株式会社エムアイフードスタイル(以下、エムアイフードスタイル)は、高品質な商品で人気を集める食品専門のスーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」(全国16店舗)を運営しています。
新たな集客方法としてLINE公式アカウントを導入した同社 営業統括本部の安井千晶氏(以下、安井氏)に、それぞれの店舗が主体となって運用しているというLINE公式アカウントの活用方法について話を聞きました。
- 折り込みチラシに代わる新たな集客方法を導入したい
- 店舗ごとに異なる客層やニーズに合わせた情報発信をタイムリーに行いたい
- クイーンズ伊勢丹の各店舗でLINE公式アカウントを導入
- 各店舗の担当者がLINE公式アカウントを運用してイベントの告知やクーポンを配信
- イベント開催に併せて特典付きで友だち追加を呼び掛けた結果、ブロックされず25%以上が実際に来店した
- ショップカード機能などの活用により、店舗の広告費用や作業工数が削減できた
LINE公式アカウントを活用したクイーンズ伊勢丹の取り組みを、動画でも紹介しています。
折り込みチラシに代わる集客手段としてLINEに期待
「クイーンズ伊勢丹」は、PB(プライベートブランド)商品の販売に力を入れる食品専門のスーパーマーケットです。食生活を通じて豊かなライフスタイルや価値ある体験を提供することで、ユーザーの日々の生活にささやかな感動を届けています。エムアイフードスタイルの安井氏は、LINE公式アカウント導入前のクイーンズ伊勢丹が抱えていた課題感として、顧客の来店頻度とPB商品の情報発信を挙げ、LINE公式アカウント導入の理由を次のように説明します。
「これまでの集客手段は、新聞の折り込みチラシなど紙の販促物が主流でしたが、時代の流れもあって新聞の購読者が減少していること、折り込みチラシは作業工数や費用がかさむことから、新たに折り込みチラシに代わるツールを検討していました。新規顧客の獲得や既存顧客の継続的な来店を促すツールとして注目したのが、LINE公式アカウントでした」
株式会社エムアイフードスタイル 営業統括本部 営業政策・マーケティング室 ブランディング・ISP担当長 安井 千晶氏
LINE公式アカウントの導入の際に判断を迫られたのが、その運用方法です。クイーンズ伊勢丹はファミリー層の多い大型店もあれば、駅構内にある小規模な店舗もあります。LINEを活用するのであれば、客層も客単価も異なる各店舗が、それぞれの店舗に合った情報を配信したほうが良いのではないか――。そう判断したエムアイフードスタイルは、2016年から希望する店舗には、各店舗が運用を担う形でLINE公式アカウントを導入しました。
「LINE活用における私たちのゴールは、お客さまと継続的にコミュニケーションをとって来店につなげることです。店舗のLINE公式アカウントの友だちになってくださる方は、近隣住民の方や店舗のファンが多いと考えています。地域をよく知る店舗自身がLINE公式アカウントを運用してその地域やお客さまのニーズに合った情報を発信することで、お客さまと深いコミュニケーションをとることができ、距離が近くなるのではと感じました」
運用には本社と店舗の協力体制が不可欠
エムアイフードスタイルは、当初は希望する店舗のみに導入していたLINE公式アカウントを2019年8月には全16店舗に導入しました。安井氏は店舗ごとの導入で苦労した点について、以下のように振り返ります。
「小売店の現場では発注や品出し、接客などの業務が中心で、そもそもパソコンに触れる機会がないスタッフも多いのが現状です。LINE公式アカウントの運用に関して、余計な仕事が増えるだけだと、現場からは不安の声もありました。なぜLINE公式アカウントを導入するのか、スタッフにきちんと説明して理解してもらう必要がありました」
スタッフの負担を軽減するために、安井氏は導入段階ではもちろん、導入後の現在でも各店舗とのコミュニケーションを密接にとることを心掛けています。そのため、毎月必ず一度は現場を訪ね、可能な限りサポートする体制を整えています。
各店舗が店舗特性に合わせてLINE公式アカウントを活用
「現場に任せきりにするのではなく、本社と店舗との連携は不可欠だと考えています。例えば、リッチメッセージを配信するにも、クリエイティブのフォーマットや画像の素材は本社で用意して共有しています。また、他店舗で好事例があればすぐに全店に共有する、些細な疑問であってもすぐに相談してもらうなど、細かいフォローを意識しています。少しでも現場の負担を軽くすることでLINE活用のメリットを感じてもらい、モチベーション向上につながればと考えています」
友だち集めに欠かせない、店舗スタッフの工夫とは
クイーンズ伊勢丹のLINE公式アカウントの友だち集めは、各店舗が中心に行っています。例えば、2019年11月29日にリニューアルオープンした白金高輪店では、オープン前から「LINEで友だち追加をすると、グランドオープン前日に入店できます」という特典をつけて友だち追加を促しました。結果、開店前後の1週間でLINE公式アカウントの友だちを約200人集めることができました。
白金高輪店のリニューアルオープン前に実施した友だち集めの様子
また、杉並桃井店では地域で開催されたイベントに出店した際、イベント開催の2日間で約300人の友だちを獲得しました。
「イベントでは2段階の特典を用意し、友だち追加を呼びかけました。会場で友だち追加していただいた方にPB商品のお茶をその場でプレゼントし、その後1週間以内に杉並桃井店にご来店いただいた方にはさらにオリジナルのカットケーキのプレゼントと、実際の来店につながるクーポンを配信しました。イベント当日に友だちになってくれた方の25%以上が来店につながり、その後もブロックされずに継続的なコミュニケーションが図れています」
杉並桃井店がイベントに出店した際の様子。
2段階の特典を用意してスタッフ自身がLINE公式アカウントの友だち追加を呼びかけた
日常的に行う店舗内での友だち集めに関しては、スタッフの負担を考慮しています。
「例えば、最もユーザーと接するレジカウンターでは、ポイントカードのご案内やレジ袋の有無など、LINE公式アカウント以外にもご案内しなければならない項目があります。そのため、スタッフの負担を増やさないようにポスターなどの店頭販促物は本社から店舗への送付を行うほか、本社制作の販促物での告知、また各店舗での好事例の共有などフォローを行っています」
店舗起点のアイデアでLINE活用の効果を実感
全店舗導入後、本社からのフォローもあり、LINE公式アカウントの運用は各店舗で浸透してきました。店舗が起点となった成功事例も続々と集まっています。
「クイーンズ伊勢丹が以前から定期的に行っているまぐろの解体ショーの開催告知を、LINE公式アカウントで配信しています。LINE公式アカウントであれば、イベント当日に『本日○○で揚がった○○キロのまぐろが入荷しました』などのタイムリーな情報を流すことができます。最近も2店舗で『〇〇キロのマグロを入荷しました』と写真と共に即時配信したところ、以前と比べてまぐろの解体ショーをきっかけにご来店いただくお客さまが増え、売り上げ向上につながりました。まぐろ以外にも、2019年のボージョレ・ヌーボー販売開始当日にLINE公式アカウントで告知したところ、昨年よりも売り上げが好調に推移し、LINEの配信の即効性を実感しています」
クイーンズ伊勢丹ではメッセージ配信だけでなく、LINE公式アカウントのショップカードやカードタイプメッセージも活用しています。ショップカードは、これまで紙で発行していたスタンプカードをLINE公式アカウントで管理できます。スタンプカード制作のコスト削減だけでなくユーザーの手間の軽減にもつながり、LINE公式アカウントの友だち数が一気に増加しました。
クイーンズ伊勢丹全店で実施したLINEのショップカード施策のポスター(左)とリッチメッセージ(右)。
期間中、ショップカードでスタンプを集めたユーザーには集めたポイントごとにPB商品の景品をプレゼントするキャンペーン施策を実施し、ユーザーにショップカードの活用を促した
積極的にLINE公式アカウントの活用を推進する安井氏は、LINEを「来客数の向上に欠かせないツール」と評します。
「店舗に寄せられるお客さまの声でもLINE公式アカウントについて好意的な声が寄せられるようになり、徐々に浸透してきていると実感しています。これからも店舗ごとの特性を生かし、お客さまに便利で親しんでいただけるような情報を配信し、客数アップにつなげていきたいです」
(公開:2020年2月/取材・文:中野渡淳一、写真:小田光二)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです