【LINE Frontliner野嶋友博氏が語るEC業界向けLINE広告の運用戦略】 第1回「ディスプレイ広告におけるECの弱点」
LINE広告は、月間9,700万人(2024年3月末時点)の日本国内のLINEユーザーに広告が配信できるサービスです。このLINE広告に関して、高い知識レベルと豊富な経験を備えたLINEヤフーの認定講師「LINE Frontliner」であり、企業の事業成長を支援する株式会社オプトの野嶋友博氏に、ECにおけるディスプレイ広告のトレンドとLINE広告の活用法などについて話を聞きます。第1回のテーマは、「EC市場の現状と課題」です。
EC市場は今後も着実に成長
――はじめに、野嶋さんの現在の業務内容について教えてください
野嶋:2015年に、インターネット広告事業を展開する株式会社オプトに新卒で入社しました。入社後は、SNSを中心にクライアントの広告運用をサポートしています。LINE広告に関しては、黎明期の2017年から運用に携わり、サービスの進化とともに自分も成長してきたため親近感があります。
2020年には、LINEの広告サービスに関して高い知識レベルと豊富な経験を備えたLINEヤフーの認定講師「LINE Frontliner」に認定されました。社内では、LINE広告の専門家として、部署を横断した運用のアドバイスを行っています。社外では、インターネット講座やウェビナーを通じて、主にLINE公式アカウントやLINE広告の基本的な使い方を企業のマーケティング担当者に向けて説明しています。そんな社内外の活動を通して、特にEC事業者の方々が、LINE広告への関心を高く持っていると感じています。
――長年、広告会社という立場からEC業界と接してきて、直近でどんな変化がありましたか?
野嶋:コロナ禍における巣ごもり需要によって、EC市場は急成長しました。ここ数年、企業のECに対する広告予算も年々倍増傾向にあり、特に新型コロナウイルスが蔓延した2021年頃のB to C領域におけるEC市場の成長は著しく、前年比7.35%増で20兆円(※)を突破しています。
現在は、新型コロナウイルス感染症は5類に移行し、以前の日常へと戻りつつありますが、今後もECのニーズは高まり、市場は堅調な成長を続けていくと予想されます。それに伴い、デバイスや通信環境の改善、決済方法の充実など、購買体験をより便利なものにするため、各EC事業者もアップデートを続けているのが現状です。
株式会社オプト 野嶋 友博氏
ECは「サイズ」「質感」「使い方」をいかにユーザーに伝えるかが大切
――では、今後さらに各事業者がECで売上を伸ばしていくためには、何が必要だと思いますか?
野嶋:ECで売上を伸ばしていくためには、ECの弱点とも言える、以下の3つの障壁をクリアする必要があると思います。
- サイズを実感できない
- 質感が分からない
- 使い方をイメージしづらい
アパレルを例にするとイメージしやすいと思うのですが、店舗で実物に触れてもらえばすぐに分かる「サイズ」「質感」「使い方(着こなし)」を、ECの画面上で伝えることは困難です。こうした課題を解決するために、気になる商品をオンライン上で試着することができるサービスや、店舗スタッフが商品のレビューやコーディネートを投稿するなど、オンライン上で接客ができる「STAFF START(※https://www.staff-start.com/)」など、ECと顧客をつなぐサービスも登場しました。
ディスプレイ広告においても、「サイズ」「質感」「使い方」をいかにユーザーに伝えるかがカギとなります。今注目されているのが、短時間で多くの情報を伝えることができ、SNS上でのシェアや拡散がしやすい「ショート動画」です。中でも人気を集めているのが、モデルや芸能人による動画ではなく、店舗スタッフや一般ユーザーが自分の言葉で商品の魅力を伝えるレビュー動画です。
SNSの普及により、商品・サービスの情報収集方法が変化したこと、「TikTok」や「YouTube」をはじめ、誰もが気軽に動画クリエイターになれる時代となったことで、多くの人が日常的にUGC(ユーザー生成コンテンツ)に触れています。
こうした背景から、企業広告もあえて“素人っぽさ”を感じるUGCテイストを取り入れたクリエイティブを作成するなど、顧客に受け入れられやすいコンテンツを採用する企業が増えています。そのため、「LINE VOOM」を筆頭にLINEアプリ内のほぼすべての配信面で動画広告を配信することができるLINE広告は、ECの売上アップに大きく貢献できる可能性があるメディアだと感じています。
――実際、近年は動画をはじめとするディスプレイ広告の出稿量が増えています。EC業界での各広告の使い分け、役割にはどんなトレンドや課題がありますか?
野嶋:1つは、「静止画広告から動画広告へ」という流れが加速しています。その背景として考えられるのは、動画プラットフォームの普及です。特に「TikTok」のような縦型のショート動画プラットフォームは、アクティブ率が高いというデータが出ており、各企業の関心が高まっています。
そして、もう1つは、「リターゲティング依存からの脱却」という潮流です。ひと昔前であれば、「サイトを訪れたけれど購入には至らなかった方」、つまり「商品の購入を検討されている方」にディスプレイ広告を配信することで、定期的にユーザーが商品を検討するきっかけづくりをしていました。しかし、近年、トラッキング規制や個人情報保護法の影響により、ユーザーのプライバシーに考慮したマーケティング活動が求められており、リターゲティングによるディスプレイ広告の配信が難しくなってきています。
つまり、「リターゲティング施策のみでなく、いかにユーザーにとって魅力的な動画広告を配信できるか」が、ディスプレイ広告における主要テーマになっています。
――では、ECにおけるディスプレイ広告運用のコツを教えてください。
野嶋:「EC」といっても、その形態は実にさまざまです。ディスプレイ広告の運用は、取り扱っている商品によって異なるため、以下の2つに大別して考えると分かりやすいと思います。
- 単品リピート型のEC
「D2C」が該当。例えば、「使い捨てコンタクトレンズ」や「化粧品」など、特定の商品のみを扱い、ユーザーの定期購入を前提としたEC形態。 - 多品目型のEC
「モール」や「SPA(製造小売業)」が該当。複数の商品から、ユーザーが価格や品質などを比較検討しながら都度購入するタイプのEC形態。
次回、LINE広告の活用法を交えながら、それぞれのタイプに合ったディスプレイ広告運用のポイントについてお話します。
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