エーザイ株式会社(以下、エーザイ)が販売する「チョコラBB®」ブランドでは、毎年3月8日の国際女性デーに「SDGsキャンペーン」を実施しています。2023年の実施時には、キャンペーン前からLINEで応募やLINE公式アカウントなどLINEを軸にしたプロモーションを行い、「チョコラBB®ブランド(以下、チョコラBB®)」の認知率や信頼性の向上に成功しました。
キャンペーン前から設計してきた段階的なコミュニケーションとその成果について、エーザイの佐藤友昭氏(以下、佐藤氏)と古浜絢子氏(以下、古浜氏)、株式会社電通の馬容容氏(以下、馬氏)に話を聞きました。
- 国際女性デーにちなんだキャンペーンの実施によって「チョコラBB®」の認知率、信頼性を向上したい
- キャンペーン当日に向け、LINEを軸とした段階的なコミュニケーションを設計
- LINEオープンキャンペーン(アンケート型)で得られたアンケート回答をもとに、LINE公式アカウントからメッセージをセグメント配信
- キャンペーン当日に「LINE NEWS TOP AD」を活用し、国際女性デーとキャンペーンを告知
- 一連のコミュニケーション設計の結果、①「チョコラBB ®︎」の認知率/②「チョコラBB ®︎」への信頼性想起率/③国際女性デーを「チョコラBB ®︎」が応援していることの認知率がそれぞれ向上
- LINEを活用した施策に接触する回数が多いほど応援認知率が大幅に向上
国際女性デーにちなんだキャンペーンでLINEを複合的に活用
エーザイの主力ブランドの一つである「チョコラBB®」は、2023年でシリーズ最初の製品発売から71年を迎えるブランドです。現在は19商品を展開し、40代を中心に幅広い年齢層の女性から支持を集めています。
「チョコラBB」ブランド
「チョコラBB ®︎」ブランドは、ジェンダー平等社会の実現を目指す一般社団法人「HAPPY WOMAN®︎」の活動を2020年から支援し、その一環として毎年3月8日の「国際女性デー」(※)に「SDGsキャンペーン」を実施しています。
※国際女性デー(International Women’s Day):国連によって1975年3月8日に制定された、すばらしい役割を担ってきた女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日。(出典:一般社団法人「HAPPY WOMAN®︎」)
「『SDGsキャンペーン』は、『チョコラBB ®︎』がSDGsでも掲げられている『ジェンダー平等社会の実現』を目指していることを多くの方に知っていただくために実施しています。そのためキャンペーン実施に際したKPIは“売り上げ”ではなく、ブランド認知率や信頼性、キャンペーン参加者数、友だち数の4つに定め、結果には“量よりも質”を求めました」(佐藤氏)
エーザイ株式会社 コンシューマーhhc事業部 ADM部 佐藤友昭氏
2023年に実施した「SDGsキャンペーン」では、キャンペーン前・当日・キャンペーン後の3段階に分けてコミュニケーションを設計。まず2月13~16日にかけて「チョコラBB ®︎」や「SDGsキャンペーン」の認知拡大と、LINE公式アカウントの友だち数増加を目的に、「LINEで応募」のLINEオープンキャンペーン(アンケート型)を活用しました。
「SDGsキャンペーン」の告知イメージ
LINEオープンキャンペーン(アンケート型)は、LINE上でアンケートに答えることで簡単にキャンペーン応募ができ、応募者全員にLINEポイントが進呈されるキャンペーンプラットフォームです。アンケート回答時に企業のLINE公式アカウントが友だち追加されるため、効率的に友だちを集めることができます。
「事前にキャンペーンの認知拡大を図ることで、キャンペーン当日の施策の効果がより高まります。誰でも気軽に参加できて、インセンティブをもらえるLINEオープンキャンペーン(アンケート型)は最適なメニューでした。今回のアンケートでは、年齢、性別、居住エリアなどの基本項目に加えて、“日本のジェンダー平等がどのくらい進んでいると思うか?“といった質問を設けました。国際女性デーに向けて、”ジェンダー平等“について考えていただくきっかけをつくりたかったからです」(馬氏)
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター シニア・アナリスト 馬容容氏
LINEだからこそ実現できた段階的なコミュニケーション
約2週間後の3月3日には、国際女性デーやキャンペーンの関心度をさらに高めるために、LINE公式アカウントからメッセージを配信しました。LINEオープンキャンペーン(アンケート型)によって追加された新規の友だちには、年代とアンケート結果を基にセグメント配信を実施。既存の友だちには、国際女性デーの理解を深めるクイズを一斉配信しました。
「ジェンダー平等に関するアンケートでは、若年層ほど“ジェンダー平等が進んでいる”と考えていることが分かりました。その結果を年代別に配信することで、国際女性デーを“自分ゴト化”して、関心を持っていただくと同時に、エーザイさんに“信頼感”を持っていただくことを期待していました。ユーザーに誠実な会社であるという印象を抱いていただくためにも、アンケートを“やりっぱなし”にしないで、結果をきちんと伝えることが大切だと思います」(馬氏)
キャンペーンを自分ゴト化してもらうために、セグメント配信を実施
そして、3月8日の「国際女性デー」当日には、LINE NEWS面のトップに広告が表示される「LINE NEWS TOP AD」を活用しました。
「3月8日は国際女性デーであるということ、エーザイさんが国際女性デーを支援していることをリアルタイムで世の中に伝えるには、LINE NEWS内のトップで露出できる『LINE NEWS TOP AD』がベストだと判断しました。広告の遷移先には、LINE公式アカウントのトークルームを設定しています。さらに、取り組みに興をもって遷移してきたユーザーが+αの情報にすぐに辿り着けるよう、受け皿としてリッチメニューに“こちらもチェック!“というボタンを設けて、『チョコラBB ®︎』のジェンダー平等に向けた取り組みを紹介するページに誘導しました」(馬氏)
並行してLINEオープンキャンペーン(アンケート型)の参加者を対象に、クイズ形式のメッセージも配信。メッセージ経由でも、ジェンダー平等に向けた取り組み紹介ページへの誘導ができました。
「今回、段階的に情報量が増えていくというコミュニケーションを設計したことで、多くの方々に私たちの社会貢献活動と、活動にかける想いを深く理解いただけました。ユーザーとずっとつながり続けられるLINEというプラットフォームだからこそ実現できた手法だったと思います」(古浜氏)
エーザイ株式会社 コンシューマーhhc事業部 プロダクトマネジメント部 古浜絢子氏(※所属部署名は取材時点)
キャンペーン終了後は、LINEリサーチを活用した調査を実施。キャンペーンによって、どのくらい「国際女性デー」や「チョコラBB ®︎」の認知率、信頼度や購入意向が向上したか分析を行いました。
施策に接触したユーザーほど、応援認知率が大幅リフト
一連のコミュニケーション設計の結果、どの施策においても「チョコラBB ®︎」の認知率や信頼性想起率、「国際女性デー」や「チョコラBB ®︎」の応援認知率が向上していました。さらに、重複接触による効果を分析すると、LINEオープンキャンペーン(アンケート型)のみ参加していたユーザーに比べて信頼性・応援認知率が向上していることが分かりました。
「特に応援認知率は、LINEオープンキャンペーン(アンケート型)とLINE NEWS TOP AD、LINE公式アカウントからのメッセージ配信と、複数施策に接触するほど大幅にリフトしていました。単体接触でみても、LINEオープンキャンペーン(アンケート型)の活用によって、いずれの項目も大きくリフトしています。中でも応援認知率に関しては、約30ポイントの増加です。また、LINE NEWS TOP ADでは、男性の応援認知率が約2倍リフトしています。多面的なタッチポイントを設定したことで、エーザイさんの想いや取り組みがユーザーにしっかり届いた結果だと思っています」(馬氏)
LINEオープンキャンペーン(アンケート型)の参加者は約20万人で、そのうち新規の友だちは9万6,000人でした。当初の期待ほど新規の友だち数は増えなかったものの、第一目標だったブランド認知率と信頼性想起率の向上が達成できたことを受け、古浜氏は次のように総括します。
「『チョコラBB ®︎』というブランドが、ジェンダー平等や国際女性デーを真剣に応援しているということを多くの方に伝えることができたと思います。近年、SDGsをテーマにしたキャンペーンや施策が急増している中でしっかり成果を出せたのは、LINEという多面性のあるツールを使って、電通さんが丁寧なコミュニケーション設計をしてくれたおかげだと思います」(古浜氏)
古浜氏が「意外だった」と振り返るのが、参加者全体を通して「50代以上の男性」と、ミニバンやステーションワゴンといった「自動車への関心が高い層」のユーザーによる友だち追加が多かったことです(※)。この結果から、「健康や美容だけでなく、アウトドアをはじめアクティブな遊びに関心がある層も、『チョコラBB ®︎』との親和性が高いのではないか」と古浜氏は分析します。
※ LINE DATA SOLUTIONを活用したインタレスト分析の結果
こうした成果に対して、佐藤氏も今回のキャンペーンについて次のように分析します。
「今回は、幅広い世代に『ジェンダー平等社会の実現』を目指していることを知っていただくため、アンケートやクイズ形式の記事コンテンツを制作しました。参加型のキャンペーンを実施することでエンゲージメント率を高め、若い世代や男性の方々からも応募いただけたこと、応援認知率がリフトしたことは嬉しい結果でしたが、『チョコラBB』に対する特徴認知や信頼性も高くなった事は予想外でした。従来施策では応募までのフローで限られた情報をお届けするのみでしたが、今回LINEのプラットフォームを活用することで、応募後もシームレスなコミュニケーションを実現できました。応募いただいた方々に負担のない形で、より多くの情報を伝達できたことがブランドに対する波及効果を生んだのだと考えています」(佐藤氏)
最後に、今後のLINE活用の展望についてうかがいました。
「今回の成果を踏まえ、 “購買意向”の醸成に成功したと考えています。次は“購買行動”へとつなげられる施策を実施したいですね。今後はよりLINE DATA SOLUTIONを活用してユーザーの解像度をあげて実購買基点の施策設計をしていきたいです。その際には、LINEの多面的なユーザー接点を活かしてエーザイさんがユーザーと継続的な関係構築ができるよう考えていければと思っています」(馬氏)
「今回は2カ月という短期間の施策でしたが、年間を通してSDGsやジェンダー平等への取り組みを発信できれば、さらに多くのユーザーに自分ゴトとして考えていただけるのではないかと思います。今後も『チョコラBB ®︎』の取り組みにご期待ください」(古浜氏)
「今回の成果を受けて、次のフェーズである購買体験の実現へ着手していきたいですが、単発的なキャンペーンだけでは実現は難しいと考えています。友だち追加によりターゲットリーチ(※)を増やしつつ、LINE公式アカウントからの配信を活用した継続的なコミュニケーションを行う事で少しずつ醸成していければと思います」(佐藤氏)
※ 性別や年齢、地域で絞り込んだターゲティングメッセージの配信先となる友だちの母数です。LINEおよびその他のLINEサービスの利用頻度が高く、属性の高精度な推定が可能な友だちが含まれます。
(公開:2023年10月、取材・文/相澤良晃、写真/川嶌 順)
※ 本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※ 本記事内の実績は取材先調べによる数値です