若者やビジネスパーソンからの支持を集め、国内最大規模のカフェチェーンへと成長したスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社(以下、スターバックス コーヒー ジャパン)は、2019年4月にLINE公式アカウントを開設するとともに、LINE上で発行できるスターバックス専用のデジタルプリペイドカードである「LINE スターバックス カード」の運用を行っています。LINEのサービスを活用することでどのような顧客体験(CX)を提供しているのか。取り組みの成果や今後の展望について、同社デジタル戦略本部本部長の濵野努氏に話を伺いました。
- 新たなマーケットを開拓してライトユーザーの新規獲得を目指したい
- LINE公式アカウント内にさまざまな機能を実装し、実際の店舗と同様にユーザーとのOne to Oneコミュニケーションを表現
- LINE公式アカウントから発行・管理が可能な「LINE スターバックス カード」をスタート。スターバックスの会員プログラムである「Starbucks Rewards™」への誘導を狙う
- 2019年4月に開設したLINE公式アカウントでは、1年間で680万人の友だちを獲得
- 「LINE スターバックス カード」の発行枚数も2カ月半で100万枚を突破
- LINE公式アカウントと「LINE スターバックス カード」により、「Starbucks Rewards™」の会員数が急増し、500万人規模のプログラムに成長した(2019 年11 月末時点)
実店舗の「One to One」コミュニケーションをLINE公式アカウントでも展開
スターバックス コーヒー ジャパンは、1971年にアメリカ合衆国ワシントン州シアトルで開業したコーヒーチェーン「スターバックス」の日本法人として1995年に設立されました。以降、急成長を遂げてきた同社でデジタル戦略本部本部長を務める濵野努氏は、2019年4月からスタートさせたLINEとの包括提携の狙いついて次のように説明します。
「”デジタルプラットフォームを通じて、店内外でお客さま1人ひとりに寄り添った体験を提供していく”というアプローチを取ってきた当社は、今後のさらなる成長を見据え、国内の月間利用者数9,500万人*というユーザーを持つLINEとの提携をスタートさせました。また、各地域にある店舗を“コミュニケーションハブ”にしていきたい当社としては、 “CLOSING THE DISTANCE”というLINEのミッションに共感する部分も大きかったです」
※2023年6月末時点
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 デジタル戦略本部 本部長 濵野努氏
2019年4月に発表された包括提携による施策の1つが、LINE公式アカウントの運用でした。「スターバックス」のLINE公式アカウントでは、値引きクーポンの配信などは行わず、”実店舗のパートナー(従業員)が行っているOne to Oneコミュニケーション”に基づくコンテンツを提供しています。
例えば、リッチメニュー内で提供されている「今のおすすめ」では、1日3回、6時と11時と15時に、それぞれの時間帯に適したおすすめメニューをカルーセル機能で案内してくれます。
リッチメニュー内のテキストは「一日のはじまりに」→「ランチにおすすめ」→「ちょっとひと休み」へと切り替わるなど、ユーザーの生活に寄り添っている
また、「カスタマイズ」は、「今の気分でさがす」「フレーバーでさがす」などの選択肢をタップするだけでユーザーに最適なカスタマイズされたメニューが表示され、注文の方法も表示可能です。
LINEを入口としながら、ライトユーザーの新規獲得を目指す
スターバックス コーヒー ジャパンがLINEとの包括提携を機に始めたもう1つの施策が、「LINE スターバックス カード」の運用です。「LINE スターバックス カード」はLINE公式アカウントのリッチメニュー内「LINE スターバックス カード」から発行・管理ができるデジタルプリペイドカードで、登録にかかるハードルが低いためライトユーザーの獲得が見込めます。
「LINE スターバックス カード」の管理画面では、LINE FRIENDSのキャラクターがデザインされたカードのほか、画面を読み込む際、カップにコーヒーが注がれるアニメーションが表示されるなど、ユーザーを楽しませる体験が散りばめられています。
これまでスターバックスは、実店舗や自社アプリなどで発行できる「スターバックス カード」を運用してきました。同カードを発行すると、商品やギフトカードなどを購入して“Star"を集められる会員プログラム「Starbucks Rewards™」*へ参加が可能です。
*Starbucks Rewards™ではGreen Starプログラムから始まり、250Starを集めるとGold Starプログラムがスタート。Gold Starでは、150Starを集めるごとに商品と互換性のあるReward eTicketが発行されるなどの特典が用意されている
これに対して、「LINE スターバックス カード」は、ユーザーを「Starbucks Rewards™」へ誘導することを主な目的としています。発行と同時に “準会員”として参加でき、正式に会員登録すれば「Starbucks Rewards™」の正会員にステップアップできる仕組みです。
「スターバックス カードはStarbucks Rewards™の入口となる施策ですが、申し込みに店舗での手続きやアプリのダウンロードが必要なため、ロイヤルティーの高いお客さまが集まっていました。一方、LINE スターバックス カードは、LINEの認証機能を使って簡単に登録いただけることもあり、より多くのカジュアルなお客さまに新規でご利用いただいております」
LINEで獲得した新規ユーザーを来店へつなげる
「LINE スターバックス カード」は、2019年4月の提供開始から2カ月半で新規発行枚数100万枚を突破。同年11月には150万枚を突破しました。それに伴って「Starbucks Rewards™」も500万人規模の会員プログラムになるまで拡大しています。(2019 年11 月末時点)
「LINE スターバックス カードはわずか2カ月半で100万枚を超え、短期間で多くのお客様に利用をいただけたという素晴らしい結果になりました。Starbucks Rewards™の会員登録への波及効果についても、想定以上の結果を残していると考えています」
また、プリペイド式である「LINE スターバックス カード」のチャージ機能として活用されているLINE Payについては、2020年内を目処に国内全店舗でキャッシュレス決済を順次導入する予定ということです。
「今後は、LINE スターバックス カードを発行いただいたユーザーに豊かな体験やベネフィットを届けたいと考えています。弊社の会員情報とユーザーのLINEアカウントとの連携でお客さまの購買履歴などが把握できるようになったため、1人ひとりの来店サイクルを短縮させるなどのKPIを設計しながら、LINEというプラットフォームを活用して、よりパーソナルなコミュニケーションを実現していきます」
(公開:2020年6月/取材・文:安田博勇)
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