ビール類を中心に酒類やアルコールテイスト飲料を製造・販売するアサヒビール株式会社(以下、アサヒビール)は2022年12月、店舗への来店時にLINEのトークリスト最上部に広告を表示できる「LINE POP Media」を活用し、売上増加を実現しました。
買い物中のユーザーへアプローチできる「LINE POP Media」への期待、活用によって得られた成果について、アサヒビールの田村真基氏とLINEの法人向けサービスの中で販促/リテールメディア領域の事業企画を担当するLINE株式会社の渡邉祐貴に話を聞きました。
- 販促キャンペーンへの集客効果を最大化して、売り上げを増加させたい
- LINEのリーチ力による販促効果を検証したい
- レシートキャンペーン実施期間中の3日間に「LINE POP Media」を活用し、配信対象店舗に来店したユーザーに広告を配信
- 「LINE POP Media」の配信による広告に接触したユーザーの購買率が、実施前2週間の購買率と比較して120.5%増加
- 接触したユーザーの約7割が、リーチに課題を抱えていた20~30代の若年層であったことが判明
- 接触したユーザーのうち、新規ユーザー(LINE公式アカウントの友だちではないユーザー)が約9割を占めていたことからも、これまでリーチできていなかったユーザーへのアプローチを実現
買い物中に購入の後押しができる「LINE POP Media」
「アサヒスーパードライ」で知られるアサヒビールは、2017年2月にLINE公式アカウントを開設以来、「LINEで応募」を用いたサンプリングキャンペーンや、対象商品の購入レシートをスマートフォンで撮影して参加するポイントプログラムなど、多数の施策を実施してきました。LINE公式アカウントの友だち数は、2023年3月時点で1,800万人を超えています。
LINEを販促施策の要として活用してきた同社が新たに活用したのが、購入前の“最後のひと押し”を店頭で可能にする広告メニュー「LINE POP Media」です。
「LINE POP Media」は、店内に設置されたLINE Beaconでユーザーの来店を検知し、LINEのトークリスト上部にメーカー企業の広告が掲載できる広告メニューです(※)。2022年6月に正式リリース後、消費財メーカーを中心とした企業が利用しています。
※「LINE Beacon同意のお願い」の規約に同意後、Bluetooth やLINE Beaconの設定を「オン」にしているユーザーが対象となります。
店内に設置したLINE Beaconでユーザーの来店を検知し、広告を配信
「『LINE POP Media』は、店頭で広告を見てもらうことで、ユーザーの商品認知から商品棚への誘導、購買促進まで実現できる広告メニューです。コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアで購入される商品の約8割が『非計画購買』と言われる中で、店頭での広告体験を通じた購入への後押しに高い効果が見込まれます。
また、小売企業のスタッフ不足対策として省力化が急がれる中、店頭に設置する必要のあるアナログな販促ツールに代わる新たな手法が求められています。SDGsの文脈から、こうした旧来のツールの減少を目指すメーカーも出てきました。小売、メーカーの双方が抱える販促ツールの課題を解決できるのが、『LINE POP Media』です」(LINE渡邉)
LINE株式会社 Z販促事業本部 In-Store Sales Promotionチーム マネージャー 渡邉祐貴
こうした「LINE POP Media」の特長を受け、田村氏は活用に際して抱いた期待を次のように振り返ります。
「やはりビールなどの消費財商品は、買い物中に広告を見てもらうことで購買につながりやすい傾向があります。もともと商品訴求やキャンペーン告知の手法として、店頭で接触できるメディアの活用に効果があることは、これまでの施策を通じて理解していました。
そこで、買い物中のアプローチを月間利用者数9,400万人(2022年12月末時点)という圧倒的なユーザー数を有するLINE上で行えば、さらに大きな販促効果を生み出せるのではないかと考え、試験的に『LINE POP Media』を活用してみることにしたのです。販促キャンペーンへの集客効果を最大化して売上増加を実現できる手法として、大きな期待を寄せていました」(田村氏)
アサヒビール株式会社 マーケティング本部 デジタルマーケティング部 担当課長 田村真基氏
広告施策実施前と比較して、広告接触者の購買率が120.5%増加
アサヒビールでは2022年12月1月から2023年1月31日にかけて、対象商品の購入レシートを撮影して送ると、抽選で3,000円相当のポイントがもらえるレシートキャンペーンを実施。キャンペーン期間中の3日間に「LINE POP Media」を活用し、対象店舗に来店したユーザーに応募を促す広告を配信しました。
「LINE POP Media」で配信した広告イメージ
「キャンペーンの対象商品が『アサヒスーパードライ』を中心とする酒類だったため、20歳以上の方に限定して広告を配信しました。『LINE POP Media』の活用にあたり、キャンペーンへの集客効果と売上効果の検証はしっかり行いたいと考えていました。
正直、キャンペーンページへの集客効果は期待ほどではありませんでしたが、購買効果に関しては『LINE POP Media』接触者の購買率が、実施直前の2週間の購買率と比較して120.5%に増加するなど、予想以上の成果が得られました」(田村氏)
「LINE POP Media」で配信した広告に接触したユーザーの購買率の変化
※告知キャンペーンの対象商品群の購買率(ビール類、RTD、ハイボール、ノンアルコール計)
※LINE社調べ。分析対象: 20~70代。集計期間:Pre(2022/11/21~12/4)Post(2022/12/5~12/18)
さらに「LINE POP Media」で配信した広告に接触したユーザーの属性分析から、新たな気づきも得られました。
「広告に接触した方の約7割が20~30代であることが分かりました。さらに、約9割がLINE公式アカウントの友だちではなかったのです。この結果には驚きましたが、普段から積極的にキャンペーンに参加してくれる友だちではない新規のユーザーへリーチすることで、キャンペーン誘導はせずとも店頭でのブランド想起により商品購入を促すことができた、という結果の裏付けとして納得感はありました。
また、酒類を店頭購入されるお客さまのボリュームゾーンは40~70代で、20~30代の新規のお客さまをどう増やしていくかが近年の大きな課題となっていました。そうした状況にあって、若年層や普段LINE公式アカウントで情報をお届けできていなかった方に『LINE POP Media』でアプロ―チして購買促進もできたことは、ポジティブな成果だったと思います」(田村氏)
今回の成果を受け、渡邉氏は次のように分析します。
「LINE Beaconでの検知(=来店)から広告接触までの秒数を分析したところ、およそ5割のユーザーが1分以内に広告に接触していました。店頭告知媒体は、決済直前のタイミングで接触するレジ周辺の従来型紙POPやサイネージ、会計時の会員証提示やスマホ決済で利用されることの多いアプリ内の広告メニューが多いです。その中でも、来店直後にアプローチできるという『LINE POP Media』の独自性が購買意欲を喚起し、購買リフトにつながったと考えています」(LINE渡邉)
実証を重ね、効果を最大化できる方法を模索
田村氏は今後「LINE POP Media」を活用する際、実施先の小売企業や対象商品、ターゲットなどを変えながら実証を重ね、LINEのほか販促サービスとの掛け合わせも検討していきたいといいます。
「来店直後に、コミュニケーションができるのは『LINE POP Media』の大きな強みだと感じました。以前から立てていた『店頭でのコミュニケーションが有効である』という仮説が証明されたと思います。メーカーとしては、やはり一人でも多くの方に商品を手に取っていただきたいという思いがあります。ブランドにとっての新規のお客さまと出会うきっかけとして、広く接点を持てることが『LINE POP Media』の一番の良さではないでしょうか。小売企業さんごとにアプローチできる層が異なるはずなので、当社の商品とターゲット、そして各企業さんの特性をうまく組み合わせて、販促キャンペーン告知だけではなくブランドの店頭想起という文脈でも『LINE POP Media』で最大限の効果をあげる方法を探っていきたいと思います」(田村氏)
今回の取り組みを受け、LINE社では「LINE POP Media」が買い物中のユーザーの購買意欲を喚起することができるサービスであることの実証を重ねていく予定です。
「アサヒビールさまとのお取り組みで明らかになった、LINE公式アカウントの友だちではない新規ユーザーにリーチできる点をうまく活用すれば、ブランド関与度の低いユーザー(ブランドの新規ユーザー)、普段コンビニでアルコールを買わないユーザー(カテゴリー新規ユーザー)に働きかけることができると思います。より多くのユーザーの目に触れる機会が増えるスペックへのアップデートも控えています。店頭でのブランド想起や、よりインパクトのある売上増加に貢献できるサービスとしてより活用いただけるように『LINE POP Media』を成長させていく予定です。どうぞご期待ください」(LINE渡邉)
(公開:2023年4月、取材・文/相澤良晃、写真/小川孝行)
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※本記事内の実績はLINE調べによる数値です