コロナ禍をきっかけに全長36cmのジャンボ海老フライを開発。斬新なビジュアルがテレビにも取り上げられ、SNSでも話題を呼んでいる静岡の和食店『なすび総本店』。ジャンボ海老フライの開発秘話やポイントカードからLINE公式アカウントへ移行した経緯などについて話を伺いました。
静岡県内で14店舗を運営。コロナ禍による影響は?
――まずは「なすび総本店」はどんなお店か、詳しく伺えますでしょうか。
坂東亮介さん(以下坂東さん):「なすび総本店」は、なすびグループが運営する和食料理店です。マグロの集積地として知られる清水港の天然ミナミマグロや駿河湾で獲れる新鮮な地魚など、地元・静岡の食材を使った会席料理を中心に提供しています。
――すごく落ち着いた雰囲気のお店ですよね。今はジャンボ海老フライが話題をさらっていますが、それまで、お店ならではの人気メニューはどういったものでしたか?
坂東さん:コースや御膳などいろいろあるのですが、人気が高いのは氷を富士山に見立て、お刺身を贅沢に盛り付けた「富士山盛り御膳」です。
見た目のインパクトもありますし、好みの魚を盛り付けて海鮮丼にしたり、いろいろな薬味で味を変えたりと自由にカスタマイズできるようになっています。「お客さまご自身で作って食べることを楽しんでいただきたい」との想いから生まれたもので、今でも名物料理のひとつです。
――「なすび総本店」さんは、コロナ禍前はどのような利用シーンが多かったのでしょうか。
坂東さん:50席や80席の大部屋を備える全230席のお店なので、団体のお客さまの利用が非常に多かったですね。慶事や法事など親戚の集まり、近隣企業の宴会や食事会、接待に利用される方が主でした。また、旅行会社とも提携していて、観光バスが当店に昼食に寄るケースも多かったです。
地元の方から「来客をおもてなししたい時は“なすび”に行こう」と言ってもらえるようなお店を目指してやってきましたので、リピーターの方が7割、新規のお客さまが3割といった状況でした。
――コロナ禍の影響は大きかったですか?
坂東さん:コロナ禍の当初、来店客数は9割減の状況でした。なすびグループは、静岡県内で業態が異なるお店を14店舗展開しているんですが、2020年の緊急事態宣言発出から同年の秋くらいまで、宅配やケータリング事業以外は全て休業したんです。補助金や助成金を活用し、何とか赤字を最小限に食い止めました。
団体客の利用が多かった「なすび総本店」の場合、再開後は地元のご家族連れが中心になりました。特に接待や懇親会など大型の宴会需要が減ったことが大きく響いており、ここ1年ほどでようやく6割減程度まで回復してきたところです。
「外食は楽しい!」お客さんに笑ってもらえるメニューを考案
――その苦しい状況の中で、ジャンボ海老フライが生まれたんですね。どのような経緯で開発することになったのでしょうか。
坂東さん:再開してからも客足はなかなか戻らない状態が続いていたので、考える時間がたくさんあったんです。グループ各店でさまざまな試みを行っていましたが、当店ではこの期間に名物料理を考えようと。スタッフみんなの思考をポジティブにして、お店全体のモチベーションを上げたいと取り組みを始めました。
再開後、最初にお店に戻って来てくれたのはご家族連れのお客さまでした。そこで、お子さんからご年配の方まで、好みが違う家族でもそれぞれ好きなものを楽しめるようにと、カレーライスやハンバーグ、焼肉定食などを『家族召し』と名付けて提供し始めたんです。これが好評で、次は海老フライをやろうと。
――海老フライの大きさもさることながら、吊るした状態での盛り付けも話題になった要因のひとつではないかと思います。
坂東さん:これも「せっかく36㎝の大きい海老フライなのに、お皿での盛り付けだとインパクトがないよね」と社長が言いまして。そこで常務がバーベキュー用の串を探してきたんです。海老フライに刺して上から吊るすと、プラプラと揺れつつも意外に安定していて面白かったんです。僕も初めて見た瞬間思わず笑っちゃいましたから(笑)。
逆にこのぐらいビジュアルで突き抜けちゃった方が、お客さまに喜んでもらえるかなと思いました。コロナ禍になって「外食は悪だ」というような時期もありましたが、ジャンボ海老フライをきっかけに会話が生まれ、「外食って楽しいね」と感じてもらえるんじゃないかと。
ポイントカードからLINE公式アカウントへ。普及率が上がりオペレーションも簡素に
――なすびグループでは2021年9月からLINE公式アカウントを運用されていると伺いました。以前は「なすびプレミアムクラブ」という会員制度があったそうですが、具体的にはどのようなシステムなのでしょうか。
坂東さん:「なすびプレミアムクラブ」は100円につき3ポイントを付与するポイントカードシステムです。なすびグループ全店共通で、1ポイント=1円として1,000ポイントごとに食事代として利用できます。1年間の利用額に応じて付与額や利用額が異なるステータスが決まり、一番高いプラチナ会員の場合は5%ほどの還元率です。
会員申し込みの際は、用紙に記入してもらってカードを発行します。利用のたびにレジで提示していただいて、スタッフは手入力でポイントを打ち込んでいました。10年以上前から行っていたポイントカードのシステムですが、課題もありました。
――どのような課題があったのでしょうか。
坂東さん:まず、会員を増やすのが大変でした。お会計時にポイントカードの案内をして、希望の方にはその場で申し込み用紙に記入していただくのですが、時間がなかったり、書くのが面倒だとお断りされたりすることも多かったんです。さらに、せっかく記入していただいても手書きのメールアドレスは判読が難しく、メルマガ配信は7割ほどが不達になっていました。
なすびグループのLINE公式アカウント
――さまざまなサービスがある中で、LINE公式アカウントを選ばれたのはなぜですか?
坂東さん:システム担当者の勧めでしたが、LINEの普及率の高さと導入のしやすさがポイントでした。なすびグループで公式アプリをつくるとなると大がかりな予算が必要ですが、スマホを持っているお客さまならほとんどの方がLINEのアプリを入れています。QRコードを読み込むだけですぐに友だち追加ができるのも大きな魅力でした。
スマホを持っていない世代へのアプローチが問題ではありましたが、今はご年配の方でも使っているケースが多いので、それほど大きな影響はないだろうと判断しました。ホームページやメルマガ、店内ポスターで告知をし、3カ月ほどの移行期間を設けて運用をスタートした形です。
――運用に際し、お客さまの反応はいかがでしたか?
坂東さん:導入して1年ほどたちますが、旧ポイントカードの会員数を超えましたね。急速に会員数が伸びたのは、以前のカードよりも気軽に登録してくださる方が多いことが要因だと思います。
――導入したことで、スタッフさんのオペレーションなどで改善した点はありましたか?
坂東さん:旧ポイントカードの時代は、ポイントをスタッフがレジで手打ちしていたんです。そのため、ポイント取得や使用の際に打ち間違いなど人的ミスが一定数発生していました。LINE公式アカウントでは食事代と連動してポイントが付与されるシステムになっているので、間違いがほとんどなく非常にラクになりましたね。
また、メールマガジンが届かないという問題も、LINE公式アカウントからメッセージ配信が利用できるので解決しました。開封率も高く、導入して良かったと思っています。
――最後に、お店として新しく考えていることなどがあれば教えていただけますか?
坂東さん:今「ジャンボシリーズ」としていくつか出していますが、秋からの新商品を目下開発中です。地元食材の天然ミナミマグロの大トロを豪快に使った逸品で、インパクトが大きいのでこれもお客さまに楽しんでもらえるのではないかなと。
僕たち飲食店のスタッフって、やっぱりお客さまに「ありがとう」と言われたり、笑顔になってもらったりするのが見たくて働いている人が多いんです。今回、僕はコロナ禍であらためて実感しました。ジャンボ海老フライでたくさんの笑顔が見られたように、これからもこうした楽しいお料理を提供し続けていきたいなと思っています。
(公開:2022年3月)
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