長崎に店舗を構える美容室「髪風船」は、約35年前から縮毛矯正の専門サロンとして、多くのユーザーに支持されています。また、同店はECサイトを運営しており、総売上に占めるEC売上が店舗売上を上回るなど、一般的な美容室とは異なる形で黒字経営を続けています。その秘訣について「オンラインコミュニケーションを通じた、お客さまの教育」と語る同店 代表の内野信一さんに、LINEを活用したデジタルマーケティングについて話を聞きました。
「まずはやってみる」精神がデジタルマーケティング成功への第一歩
施術メニューとして縮毛矯正が一般的になりつつあった1990年代半ばより、髪風船は縮毛矯正の専門サロンとしてサービスを提供しています。2013年には、縮毛矯正への需要の高まりを感じ、ホームケア用の商品を中心に扱ったECサイトを開設しました。
ECサイトの認知度向上を目指し、注目したのが各種デジタルツールでした。「私自身、生粋の美容師ですから、ITに特別詳しいわけではなかった」と語る内野さん。しかし、2000年代初頭のブログ黎明期から、縮毛矯正のメカニズムやヘアケアの方法をまとめた情報を発信していた経験もあり、「まずはやってみる」精神で2015年4月にLINE公式アカウントを開設しました。
髪風船のLINE公式アカウントのリッチメニューには、ECサイト内のおすすめ商品ページのほかに、自宅でできるヘアケアなどについて解説したコンテンツへのリンクを設置。すぐにECサイトで購買しないユーザーも、髪の悩みを持つならばついクリックしたくなるような各種コンテンツを用意しています。
LINE公式アカウントの運用は内野さんが1人で担当しており、LINEチャットで寄せられるユーザーの髪の悩みにも丁寧な返信を心がけているそうです。「1日に10人ほどのお客さまからチャットが来ることもある」と語るように、双方向のコミュニケーションを通じてユーザーとの関係性を強化しています。
広告で友だちを獲得後、ユーザーの「髪への意識」を高める情報を発信
LINE公式アカウントの開設以降、友だちの増加ペースは1日あたり2、3人程度でしたが、2017年には友だち数も約3,000人で限界が見えてきました。「その頃にLINE社のポータルサイトを見ていて、友だちを増やすことができる広告メニューがあることを知った」と振り返る内野さん。試験的にLINE広告の「友だち追加」を利用して一定の効果を確認した後、現在はLINE公式アカウントの「友だち追加広告」を利用して集客を行っています。
また、使用するクリエイティブは訴求軸を変えて制作し、複数の広告を配信した上でその効果を比較しています。「手の込んだデザインやラグジュアリー感のあるものより、シンプルで清潔感のあるものの方が配信効果が高くなる傾向にある」といい、クリエイティブの勝ちパターンを模索しながら「友だち追加広告」の運用を続けた結果、2021年7月時点で66,000人を超える友だちを集めています。
「友だち追加広告」のCPF(友だち獲得単価)は幅があるものの、ECサイトの売り上げにおける平均客単価が約12,000円のため、「十分に費用対効果に見合っている」と自信を見せます。また、「友だち追加広告」は、その他SNS広告と比較してもCPA(顧客獲得単価)が低く抑えられるため、今後も継続的な出稿を予定しているということです。
ユーザーが友だち追加した後の情報発信では、LINE公式アカウントの「ステップ配信」を活用しています。あらかじめ設定した内容、タイミング、期間でメッセージを自動配信できるため「お客さまの『髪への意識』が高まれば、いずれECサイトでの商品購入につながる。ステップ配信は顧客育成にうってつけの機能」と内野さんは語ります。具体的には、髪の悩みに関する質問を促したり、ヘアケア方法について解説したオリジナルのダウンロード資料を配布したりしながら、友だち追加後1カ月間で8通のメッセージを配信。ダウンロード資料にはECサイトで利用できるクーポンをつけて、コンバージョン獲得も狙っています。
一連の取り組みを経て、髪風船のEC売上は店舗売上を上回り、総売上の7割を占めるまでに成果を上げています。LINEの活用について、内野さんは次のように総括します。
「私たちの扱う商材は決して安価ではなく、友だち追加いただいたからといってすぐに購入に至るわけではありません。そのため、縮毛矯正や髪に関する知識や情報をお届けすることで、お客さまとの信頼関係の構築や、顧客育成を行うことが大切だと考えています。
また、LINE公式アカウントやLINE広告は分析機能も充実しているので、私のように1人で運用していても効果を振り返りやすいのもポイントです。今後も髪に悩みを持つ全国のお客さまに向け、最適な広告費を投入しながらアプローチを続けていきたいと思います」
LINE公式アカウント
(公開:2021年7月)
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