鳥取県に本社を構える株式会社澤井珈琲(以下、澤井珈琲)は、1982年に創業したコーヒーと紅茶の専門店です。鳥取県や島根県を中心に東京都内でも直営店を運営しつつ、EC事業にも注力し、自社サイト以外の複数のECモールでも商品を販売しています。
澤井珈琲では2018年7月に楽天市場店、2021年7月にPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントを開設しました。LINE公式アカウント経由の売り上げが増加しているという同社の取り組みや活用のポイントについて、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントを例に、澤井珈琲 常務取締役の澤井理憲氏に話を聞きました。
- 開封率が低下していたメルマガに代わる販促ツールを導入したい
- 平日と休日で配信内容を変えてメッセージを配信し、商品購入を促す
- 自動応答メッセージ機能を使い、購入商品を迷うユーザーに向けてレコメンドを実施
- PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントは、メルマガと比較してメッセージ開封率が3.3倍、クリック率は1.7倍を記録
- カードタイプメッセージを活用しておすすめ商品やクーポンを配布したところ、取り組み前と比較して客単価が400~500円ほど増加
- メルマガ経由の購入者よりも若年層のユーザーを獲得
- 2021年11月時点と2022年7月時点のLINE公式アカウント経由の売り上げを比較すると2.3倍にまで伸長
開封率と即時性の高さに魅力を感じてLINE公式アカウントを開設
鳥取県境港市に本店を構える澤井珈琲は、2022年で創業40年となるコーヒー・紅茶の専門店です。鳥取県や島根県に7店舗、東京都内に3店舗の直営店を運営し、厳選したコーヒー豆や自社製造のドリップパック、香り豊かな茶葉などを販売しています。
2002年からは自社ECサイトでの販売を開始し、現在はPayPayモール(現:Yahoo!ショッピング)や楽天市場をはじめ、7つのECモールに出店しています。
「いまや当社の売り上げの8割がECでの販売経由となり、年商は40億円以上に上ります。EC事業を始めた当時は当社の商品があまり認知されていなかったこともあり、売り上げを出すことに苦戦していました。2005年頃から積極的に広告を配信し始め、売り上げが大幅に伸びたという経緯があります。一方で、広告だけに限らず、購入者に継続的にメルマガを配信してリピート購入を促すという、いわば王道のマーケティング戦略にも注力し、着実にリピーターを増やしてきました。その結果、ECサイト経由の売り上げは伸長し、現在のリピート購入率は7割に達しています」
株式会社澤井珈琲 常務取締役 兼 銀座店店長 澤井理憲氏
EC事業の成長を支えてきたメルマガは、配信リストの人数が100万人を超えています。しかし、近年は徐々に開封率が低下していることが課題となっていたといいます。そこで、メルマガに代わる販促ツールとして目を付けたのが、LINE公式アカウントでした。
「当社ではマーケティング戦略として『お客さまの一番身近なコーヒーになること』を掲げています。LINEは私たちの生活に浸透したコミュニケーションアプリですから、当社の掲げる戦略や日常で楽しむコーヒーとの相性も良いのではないかと考えました。そこで、2018年7月にまず楽天市場店、次いで2021年7月にPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントを開設しました。以降、メールと並ぶ販促ツールの柱として活用しています」
現在、同社はECモールのイベント開催日をターゲットにLINE公式アカウントのメッセージ配信を行っています。例えば、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)の場合、ポイント還元率アップや割引クーポンが配布される「5のつく日」「日曜日(※)」「ゾロ目の日」です。
※2022年10月9日をもって日曜日のポイントアップは終了しています
「メッセージは、平日と休日で訴求内容を変えています。平日は、日曜日やイベント開催日の2~3日前、時間はモーニングコーヒーを飲む時間帯と考えられる朝の6時半~7時半頃に配信しています。『そろそろストックがなくなってきたな』というタイミングで澤井珈琲を想起してもらうこと、さらには商品を購入の前段階であるカート(ECサイトの買い物かご)に入れてもらうことが狙いです。
そして、休日はカート内の商品の購入を促すため、セールの告知やお得感を訴求するメッセージを配信します。ECの売り上げを伸ばすためには、いかに“カゴ落ち(買い物かごに入れられたものの、購入まで至らない商品)”を防ぎ、確実に購入につなげられるかが重要なポイントです。LINE公式アカウントのメッセージ配信はメルマガよりも即時性が高く、配信直後に開封されることも多いため、イベント終了間際に購入者が急増するECモールと非常に親和性が高いサービスだと感じています。実際にLINE公式アカウント経由のPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)の売り上げは日曜日が68%と、週の中で最も高い割合を占めています」
メッセージ配信のポイント
LINE公式アカウントの活用で客単価や合計購入金額が増加
澤井珈琲のYahoo!ショッピング店のLINE公式アカウントは、メルマガと比較してメッセージ開封率が3.3倍、クリック率は1.7倍に上ります。開設当初の期待通り、高い運用効果を上げていますが、その実績の背景にあるのはクリエイティブへの強いこだわりです。
メルマガとLINE公式アカウントの開封率とクリック率の比較
「よく使う機能は、複数の商品をまとめて紹介できるカードタイプメッセージです。短い文言で分かりやすく商品特徴やユーザーメリットを伝えることを意識していて、横文字は基本的に使いません。例えば、『Now on Sale! 50%off』というよりも、『今だけ半額!』のほうが、一瞬で伝わります。また、価格帯を分けたクーポンを配布するなど、お客さまが買わない理由をつくらないようにして客単価を上げる工夫をしています。コロナ禍の影響を受けて始めた取り組みですが、客単価が400~500円ほど増加しました。
そのほか、ECモールのセール日を対象としたメッセージ配信は、基本的な訴求内容は変えないものの、商品の並び順を変えたり、一部文章を変えたりと、必ず前回のメッセージと変化をつけるようにしています。少しでもユーザーを飽きさせないための工夫です。一年を通じて膨大な数のメッセージ配信をしていますが、LINE公式アカウントの管理画面は本当に使いやすく、Photoshopなどの画像加工ソフトを使わなくてもクリエイティブを簡単に作れるので助かっていますね」
メッセージ作成のポイント
これまで澤井珈琲の商品購入者は、50代以上が中心でしたが、LINE公式アカウントを導入したことによって、若年層の購入者も増えています。また、2022年4~7月におけるLINE公式アカウント経由の1人当たりの合計購入金額は、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)全体と比べて1.3倍というデータが出ています。売り上げアップに貢献しているのが、自動応答メッセージ機能の活用です。
LINE公式アカウントの購入者の傾向
リッチメニューに「どの商品を選べば良いか悩まれている方へ」というボタンが設けられており、それを選択すると「レギュラーコーヒー」「ドリップバッグコーヒー」「カフェインレスコーヒー」「コーヒーギフト」などのコーヒータイプを選択するメニューが登場します。例えば、その中から「レギュラーコーヒー」を選択してタップすると、さらに選択肢が登場して、タップを続けていくことで自分が潜在的に求めていた商品にたどり着けるという仕組みです。
自動応答メッセージ機能を使い、購入商品を迷っている方へのレコメンドを実施
「この機能を使って実際に『おすすめのコーヒー』を提案されたユーザーの割合は88%に上ります。数ある商品の中から、楽しみながら自分にぴったりの商品を見つけてもらう。単にモールへ遷移させるだけではなく、そうした新しい購買体験がLINE公式アカウントによって提供できています」
これらの取り組みを行った結果、2021年11月時点と2022年7月時点のLINE公式アカウント経由の売り上げを比較すると2.3倍伸長しています。また、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のイベント「超PayPay祭」の開催時には月間売上ギネスを更新する約1,500万円の売り上げを記録するなど、大きな成果を出しています。
LINE公式アカウント経由の売り上げ
目標は5年以内に「友だち数100万人」
これまで澤井珈琲では、友だち追加時にメルマガで配布するクーポンよりも割引率の高い「20%割引クーポン」をプレゼントしたり、サイトやメルマガにバナーを設置するなど、LINE公式アカウントの友だち集めに注力してきました。
メルマガよりも割引率の高いクーポンを配布
その甲斐あって、開設から4年経った現在、LINE公式アカウントの友だち数は、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)と楽天市場店を合わせて21万人を超えています。
「メルマガなどのほかのデジタルツールと比較して、LINE公式アカウントのメッセージ配信は費用対効果が高いと感じています。友だち数が少ないうちは、あまりその効果を実感できないかもしれませんが、100人、1,000人、1万人……と増えていくと、サイトへのアクセスが増え、お客さまからの反応や売り上げが増え……と加速度的に効果が現れていきます。これからECの販促でLINE公式アカウントの運用を始められる方は、効果が出なくてもすぐ諦めず、長期視点でじっくり友だち集めをしていってほしいと思います」
澤井珈琲が考えるLINE公式アカウントの活用ステップ
「特にPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)に関しては、運営元のZホールディングスとLINEが経営統合してから、LINE公式アカウントの友だち集めを後押ししてくれるセールやイベントが実施されるようになりました。PayPayモール(現:Yahoo!ショッピング)を活用している企業にとっては、今がLINE公式アカウントを開設する好機だと思います。売り上げが伸び悩んでいる場合は、導入を検討してみてはいかがでしょうか」
「効果が現れてくると、運用がどんどん楽しくなる」という澤井氏。今後5年で、「友だち数100万人」という大きな目標を掲げています。
「前述したように、メルマガの配信リストが100万人なので、決して無理ではない数字だと思っています。まだまだ活用しきれていない機能もあるので、これからも勉強しながらLINE公式アカウントを効果的に運用していきたいですね。最終的にはLINE公式アカウントに“メディア“の役割をもたせ、雑誌のようにコーヒー関連の最新情報や役立つノウハウをお届けすることも構想しています。常に私たちの傍に寄り添ってくれているLINEを活用して、澤井珈琲のファンをもっともっと増やしていきます」
(公開:2022年10月、取材・文/相澤良晃、撮影/川嶌 順)
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