMに代わる新たな来店促進ツールを導入したい
- 全店舗でLINE公式アカウントを開設
- 友だち限定のユニークなイベントやメニューで友だち追加を促進
- LINE公式アカウント内にLINEで予約への導線を設置
- LINE公式アカウント導入後、売上効果がハガキ・DMの14倍に
- LINE経由での予約件数が増え、予約全体の30%を占めるまでに成長
現場スタッフの声がLINE公式アカウント導入を後押し
株式会社入船は1916(大正5)年、兵庫県高砂市で料亭として創業しました。現在は関西地区を拠点に弁当・仕出し・お惣菜・レストラン事業を手掛け、中でもレストラン事業では兵庫・大阪で複数の飲食店ブランドを展開しています。和食を中心に120種類以上のメニューを提供するレストラン「みんなの和食ダイニング ごちそう村」もその1つです。
「ごちそう村は店名で“みんなの”と自分たちで言っているくらいですから、お客さまの属性は男女を問わず全世代。実際、同じ店の中で宴会をしている会社員の方もいれば、食事を楽しんでいるファミリーもいる。そんな“みんなの”お店です」
同社は2019年4月、ごちそう村の全20店舗(兵庫14店舗・大阪6店舗)でLINE公式アカウントを開設しました。浦上氏はLINE公式アカウントを導入した理由について、「ハガキやDMに代わる来店促進の施策が必要だった」と振り返ります。
株式会社入船 レストラン事業本部 執行役員本部長 兼 広報室 執行役員室長 浦上幸太郎氏
「過去には会員証発行やアンケート記入をきっかけにお客さまの情報を収集し、ハガキ・DMの発送を実施していました。しかし、お客さまの情報が増えるごとにスタッフの負担やコストが増える一方、来店にもなかなかつながらない。一時はメールマガジンに切り換えたこともありましたが、文字だけのテキストメッセージは面白みに欠けていました。そこで、ハガキ・DM・メルマガに代わる新たな施策として候補に挙がったのが、LINE公式アカウントでした。ある店舗で実験的にLINE公式アカウントを開設したところ、現場のアルバイトスタッフから『効果があるのになぜ他の店舗でも導入しないのか』との声があがり、全店導入に至りました」
ハガキ、DM、メルマガでの施策には課題があった(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
友だち限定のユニークな企画で「楽しく」友だち追加
2022年10月現在、ごちそう村全20店舗のLINE公式アカウントの友だち総数は約8万人に及びます。友だち追加の促進施策は店舗ごとにそれぞれの判断で行われていますが、店長会議で各店舗の実績が共有されると、全店で友だち追加へのモチベーションが上がったといいます。
「当初は『とりあえず3,000人の友だちを集めよう』なんて適当に目標を定めていましたが、すぐに3,000人を集める店舗が出てきて、その店舗では売上も上がりました。そうした成功実績が報告されると他店舗も『負けていられない!』と、競うようにして友だち追加施策を実施するようになりました」
友だち追加の促進施策は、店舗での告知POPや会計時にカードを配布する他、友だち限定で注文できるメニューの開発、友だち限定で参加できるユニークなイベントなど、来店客を楽しませることを意識した企画です。
「ある店舗では『アイス早食い!チャレンジ』を実施しました。その場で友だち追加をしていただけると、アイス早食いにチャレンジできるという企画で、10秒以内に成功すればお食事券をプレゼント、失敗しても5%オフクーポンを贈呈しました。アイスは小さなサイズなので、お子さまも楽しみながらチャレンジしていただけます。最近の店長会議では、月ごとに友だち増加数の目標が店舗側から積極的に提示され、促進アイデアも続々と集まるようになりました」
友だち追加は「お客さまに楽しんでいただけるかが重要」という(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
LINE公式アカウントの売上効果はハガキ・DMの14倍
同社のメッセージ配信で特徴的なのは、キャンペーンや季節メニューの告知、クーポン配信などをインパクトのあるクリエイティブで「楽しく」伝えている点です。
クリエイティブ作成で特に意識しているのは「文字を読ませない」ということ。視認性の確保を重視しながら、写真による商品アピールを強めにし、クスッと笑えるイベント名を告知しています。
キャンペーン告知などでメッセージ配信を活用(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
かつてはハガキ・DMでの来店促進を行っていましたが、LINE公式アカウント導入後、売上が大幅に向上しました。同社の調べでは、約30万円の費用をかけたときの売上を比較すると「ハガキ・DMは約75万円」だったのに対し「LINE公式アカウントは約1,000万円」と、約14倍も向上したといいます。
「ハガキ・DMとLINEでは配信できる数が圧倒的に違います。しかも、アナログな方法ではお客さまの住所変更などで返送されてきたときの対応など、コストが大きい。今ではLINE公式アカウントは当社の来店促進に欠かせないツールです」
売上効果はハガキ・DMと比較して約14倍向上(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
LINEで予約は「ごちそう村ファン」の満足度向上に不可欠
2021年からは新たにLINE公式アカウントに「LINEで予約」を導入しました。現在はリッチメニューのほか、定期的に配信される各種メッセージに予約フォームへの導線を設置しています。
「6月19日の父の日に、国産牛ロース肉をネクタイ型にしてご提供する“肉タイ”プレゼント企画を行ったときは、リッチメッセージからLINEで予約に遷移する仕組みにしました。メッセージ配信にLINEで予約への導線を設置したことで、さらなる来店促進につながっていると感じます」
予約を増やすために複数の導線を設置(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
LINEで予約の導入から約1年、LINE経由の予約件数は増加傾向にあり、予約全体の3割程度に及んでいます。また、予約サイト経由ではわからなかった予約したユーザーの属性が可視化できるようになり、ファンの満足度を高めるための、同社の新たな取り組みにつながるといいます。
LINE経由の予約件数は増加している(LINE LOCAL DAY 2022登壇資料より)
「一般的な予約サイトからの予約は、あくまでその予約サイトが便利だから利用されていますが、LINEで予約の場合は、すでに予約者が“ごちそう村のファン”であることが大前提です。予約のデータが蓄積されてファンの来店傾向が分かると、来店促進に向けたアプローチの方法も変わりますし、来店後の満足度調査などにもつながる。今後、LINEで予約経由の予約率を『予約全体の50%』くらいには増加させていきたいです。経営理念『“食の喜び”の創造』を掲げる当社にとって、LINEで予約も必要不可欠なツールになっていくと思います」
(公開:2022年10月、取材・文/安田博勇、写真/小川孝行)
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