大手飲料メーカーのアサヒ飲料株式会社(以下、アサヒ飲料)は、2015年のLINE公式アカウント開設以来、さまざまなキャンペーンにLINE公式アカウントやLINEで応募を活用しています。2021年12月には、飲料業界でも初の取り組みとなるLINEの「NFT(Non-Fungible Token)」(※)を景品としたデジタルキャンペーンを実施しました。その狙いと成果について、キャンペーンを企画した松丸りか氏(以下、松丸氏)に話を聞きました。
※LINEの独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」が採用されたNFT
- 新規性のある新たなデジタル景品を活用したい
- 男性を中心にキャンペーンの新規参加ユーザーを増やしたい
- LINEのNFTや「BIGスタンプ」を景品としたデジタルキャンペーンを実施
- LINEのNFTを活用した「NFTデジタルトレーディングカード(NFTトレカ)」の配布数は約30万を記録
- ターゲットとしていた男性の新規ユーザーの獲得に成功
- キャンペーンによってLINE公式アカウントの友だち数が100万人以上増加
新規性を求めてLINEのNFTを景品に起用
「三ツ矢サイダー」や「カルピス」などのロングセラー商品で知られるアサヒ飲料は、2015年にLINE公式アカウントを開設し、マーケティングや販促戦略の要となるツールとして活用してきました。
「LINEは、売り上げに直結する施策が展開できる販促プラットフォームであり、販促施策を通じて多数のデータが取得できる“データプラットフォーム”でもあると認識しています。さらに、国内の月間アクティブユーザー数9,200万人(2022年3月末時点)にリーチできるマスメディアでもあるし、顧客ロイヤルティーを醸成できるOne to Oneコミュニケーションツールでもある。こうした多面的な役割を持つLINEは、お客さまに寄り添ったコミュニケーションやサービスの提供を目指す当社にとって、重要なツールとなっています」
アサヒ飲料株式会社 マーケティング本部 宣伝部 課長補佐(キャンペーン実施当時)/未来創造本部 コーポレートコミュニケーション部 プロデューサー(現職) 松丸りか氏
LINEの販促ソリューション「LINEで応募」を活用した販促施策でも多くの成果を挙げてきたアサヒ飲料では、2021年12月に飲料業界初となる取り組みを実施しました。それが、LINEのNFTを景品とした「真冬の打ち上げ花火クリスマスキャンペーン」です。
NFTとは、暗号資産などに使われているブロックチェーン技術を利用して、デジタルアイテムの固有性や持ち主を証明する非代替性トークンです。LINEは、2018年から独自のブロックチェーン「LINE Blockchain」を展開し、2022年4月からは、ユーザーが自由にNFTを購入・取引できるNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」を開設しています。
LINE NFTの詳細についてはこちら
LINE NFTの最大の特長は、LINEアカウントを所有するユーザーであれば、誰でも簡単にNFTを保有し、売買することができるという点です。難しい手続きは必要なく、LINEユーザー同士であれば、手数料なしでNFTを送付し合うこともできます。
アサヒ飲料が実施したキャンペーンでは、このLINEのNFTを景品として起用しました。
「これまでもLINEポイントなどを活用したデジタルキャンペーンでは、十二分な成果をあげています。しかし、同じデジタル景品を活用し続けることで目新しさが失われ、徐々に新規のキャンペーン参加ユーザーを獲得しにくくなっているという側面もありました。そこで、注目度も高いNFTを景品にすることで、NFTに関心を持つ男性を中心とした新規ユーザーを呼び込めるのではないかと考えたのです」
しかし、LINEのNFTを活用した取り組みは業界初ということもあり、実施までには高い壁がありました。
「キャンペーン実施時の段階では、NFTの認知度が一般ユーザーまで広がっていないこともあり、ユーザーにどう訴求するかという課題がありました。また、社内からはマーケットで売買できるという性質から、リスクを懸念する声も多数寄せられました。そこで、ブロックチェーンにより個別認証・管理されている『NFTデジタルトレーディングカード』(以下、NFTトレカ)の安全性の高さを説明して、社内の承認を得ることができました。ユーザーへの訴求は、『トレカ』というトレーディングカードであるとイメージしやすい表現を用いつつ、クリエイティブで分かりやすく伝えることを意識しました」
「NFTトレカ」と「BIGスタンプ」の活用でユーザーの期待感を醸成
「真冬の打ち上げ花火クリスマスキャンペーン」は、2021年12月7日から2022年1月3日まで、約1カ月にわたって実施されました。キャンペーンではNFTのほか、「BIGスタンプ」も初めて起用し、ユーザーが楽しめるように2段階に分けたキャンペーンを設計しました。
ユーザーがアサヒ飲料のLINE公式アカウントを友だち追加すると、全16種類の限定「BIGスタンプ」を無料でダウンロードできるようになります。
「実は今回、BIGスタンプのデザインの1案をユーザーの投票で決定するという事前キャンペーンを2021年11月22~25日にかけて実施しました。総投票数は、予想を大きく上回る約40万を記録しています。SNS上でもこの投票が拡散されたことで、効果的に本番のキャンペーン告知ができ、ユーザーの期待感も醸成できました」
BIGスタンプは通常スタンプの2倍以上のサイズのため、表現性に優れています。アサヒ飲料では、本社ビルを描いたユニークなイラストのほか、クリスマスやお正月など季節性を重視したメッセージ付きイラストなど、「ユーザーがつい使ってしまいたくなるスタンプ」をコンセプトにBIGスタンプを作成しました。キャンペーン後に計測したダウンロード数は約732万回、ユーザーのスタンプ利用回数は1.32億回を記録しています(2022年1月時点)。
キャンペーンに伴い配布した「BIGスタンプ」
次に2021年12月17~21日の5日間のうちにアンケートに回答すると、毎日1種類のNFTトレカが入手できます。NFTトレカは全5種類すべてを集めると、シークレットバージョンが手に入る仕組みで、ユーザーがコレクションする楽しみを味わうことができるように設計しました。
キャンペーン終了後、NFTトレカの配布数は約30万を記録しました(2021年12月時点)。業界初の取り組みということでメディアからも注目され、想定以上の応募が寄せられたといいます。
「すでに『LINE NFT』ではユーザーによる売買が行われており、マーケットでユーザーの目に触れたり、ユーザー同士で交換したり、キャンペーン終了後もブランド認知の効果が継続します。それもNFTトレカの活用メリットだと感じています」
そして、「NFTトレカを獲得したユーザーの質が高くて驚いている」と松丸氏は続けます。
「NFTトレカを獲得したユーザーのLINE公式アカウントブロック率は、LINEプロモーションスタンプで獲得したユーザーよりも低いという結果が出ています。景品目的でLINE公式アカウントを友だち追加するユーザーも少なくないと思いますが、NFTトレカの活用によって、今後も有益なキャンペーンを実施できるのではないかという期待が高まっているのではないかと踏んでいます。きっかけは何であれ、まず友だち追加をしていただいて、コミュニケーションをとれる状態になることが重要です。今後、ユーザー一人ひとりにあったメッセージを配信して、ロイヤルティーを高めていきたいと思います」
ターゲット層に合わせて工夫を講じられるのがLINEのNFTの強み
キャンペーン開始前と比較してLINE公式アカウントの友だち数は100万人以上の上乗せに成功し、アンケートの累計回答数数は395万を超えました(2021年12月時点)。
「当初の狙い通り、今回のキャンペーンによってこれまで獲得できていなかった層のユーザーに友だちになってもらうことができました。とくにターゲットとしていた男性の参加者数が過去のキャンペーンと比較して伸長したのは、資産的な価値のあるLINE のNFTを景品にした効果だと思います。また、LINEポイントなどの汎用的な景品と異なり、ターゲット層に合わせてクリエイティブを工夫できるのもNFTの強みの一つです。今後はターゲット層を変えながら、LINEの NFTを活用したキャンペーンを検討していけるといいですね」
(公開:2022年6月、取材・文/相澤良晃、写真/小川孝行)
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