【Yahoo! JAPANエンジニアの視点】自動入札機能改善への取り組み
自動入札とは、目標とするコンバージョン単価(以下、tCPA)を維持しながら、できるだけ多くのコンバージョンを獲得できるように、入札価格を自動的に調整する機能です。 入札価格を手動で設定する手間が省け、運用リソース削減や運用効果改善に繋がりやすい機能として、多くのアカウントで導入されています。2020年7月時点で自動入札をご利用いただいているアカウントの割合は34.1%(※1)で、新プラットフォームがリリースする前の導入率と比較すると3.1倍(※1)に増加しています。さらに、新プラットフォームでの自動入札導入率は、 51.5%(※2)と半数以上のアカウントでご利用いただいています。
代理店、広告主のみなさまからのフィードバックが何よりも励みになり、次なる開発への原動力になると語るヤフーのエンジニア集団。今回は、自動入札機能改善への取り組みを4人のエンジニアにお聞きしました。
まずは、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)時代の自動入札開発の "裏話" を聞かせてください。
鈴村:私が自動入札のデータサイエンスチーム(※3)に参画したのは、2018年。データサイエンスチームでは、広告配信データを分析し、そのデータを活用したモデル構築を行っています。当初はメンバーも少なく、自動入札も一部の代理店、広告主のみなさまにご利用いだいている状況でした。「どうすればより使ってもらえるようになるのか?」これまで以上に、社外からのご意見、ご要望を機能改善に取り入れ、改善のペースを上げていきました。
實原:社内にあったデータサイエンスの知見を自動入札の開発にも導入し、開発をプロジェクト化したタイミングで加速的に動き出しました。データサイエンスチームの規模も大きくなり、他サービスも含めた技術実績は潤沢にあったため、リソースなど社内の資産をうまく利用し、データサイエンスチーム以外のメンバーも巻き込めたのが良かったと思います。
新しいメンバーも加わり、プロジェクト化したタイミングで工夫された点はありますか?
高谷:まずは、今以上にヤフーの自動入札に"ポジティブ"な印象を持ってもらえること、シンプルな内容ではありますが、それを最も意識しました。その答えは当然、利用いただく代理店、広告主のみなさまにあります。これまでももちろん、代理店、広告主のみなさまのご意見を受けて開発を行っていましたが、よりシームレスにダイレクトなご意見を伺えるように社内体制を再構築することで、改善策の検討~モデルへの反映といったPDCAサイクルのスピード感が明確に変わったのがポイントです。
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高谷 朝子
マーケティングソリューションズ統括本部 プロダクション本部 Demand Product部
プロダクトマネージャー
實原:機能改善は継続していたものの、自動入札の導入率が伸び悩んでいた時期でした。導入率の改善を目指し、プロダクトを社外に伝えるチームなどとも連携を強化、「どのように伝えるか」にも注力し始めました。
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實原 弘亮
テクノロジーグループ サイエンス統括本部 サイエンス2本部 サイエンス5部
新プラットフォーム上での自動入札の評判を受けての感想を教えてください。
實原:正直「ほっ」としました。学習機能の評判も良く、広告主様の成果が向上したといったようなコメントを頂けるのは何よりも嬉しい反応でした。
鈴村:実は、リリース直後から爆発的にうまくいったわけではないです。機能改善の結果、想定していた効果が出ない時期もありましたが、理由を模索する中、我々が想定していない使われ方や設定変更が起こっていることがわかりました。機能や仕様をリリースするだけではなく、最も機能効果が出やすい "ベストプラクティス" も併せて提供する機会が増えたのがこの時期からです。
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鈴村 真矢
テクノロジーグループ サイエンス統括本部 サイエンス2本部 サイエンス4部
高谷:ベストプラクティスまでのこのサイクルを、最適に機能させるのが製販一体であるヤフーの強みであると感じます。
2020年4月に事前のコンバージョン蓄積がない状態で最適化をスタートできるようになりました。経緯を教えていただけますか?
實原:事前のコンバージョン蓄積が少ない状態でも最適化を効果的に稼働させることへのご要望は以前から多くいただいており、自動入札を導入していない大きな理由の1つにもなっていました。機械学習の性能を向上させるためには、より多くの蓄積データが必要なのも事実です。この課題には最優先で取り組み、試行錯誤しながらモデルの改善を繰り返していました。検証結果から、事前のコンバージョン蓄積がない状態であっても自動入札を利用できる、という判断をすることができました。
鈴村:コンバージョン蓄積数の制限緩和については、プロジェクト内でもかなり前から改善に向けて取り組んでいました。改善当初と比較すると、コンバージョン蓄積実績が少ない状態での機械学習の成果はかなり向上していますが、より安心してご利用いただくために、安全装置をあわせてリリースすることにしました。
より安心してご利用いただくための "安全装置" についても詳細を教えてください。
西丸:1つ目は、「学習ステータス」の表示です。ステータス表示機能とは、キャンペーンにおいて「自動入札(目標単価指定)」を設定した場合、広告管理画面およびキャンペーンエディターに、入札戦略の状態が表示機械学習の期間を表示する機能です。「学習中」などのステータスから現在の状況を確認し、入札戦略に活用することが可能です。
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西丸 和孝
マーケティングソリューションズ統括本部 プロダクション本部 Demand Product部
プロダクトマネージャー
高谷:一時的に不安定な挙動をしていたとしても、データサイエンスチームでは、"学習中" であることが原因であると判断ができますが、運用担当者様からすると理由が分からず、非常に不安を感じてしまいます。運用担当者様側の心理的な負担を軽減するのも、機能改善の重要な要素と捉えています。自動入札の性能を上げていくのはもちろんのこと、代理店、広告主のみなさまがより"安心して"運用できるための機能改善も続けていきます。
もう1つの"安全装置"である「リアルタイム制御」についても教えてください。
實原:代理店、広告主のみなさまの収益に直結するコンバージョン単価(以下:CPA)のブレを解消することが、最優先の課題でした。リアルタイム制御機能とは、tCPAと実績として出たCPAの数値が乖離した場合、自動的に補正する機能です。学習ステータスの表示も同じですが、今後も代理店、広告主のみなさまとより活発にコミュニケーションを取りながら改善策を練っていきたいと考えています。
鈴村:最適化期間の短縮については、当初は30日間を学習完了期間の推奨としていました。しかし、運用者視点に立ち返ると、30日間って待てないですよね。何日だったら待てるのか?システム的には何日であれば数値が落ち着き始まるのか?この境界線をこれまでの検証結果に加えて代理店、広告主のみなさまとのヒアリング結果をもとに、算出した経緯があります。
エンジニアからみた広告運用の自動化は今後どのようになっていく、なっていくべきだとお考えですか?
實原:運用型広告では、主にCPAやコンバージョン率(以下、CVR)などを目標にして成果を追いかけますが、当然代理店、広告主のみなさまのニーズはそこまで単純ではないと思っています。複雑なニーズに対応するためサポートできる自動化を進めつつ、ノウハウに基づいた手動運用の部分もまだまだ残り、共存する段階ではないでしょうか。
西丸:自動入札機能の導入は、代理店、広告主のみなさまとの信頼関係で成り立っていると思っています。この信頼性は、一朝一夕でできあがるものではなく、継続的に対話を繰り返すことで作りあげることができるものと、振り返って改めて感じています。今後もご意見をいただく機会を積極的に作るなどして信頼構築を意識した開発を進めたいです。
今後の開発展望を教えてください。
鈴村:例えば、インプレッションシェア損失率が表示されて広告主自身で確認できるようになりましたが、その先の配信機会を補正できるような自動化も進めていきたいです。 代理店、広告主のみなさまの配信コストを抑えてパフォーマンスを最大化できる、リターンが最大化する機械学習の仕組みを実現したいですね。自動入札は学習機能の序章に過ぎないと思っています。改善できるポイントはまだ多くあり、ヤフーの営業担当や代理店、広告主のみなさまも巻き込んで進化させ、Yahoo! JAPANというメディアを最大限活用した開発を続けたいです。
實原:代理店、広告主のみなさまが持っている運用ノウハウを開発に取り組む仕組みも強化したいです。プロダクトの性能をワンステップ昇華させ、代理店、広告主のみなさまの手間をショートカットすることが、最終的には運用者のメリットにつながるのだと思います。
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