上記のチェックリストの内容については、以下で詳細を解説します。
飲食店の開業にあたって準備すべきことはチェックリストでも解説しましたが、ここではそのなかでも特に重要な項目について解説します。
まずは、飲食店を開業してどういったお店にしたいのか「コンセプト」を決めます。お店のターゲット層、提供するメニュー、外装・内装の雰囲気などのイメージを具体的に言語化することが大切です。
言語化することで一貫性につながり、まとまりのある店舗デザインやメニュー設計が可能になります。内装デザインや看板メニューは他店との差別化も意識して、独自の魅力を伝えることも重要です。
飲食店の開業には、「事業計画書」が欠かせません。店舗情報、収支計画、家賃や材料費などのコスト、雇用計画などを準備する必要があります。店舗情報では出店場所、規模やデザインなどを明確にします。収支計画は、最低でも1年間で3年程度の計画を立てるのが理想的です。
特に、出店場所は集客だけでなく固定費(家賃)にも大きく関わる要素です。そのため、焦らずに良い物件が見つかるまで探すこともポイントです。飲食店では物件や設備費用など初期段階でコストがかかることが多く、集客が計画通りに伸びないこともあります。
店舗に必要な環境を整備し、明日にでも営業が開始できる体制を整えます。調理場と調理器具、お客さんが使用するイスやテーブル、照明や店のコンセプトを示すような小物など購入が必要です。従業員を雇用する際は、求人を出して人材を確保する準備も求められます。
自己資金だけで開業できない場合は、資金調達も検討しましょう。
開業に向けて必要資金を計算し、調達方法を探します。飲食店の開業し経営していく時には、物件の契約、設備の導入費、人件費・光熱費・材料費などのコストがかかります。どの程度の資金が必要なのか試算した上で、事業計画を作成して資金調達を実施します。日本政策金融公庫の融資や助成金・補助金などを使うことも考えられます。
あくまでも一例になりますが、東京都内で15坪前後の飲食店であれば開業資金の目安は以下になります。
項目
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費用目安
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内訳
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物件取得 |
200万円(20万円×10ヶ月) |
・敷金礼金・保証金・前家賃・仲介手数料 |
店舗内装・設備 |
750万円(坪数×50万円) |
・内装工事・外装工事・看板作成・メニューデザイン・厨房設備・その他什器・備品 |
ランニングコスト |
200万円(20万円×10ヶ月) |
・人件費・採用費・仕入れ・その他経費 |
宣伝広告 |
50万円(5万円×10ヶ月) |
・ポータルサイト利用料・WEBサイト・SNS運用・LINE公式アカウント・クーポン作成・その他広告費 |
生活費 |
96万円(16万円×6ヶ月) |
事業が安定するまでの生活費 |
合計 |
1,296万円 |
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自己資金で賄えない際には、銀行などの融資や助成金活用も考えましょう。
飲食店の開業に必要な資格
飲食店の開業時には必須資格が2つ、非必須資格が1つあります。必須資格については開業準備を本格化させるまでに必ず取得しましょう。また、事業計画や開業資金についてこれまで触れてきましたが、ここからは法律上必要な条件について解説します。
必須資格①:食品衛生責任者
「食品衛生責任者」とは、店舗における食品の衛生管理を担当する人が保有する資格です。食品衛生責任者の資格取得者は、食品を扱う店舗に最低1人は必要になります。各都道府県が実施する講習を受けた後、試験に合格することで資格を取得できます。なお、調理師免許や栄養士資格を取得している場合には、講習を受講せずに取得が可能です。
食品衛生責任者は、会場集合型養成講習会にて、1日の講習で取得が可能です。
必須資格②:防火管理者
「防火管理者」とは、店舗の防火管理を担うために必要な資格です。飲食店の収容人数が30人以上(来店客と従業員を含めた数)の店舗では、防火管理者の設置が必要となります。店舗の延べ面積が300平方メートル未満では「乙種防火管理者」の届け出を実施し、300平方メートル以上では「甲種防火管理者」を届け出ます。
手続きの詳細はこちらから確認してください。
調理師免許は必須ではない
飲食店の開業時には、調理師免許は必須ではありません。調理師免許があると食品衛生責任者も同時に取得できるメリットがありますが、先に解説したように食品衛生責任者は講習と試験を受けることで取得可能です。一方で調理師免許は、「調理専門学校を卒業する」もしくは「飲食店で2年以上調理の経験」がないと資格試験を受験できません。
そのため、飲食店の開業時には、経営者が調理師免許を取得していないケースも多く、調理師免許を取得している人材を採用することも選択肢の一つです。調理師試験の詳細についてはこちらを参照ください。
飲食店の開業時に必要な届出
資格と同様に、飲食店の開業時には所定の届出・手続きが複数あります。どのような届出をどこに提出するのか確認しましょう。
開業届
飲食店を開業する際は、開業届の提出は必須となるため、店舗の出店場所を管轄する税務署に「開業届」を申請します。開業届は、開業から1カ月以内に提出する必要があり、確定申告で青色申告をする場合には、開業届と同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出します。
手続きの詳細についてはこちらから確認ください。
飲食店営業許可申請
「飲食店営業許可申請」は出店場所を管轄する保健所に提出します。この書類は開業前に提出し、事前に営業許可を得る必要があります。
飲食店営業許可申請を行ったのち、店舗の検査によって可否が判定されますが、一般的に申請から2〜3週間で営業許可が出るケースが多いです。注意点として業務形態や提供する料理内容によって必要な申請が異なるため確認が必要です。
各都道府県や市町村で提出先が異なるため、開業予定の地域で調べてみましょう。
東京の場合はこちらのように、地域別で窓口が用意されています。
防火管理者選任届
収容人数が30名以上の店舗であれば、出店場所を管轄する消防署に「防火管理者選任届」を提出します。火を使って調理をする際は、「火を使用する設備等の設置届」も必要なので注意しましょう。火を使用する設備等の設置届は、開店の当日までに提出します。
また、建物および建物の一部を使って営業する際は「防火対象設備使用開始届」を開店の7日前までに提出することも求められます。詳細はこちらから確認ください。
深夜酒類提供飲食店営業開始届書
深夜12時以降にお酒を提供する飲食店では、出店場所を管轄する警察署に「深夜酒類提供飲食店営業開始届書」を提出します。営業開始の10日前までに提出が必要となるため、事前に提出に向けての書類作りを行いましょう。また、来店客に接待行為を行う際に「風俗営業許可申請」を2カ月前を目安に提出する必要もあります。
詳細についてはこちらから確認ください。
労働保険への加入
従業員を雇用する際は、「労働保険に加入するための準備」が必要です。労働基準監督署に「労災保険の加入手続き」を提出し、従業員を雇う準備を進めます。同時に、公共職業安定所には「雇用保険の加入手続き」を提出する必要があります。いずれも従業員を雇用した日の翌日から10日以内が提出の期限となります。
手続き詳細についてはこちらから確認ください。
社会保険の加入
従業員を雇用する際は、社会保険の加入手続きが必要なこともあります。法人として開業する際は社会保険の加入手続きは必須です。しかし、個人事業主として飲食店を開業する際には手続きは任意となります。
手続き詳細についてはこちらから確認ください。
飲食店の開業に必要な資金の目安
飲食店の開業資金について先述しましたが、ここではどれくらいの資金が必要かデータをもとに解説します。開業前に全国の平均値や近年のトレンドを見ておきましょう。
開業費用の平均値は1,077万円
「日本政策金融公庫 総合研究所」が実施した「2022年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は1,077万円です。開業時の資金調達額は平均1,274万円となり、金融機関からの借入が69.2%、自己資金が21.3%という割合になっています。飲食店の開業を目指す際には、金融機関からの借入も活用して、ある程度の資金を用意するケースが一般的です。
開業費用は都道府県や立地によって大きく変動するため、出店を予定する場所に即して実際に見積もりを取るようにしましょう。
250万円未満で開業するケースが増加している
同調査によると、250万円未満で開業するケースも昨今は増加しています。250万円未満の割合は21.7%、250万~500万円未満が21.4%となっています。半数近い人が500万円未満で開業していることから、店舗の規模や立地などによっては開業資金を抑えられる可能性もあります。
飲食店の運営を成功させる3つのポイント
冒頭、国内に多くの飲食店があることを述べましたが、飲食店の一般的に3年以内に70%、10年以内に90%が廃業するといわれる競争の激しい世界です。安定運営と成功をおさめるために、開業前からチェックしておきたい3つのポイントを紹介します。
成功させるポイント
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ポイントの説明
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具体的な方法
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ターゲットや出店場所を適切に決める |
お店のコンセプトから、顧客層、立地、単価などを考える |
ベンチマーク(参考店舗)を参考にすれば、より明確になる |
集客施策の実施 |
アナログ・デジタルを活用した集客施策の実施 |
ホームページやSNS、看板やポイントカード、メルマガ、LINE公式アカウントの活用など |
店内オペレーションの整備 |
接客、調理、各種業務のオペレーションを整備 |
知見の体系化に向けて・マニュアルを作成します |
ターゲットや出店場所を適切に決める
ターゲットや出店場所は、お店のコンセプトと一致させなければ、顧客のニーズを満たすことができません。例えばファミリー層をターゲットにしているにもかかわらず、オフィス街に出店すると集客が思うようにいかないケースがあります。
集客施策の実施
集客施策にはアナログ(看板やポイントカードなど)とデジタル(ホームページやSNSなど)があり、いずれの場合も見込み客に対してお店の情報を届けることができます。ポイントカートは思わず「行ってみたくなる」情報を発信するのがコツです。
店内オペレーションの整備
どれだけ美味しい料理を早く提供できても、接客の態度が悪いと評判が下がる恐れがあるため、接客力も高めることが大切です。提供するサービスを質を保つために、店舗のオペレーション整備にも取り組みましょう。
接客や調理はもちろん、各種業務のオペレーションをまとめたマニュアルを作成すれば、従業員を雇う際もスムーズにトレーニングを行うことができます。
飲食店の開業から店舗運営で注意すべきこと
飲食店の開業時はもちろん、その後も注意すべきことが多数ありますので、店舗を運営する上で下記を参考にしてください。
顧客のニーズを意識する
顧客のニーズを意識せず闇雲に開業すると、本来ターゲットにしたい層やリピート顧客の獲得が難しくなります。例えば若い層をターゲットにすると、キャッシュレス決済の利用が増えることが予想されます。現金のみの対応になると、次の来店につながらない可能性が高まってしまいリピートの機会を逃すことにつながります。
支払い方法に限らず、顧客のニーズを踏まえて常に提供メニューやオペレーションなども改善し、お客様が「また訪れたい」と思う店舗にすることが大切です。
集客・リピート戦略を考えておく
飲食店を開業しても、新規顧客の集客やリピートができなければ安定した売上にはつながりません。1日の集客数がどれくらいあれば売上が安定するのか、具体的な数値で把握しておく必要があります。新規の集客ができた後には、クーポンの配布やLINE公式アカウントへの友だち追加を促すなどリピート施策を実施しましょう。
従業員との信頼関係を築くことを忘れない
従業員と信頼関係を築き、安心して仕事を任せられるようにしましょう。
オーナーや店長が信頼を得られないと、従業員もモチベーション高く仕事をしてくれない可能性があります。信頼関係を失って離職者が増えると、人手不足で店が回らなくなるリスクもあります。昨今では、LINEグループの機能を使ってスタッフとの連絡をしている店舗も多いです。
ほとんどの人がスマートフォンに入っているLINEならば、気軽にコミュニケーションがしやすくなります。店舗を良い雰囲気づくりの一環として、対スタッフのコミュニケーションにもLINE活用を検討してみましょう。
コスト意識を持つ
コスト意識が不足した状態で飲食店を運営すると、いつの間にか赤字といった状況になりかねません。売上データを分析して、不必要なコストは削れるように努めることが大切です。
原価がかかりすぎていないか、仕入れ価格をさらに抑えられないか、お店の数値を細かく分析しながら、運営コストを最小限に抑えましょう。
LINE公式アカウントで飲食店の売上アップ
飲食店の立ち上げ時の宣伝やその後の売上アップには「LINE公式アカウント」の活用がおすすめです。
国内で多くの利用ユーザーがいるLINEを活用すれば、店舗のLINE公式アカウントを友だち追加してくれたユーザーにメッセージを配信したり、1人ひとりの問い合わせにチャット返信したりできるほか、LINE上でクーポンやショップカードを配布し、リピートにつなげることもできます。
店舗がまだオープンした頃でも、店の入り口に「友だち追加でお得なクーポン配布!」などとショップボードを出して友だち追加を募れば、新規集客を行うことができます。また、一度来店いただいた方にLINE公式アカウントを友だち追加してもらえれば、その後お得なキャンペーン情報や新メニューを発信するなどして、再来店を促せるでしょう。
まとめ
飲食店を開業する際は、さまざまな準備が必要です。事業計画だけでなく、資格や届け出も必要なので、本コラムのチェックリストからもう一度確認しておきましょう。
また、開業後に経営を安定させるためにも、成功のコツや注意点まで事前に把握しておくことがおすすめです。「LINE公式アカウント」は、飲食店の新規集客からリピーター獲得、店舗の最新情報の発信などに役立つため、飲食店の運営には欠かせない機能が備わっています。
この機会にLINE公式アカウントを作成し、ぜひ活用してください。