株式会社Lond Holdings(以下、Lond)は、国内外で72店舗を展開する新進気鋭の美容サロンです。2020年7月にLINE公式アカウントを開設し、その後、美容業界向けの「Saloriza(サロリザ)」のLINEミニアプリを導入しました。これにより、紙で管理していた顧客カルテを廃止し、予約管理や情報発信もLINEを通してできるようになりました。その結果、半年以上来店していなかった休眠ユーザーの再来店や、LINE経由の予約増加に伴う集客費の削減、オンラインショップの売上促進にも成功しています。LINEを活用した取り組みや得られた成果について、Lond代表取締役の吉田牧人氏(以下、吉田氏)と、Salorizaを開発した株式会社GENE(以下、GENE)代表取締役の田中航太郎氏(以下、田中氏)に話を聞きました。
- 半年以上来店していない休眠ユーザーに再度来店してもらいたい
- 新規ユーザーに対し、リピーターになってもらうための情報発信を強化したい
- 集客面で大手美容ポータルサイトへの依存度を低くしたい
- LINE公式アカウントとLINEミニアプリ「Saloriza」を導入し、紙の顧客カルテを全店で廃止、各美容ポータルサイトの予約・顧客情報の一元管理
- 新規ユーザー、既存・休眠ユーザー、それぞれに向けたメッセージ配信
- 半年以上来店がなかった休眠ユーザーがメッセージ配信後1週間で再来店
- あるスタイリストは、指名予約の約40%をLINE経由で集客、ある店舗では、新規予約を含む全体予約の約20%がLINE経由に
- ユーザーがLINEから予約することで、大手美容ポータルサイトに支払う費用を削減
- クーポン配信により、オンラインショップで年末キャンペーンの3倍の売上を実現
急成長サロンの課題は、若手スタイリストのリピート率
Londは2013年4月に美容専門学校のクラスメイト6人が共同代表として創業し、第1号店を東京・銀座で開業しました。それからわずか11年で年商約60億円(今期見込み)、国内外で72店舗、スタッフ600人超(うち約300人がスタイリスト)が働く美容サロングループに急成長しました。
この急成長を支えたのは、美容サロン業界の常識を覆した経営方針でした。スタイリストの給与を業界最高水準に引き上げ、離職率を業界平均より大幅に低減。業界の常識にとらわれない新しい美容サロンを始めたきっかけについて、創業者の一人である吉田氏はこう話します。
「美容サロン業界は労働環境や給与が悪く、従業員が不本意な形で辞めていくケースも多い。私は、従業員の人生をしっかりとバックアップして、同じ店で働き続けることで幸せになってほしいと考えています。高い技術を持つスタイリストが離職せずに残れば、それが結果的に店舗の売上にもつながるからです」(吉田氏)
Londは日本の美容サロン業界に新しい風を吹き込みました。その一方で、課題もありました。
「弊社は、固定客を持つスタイリストが離職せず、新規客の来店を大手美容ポータルサイトなどで増やしたことで持続的な売上拡大に成功しています。しかし、半年以上来店されない、いわゆる休眠顧客の存在、若手スタイリストのリピート率が低い点、集客費の高止まりは課題でした。集客費の大部分を占める美容ポータルサイトへの依存度を下げ、どのようにリピーターを育成し、お客さまの来店予約を促すか。その際、自社サイトやアプリ経由ではなく、国内で圧倒的なユーザー数を誇り、誰もが使いやすいLINEを活用しようと決めました」(吉田氏)
LINEミニアプリ「Saloriza」で紙のカルテを廃止、予約・顧客情報をデジタル管理
Londは2020年7月にLINE公式カウントを開設し、2021年4月には店舗や施設運営に役立つさまざまな機能を、LINE上で提供できるLINEミニアプリを導入しました。
LINEミニアプリはGENEが開発・提供する「Saloriza(サロリザ)」を採用。これにより、それまで紙で管理していたカルテを全店で廃止しました。GENEの田中氏は自社サービスの強みについて次のように語ります。
「大手美容ポータルサイトは新規集客には絶大な影響力を持つ一方、顧客を流動化させる性質もあり既存集客には課題が残るという意見もあります。
Salorizaは、美容サロン向けの予約・顧客管理の機能を持ったLINE連携システムです。複数の美容ポータルサイトから届く予約情報を一元管理し、顧客のカウンセリングシートやカルテも保存・閲覧できます(※)。また、顧客のLINEにキャンペーン情報を発信したり、カルテの内容をもとにターゲットを絞り込んだり、半年以上来店していないユーザー(休眠顧客)にだけメッセージを送ったりと、ピンポイントかつダイレクトに情報を届けられるため、リピーター集客も見込めます。
Londさまは休眠顧客の復活や若手スタイリストのリピート率アップを課題としていますから、Salorizaでその解決の一助を目指すとともに、集客費を削減してサロン全体の売上向上にもつなげたい。そのために、サービス導入以降も、さまざまな施策を継続的に提案しています」
LINEアカウントとひもづいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります
既存の予約管理や紙のカルテから、LINEミニアプリ「Saloriza」の導入は、SalorizaのUX(ユーザーエクスペリエンス)が良かったことから、Londのスタッフにとってスムーズだったと吉田氏は言います。
また、実際の運用面でも、LINEを普段から使い慣れていることが強みとなり、店舗スタッフもユーザーも迷いなく利用できました。初来店時に、Lond各店舗のLINE公式アカウントと「友だち」になってもらいユーザーとつながることで、ユーザーに合った情報を届けることができ、再来店の促進につなげています。(吉田氏)
ある若手スタッフはLINEからの指名が40%に、ある店舗では20%がLINE経由の予約に!
Saloriza導入後、Londは課題だった休眠ユーザーの再来店率を改善できました。
具体的には「銀座本店で前回の来店日から半年以上経過しているお客さま671人にメッセージ を発信した結果、1週間で5人の再来店がありました。5人と聞くと少なく感じるかもしれませんが、弊社の客単価は1人1万円程度です。たった1回の情報発信で5万円の売上を生み出したことになります。美容サロン業界の経営者なら、みなさん驚かれると思います」(吉田氏)
「Salorizaを活用してユーザーの属性が可視化されたことで、より具体的にメッセージを配信できるようになりました。その結果、従来のDMやメールに比べて、LINEの開封率が高くなり、短期間での再来店促進につながったと考えています」(田中氏)
さらに、若手スタイリストの再来店予約率も増加しました。
「一般的に、スタイリストにリピーターがつく場合は同年代のお客さまが多くなります。あるスタイリストは、指名予約の約40%がLINE経由になり、リピート率向上に大きく貢献しました」(吉田氏)
LINE公式アカウント経由の予約が増えたことで、集客費の削減にも成功しています。大手美容ポータルサイトにサロン情報を掲載する際は、広告費がかかり、さらにサイト経由の予約には売上の数%を仲介手数料として支払う必要があります。しかし、LINE経由の予約が増えたことで、これらの広告費や仲介手数料を削減することができました。ある店舗では、月間の予約者数の約20%がLINE経由となり、コスト削減に貢献しています。
最後に、想定以上の効果を発揮したのがオンラインショップです。特別クーポンを配信した結果、平常時にかかわらず、年末キャンペーンの3倍以上の売上を記録しました。
「お客さまが来店時にヘアケア商品を購入することは少なく、特に1リットル入りのトリートメントのような重くてかさばる商品はなおさらでした。それが、オンラインショップであればその問題を解消できた。そのきっかけを作ったのが、LINEからのクーポン配信です。これまで潜在的にあったニーズを捉えられ売上につながりました」(吉田氏)
最後にLINE活用に関する今後の方針を伺いました。
「美容サロンでは、直前の予約キャンセルも課題の一つです。特に長時間の施術予約が直前にキャンセルされると大きな損失につながります。今後、空いた時間を他のお客さまに通知できる機能を、Salorizaに追加したいと考えています。その他、 弊社と同じLINEヤフー社認定パートナーとの協業によるサービスの拡充もいくつか準備中です」 (田中氏)
吉田氏は、LINEを通じたお客さまとのコミュニケーションに手応えを感じており、今後さらにLINE活用を積極的に勧めていきたいと話します。
「最近、飲食店ではLINEで予約できる店舗が増えていますが、美容サロンではまだそこまでは広がっていません。LINE公式アカウントとSalorizaのLINEミニアプリを活用すれば、その便利さがよくわかると思います。今後もLINEを活用することで、お客さまのニーズに沿った、一層のサービス拡充を目指していきます」
(公開:2024年9月、取材・文/西岡千史、株式会社POWER NEWS、写真/慎芝賢)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
企業名 | 株式会社Lond Holdings |
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所在地 | 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 2F
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事業内容 | 美容サロンの経営
ヘアケア商品の販売 |
サービス | オンラインストア |