飲食店の経営に興味があるが、「お店を続けていくためにどの程度の売上がいるのか」こんな疑問をお持ちの方も多くいるでしょう。飲食店の持続的な経営には、あらかじめ必要な売上の目安を把握し、具体的な開業計画を立てることがポイントです。本コラムでは飲食店に求められる売上の目安と計算方法、売上アップの方法などを解説します。また、売上アップにつながる「LINE公式アカウント」の機能や始め方も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
飲食店に必要な売上はどれくらい?
飲食店を経営していくために必要な売上は、家賃、人件費、提供メニュー(材料費)など、さまざまな要因によって変わります。以下では、飲食店経営において必要とされる具体的な売上の目安を紹介します。
個人経営の飲食店は年に1,000〜2,000万円程度の売上が必要
飲食店の場合は提供メニュー、採用人数などによって必要な金額は変動します。自身のお店の規模や立地を計算に入れた上で、事業計画を構築することが求められます。
立地や業態によって異なるものの、個人経営の飲食店の場合は年に1,000〜2,000万円程度の売上が求められます(換算すると、1カ月で83〜167万円、1日で2.7〜5.5万円程度が目安)。
これに加えて、採用するスタッフ数、提供するメニュー内容など、さまざまな変動要因をふまえて年間を通した事業計画を立てるのが、飲食店の売上アップには大切です。
売上のほとんどはランニングコストに使われる
飲食店の売上のほとんどは、「ランニングコスト」に使われます。
ランニングコストとは家賃、食材費、水道光熱費、人件費、広告宣伝費など、店舗を持続的に経営するために必要なコストを指します。一般的な飲食店の場合、売上の実に8割〜9割程度をランニングコストが占めると言われています。
当然ですが、売上が少ないと上記のコストを削減しなければいけません。しかし、人件費を削るとピーク時にお店が回らなくなったり、広告宣伝費を削ると新規顧客の獲得が難しくなるなど、さまざまな影響が考えられます。
そのため、飲食店ではランニングコストの比重が多くなることを考慮して、どの場所でどのようなコンセプトで店舗を開業するか、入念に計画しましょう。
飲食店の売上は増加傾向にある
飲食店全体の売上は増加傾向にあります。詳細について、以下で解説します。
飲食店を含む「宿泊業、飲食サービス業」の売上は14カ月連続の増加
総務省統計局の「サービス産業動向調査(月次調査) 結果の概要(2023年5月分[速報])」によると、飲食店を含む「宿泊業、飲食サービス業」の売上は、14カ月連続の増加となっています(前年同月と比較して、16.1%の増加)。
これは、 2020年頃から続いた新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって業績が冷え込んだ食業界が、その影響から徐々に抜け出しつつあることを示しており、今後さらに伸長していく可能性もあります。
飲食店に限らず、売上は増加傾向にある
飲食店を含むさまざまな業種の「新規開業」(※)についてリサーチした日本政策金融公庫 総合研究所の「2022年度新規開業実態調査」によると、売上状況が「増加傾向」の店舗の割合は、52.4%と半数を超えています。逆に「減少傾向」の割合は10.5%となっているため、全体的な水準として開業者の売上は高まっていることが分かります。
開業業種は「サービス業」(29.4%)「医療・福祉」(16.4%)「小売業」(13.8%)の順に多く、「サービス業」の割合は2018年度以降5年連続で上昇している。
月商で見ると「100万円未満」が42.3%、「100万~500万円未満」が41.1%と小中規模のビジネス開業が目立ちます。
100万円未満の数値が4割を超えているため、売上が増加傾向であっても収入面で苦労している店舗が多いと予想できます。このことから、コロナ禍と比較して市況は回復傾向にあるものの、店舗を持続的に経営するにはさまざまな売上アップ策を講じる必要があることが読み取れます。
飲食店の売上を予測する方法
飲食店の売上は、事前にある程度予測することが可能です。以下では、飲食店の売上を予測する方法について解説します。
飲食店の売上は「客単価 × 席数 × 回転数」で計算する
飲食店の売上は、以下の計算式で算出できます。単価と座数と回転数にそれぞれ数字を入れて、1日の売上予測を立てましょう。
客単価 × 席数 × 回転数(※)
※「店舗の座席が埋まった回数」を意味する数値
客単価が高くても、回転数が悪いと売上の増加は見込めません。また、回転数が高くても、客単価が低いと、必要な売上目標に到達することが難しくなります。
店舗面積に対して座席数をむやみに増やすことは現実的ではありませんから、誰をターゲットとしてどんなコンセプトで何を提供するか、理想論ではなくデータに基づいて検討したり、見直しを加えることも大切です。
FL比率による計算方法
FL比率とは、売上に対する食材費・人件費の割合のことを指し、以下の計算式で算出できます。
一般的には、FLコストが60%に収まっていると利益が出るといわれており、FLコストが低いほど利益が出ていると判断できます。お店の健康状態を計る指標の1つとして、こちらも定期的に確認するようにしましょう。
飲食店の売上から利益を把握する方法
飲食店の売上から利益を把握するには、以下の指標を利用しましょう。
「営業利益率」について
営業利益率とは、売上に対する利益の割合です。飲食店の経営が安定しているか判断する基準として用いられます。
営業利益率は、以下の計算式で算出できます。
営業利益(※) ÷ 売上高 × 100(%)
※営業利益は、「売上高 − 原価 − 経費」で計算
営業利益率の目安
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査(2021年度)」によると、飲食店・宿泊業の「黒字かつ自己資本プラス企業平均」の値は4.5%となっています。業種で分けると、一般飲食店が4.3%、食堂・レストランが5.1%、西洋料理店が14.2%です。自分の経営する店舗の業種・業態によって、必要な営業利益率が変わります。
飲食店の売上をアップさせる方法
先ほど営業利益率について解説しましたが、以下では飲食店の売上をアップさせる主な方法について解説します。
客単価を上げる
客単価を上げる工夫をすることで、売上アップにつながります。
客単価アップには、「値上げ」が近道と考えるかもしれません。しかし、例えば“せんべろ”の居酒屋など「安さ」を売りにしている店舗では、客単価を上げることはマイナスに働くこともあります。
他の手段として、セットで販売できるセットメニューや、追加注文しやすい安価なメニュー開発などが、客単価を上げるのに有効です。高級店の場合は、誕生月コースメニューや、プレミアドリンクの飲み比べセットの開発などで客単価を上げられるかもしれません。
客単価が上がることでリピート数が下がり、常連客が離れる可能性もあるため、単純な「値上げ」は注意が必要です。
回転数を増やす
回転数を増やして1日の利用客数を増やすことも売上アップの手法です。
速やかな注文の提供、テーブルの片付けなどオペレーションを徹底し、スムーズに次の顧客を受け入れられるようにしましょう。POSレジやセルフオーダーシステムを導入して、回転率を上げることも考えられます。
テーブルごとに設置したQRコードから、顧客に自身のスマホで直接注文してもらう「セルフオーダー」も少しずつ浸透してきており、従業員の人件費、生産性向上に貢献しています。
リピート数を増やす
せっかく来店した新規客が「1回きり」になってしまっては、集客にかけたコストを十分に活かしきれません。飲食店の売上を安定的にアップさせるには、「もう1度行きたい」と思ってもらう店づくり、システムづくりを行ってリピート数を増やしましょう。
具体的には、LINE公式アカウントを使って友だち追加してくれた顧客に向けてお得な情報を提供したり、リピーター向けの特別なクーポンを活用するなどの方法が挙げられます。
複数の方法で宣伝を行う
飲食店の売上を伸ばすには、安定して新規顧客に来店してもらもらえるように宣伝を行いましょう。
SNSやチラシ、店頭看板、駅広告、ポータルサイトの活用、インフルエンサーの活用など、複数の方法で宣伝することで、幅広い顧客層をターゲットにできます。
一つの施策に固執するのではなく、複数の施策を試してみて、何が効果的だったのか振り返り、自分の店舗にとっての“勝ちパターン”を見つけることが大事です。
口コミを増やす
ここでいう口コミとは、ユーザー間で実際に話し合われる内容や、オンライン上のレビューも含みます。後者は地図情報アプリ、ポータルサイト、SNS上のものなど多岐に渡りますが、口コミを生み出すには「顧客満足度」が重要です。
顧客満足度をアップするには、料理の味、接客の技術、店内の雰囲気などにこだわり、顧客に
「利用してよかった」「また来たい」と思ってもらえるかが重要です。ただし、悪い口コミにも注意が必要で、「接客態度が悪かった」などの低評価がなされると、ネガティブな印象につながるケースもあります。
メリットとデメリットをきちんと理解した上で、口コミをうまく活用して売上アップを実現しましょう。
料理の提供方法を増やす
最初はデリバリーで新規顧客に店の味を知ってもらい、次は実際に来店につなげるのも売上アップには効果的です。例えば、デリバリーで注文した商品に店のお勧めメニューを掲載したチラシを同封したり、LINE公式アカウントを友だち追加いただいた顧客にメッセージ配信して店舗を訴求しましょう。
売上アップの事例を参考にする
他店舗の成功事例が、自社の飲食店に応用できるケースもあるでしょう。
売上アップに悩んだときには、他店舗の成功事例をチェックして参考にすることも近道です。同じ業態や似た立地で売上が上がっている店舗はどのような施策を打っているのか調査して、まずは試してみることもおすすめです。
例えば、自分の店舗と似た条件の他店舗がセルフオーダーシステムを導入して、人件費削減につながり回転数も上がった成功事例がある場合は、セルフオーダーをお試し利用して、自社なりの活用方法を探して見てください。
飲食店の売上アップのために見直すべきポイント
飲食店の売上アップは、現在の経営状況についてさまざまな角度から定期的な見直しが大切です。以下では見直すべき指標について紹介します。
ランニングコストを見直す
飲食店の売上アップを目指すには、「ランニングコスト」を見直すことが重要です。
ランニングコストは本コラム内ですでに説明した通りですが、店舗を持続的に経営するために必要な家賃、人件費、光熱費などのコストを指します。それらを数値で確認して、削減できる余分な費用がないかチェックしてみましょう。ランニングコストは店舗経営で大部分を占める費用なので、削減した際のインパクトも見込めます。
例えば、ピーク時の人件費を削減できるようにオペレーション改善して、以前より少ない人数でお店を回せるようにするなどの見直し例があります。
従業員のトレーニングを強化する
従業員をトレーニングして生産性を向上させます。
システムの導入によって、オペレーションを効率化することも検討されます。セルフオーダーシステム、POSレジ、予約管理システム、キャッシュレス決済システムなど、導入することで効率化を実現できるものは多数あります。
ただし、セルフオーダーは、接客そのものが優良なサービスとなり得る高級店では不向きな場合もあります。自店舗の業態やターゲットを踏まえて相性の良いシステムを探し、効率化のプランを練ってみましょう。
提供するメニューを見直す
同じメニューを提供し続けると、顧客の「飽き」を招きかねません。
季節によって新メニューを開発して宣伝することで、リピーター育成を狙います。定期的に新作メニューを考案し、お店全体で新商品を売り出していく意識を持つことが重要です。コース料理を提供する場合は春夏秋冬でコースを変えて、年に何度も来店してもらえるきっかけづくりをします。
顧客の情報収集方法を見直す
顧客情報は、サービスの改善などにつながる重要なデータです。
例えば雨の日はこの商品が売れやすい、晴れの日はこの商品が売れるなど傾向をつかめます。
売上アップや安定した店舗経営を実現するためには、データ収集、管理、分析方法を見直し、自社の状況を正確に把握する地盤をつくることもポイントです。
チェーン店ではデータを収集・管理する専門のシステムを導入したり、外部の専門家にデータ分析を委託したりといった方法も検討されます。
コンセプトを見直す
売上が伸び悩んでいる場合、店のコンセプトと顧客のニーズがマッチしていない可能性もあります。現在の立地とコンセプト、客単価でどれくらいのニーズがあるのか確認します。
例えば、一人暮らし世帯が多い地域でファミリー向けの高級飲食店を出店しても、そもそも市場規模が小さい可能性があり、思い切ってコンセプトから見直す必要が出てきます。
LINE公式アカウントで飲食店の売上を高めよう
飲食店の売上アップを実現するには、「LINE公式アカウント」の活用がおすすめです。
LINE公式アカウントは、友だち追加してくれた顧客にテキストメッセージを配信するだけでなく、お得感のある情報を、視覚的に強く訴えかけられるなど、さまざまな機能を無料から使える法人向けサービスです。
店舗で使える「クーポン」の配信や、「ショップカード」の設定などはリピート増加につながります。LINE公式アカウントの「リッチメッセージ」「カードタイプメッセージ」のように、視覚的に分かりやすい機能で新メニューやキャンペーンを宣伝し、友だち追加してくれた顧客に店舗についてより深く知ってもらうこともできます。
飲食店に有用な機能が利用できるLINE公式アカウントは、昨今では居酒屋、レストラン、バルなどさまざまな業態の飲食店で利用されれています。
まとめ
飲食店を経営していくには、売上アップにつながる施策を日頃から考え、実行する必要があります。売上が安定しないと店舗の運営が厳しくなり、事業計画の変更を迫られる可能性もあります。この機会に飲食店の売上を予測する方法や、売上アップを実現するポイントを確認してください。
飲食店の売上アップを目指す際には、「LINE公式アカウント」の活用がおすすめです。LINE公式アカウントには、売上に直結する新規顧客やリピーターの獲得を促すさまざまな機能が備わっています。この機会にLINE公式アカウントを活用して店舗と顧客の関係性を強化して、飲食店の売上アップを目指しましょう。