つながりが求められる時代のカギは「LINE公式アカウント」が握る
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い、オフラインの場で顧客との関係構築が困難になり、新規顧客の獲得やリピーターの育成に悩む企業・店舗が増えている。現在、企業・店舗が抱える課題に対して、LINE公式アカウントはどんな価値を提供できるのか。
LINE公式アカウントの運用に深い知見を持ち、LINEの法人向けサービスの認定講師「LINE Frontliner」でもある株式会社ファナティックの野田大介氏、株式会社クラブネッツの野尻 猛氏に話を聞く。
株式会社ファナティック 代表取締役 野田 大介氏
ファッション誌の編集、スニーカーブランドの生産管理、アパレルブランドでの通販責任者を経て、2016年に株式会社ファナティック設立。大手アパレル通販のリニューアル支援や売上改善の傍ら、2017年にLINEのセグメント配信ツール「ワズアップ!」を開発。「安価でサイト側の改修も必要なく、運用の手間もなし」というツールの特徴を活かして、圧倒的効果を誇るLINEのセグメント配信を中小規模の事業者にも提供中。
株式会社クラブネッツ 上席執行役員 野尻 猛氏
ドラッグストアの経営企画の責任者、飲食FC本部の経営戦略室の責任者を経て、2005年株式会社クラブネッツ入社。NBや大手企業の新規顧客創出専門のメディア事業本部を設立。多くのマーケティング戦略やCRM施策と関わる中で、LINE事業にも営業戦略・有効活用事例作りに多数関わる。加盟企業や代理店に向けて、どう売るかどう使いこなすかの勉強会も多数実施。現在、東日本ソリューション事業本部の上席執行役員として従事。
コロナ禍で浮き彫りになる、顧客との関係構築の課題
——お二人がLINE Frontlinerとなった理由やLINEを活用してどのような支援をされているか教えてください。
野尻:クラブネッツはLINE公式アカウントの技術支援を行うLINEのパートナー企業として、飲食店や美容室・サロンを中心に導入支援や経営コンサルティングを行ってきました。支援を行う中で、私自身もLINE公式アカウントはユーザーとの関係構築に欠かせないツールであると実感しています。そのため、LINE Frontlinerとなって店舗の方にその魅力を広めていきたいと思い応募を決めました。
野田:ファナティックでは、LINE公式アカウントのセグメント配信ツール「WazzUp!(ワズアップ!)」を開発・提供と、アパレル企業を専門にECの構築支援や売り上げの改善を行っています。
比較的規模が小さい事業者の中には、せっかくLINE公式アカウントを導入しても運用まで手が回らなかったり、成果を出せずに断念してしまったりと、道半ばで挫折するケースが多く見られます。私自身も以前LINE@(※)を運用していたのですが、その時の経験を基に運用コストや負荷を抑えながら成果を出すためのサポートをしたいと考え、LINE Frontlinerに応募しました。
※2019年4月に現在のLINE公式アカウントに統合
——2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、あらゆる業種・業界が打撃を受けています。お二人が関わる業界では、どのような経営課題が表面化していますか?
野田:コロナ禍によって店舗でのコミュニケーションが困難になり、「顧客とのつながりをどう維持するか」という問題がこれまで以上に浮き彫りになりました。そのため、EC施策を検討される企業や店舗が増加した印象があります。しかし、慌ててアプリやメルマガを駆使してユーザーと関係構築を図ろうとしても、関係性ができていないため成果につながりにくい。何よりアプリはユーザーがプッシュ通知をオフにしていることも多く、メルマガはなかなか開封されずに埋もれてしまいます。どうやって情報をユーザーに届けるかも大きな課題になってきていると思います。
野尻:これまでも飲食店の方に「常連客づくりをしっかりやらないといけない」と言い続けていたのですが、「いいサービスを提供していれば自然に常連客はできる」と思っている方もいます。しかし、外食を控えるユーザーが増加したことで、その論理は通用しなくなっています。どうしたら来店してもらえるか頭を抱える店舗が多い中で、常連客づくりの基盤が整っているかが売り上げや集客に大きな差を生み出していると思います。
企業の課題にLINE公式アカウントはどのように貢献できるか
——LINE公式アカウントは、店舗や企業が抱える課題をどのように解決できるのでしょうか?
野尻:店舗以外の場でユーザーとの接点を持ち、来店を促さなければなりません。日常生活の中でユーザーに親しまれているLINE公式アカウントは、まさにそのためのチャネルとして価値があります。
例えば、リピーターの獲得を課題にしている場合、ポイントに応じて特典を付与できるLINE公式アカウントの「ショップカード」活用が効果的です。LINEのショップカードは、いわゆる「捨てられずに常に持ち歩いてくれるポイントカード」です。店舗にとっては管理画面から簡単に運用できるため負担が少なく、ユーザーにとってはポイントカードを持ち歩く手間が省けます。
また、美容室やエステなど予約を要するサービスには、LINEチャットでユーザーとコミュニケーションをとることを勧めています。LINEチャットを活用することで、ユーザーとOne to Oneでコミュニケーションが実現します。急ぎの予約やスタイルの相談といった個々のニーズに柔軟に対応でき、再来店につながりやすくなります。
野田:LINEはすでに多くのユーザーがダウンロードしており、日常的に利用しているためメッセージ開封の即時性や継続的なコミュニケーションに期待できます。ユーザーとのつながりを維持したい、最新の情報をユーザーに届けて購入を促したい、という課題を持っている企業にはLINE公式アカウントの活用が適していると思います。
実際の運用でいうと、EC事業者にはセグメント配信を推奨しています。ECサイトにLINEログイン機能を設定し、自社の会員情報とLINEアカウントのID連携をしてもらうケースもあれば、ワズアップ!のようにID連携をせずにLINE上だけで簡単にユーザーの希望する情報を登録してもらうこともできます。一度登録さえしていただければ、その後はユーザーの状況に合わせたメッセージの出し分けが可能になり、自分ゴト化して情報を受け取ってもらいやすくなります。特に効果を感じているのがリマインド配信です。再入荷した商品、閲覧した商品、カート落ちした商品などを配信することで、購入率が上がるケースもあります。
——LINE公式アカウントをうまく運用するコツを教えてください。
野田:LINE公式アカウントをうまく使いこなすコツは、次のように運用段階に応じた戦略を考えていくことです。
- 友だちを集める
- ある程度友だちが集まったら、開封率やクリック率を意識する
- 無料通数メッセージが上限に近づいたタイミングで、費用対効果を考えてセグメント配信を行う
私はLINE公式アカウントの友だち数が5,000人以上いて、無料通数メッセージの上限に悩む企業の支援を得意としています。LINE公式アカウントの運用で成果を出せるかは、どのくらい友だちを集められるかが重要になってくると思います。
野尻:LINE公式アカウントの運用支援を行うときは、運用の軸をぶれないようにするために、経営課題から切り込みます。たとえば、飲食チェーン店の場合は本部・エリア担当・現場店舗のそれぞれの目標を共有し合います。こうした工程を経て、全体的なマーケティング戦略に基づくメッセージ配信は本部主導で行い、各店舗の施策を配信する場合は店舗側が内容を検討するなど、運用の方針を定めます。
友だち集めの目標にしても、安易に「月500人」といった数値を掲げるのではなく、「来店頻度を上げるのか」「新規顧客の獲得を目指すのか」を考えたうえで設定するように伝えています。友だち集めとは、いわゆる「ファンづくり、リピートしてくれるお客さまをつくる」ことです。実際、来店してくれた方がどれだけ友だちになってくれたかで、サービスの満足度やリピート率が見えてきます。面倒に思って友だち集めを適当にしてしまうのではなく、大切さに気づいてほしいと思います。
野田:友だち集めでつまずくケースは本当に多いです。EC事業者で多いのはLINE公式アカウントの案内をWebサイトやメルマガのフッターにだけ置いているケースです。それではユーザーになかなか気づいてもらえません。しかし、友だち追加の導線を見直してヘッダーに案内を置いてみたり、会員登録後や商品の購入後にLINE公式アカウントの案内を出してみたりするだけでも、友だちの数は増えていきます。
小さい企業や店舗だと、どうしても人手が足りないので、メッセージ配信が後回しになりがちです。そんな時こそ、LINE公式アカウントの運用を自動化する「ワズアップ!」のようなサポートツールが役立ちます。私の経験では、メッセージ配信や自動応答などの機能を適切に活用し、運用を自動化している企業ほど成果が出ています。ぜひこうしたツールを活用してもらいたいです。
LINE FrontlinerとしてLINEの価値を広めたい
——今後、LINE FrontlinerとしてやっていきたいことやLINEへの期待を教えてください。
野田:LINEはもともと東日本大震災を機に開発され、今では日常生活に欠かせないコミュニケーションアプリとなっています。企業が公式ホームページを持つのと同じように、今後はLINE公式アカウントを持つことが当たり前の世の中になるかもしれません。
そこで、LINE公式アカウントを運用してみたい企業、または成果が出せていない企業に対し、成果につなげるための支援をしていきたいです。LINE公式アカウントは機能も充実した優れたツールなので、魅力や価値をしっかり伝え、より良いビジネス環境づくりに貢献したいと思います。
野尻:LINE公式アカウントの運用でなかなか成果が出せない企業の中には、運用をサポートするLINEの代理店やパートナーが存在すること、成果を出すために支援を受けられることを知らない方もまだまだいらっしゃいます。LINE Frontlinerの活動を通じて、サポートが受けられることを伝えていきたいです。そしてLINE公式アカウント運用の可能性を広げ、LINEが驚くほどの成果をつくっていきたいと考えています。
(文:岩崎史絵、写真:川嶌 順)
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