飲食・小売の経営支援!青森県とLINEで進める店舗のDX推進
青森県 新産業創造課 産業DX推進グループ 丸尾 翼氏 LINE株式会社 広告・法人事業本部 バーティカル事業部 事業部長 富永翔
2022年7月、青森県にて「LINEを活用した手軽な集客アップセミナー」が開催された。県内の飲食・小売などの事業者が参加した本セミナーの成果や実施までの経緯、コロナ禍における飲食店の状況などについて、セミナーを主催した青森県の新産業創造課産業DX推進グループの丸尾翼氏に話を聞いた。
コロナ禍で苦しむ飲食店に必要なのは、継続的な集客支援
――コロナ禍における青森県内の飲食業や小売業の状況について教えてください。
丸尾:新型コロナウイルス感染症の拡大によって、青森の産業も大きなダメージを受けました。特に痛手を負ったのは観光業のほか、飲食・小売・理美容などの対面サービス業です。緊急事態宣言下で休業を余儀なくされ、営業を再開しても感染リスクの懸念から客足は伸びず、商売にならないという状態が続きました。多くのお店が苦境に立たされ、その影響は感染拡大が落ち着いた現在でも依然として残っています。
中でも、個人経営の飲食店が大変な苦労をされているという印象です。例えば、小売業であればECサイトなどのネット販売で商圏を全国に拡大するという選択肢が考えられますが、飲食業の場合、どうしても商圏は店舗を構えている近隣地域に絞られます。内食、中食の定着による外食需要の落ち込みに対応し、テイクアウトやデリバリーで売上アップを目指そうにも相応の準備が必要で、商圏も限られているため限界もあります。飲食店の活気を取り戻すためには地域のお客さんに来店してもらうことが重要で、そのためには域内の需要回復が喫緊の課題だと感じています。
――飲食店支援のために県が実施している施策には、どのようなものがあるのでしょうか?
丸尾:県内の飲食店で1,000円以上利用すると、抽選で最大2万円の商品券がもらえる「つなぐるキャンペーン」をこれまで3回実施しています。県民に向けた利用促進施策ですが、対象となる飲食店は感染防止対策を徹底し、「あおもり飲食店感染防止対策認証制度」の認証を受けた店舗だけです。
相応の成果は得られましたが、恒常的にお客さんに来店してもらえるための手法として、口コミ、フリーペーパーなど、紙による広告から脱却し、デジタルツールによる集客アップが必要だと感じていました。そこで今回、LINEさんにお声がけして、「第1回あおもりクロステック研究会ミニセミナー」と題し、「LINEを活用した手軽な集客アップセミナー」を実施するに至りました。
青森県 新産業創造課 産業DX推進グループ 丸尾 翼氏
――「あおもりクロステック研究会ミニセミナー」の概略について教えてください。
丸尾:デジタルツールを活用して県内事業者の経営支援を行うことを目的としたセミナーで、今年度からスタートしました。運営は私が所属する青森県商工労働部新産業創造課産業DX推進グループです。
実は昨年度まで「産業DX推進グループ」は「情報産業振興グループ」という名称で、主にIT関連事業者を中心に支援を行っていました。しかし、「IT事業者以外のDXも積極的に支援していかなければいけない」ということで、今年度から名称を変更して飲食、小売、製造業など幅広い事業者のデジタル化やDX推進をサポートしています。
その一環として開催したのが「あおもりクロステック研究会ミニセミナー」です。第1回には知名度も高く、利用者も多いLINEがふさわしいという判断で、ご協力をお願いした次第です。
LINEの初歩的な使い方と機能をわかりやすくレクチャー
――では、セミナー実施の成果について教えてください。
富永:今回、私が講師役としてLINE公式アカウントの基本的な使い方についてお話しさせていただきました。メイン会場は「青森商工会議所」1階の「AOMORI STARTUP CENTER」で、オンラインでも同時配信。会場には主に青森市近郊から約20名の方にお集まりいただき、オンラインでは県内各地の事業者の方々に参加いただきました。
セミナーではLINE公式アカウントの基本的な情報や使い方とともに、実際にサービスを活用している飲食店の事例を紹介
うれしかったのは、商工会議所や金融機関など、支援機関の方々にも多くご参加いただいたことですね。普段から地域で経営支援をされている方々にLINE公式アカウントの使い方と効果を知ってもらえれば、その方たちから飲食・小売を中心とした事業者さんたちに波及していくはずです。経営改善の方策として、LINEの導入を検討してもらえる機会が増えるのではないかと思いました。
もちろん、事業者の方々にも参加いただきました。青森市内で飲食店を営む50代の女性が、「LINEの運用がこんなに簡単だとは思わなかった。もっと早くチャレンジすればよかった」と話されていたのが印象的です。
LINE株式会社 広告・法人事業本部 バーティカル事業部 事業部長 富永翔
質疑応答では、クーポンやショップカードなど、LINE公式アカウントの基本的な機能についての質問が多く、まだまだ青森県内の飲食業や小売業の方々に、LINEをビジネスでも使えるということが認知されていないと実感しました。また、対面でお話すると情報交換もできるので、これからも対面式のセミナーは継続的に実施していきたいと思います。
丸尾:やはり、まだまだ県内の飲食・小売では、デジタルツールを使った集客や顧客情報の活用といったマーケティング手法は普及していないというのが実状です。「難しい」「自分にはできない」という先入観を持たれている方が多いと思うのですが、ビギナー向けに分かりやすくLINEの活用法を説明いただいたので、段々とそうしたイメージも払拭されていくと思っています。
今後も各地でLINE活用セミナーを実施予定
――最後にセミナー開催の感想と今後の展望について教えてください。
丸尾:県が単体で経営支援セミナーを主催すると、どうしても「小難しい」「堅苦しい」という印象を持たれ、参加者が集まらないこともあります。しかし、今回は皆さんが普段から親しんでいるLINEと共催ということで、多くの方に参加いただきました。今後、県内の他地域でもLINE活用セミナーの開催を検討していきたいですね。
店舗経営の要であるリピーター獲得、リピート率向上のための手法は、新しい時代の飲食・小売の経営には欠かせないものです。今後も同様の取り組みを推進していければと思っています。
富永:今回、青森で経営支援を行っている方々や店舗経営者の方々と直接お話させていただいて、私としても学びを得られる機会となりました。参加された方のお店で、青森のおししいお酒もいただきました(笑)。地方を元気にするためにも、今後も各地でセミナーを実施し、LINEの使い方や効果をお伝えしていきたいと思います。興味を持たれている自治体関係者や商工会議所の方がおられましたら、ぜひお気軽にお声がけください。
(取材・文:相澤良晃)
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