1855年創業の白瀧酒造株式会社(以下、白瀧酒造)は、新潟県南魚沼郡湯沢町を拠点とする清酒の製造・販売企業です。同社では、オフラインで生まれたユーザーとの接点をオンラインに移行するため、LINE公式アカウントを活用しています。その運用方法や新規ユーザー獲得のために活用した「友だち追加広告」の成果などについて、同社第三営業部 広報担当 松村舞子氏に話を伺いました。
- 通販事業やリアルイベントをきっかけにユーザーとの接点を保つツールを導入したい
- 2020年6月からLINE公式アカウントの本格運用を開始
- 友だち追加広告を導入して新規での友だち追加に注力
- 本格運用開始から1年半で想定以上となる2万6,000人まで友だち数が増加
- 友だち追加広告で9,000人の友だちが増加した
リアルな場での顧客接点を「キャッチ&リリース」にしないため
白瀧酒造が販売する代表的な日本酒銘柄「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」は、2020年に発売から30周年を迎え、2021年3月に商品リニューアルが行われました。リニューアルを前に、試飲会イベントや湯沢町でのショールーム、酒蔵見学など、オフラインでユーザーと接点を持つ機会が増えていました。
しかし、オフラインではせっかく出会ったユーザーとのつながりが一過性で、接点を維持するための方法を探していたといいます。そこで、同社では2020年3月に「白瀧酒造【上善如水】」のLINE公式アカウントを開設し、6月から本格運用を開始しました。
「現在、弊社主力商品の多くは卸業者を通じて量販店や飲食店で販売・提供されています。これまで、オフラインイベントの際にチラシを配布するなどで通販サイトに誘導していましたが、お客さまの日常的な暮らしの中で継続的に白瀧酒造との接点が維持できる――。そんな世界を実現するため、LINE公式アカウントを導入しました」
自動応答メッセージを活用したキャンペーンが好評
LINE公式アカウントの運用開始後、松村氏は他社事例などを参考にしながら効果的な活用法を模索しました。
例えば、通販サイトでの購買に結びつける目的として取り組んだメッセージ配信では、リッチメッセージに加えてカードタイプメッセージやリッチビデオメッセージなどのさまざまな機能を活用。リッチメニューでは、「冬のギフト特集」などの季節ごと、「父の日」などのイベントなどに合わせてクリエイティブを変えていきました。
「クーポンの抽選機能も積極的に活用していて、友だち追加における施策としてかなりの成果が出ています。特に毎月行っている『友だち限定○月のプレゼント』『ひやおろしの上善水如が当たる抽選』などの抽選会が好評を博しています。お客さま満足度のアンケートを取ったときには『抽選会をいつも楽しみにしています!』など、ポジティブな声が多数寄せられました」
クーポンの抽選キャンペーンについてもメッセージ配信で案内し、公式ホームページへ誘導を図っている
同時に友だち数の増加にも取り組み、中でも大きな成果が表れたのが「上善如水リニューアルキャンペーン」(2021年3月)での自動応答メッセージ活用でした。キャンペーン特設サイトで特定のキーワードを案内し、ユーザーがチャットでそのキーワードを送信すると、自動応答メッセージで配信される応募フォームからキャンペーンへの参加が可能になります。
「各種SNSで同キャンペーンを告知したところ初日だけで800人以上の応募があり、期間中に2,600人を超える友だち追加がありました。アンケートに答えた新規ユーザーへの特典として、トーク画面から『レシピ』の合言葉を送信すると日本酒に合うおつまみレシピが送信される企画も好評でした。ほかにも、トーク画面でユーザーが入力しそうなメッセージや問い合わせ、商品名など、思いつく限りのキーワードに対する返信内容を自動応答メッセージに設定しています。自動応答で対応できない長文のメッセージに関しても、問い合わせ窓口に連絡してもらうメッセージを別に設定し、ユーザーの“行き止まり”をつくらない工夫を凝らしています」
月3〜5万円の予算枠で友だち獲得単価は「平均60円台」
自動応答を活用したキャンペーン以外では、イベント参加者を対象に日本酒を一杯無料にするなどの商品インセンティブを案内するなど、対面での友だち数増加に取り組んできました。しかし、コロナ禍によってオフラインでの接点がなくなってしまいます。
そこで検討したのが、「友だち追加広告」でした。友だち追加広告とは、LINEのトークリストやLINE NEWSなどに友だち追加を促す広告が成果報酬型で掲載できるLINE公式アカウントの有料機能です。
「友だち追加で『季節のおすすめ日本酒』をプレゼントするというキャンペーンを訴求する広告を掲載しました。開始当初は予算も正式に組まれていない状況でしたが、出稿にあたってはLINE社のフォローもありましたし、運用後も月に3~5万円の予算枠で友だち追加単価が平均60円台、最も低い時期だと64円と高い費用対効果が実感できました。運用面でも管理画面から手軽に出稿できる点も魅力的でした」
「友だち追加広告」で配信した広告クリエイティブ。商品のプレゼントを訴求して友だち追加を促した
結果、2021年12月現在、同社のLINE公式アカウントの友だち数は2万6,000人を超え、ブロック率も20%台を維持しています。また、約1年間継続してきた友だち追加広告経由での予算枠と友だち追加数は、累積30〜40万円で9,000人ほど。松村氏にとっても、この成果は想定以上だったと振り返ります。
メッセージ配信後、商品在庫が一気になくなることも
開設当初、白瀧酒造は友だち数の目標を「メルマガ登録会員と同程度の2万人」に設定し、3~5年ほどの中長期戦略として考えていました。そのため、当初はフリープランでの運用を前提にしていましたが、友だち数が500〜800人を超えてくると、社内的にも「活用しないともったいない」という意見が生まれてきたといいます。
事実、友だちに対するメッセージ配信では、商品購買に着実につながっているという成果が生まれています。訴求する商品やクリエイティブによって差はあるものの、数量限定商品の販売開始を知らせるメッセージを配信したところ、開封率は40%を超え、通販サイトへのクリック率も11.5%を記録しました。
LINE公式アカウントから配信しているメッセージイメージ。リッチメッセージやリッチメニューでの商品訴求を中心に、オンラインショップへの遷移を促している
「季節商品、⽬を引くようなクリエイティブでのリッチメッセージを配信したところ、紹介した商品が品切れになることもありました。もちろん、もともと注目度の高い商品であったことや他のSNSの効果など複合的な要因がありますが、LINE公式アカウントも大きく貢献したと考えています。次のステップとして考えていく必要があるのは、成果に結びつくメッセージ配信に対する予算を社内で獲得していくことです。今後は『このくらいメッセージを配信すれば、このくらいの売上に直結する』ことを分析・可視化し、コンバージョン計測のためのLINE Tag活用なども検討していきたいです」
(公開:2022年1月、取材・文:安田博勇)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※同社LINE機能の活用については、下記、白瀧酒造の公式note内でも発信されています。