【LINE Frontliner野嶋友博氏が語るEC業界向けLINE広告の運用戦略】 第3回「新しい接点を大切にしてEC全体の売上アップを目指す」
LINE広告は、月間9,700万人(2024年3月末時点)の日本国内のLINEユーザーに広告が配信できるサービスです。このLINE広告に関して、高い知識レベルと豊富な経験を備えたLINEヤフーの認定講師「LINE Frontliner」であり、企業の事業成長を支援する株式会社オプトの野嶋友博氏に、ECにおけるディスプレイ広告のトレンドとLINE広告の活用法などについて話を聞きます。第3回のテーマは、「多品目型のECにおける新規顧客の重要性」です。
ROAS(広告費用対効果)の偏重をやめて新規顧客との接点づくりを目指す
――前回は「単品リピート型のEC」における広告運用の課題やLINE広告の運用のポイントについて伺いました。今回は、「多品目型のEC」についてです。そもそも「多品目型のEC」とは、どのような形態をいうのでしょうか。
野嶋:多品目型のECとは、あらゆるジャンルの商品を扱う総合モールや小売業でありながらオリジナル商品の製造に携わり、幅広い商品を揃える「SPA(製造小売業)」のような形態のECを指します。例えば、下着からアウターまで、アパレル商品を幅広く扱う「ユニクロ」のECは、SPAにおける「多品目型」の代表例です。
「多品目型のEC」の広告運用において、主に課題となるのは、「ROAS (Return On Advertising Spendの略称:広告の費用対効果)と「広告配信までの工数」の2つです。
- ROAS(広告の費用対効果)の課題
既存顧客への広告配信と比較すると、新規顧客との接点づくりにおける広告の費用対効果が落ち込んでいる。
- 配信工数の課題
商品の取り扱い品目が多いため、多くのクリエイティブを制作する必要がある。在庫状況に応じて、配信頻度の調整も必須となるため、管理が煩雑になりやすい。
多品目型のECは、既存顧客に向けて広告配信をすることで、商品やサービスを検討するきっかけをつくってきました。しかし、既存顧客への広告配信だけを続けていては、さらなる売上の拡大にはつながりません。
そこで、未来の売上を高めるために、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)に着目した新規顧客との接点づくりが重要となります。しかし、新規顧客との接点を目的とした広告配信は、既存顧客への配信と比べてROASが低くなる傾向にあり、「収益につながっていない」と判断され、配信が停止となってしまうケースも少なくありません。
ECサイト全体の売上を中長期的に成長させるためには、ROASが低い傾向にあったとしても、新規顧客との接点づくりと、商品やサービスを選び続けてもらえるような情報発信に力を入れていく必要があると思います。そして、その役割を担う手法として、短時間で多くの情報を伝えることができ、認知やブランディングに適しているディスプレイ広告や動画メディアが考えられます。
一方、新規顧客へ広告を配信するとしても、数ある商品の中から、どの商品を、誰に、どのように配信するのか、配信のたびに選定する必要があり、多くの時間と工数がかかります。時には、広告を配信した商品がサイトでは在庫切れになっているなど、興味を持って来訪したユーザーをがっかりさせてしまうなどの懸念もあります。
そこで、重要になってくるのが、自社サイトの商品情報などのデータを、広告配信先のフォーマットに変換して送信してくれる、商品フィードを用いた広告メニューを利用することです。自社サイトの商品情報をベースに広告が自動生成されるため、在庫状況と連動しながら、どの商品を、誰に、どのように配信するかといった、広告配信における工程を自動化することができるようになります。
新規顧客との接点づくりに優れているのがLINE広告の強み
――では、「多品目型のEC」におけるLINE広告運用のポイントについて教えてください。
野嶋:前提として、LINEは「新規顧客との接点づくりに優れている」メディアだと感じています。その背景として、1日に1回以上アプリを利用するユーザーであるDAU(Daily Active Usersの略称:デイリーアクティブユーザー)が多く、広告やコンテンツを視聴いただく機会が多いからだと推察されます。この強みを生かし、LINE広告を新規顧客との接点づくりに特化させて運用するというのも一つの方法だと思います。
LINE広告を運用する際におすすめしたいことは、LINE広告におけるKPI(Key Performance Indicatorの略称:重要業績評価指標)を設定することです。例えば、「新規顧客との接点づくりは、既存顧客のCPA(Cost Per Acquisitionの略称:成約単価)の2倍までは許容する」などです。当然、単月では利益につながらないケースが多くなると思いますが、中長期的に見れば、収益性の向上につながると捉えています。
ディスプレイ広告は、リターゲティング広告や検索連動型広告と横並びで見ると、どうしてもROASが低くなる傾向にあります。しかし、これまで自社商品に興味・関心がなかった新規顧客が商品を検討するきっかけをつくることに優れているのは、ディスプレイ広告です。広告効果を長期的に考え、見極めていくことが大切だと思います。
――ほかに、LINE広告だからこそ注目している機能はありますか?
野嶋:LINE Dynamic Ads(LINEダイナミック広告)ですね。これは、Webサイトにおけるユーザーの行動履歴にそって、ユーザーの好みや興味関心にあった商品を広告表示できる機能です。例えば、「他社サイトで緑色のTシャツをクリックしたユーザーは、自社の緑色系のTシャツもクリックするのではないか?」など、フィード情報をもとに広告の出し分けが可能となります。この機能を有効に活用できれば、多品目型のECこそ、広告効果を高めることができると考えています。
2023年10月1日に、LINEとヤフーは1つの会社に統合しました。今後、Yahoo!広告のデータをLINE広告にも活用できるようになり、また、その逆も可能になると推察されます。これまで以上に、ダイナミックかつ効果的な広告運用ができるようになると感じていますので、今後の展開にも期待しています。
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