大阪でも広がるLINEの法人向けサービス活用法
法人向けサービスとして「LINE公式アカウント」がリリースされてから約7年、大阪でLINEの営業拠点が設立されてから約2年が経過し、LINEを活用した取り組みは大阪でも広がりを見せている。昨年に引き続き、2019年11月27日に大阪・ハービスホールで開催された「LINE Biz-Day in Osaka」の模様をレポートする。
当日は多くの来場者を迎え、会場は盛況を博した。また、セミナー会場の外にはカフェと商談スペースも設置された。
地域・企業・ユーザーを結ぶ、LINEの取り組み
コミュニケーションアプリ「LINE」は月間利用者数が8,200万人、そのうち毎日利用しているユーザーは86%(どちらも2019年9月末時点)と、日本最大規模のプラットフォームとして成長を続けている。イベントの冒頭に登壇したLINE株式会社 執行役員 広告ビジネス事業担当の池端由基は、ユーザーの生活をサポートする役割を果たすLINEの未来に向けた取り組みについて、次のように語った。
LINE株式会社 執行役員 広告ビジネス事業担当 池端 由基
「我々のコーポレートミッションは、『CLOSING THE DISTANCE』――世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めることです。そのためにAIやFintech、OMO(Online Merges with Offline)など、ユーザーの生活を豊かにするテクノロジーへの投資が重要だと考えています」(池端)
また、池端は「ユーザーの生活とは日常であり、日常の舞台となるのはそれぞれの地域である」と述べ、地域に根付いたプラットフォーム構築の重要性も主張する。地域に密着した企業・店舗・自治体のLINEを活用した取り組みの一つが、大阪北部地震(2018年)被災者を対象に開設されたLINE公式アカウント「大阪北部地震 心のケア」だ。
「一般財団法人 全国SNSカウンセリング協議会」と「一般社団法人 全国心理業連合会」によって開設された同アカウントでは、心のケアを目的に専門のカウンセラーによる無料相談を実施。電話相談窓口と比較して、13倍もの問い合わせがLINE経由で寄せられた。問い合わせをしたユーザーの80%以上から感謝の言葉が聞かれるなど、地域の人々の支えにもなっている。
Keynoteの後半では池端の講演を受け、LINE株式会社の松岡亮太がLINE公式アカウントとLINEの運用型広告「LINE Ads Platform」の新メニューや機能について、同じくLINE株式会社の橋本久嗣がセールスプロモーションに関わる新メニューや活用事例を紹介し、企業のマーケティング活動にLINEがどのように貢献できるのかを説明した。
LINE株式会社 広告事業本部 西日本事業部 事業部長 松岡 亮太
LINE株式会社 広告事業本部 SPセールスチーム マネージャー 橋本 久嗣
続く登壇企業のセッションでは、各企業担当者が自社の商品・サービスに合わせたLINE活用法について発表した。
地方エリアの獲得にも強い、LINE Ads Platformを活用した集客
医療・介護・福祉業界向けの人材紹介を行うメディアメイド株式会社(以下、メディアメイド)の島﨑由衣氏は、同社のパートナーであるソウルドアウト株式会社の穴吹美緒氏と、「LINE Ads Platformを活用した、人材業界における応募数激増の秘密」と題して、同社におけるLINE Ads Platform(以下、LAP)の活用法を紹介した。
(写真左より)モデレーターを務めたLINE株式会社 西日本事業部 大阪オフィスチーム 平康敦大、メディアメイド株式会社 デジタルマーケティング部 主任 島﨑由衣氏、ソウルドアウト株式会社 第二営業本部 関西営業部 シニアコンサルタント 穴吹美緒氏
メディアメイドは2017年4月からLAPの本格的な活用を開始した。集客目標数の増加に伴うCPAの高騰に課題を感じ、配信面を広げるため幅広いユーザーにリーチができるLINEに注目したという。
安定的にCVを獲得しつつ、獲得エリアにも偏りが出ないようにしなければならないという前提があったメディアメイド。同社はCPAを安価に抑えつつ件数を積み上げることを目的に、LAPの配信方法として、エリアを指定しない全体配信キャンペーンと獲得数の不足地域にのみフォーカスしたキャンペーンを展開した。掲載面の特性に合わせてクリエイティブにも工夫を重ねた結果、全体の広告配信のうち約20%がLAP経由となり集客に大きく貢献している。
「集客数とコストをKPIとして運用していましたが、最も獲得数が多い媒体Aと比べてもLAPのCPAは約30%安くなりました。また、媒体Aで伸び悩んでいた地方エリアでの獲得数もLAPであればエリアを問わず獲得できることが分かりました」(島崎氏)
「運用においてはターゲティング機能の中でもリターゲティングの比率を高めつつ、LAPの自動最適化配信の精度が向上してきたため、自動最適化配信と手動配信を並走させました。その結果、日々安定したCVが獲得できるようになり、CPAの改善でリターゲティングのCV割合が増加しました。転職検討意欲の高い人を集客できています」(穴吹氏)
今後はLAPだけでなく、LINE公式アカウントを活用して潜在顧客へのアプローチを行っていきたいと展望を語った。
老舗食品会社と12億円調達スタートアップに聞く、LINE公式アカウントの活用法
続いて、LINEのキャンペーン/CRMシステム「GEPPY」を運営するマインドフリー株式会社の西口陽介氏をモデレーターに迎え、エスフーズ株式会社(以下、エスフーズ)の日下大輔氏と株式会社ヤマップ(以下、ヤマップ)の小野寺洋氏が登壇した。
(写真左より)マインドフリー株式会社 ソリューションセールスグループ マネージャー 西口 陽介氏、エスフーズ株式会社 製品事業部 マーケティング部 マーケティング室長 日下 大輔氏、 株式会社ヤマップ マーケティングマネージャー 小野寺 洋氏
「はがき」から「LINE」へ、デジタル化したキャンペーン施策
エスフーズは「『はがき』から『LINE』へ、エスフーズのLINE活用」をテーマに、同社の30年以上にわたるロングセラー商品「こてっちゃん」におけるLINEを活用したレシートキャンペーンの取り組みを紹介した。
これまで同社が「こてっちゃん」において実施していたキャンペーンは、はがき応募型やWebシリアル型が中心となっていた。しかし、ロングセラー商品であることからキャンペーン応募者の年齢層が高齢化していたこと、はがきで寄せられる応募情報の書き出し、シリアルコード発行といった作業の負担が課題となっていたと話す日下氏。
そこで、エスフーズでは若年層の応募増加にも期待を込め、「こてっちゃん」対象商品を購入したレシートをLINEで送ると応募が完了するプレゼントキャンペーンを実施した。
結果として、LINE上でキャンペーンの応募情報を管理できるため、コストが大幅に削減されるなどの効果が見られたという。また、現在の顧客層は維持しつつ、今後を見据えた若年層の獲得が見込めたとも日下氏は分析する。
「キャンペーンの応募方法としてはがきとLINEという2つの選択肢を用意したところ、LINEでの応募を選択したユーザーが90%を記録し、30代以下のユーザーの応募率が倍増しました。ブランドの課題でもあった購入者の高齢化に対しても効果的な施策になりました」(日下氏)
キャンペーンで得たマーケティングデータを、製品開発や営業活動にも活用しているというエスフーズは、今後もデータマーケティングに力を入れていきたいと語る。
自社アプリの特性を生かしたLINE公式アカウントの活用とは
続いて「YAMAPどこもやってない?斬新なLINE活用法」をテーマに、オフラインで使える登山GPS地図アプリ「YAMAP」を提供するヤマップの小野寺氏が、LINEを使ったユーザーコミュニケーション施策について紹介した。
リリースから数年で146万ダウンロード(2019年9月時点)を達成したYAMAPは、これまで口コミによる情報拡散でダウンロード数を伸ばしてきた。では、なぜLINE公式アカウントを開設したのか。その目的を小野寺氏は次のように語る。
「一つは、LINEを介したコミュニケーション手法で、新規ダウンロードユーザーを増やすこと。もう一つは、約150万人いる既存会員とのコミュニケーション手段の拡大です。これまでは自社アプリからのプッシュ通知とメルマガが主な手法となっていましたが、会員との接触回数は増えませんでした。LINEであれば、ユーザーの生活に浸透しているため自然にコミュニケーションが図れることに加え、会員との接触回数も増やせます。
また、グループで登山をする人たちは、登山計画をLINEでシェアする習慣があることも大きな理由です。そのグループにYAMAPが入ることで、YAMAPを使ったことのない新規ユーザーをアプリダウンロードへ誘導することができるのではと考えました。つまり、ユーザーがユーザーを呼ぶ状態が期待できるのです」(小野寺氏)
そこでヤマップでは、LINEを介した登山計画のコミュニケーションの中にLINE公式アカウントを招待することができる機能を2019年11月以降からテストしていくという。
LINEと各種データ連携が生み出すマーケティング施策の相乗効果
最後のセッションでは「LINEと各種データ連携で実現する、マーケティングの打率アップの秘策」と題し、株式会社電通の根本逸平氏、株式会社電通デジタルの落合陽輔氏が登壇した。
株式会社電通 ソリューション・デザイン局 データドリブンマーケティング部 ストラテジスト 根本 逸平氏
株式会社電通デジタル プラットフォーム部門 LINEグループ グループマネージャー 落合 陽輔氏
昨今のマーケティング活動においては、さまざまなデータを統合して活用することが求められている。根本氏は冒頭、3rdパーティデータと1stパーティデータを連携することで実現する「デュアルファネル™マーケティング」の考え方を提唱。外部データとの連携により可能になった、LINEを活用したOne to Oneコミュニケーションの成功事例を紹介した。
例として、漫画作品の展示会イベントの事例では、特殊な1stパーティデータの活用例を紹介。LINE公式アカウントを活用することで、イベント来場前から来場後に至るまでのすべてに対応した施策が行えたという。
具体的には、事前のコミュニケーション段階でのエンゲージメント強化や来場前後でのアンケート実施によるユーザー情報の取得のほか、性年代別やエリア別でのグッズ購入傾向や客単価分析ができるようになった。さらに、従来では来場数や全体の売り上げにおいて粒度の粗い情報しか取れなかったが、データ活用により顧客の「見える化」が可能になった。
最後に両名は、LINEの連携により実現する、データを活用したより高度なソリューション提供への期待を述べ、講演を締めくくった。
今後もLINEは「CLOSING THE DISTANCE」の実現へ向け、企業・店舗と共にユーザーの生活を豊かにするためにサービスを展開していく。
※本イベントに登壇した株式会社生活総合サービスと株式会社ライドオンエクスプレスのセッションに関しては後日個別取材記事として紹介します。
※本記事内で紹介した各種数値は、すべてセミナー開催時点のものです。
(公開日:2019年12月6日、写真:高橋枝里)
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