テレビショッピングを制作・配信する株式会社QVCジャパン(以下、QVC)は、ファッションやコスメ、キッチン用品など幅広い商品を扱う通販企業です。ユーザーのリアルな声を反映するライブ感を重視し、テレビ番組のほか、電話、メルマガ、各種SNSなどを使いユーザーとコミュニケーションを取っています。
ユーザーとのコミュニケーションチャネルの一つとしてLINE公式アカウントを運用するQVCメディアプロデューサーの山田恭輔氏に、その活用法や成果について話を伺いました。
- 若年層の顧客獲得を目指して、LINE公式アカウントの友だちを増やして、継続的にコミュニケーションを取りたい
- LINE公式アカウントとともに、ソーシャルログイン機能としてLINEログインを導入し、ID連携を促進
- ID連携を済ませたユーザーに対して、購入履歴に基づくセグメント配信や、「カゴ落ち」防止のメッセージを配信
- LINEログイン導入後、LINE公式アカウント経由のECサイト新規会員登録数は約3.5倍。QVCのLINE公式アカウントの友だち追加数は、1日あたり約4倍に伸長
- LINEログインの導入後に実施した各種セグメント配信の結果、ECサイトの売り上げが導入前と比べて126%アップ
『コミュニケーション』に着目してLINE公式アカウントを導入
QVCは「Quality(品質)、Value(価値)、Convenience(利便性)をお客様に届ける」という理念のもと、ファッションやコスメ、キッチン用品などを、テレビやWebを通じて販売する通販事業会社です。2001年のテレビショッピング放送開始以来、40~70代の女性を中心に多くのユーザーを獲得してきました。しかし、創業から18年が経過した現在、既存ユーザーを大切にしながらも、若年層の顧客獲得に課題感を持つようになりました。
「特に『テレビ離れ』が進む若年層を獲得するため、販売促進や各種コミュニケーションのデジタル化を進めているところです」
デジタル施策の一環として、QVCは2018年7月にLINE公式アカウント(旧LINE@)を導入しました。LINEが若年層を含めた幅広いユーザーを持つことや、アプリの利用頻度が高いことはもちろん、従来QVCが大切にしてきた「コミュニケーション」を重視した結果、導入に踏み切ったと山田氏は力説します。
「QVCの主力事業であるテレビショッピングでは、ご注文の際に電話で担当者との会話を楽しまれるお客さまも大勢いらっしゃいます。LINE公式アカウントであればチャット機能などを使うことでお客さまに合わせたコミュニケーションを取れますし、デジタル化を進めても、お客さまと双方向のやりとりを維持できるのではないかと考えました」
LINEログインでECサイトの会員登録数は3.5倍、友だち追加数は4倍に
ユーザーとより密なコミュニケーションを取るために、QVCは社内で保有する顧客IDとユーザーのLINEアカウントの紐づけ(ID連携)を進めています。その取り組みを加速させたのが、2019年3月に導入した、株式会社ソーシャルPLUSが提供する「ソーシャルPLUS」を使ったLINEログインでした。
企業や店舗が持つ会員情報と、ユーザーのLINEアカウントを連携させる際に使われるAPI。新規サービスの登録時にメールアドレスなどの個人情報の入力が省略できるため、ユーザーの利便性向上に寄与することができる。
「『ソーシャルPLUS』を使えば、ID連携の際、LINE公式アカウントにも自動的に友だち追加されます。以前実施したLINE広告の友だち追加配信でも友だち数は増加しましたが、ID連携の場合はもともとQVCに関心のあったユーザーということもあり、その後の再購入率などにもより良い影響が表れています」
実際、LINEログインを導入した後、ID連携数は堅調に増え続け、ECサイトの新規会員登録数は約3.5倍に、QVCの LINE公式アカウントの友だち追加人数は1日あたり約4倍になりました*。また、LINE公式アカウント経由のECサイトの売り上げは126%増*と、さまざまな効果が表れています。
いずれも導入前後の3カ月平均を比較して算出(QVC調べ)。
「LINEログイン導入を機に、LINE公式アカウントと弊社ECサイトを相互に行き来できるよう導線を整えたり、ECサイトへの再訪問を促すキャンペーンを企画するなどして、さらなるファン獲得に向けた取り組みを行っています。また、ECサイトの売り上げが伸びているのは、電話注文よりWeb経由での注文の方が併売率が高いことはもちろん、LINE公式アカウントからユーザー個々の状態に応じてメッセージを送り分け、コミュニケーションを継続的に取っていることが要因ではないかと分析しています」
具体的には、ID連携を経たユーザーに対して購入履歴に基づく商品リコメンドや、「カゴ落ち」を防止するセグメント配信を行っています。前者はCTRが12〜15%*、後者はCTRが40%*にもなることもあり、「自社とLINEとの相性の良さを実感している」と山田氏は評価します。
いずれも、ID連携済の全ての友だちに対する配信実績から平均値を算出(QVC調べ)。
自社の顧客にフィットするLINE活用を目指して
テレビショッピングを取り巻く現状や顧客のライフスタイルを踏まえ、山田氏は今後のLINE活用の展望を次のように語ります。
「スマホ片手にQVCの番組を視聴したり、外出先で商品の販促動画をチェックするユーザーが増えてきているからこそ、スマホを中心としたデジタル施策を一層進めていかなければと考えています。例えば、LINEをECサイトの“入り口”として利用するお客さまに向けて、リッチメニューに配置するコンテンツの企画や見せ方などにもさらなる工夫を凝らしたいと思います」
また、LINEログインの導入で進んだID連携を経て、さらなるデータ活用の可能性を探っています。
「現在は、ID連携済みのユーザーが購入した商品カテゴリーに基づいてセグメント配信を行っていますが、今後、LINEが保有するデータを活用して、例えばユーザーの趣味・嗜好や、行動データに基づくセグメント配信ができないかと考えています。『Quality(品質)、Value(価値)、Convenience(利便性)をお客様に届ける』ような購入体験を、LINEを使って今後も提案したいと思います」
(公開日:2020年1月/写真:中村宗徳)
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