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LINE公式アカウント

ユーザーごとにリッチメニューを「着せ替える」。LINE公式アカウントでLTV向上を目指すタカラトミーのDX推進

株式会社タカラトミー

2023.02.24

株式会社タカラトミー メディア戦略室 室長 木村 貴幸氏(右)
株式会社タカラトミー メディア戦略室 主任 神脇 奈々氏(左)

トミカやプラレール、リカちゃんなど、玩具や雑貨の製造・販売を手掛ける株式会社タカラトミーでは、ユーザーとの関係性強化を目的にLINE公式アカウントを開設。LINE公式アカウントをオンライン接点の重要なチャネルとして活用しながら、LTV(ライフ・タイム・バリュー)向上を狙う同社の戦略について、メディア戦略室の木村貴幸氏(以下、木村氏)と神脇奈々氏(以下、神脇氏)に話を聞きました。

目的
  • これまで接点がなかったユーザーとの関係性を強化したい
  • 中長期的な視点でLTVの向上を目指したい
施策
  • LTVの向上に期待してLINE公式アカウントを開設
  • リッチメニューに商品ブランド別の着せ替え機能を実装
  • 友だち追加時のアンケート取得により、メッセージ配信の時間や内容を最適化
効果
  • HPやオンラインショップへの流入元として、LINE公式アカウントがメルマガや他のSNSを上回る数値を記録
  • LINE広告やCPDスタンプの実施で友だち数は22万人を突破(2023年2月時点)

IDが変わらないLINEはLTV向上に最適

株式会社タカラトミー(以下、タカラトミー)がLINE公式アカウントの開設を検討し始めたのは、2021年の8月頃。自社のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進していく中、今まで接点がなかったユーザーとの関係性を強化する目的があったと振り返ります。

 

「前提として、ダイレクトなコミュニケーションが可能なお客さまを数百万人単位でつくっていきたいという社内目標があり、それを実現するためのツールを検討していました。当社はLINE公式アカウントの導入前から各種SNSを運用していましたが、基本的には匿名性が高いコミュニティーです。必ずしも実名である必要はありませんが、中長期的な視点でLTV向上を目指すとなると、少なからず不自由さを感じる部分はありました。その点、LINEは国内での利用率がとても高く、アカウント作成には電話番号が必要なため、IDは簡単に変わりません。私自身もLINEを日常的に利用していましたし、開封率の高さや情報配信のタイムリー性、将来的な拡張性の高さなども加味して、導入を決定しました」(木村氏)

株式会社タカラトミー メディア戦略室 室長 木村 貴幸氏

新規開設に当たっては、トミカやリカちゃんなど、商品ブランドごとにLINE公式アカウントを開設する案も検討したそうですが、まずはメディア戦略室として統合した企業のLINE公式アカウントを運用し、ユースケースをつくるという判断に至りました。

 

「これまで、社内でタカラトミーのメーカー情報を発信するLINE公式アカウントを運用した経験はありませんでした。つまり、会社にとっても完全に初めての施策です。試験的にどこかのブランドのLINE公式アカウントを新規に立ち上げることも考えましたが、1部門が運用することになり、社内共有が難しい。将来的には各ブランドアカウントを立ち上げることも視野に入れつつ、まずは企業アカウントを立ち上げ、メディア戦略室で運用した知見を社内に還元していくことを重視しました」(木村氏)

タカラトミーのLINE公式アカウント

アンケート取得とリッチメニューの「着せ替え」機能

LINE公式アカウントが開設されたのは2021年11月、運用を担当する神脇氏は、オフラインだけでなくオンライン施策でも友だち数を伸ばしてきたと説明します。

 

「LINE公式アカウントの開設後、主にトミカショップなどの店舗やイベント会場で友だち追加を案内するPOPなどを掲示して友だち数を増やしていきました。Twitterやメルマガは数十万人単位でユーザーがいたため、当初は『友だち数もすぐに伸びるだろう』と思っていました。ただ、1万人を超えたあたりから伸びが鈍化してしまって…。お客さまがLINE公式アカウントの友だちになる動機づけが必要と考え、LINE広告で友だち追加を促す広告配信を行うと同時に、期間限定でLINEプロモーションスタンプのCPDスタンプを実施しました」(神脇氏)

LINE広告で配信した広告クリエイティブ。LINE公式アカウントの着せ替えメニュー(詳細は後述)やCPDスタンプを中心に訴求

CPDスタンプでは、『リカちゃん公式 日常スタンプ』を先着順で無料配布。LINE広告での配信効果もあり、わずか2週間で当初目標としていた友だち数8万人を突破し、現在は22万人(2023年2月時点)に達しています。

 

「LINEスタンプは今もLINE STOREで販売していますが、そのとき配布したのは8種類の無料LINEスタンプです。ユーザーが日常使いしやすいよう、リカちゃん事業部とデザインの検討を重ねながら制作しました」(神脇氏)

株式会社タカラトミー メディア戦略室 主任 神脇 奈々氏

タカラトミーがLINE公式アカウントの運用を開始して取り組んだのが、メッセージ配信やリッチメニューをユーザーに合わせて最適化すること。友だち追加時にユーザーアンケートを実施し、「希望する配信時間」や「興味のあるブランドキャラクター」などに関する設問を用意。アンケートの回答データを元に定期的なメッセージ配信を行っています。

 

さらに特徴的なのが、リッチメニュー内に実装された「着せ替え」機能です。アンケート内で希望ブランドを選択すると、リッチメニューのデザインやメニュー構成がカスタマイズされ、アンケート回答後はリッチメニュー内のタブから「メインメニュー」と「ブランドメニュー」をいつでも切り替えることができます。

友だち追加時に案内しているアンケート内容(左、中)、リッチメニューは「メインメニュー」とアンケートで選択した任意の「ブランドメニュー」を切り替えることができる(右)

アンケートの回答データを元にしたメッセージ配信、着せ替え可能なリッチメニューで各種ブランドの新商品・人気商品を紹介していった結果、商品HPやオンラインショップへの送客率が向上していきました。

 

「HPやオンラインショップの流入元をウイークリー単位で比較すると、友だち数はメルマガやTwitterのフォロワー数より少ないものの、LINE公式アカウントが最も高い数値を記録する週もあります。HPへの流入はオーガニックからの流入比率が多く、全体に占めるLINE公式アカウントの割合はまだ大きくはないものの、コンバージョンにつながりやすいツールだと再認識しています。特に開設時期がクリスマス商戦に入る11月だったので、会社としても非常に助かりました」(木村氏)

複数ブランドのコミュニケーション施策を、一つのプラットフォームで

2022年7~9月には、LINE公式アカウントにトミカ5台を購入したレシートを撮影して送ると、抽選でオリジナル商品が当たるキャンペーンを実施しました。

 

「応募だけでなく、当選連絡もLINE公式アカウントから行いました。SNS上では当選者の皆さんが『#トミカ』のハッシュタグを付けながら画面のスクリーンショットを投稿してくれて、キャンペーンを知らなかったお客さまにも情報が拡散されました。これまで、当選は商品の発送によって案内していたので、こうしたコミュニケーションが生まれるのは新鮮でしたし、情報拡散という結果も予想外でした」(神脇氏)

 

2023年1月下旬からは、リッチメニューのメインメニューに「お客様相談窓口」が新設されました。リッチメニュー内のコンテンツを拡充していくことも、今後予定している取り組みの一つです。

 

「着せ替え機能は現在6種類ですが、今後はさらにブランドを拡充していく予定です。タカラトミーでも人気が高い主軸商品『トミカ』『プラレール』『リカちゃん』『アニア』などのお客さまは、既存の情報発信でも満足いただけていると思いますが、他の商品ブランドのお客さまには十分な情報を届けることができていません。複数ブランドのコミュニケーション施策を、一つのプラットフォームで実施するという当初の目的を実現させていきたいと思います」(神脇氏)

また、木村氏はLINE公式アカウントを通じたブランド横断の訴求に加え、今後の展望としてデータの連携や利活用に目を向けています。

 

「例えば、現在は『トミカショップ』と『プラレールショップ』が別々に存在し、利用するにはそれぞれ別の会員登録が必要です。お客さまとしても不自由かもしれないし、会社としては異なる商品ブランドにも興味を持ってほしい。LINE公式アカウントであれば、セグメントでファンに最適化した情報を配信しながら、ブランドを横断した連携ができると期待しています。また、会社の戦略的な観点では、DXプロジェクトでCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築する予定です。LINEのデータ*や他のデータをCDPに蓄積し、さらなるサービス提供へ連動させたいと考えています」(木村氏)

 

* LINEアカウントと紐づいたデータの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。

 

 

 

(公開:2023年2月、取材・文/安田博勇、写真/小川孝行)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です

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