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「LINE Front-end Framework(LIFF)」による「デジタル会員証」で実現した顧客体験の最適化

ロクシタンジャポン株式会社

2019.02.22

ロクシタンジャポン株式会社 マーケティング本部 CRMマネージャー 宇野 慎一氏

「L'OCCITANE(ロクシタン)」をはじめとするコスメティックブランドを手掛ける化粧品メーカー「ロクシタンジャポン株式会社」では、「Messaging API」の機能「LINE Front-end Framework(以下、LIFF)」を活用し、LINE公式アカウント上でデジタル会員証サービスを展開しています。

 

データに基づくきめ細かいメッセージ配信や各種会員サービスの提供など、LIFFを使ったCRMマーケティングについて、同社マーケティング本部CRMマネージャーの宇野慎一氏(以下、宇野氏)に話を聞きました。

目的
  • 見込顧客の「分母」を拡大したい
  • データを活用し、ユーザー属性に合ったコミュニケーションを行うことで、顧客体験の向上につなげたい
施策
  • LIFFを活用したモバイル会員証の展開
  • MAツールとの連携を進め、会員向けのメッセージ配信を自動化できるようにした
効果
  • 施策開始後に獲得した新規顧客のうち、約40%がモバイル会員証にユーザー登録した
  • ユーザーに相応しい経路で、最適なコミュニケーションが行えるようになった

オムニチャネルの強化に、プラットフォームとしてのLINEを活用

南仏プロヴァンスのコスメティックブランド「L'OCCITANE(ロクシタン)」の商品販売やカフェの運営などを手掛けるロクシタンジャポンでは、100店舗以上のリアル店舗を日本各地で展開しています。同時にECチャネルも展開する同社では、両チャネルの統合とオムニチャネル化に取り組んできました。

 

現状はリアル店舗で購入、会員登録を行う顧客が約9割を占めていますが、年々デジタルチャネルの重要性は高まっています。両チャネルで顧客データを連携し、統合された顧客体験を提供するオムニチャネルの推進に大きな課題感を持っていました。

 

これまで、Webの会員登録を行った顧客と店舗で紙の会員カードを発行・登録した顧客情報を統合するため、例えば顧客が店舗へ来店した際に、その顧客が保有する紙の会員カードの情報とWebの情報を購入時に連携させるなどの方法がとられていました。しかし、両チャネルでの購買履歴が連携できている顧客は全体の1割程度にとどまります。宇野氏は「デジタル施策を行う際には、社内のCRMに登録されているお客様のデータと、施策を通じて取得される見込顧客のデータが紐付かず、なかなかお客様の顔が見えないという課題があった」と述べます。

ロクシタンジャポン株式会社 宇野慎一氏

そこで、同社では、デジタル施策で獲得する見込顧客の拡大と、データを活用したCRMマーケティングを強化する目的で、2013年10月からLINE公式アカウントを利用しています。

 

「今のところ、年2回ずつスポンサードスタンプを実施し、獲得した見込顧客に対して、ECでの売上につながるようなキャンペーンを実施しています。LINE公式アカウント導入から5年が経過した今、約2,000万人近いユーザーと友だちとしてつながっています」

 

同社がLINE公式アカウントだけでなく、「Messaging API」を活用し始めたのが2018年7月から。自社のECサイトにLINEログインを実装し、同時にMAツールとの連携を進め、LINEのメッセージ送信をMAツールから行えるようにしました。そして、さらなる機能強化がLIFFを用いたモバイル会員証の機能です。

ロクシタンジャポンのLINE公式アカウントに実装されたデジタル会員証

「紙の会員証発行には手間やコストがかかるうえ、来店時にお客さまが持参しないケースがあります。結果、1人に複数枚発行することもあり、会員IDは増えているものの、それが新規なのか再発行なのか、追跡することが難しいという問題がありました」

 

アプリを会員証として利用することで、ユーザーは紙の会員証を持ち歩く必要がなくなり、MAツールを通じてLINE公式アカウント経由でパーソナライズされたメッセージ送信も可能になります。

 

「ECサイトのモバイル比率は8割近くを占めていたため、モバイルアプリとの親和性は高いと思いました。オリジナルのアプリ開発も検討しましたが、ユーザーとしてもアクティブ率が高く、普段から使っているコミュニケーションアプリであるLINEのプラットフォームを利用する方がメリットは高いと考え、採用を決めました」

ユーザー属性に合わせた最適なコミュニケーションが行えることにメリットを感じた

LIFFを活用した同社のモバイル会員証では、LINE公式アカウントのトーク画面上でシームレスにWebブラウザを閲覧することができます。LINE公式アカウントを経由して会員カードに登録すると、アプリにさまざまなプロモーション情報が届き、来店、購入、ポイント付与まで一貫した顧客体験がLINE上で完結します。

 

会員バーコードの表示や保有、利用ポイント数の表示、さらにポイントの有効期限をアプリで表示させることもできるため「これまでは、店頭に来店してポイントの照会に来るお客様もいましたが、そうした不便が解消されました」と宇野氏は説明します。

ロクシタン会員証

また、「Messaging API」によって、登録時にLINE IDと同社のCRMに登録された顧客情報を連携させることができるため、顧客属性にあわせて限定メッセージ配信を送るなどの施策も可能になります。

 

「ロイヤリティープログラムといって、年間5万円以上購入したお客さまは『REINE顧客』として、高いポイント付与率やイベント招待などの優待サービスを受けることができます。過去の購買データから、『あと、いくら購入すればREINEに到達します』というメッセージをLINEから送ることが可能になりました」

 

こうした施策は、これまで紙のDMで行われてきました。紙での施策の方が効果的な年代層もあるため、紙のDMによる施策は今後も継続するものの、「モバイル会員証の会員は、会員全体の平均年齢よりも若い傾向があり、若年層はLINEで高年齢層は紙でというように、お客さまに相応しい経路で、最適なコミュニケーションが取れるようになった」と宇野氏は述べます。

 

従来の紙の会員証とモバイル会員証の連携で工夫した点としては、新規発行のプロセスで「ID登録」を優先した点です。

 

「一般的な発行フローでは、登録時に個人情報の入力まで完了させます。しかし、店頭でお客さまにアプリを操作してもらい、登録を完了してもらうのは時間もかかり、お客さまにとっても負担が大きい。そこで、まずはLINE IDの登録だけを優先し、その後のアクションはメッセージ送信でフォローするフローに変更しました」

新規顧客に占めるLINEカード会員の割合は約40%に

2018年11月の運用開始から約1カ月、新規に会員登録した顧客のうち、アプリから個人情報の登録を完了してくれたモバイル会員証の会員の割合は、約30%〜40%ほど。この数字は「運用開始後、1カ月の数字としては非常に大きな数字」と宇野氏は評価します。

 

直近の数字では50%近くまで伸びており、約2人に1人はモバイル会員証を利用してもらっている状況です。特にルミネなど若年層に人気の高い商業施設でLINEの利用率が高い傾向にあります。

ロクシタンジャポン株式会社 マーケティング本部 CRMマネージャー 宇野 慎一氏

さらに、モバイル会員証を開始してから、MAツールを使ったカゴ落ち施策や誕生日を迎えた顧客に対する限定クーポン付与の施策など、いくつかのシナリオに沿ったメッセージ施策に対するコンバージョン(ECサイトでの売上)が高まっています。「モバイル会員証導入による貢献によるものか、因果関係の分析はこれから」と語るものの、これもモバイル会員証によるポジティブな効果の一つということができます。

スタンプカードやクーポン施策などで顧客体験を高めていく

今後の施策の展望について、宇野氏は「メッセージ配信のシナリオの種類を増やしていく」ことを挙げます。現状、MAツールの使い方としては、通常のメール配信に加え、上述したようないくつかのシナリオ配信を行っています。これを「カスタマージャーニーに沿って、特に、LINE活用におけるシナリオを増やしていきたい」とのこと。

 

また、モバイル会員証の活用については、店頭への来店、購入回数に応じたスタンプ付与などの「デジタルスタンプ」施策を実施したいと語ります。これまでも紙のスタンプカードを配付することはありましたが、今後はLINEアプリに統合することで、メッセージ配信による来店促進、限定スタンプの付与、集めたスタンプ数に応じた特典付与などにつなげていきたいと話します。

 

「誕生月に限定クーポンを付与し、来店促進と店頭での購入を促進するクーポン機能なども行うことで、さらなる顧客への利便性提供と、データを活用したマーケティング、オムニチャネルによる顧客体験の向上を実現していきたいです」

 

今後のLINEに期待することとして、宇野氏は「技術仕様の変更サイクルが早いため、特にパートナーや顧客向けに仕様の詳細についてのアナウンス、コミュニケーションをきめ細かく行ってもらいたい」と要望を述べました。また、グローバルに展開する企業であることから、各種ドキュメントの多言語対応も期待の一つとして挙げます。

 

「LINEには、これからもサービスの強化、改善を継続的に行っていただき、我々のデジタルマーケティングを強化するプラットフォームとして、重要な役割を担っていただきたいです」

 

(公開:2019年2月/取材・文:阿部欽一、写真:小川孝行)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです

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