ジュエリーや時計、バッグなどブランド品の買い取り・販売を手がける株式会社コメ兵(以下、コメ兵)は、2016年からLINE公式アカウントを使った査定サービスを実施して利用ユーザーを増やしています。同社マーケティング部の諏訪弘樹氏(以下、諏訪氏)に、LINE公式アカウントを活用する意義やメリットについて話を聞きました。
- オンラインでもユーザーとの関係を構築したい
- 「査定」や「買い取り」への利用ハードルを下げたい
- 2016年からLINE公式アカウントを使った査定サービスを開始
- LINE公式アカウントを使った査定サービスの月間利用件数は年々増加し、3,000件以上(2022年5月時点)を記録
- LINE公式アカウントを使った査定サービスをきっかけに来店したユーザーが約5倍に伸長(2021年9月時点と比較)
株式会社コメ兵 マーケティング部 諏訪弘樹氏
コロナ禍を背景に、OMOの実現に注力
1947年創業のコメ兵は、全国に92店舗(2022年6月時点)を展開する国内最大級のリユースデパートです。ジュエリーや時計、バッグなど、ブランド品のファッションアイテムを中心に買い取りと販売を行っています。
同社は2010年にECサイトを立ち上げ後、オンラインとオフラインを融合させたオムニチャネルを推進してきました。そして近年はOMO(Online Merges with Offline)の実現に注力。ECサイトと店舗の在庫を一元化し、ECサイトで商品を選んでから来店して商品の状態を確認してもらうという、オンラインとオフラインがシームレスにつながる顧客体験(CX)を提供しています。
「特に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大後は、ECサイトを利用するお客さまが増加しており、いまや全体の売り上げの4割以上がECサイト経由です。オンラインで取得したお客さまの行動データを店頭での接客に活用するという取り組みも進めています」
2020年にオープンした「KOMEHYO SHINJUKU WOMEN」の外観
同社がユーザーとのコミュニケーションツールとして活用しているのが、国内の月間利用者数9,200万人(2022年3月末時点)を擁するLINEです。コメ兵のブランドアカウントとしてLINE公式アカウントを開設しているだけでなく、店舗ごとにLINE公式アカウントを運用し、月に2回ほど新商品やセールの情報などを配信しています。
「お客さまと質の高いコミュニケーションが取れるかどうかを第一に考えた結果、コミュニケーションアプリであるLINEに勝るツールはありませんでした。LINEは多くのユーザーの日常生活に溶け込んでおり、ナチュラルなコミュニケーションを取れるのが魅力です」
ユーザーとの関係づくりを重視するコメ兵では、LINE公式アカウントの運用に際してKPIに「友だち数」や「ブロック率」を設定。そして最近では、「ウェットなコミュニケーション表現ができているか」という定性的なKPIを追加したそうです。その理由について、諏訪氏は「LINEを活用する利点を最大限に生かすため」と説明します。
「LINE公式アカウントの開設当初は、テンプレートをコピーしたような機械的なメッセージを配信していました。また、お客さまからの問い合わせに対してチャットボットを導入していましたが、機械的な対応によって無駄なやり取りが発生してしまうという課題も抱えていました。せっかくお客さまに身近なLINEというツールを活用するのであれば、もっと配信者自身の言葉でメッセージを伝えたほうが、お客さまとの関係性を深められるのではないかと考えました」
リッチメッセージを用いて買い取り利用を促す
利用ハードルを下げるLINE公式アカウントを使った査定サービス
コメ兵はLINE公式アカウントを活用してユーザーとの関係性を深めながら、2016年にはLINE公式アカウントで買い取り金額をお伝えするサービスを開始しました。買い取ってもらいたい品物を撮影してLINE公式アカウントに送信すると、最短5分で査定金額の目安が分かるというサービスです。「LINE公式アカウントを使った査定サービスによって買い取りのハードルが下がり、潜在層のお客さまの獲得につながっている」と諏訪氏は語ります。
「買い取りや査定などのサービスは、まだまだ利用のハードルが高いという印象を持たれています。なるべく査定を気軽にご利用いただきたいという思いから、LINEによるオンライン査定サービスを始めました」
コロナ禍によって対面接触が敬遠される中、LINE公式アカウントを使った査定サービスの利用者は着実に増加しています。2022年1月時点におけるLINE公式アカウントを使った査定サービスの月間利用件数は3,000件以上。さらにLINE公式アカウントを使った査定サービスをきっかけに来店したユーザーも2021年9月から比べて約5倍に伸長するなど、新規ユーザー獲得にも貢献しています。利用ユーザーの性別や年齢に大きな偏りはなく、幅広い層に利用されているそうです。
LINE公式アカウントを使った査定サービスの流れのイメージ
※Messaging APIの機能「LINE Front-end Framework(LIFF)」を活用
「お客さまのサービス利用増加は、コロナ禍のほか社内体制を整備した影響も大きいと思います。もともとLINE公式アカウントを使った買い取り査定サービスを担当する部署とLINE公式アカウントを管理する部署が分かれていたのですが、昨年からマーケティング部がLINE公式アカウントに関する取り組みをまとめて主幹するようになりました。これにより、さらにLINE公式アカウントの運用効率が高まり、友だち追加を起点として、スタッフとのコミュニケーション→LINE公式アカウントを使った査定サービスの利用→来店→買い取り成立という一連の流れをつくりやすくなりました」
また、同社では、全国のデパートやショッピングセンター内で買い取りを行う出張買い取りイベント「KAITORI GO」を不定期で開催しています。その際にも「LINE公式アカウントの価値を実感する」と諏訪氏は話します。
「生年月日やメールアドレスなどの個人情報を入力する必要がある会員登録は、お客さまの心理的なハードルが高いのですが、QRコードを読み込むだけで友だち追加ができるLINE公式アカウントは、気軽に応じてくださる方が多い印象です。まずはLINEでつながり、コミュニケーションを通じて関係性を深め、会員登録や実際のサービス利用へとつなげていく。このように段階的に潜在層のお客さまを取り込むことが可能になっています」
LINEを活用した丁寧なコミュニケーションでLTVの向上を目指す
OMOを推進していく中で、諏訪氏は「オンラインの施策であっても、ユーザーとのタッチポイントに人が介在することが大きな意味を持つ」という気付きを得たといいます。
「高価格商品の買い取りと販売を行う当社にとって、やはり大切なのはお客さまとの信頼関係です。オンラインでの施策に注力してデータを分析していくにつれ、デジタルで完結させるのではなく、人が適度に介在して丁寧なコミュニケーションを取ることで、LTV(顧客生涯価値)が高まることが分かってきました」
LINE公式アカウントを活用して、ユーザーと継続的にコミュニケーションを取ることで信頼関係をしっかり構築できれば、また買い取りのニーズが発生した際にコメ兵を利用しようと考えるユーザーが増加します。そのため、諏訪氏は「LINE公式アカウントの効果を最大限に発揮するための施策にも注力していく」と展望を語ります。
「まずは友だち集めに力を入れていきます。例えば、ECサイトでLINEログインを実装したり、友だち追加することで受け取れるインセンティブを手厚くしたり――コミュニケーションをとれるユーザーの母数を増やすことが重要です。LINEの特性を生かして“人”をうまく介在させることでOMOをさらに推進し、オンリーワンの顧客体験を提供したいと思います」
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