菓子メーカー大手の株式会社ロッテ(以下、ロッテ)は、2017年からLINE公式アカウントを活用し、約1350万人(2024年9月現在)の友だちとコミュニケーションを図っています。より適切な情報を友だちに届けたいという思いから、2024年2月より、LINEヤフーが提供を始めている「Yahoo!広告オーディエンス連携β版」機能を導入。このデータを基に、LINE公式アカウントのメッセージ内容ごとに興味関心が高い友だちに配信した結果、従来のLINEで応募でのユーザーアンケートを基にした配信と比較して、クリック率が大幅に向上し、最大で5倍に達しました。今回の施策ついて、同社マーケティング本部 情報クリエイティブ部 コミュニケーション戦略課の茅野悠馬氏(以下、茅野氏)と佐藤美帆氏(以下、佐藤氏)に話を聞きました。
- 購入見込みが高そうな友だちに適切に情報を届けたい
- LINE公式アカウントを通したコミュニケーションで、ロッテブランドを店頭での購買時に想起してもらいたい
- 興味関心に合わせた情報をより多くの友だちに届けることで、LINE公式アカウントの開封率やクリック率を向上させたい
- Yahoo!広告オーディエンス連携β版を活用し、ガーナのタイアップに合わせてTVアニメ「SPY×FAMILY」関心層に、またコアラのマーチのタイアップに合わせて「ブルーロック」関心層にそれぞれメッセージ配信
- 5人組グループ 「NewJeans」を起用したイタガム発売時に、興味関心が高い友だちとその他の友だちでメッセージタイトルを出し分けて配信
- 「SPY×FAMILY とのタイアップ 母の日キャンペーン」では、従来のLINEで応募のアンケート結果を基にした配信と比べ、配信規模が約20%増加、クリック率は約2倍に。「SPY×FAMILY 父の日キャンペーン」では、配信規模が約10%増加、クリック率は約2.4倍に向上
- 「ブルーロックのマーチ タイアップキャンペーン」では、配信規模が約80%増加し、クリック率はブルーロック関心層のセグメントで約5倍に
- NewJeansを起用したイタガム発売時に、配信タイトルの出し分けを行った結果、NewJeansファンの開封率は向上し、クリック率は約1.7倍に
2024年2月提供開始。LINEとヤフーが2023年10月に統合し、LINEヤフーとなったことで実現したデータ連携機能。Yahoo!広告の一部のオーディエンスを、LINEビジネスマネージャーを通してLINE広告やLINE公式アカウントに連携できる。これによりYahoo!広告のセグメントをLINE広告やLINE公式アカウントで活用することが可能になった。
LINEヤフーは、生活のあらゆる場面でユーザーとつながるサービスを目指しています。その実現に向けて「Connect One構想」のもと、LINE公式アカウントとLINEヤフーが保有する法人向けサービスを連携させ、あらゆる顧客接点を一気通貫させながら、LTV(顧客生涯価値)を最大化するプラットフォームとして日々アップデートを進めています。
LINE公式アカウントで商品想起を高める環境を構築
菓子、アイスクリーム、健康食品、雑貨の製造および販売をしているロッテは、ユーザーとのコミュニケーション戦略としてLINE公式アカウントを長年にわたり活用しています。ロッテの茅野氏と佐藤氏は、LINE公式アカウントの担当者として、商品やキャンペーン情報、ブランドのこだわり、ファンコミュニティ「ロッテランド」などの情報を月に10回程度配信しています。
茅野氏は、ロッテがLINE公式アカウントを活用する目的について、次のように話します。
「LINE公式アカウントを通したコミュニケーションにより、『チョコレートといえばガーナ』や『母の日といえばガーナ』『赤を見たらガーナを思い出す』など、弊社の商品を想起していただける環境を整え、タッチポイントを増やしていくことを目指しています」
Yahoo!広告オーディエンス連携β版を活用して、配信規模の拡大と精度の高いターゲティングを実現
ロッテは、チョコレート菓子 コアラのマーチのキャラクターを用いたLINEプロモーションスタンプ等をきっかけに友だち数を増やし、2024年9月時点で約1350万人に達しました。さらに、同社はLINEで応募のオープンキャンペーンにもここ数年何度か参加し、友だちを増やしてきました。
LINEで応募のオープンキャンペーンとは: 参加ユーザーがクイズに正解するとLINEポイントやPayPayポイントなどがもらえる特別企画。ユーザーは複数の企業キャンペーンに参加できる仕組みで、企業側は集客が期待できる
「オープンキャンペーンに参加するもう一つの目的は、キャンペーン応募者にアンケートを回答してもらうことです。アンケート内容は年齢・性別・地域に加え、『菓子・新商品』『アイス・新商品』『人気、アニメキャラクターとのコラボ商品』『健康』『美容』などといった選択肢もあり、興味関心のあるものを選択してもらいます。その回答を活用して、これまでLINE公式アカウントのメッセージ配信に活用してきました」(茅野氏)
しかし、アンケートで該当項目にチェックを入れているユーザー数が、同社の求める規模には達していないという課題がありました。
「規模を求め、1350万の友だちに全配信してしまうと、ニーズや興味に沿った配信ができず、友だちを解除される可能性もあります。そこで、より友だちの興味関心に合わせ、かつ規模を拡大するために、LINE社とヤフー社が統合して実現したYahoo!広告オーディエンス連携β版の活用をすることにしました」(佐藤氏)
クリック率は最大5倍に!キャンペーンページ流入に貢献
Yahoo!広告オーディエンス連携β版について、茅野氏は「期待を持ちつつも、導入に際してはいくつかの課題があった」と振り返ります。
「弊社はYahoo!広告オーディエンス連携β版に先んじて取り組んだため、参考にできる先行事例がありませんでした。そのため、自分たちなりに仮説を立て、プランニングと検証を進める必要がありました。それが大きなハードルでした」(茅野氏)
どのように使うと効率よく成果を出せるのか、LINEヤフーの営業担当者である市村とディスカッションを重ねながら仮説を構築し、検証していきました。
Yahoo!広告オーディエンス連携β版を活用した第一弾の配信施策としてスタートしたのが、ガーナとTVアニメ SPY×FAMILYがタイアップした母の日キャンペーンでした。
「この施策の目的は、母の日キャンペーンの認知拡大とLINEからランディングページに遷移させ、ページを介して興味関心を高めることでした。そこでSPY×FAMILYを検索したロッテLINE公式アカウントの友だちに向けて、母の日キャンペーンの情報を配信することにしました。ただし、事前に市村さんにお願いした0次分析(課題抽出のために最初に行う分析)から、このターゲティングだけでは配信規模の十分な拡大が難しいことが分かっていました。そのため、データを活用しTVアニメ SPY×FAMILYに登場するキャラクターや声優さんを検索した友だちやSPY×FAMILYのオウンドメディア、映画、ゲームなどの関連Webサイトを訪問した友だち、すなわちSPY×FAMILYの関心があると推定される友だちにも配信範囲を広げました」(佐藤氏)
さらに、LINEで応募のアンケートを基に「人気、アニメキャラクターとのコラボ商品」に興味があると答えた友だちにも、同日に1分差でメッセージを配信しました。
その結果、Yahoo!広告オーディエンス連携β版で配信した場合、LINEで応募のアンケートを基にした配信と比較して、配信規模は約20%拡大し、クリック率は約2倍に向上しました。
※本キャンペーンはすでに終了しています
また、父の日キャンペーンでも同様の手法で配信した結果、LINEで応募のアンケートを基にした配信と比較して、配信規模は約10%増加、クリック率は約2.4倍に上るという結果を出すことができました。
※本キャンペーンはすでに終了しています
「これまで、アニメキャラクターとのタイアップ商品を訴求する際はLINEで応募のアンケート結果に基づいて、『アニメに関心がある』と回答いただいた友だちに商品訴求をメッセージ配信する方法がベストな手法でした。この方法でも、関心のある友だちに的確にアプローチでき、一定の効果を得ていました。しかし、今回、Yahoo!広告オーディエンス連携β版を活用することで、さらに精度の高いデータを基に友だちにアプローチできるようになりました。結果、より多くの友だちにキャンペーンを知っていただき、効率的かつ効果的なマーケティングが実現できました」(LINEヤフー 市村)
この結果を受けて、第二弾として2024年5月下旬に行った施策が、アニメ ブルーロックとコアラのマーチのタイアップ新商品 ブルーロックのマーチの訴求でした。
「こちらも市村さんに0次分析をお願いし、ブルーロックに興味がある人は普段どのようなWebサイトやニュースを見ているのか等の特徴分析をした上で、どのデータを使えば効果的かなど、仮説を立てて進めていきました。そしてブルーロック関連に興味がある人だけでなく、例えばデータで『アニメ好き』『サッカー好き』だと判明した友だちにも配信を拡大しました。その結果、アンケートのみの場合と比べて配信規模は約80%増加し、あるセグメントではクリック率は約5倍となり、配信規模とクリック率が飛躍的に向上しました」(茅野氏)
※本キャンペーンはすでに終了しています
さらに第三弾として、5人組グループ NewJeansのビジュアルがデザインされた、新フレーバーのイタガムを発売した際には、Yahoo!広告オーディエンス連携βを活用し、NewJeansに興味関心がある友だちと、それ以外の友だちとで配信タイトルを出し分けました。
「NewJeansやK-POPのファン層には『NewJeans』という文言を入れたタイトルで情報を配信。その結果、NewJeansファンの友だちは開封率が少し高く、クリック率は特に高い約1.7倍という結果になりました。少し高いと言っても、母数が大きいので評価できる数字だと考えています」(佐藤氏)
「一方で、ファン層でない方に『NewJeansのイタガムが発売されました』と伝えても興味をひきづらいので、イタガムのキャンペーンに焦点を当てたタイトルで情報を配信しました。LINE公式アカウントの友だちになってくださるユーザーは、菓子やアイス、ロッテ商品を好んでいただいている方々ですので、商品キャンぺーンを発信したほうが響くと感じています」(茅野氏)
NewJeansファンに向けての配信では「NewJeans」と入れたほうが、効果が高いことが明らかとなった
今後のLINE公式アカウントの活用について、茅野氏と佐藤氏は「双方向コミュニケーションを目指したい」と語ります。
「これからはお客さまとの対話やフィードバックを通して、さらに近い距離でコミュニケーションを取っていきたいです。その一環として、店頭プロモーションと連動したキャンペーンをLINE上で実施し、ロッテの商品をより楽しんでいただける機会を増やしていきます。ひきつづき、ユーザーに『友だちであり続けたい』と思っていただけるようなコンテンツ作りをしていきます」
今回のロッテさまの施策は、前例の少ない中での取り組みでした。そのため配信コンテンツに合わせて0次分析などを実施し、事前に徹底した仮説検証を行いました。結果として数値が改善され、キャンペーンの認知向上に寄与できたことを大変嬉しく思います。今回のお取り組みをきっかけに、Yahoo!広告のデータの有効性を証明できましたので、LINE公式アカウントへのさらなる拡大はもちろん、マーケティング領域全般へのご活用もご一緒したいと考えています。現状、活用できるデータに制限はありますが、今後一層活用できるデータが増えていく予定ですので、ロッテさまの課題に合わせPDCAを回しながら取り組めたらと考えています。LINE公式アカウントは、LINEヤフーの法人向けサービス全体の基盤となり、ユーザーのサービス利用情報を安全かつ適切に取り扱いながら、集客から予約、購買、CRMまでを一貫して実現する統合型ビジネスプラットフォームとして進化していきます。どうぞご期待ください。(市村)
(公開:2024年12月、取材・文/小泉明奈、POWER NEWS編集部、写真/山﨑美津留)
Yahoo!広告オーディエンス連携はβ版であり、一部のお客さまにのみ提供しています。また、β版のため今後、提供条件・提供機能・提供ルールが変更になる可能性があります
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