コロナ禍からの脱却。世田谷区とLINEが取り組む飲食店への支援策とは?
左から) LINE株式会社 広告・法人事業本部 バーティカル事業部 事業部長 富永翔 LINE株式会社 広告・法人事業本部 マーケットプロモーションチーム マネージャー 西村燿人 三茶ワークカンパニー株式会社 山口智代氏 世田谷区 経済産業部 商業課/産業連携交流推進課 宮城正裕氏
2022年6月、世田谷区主導で区内の飲食事業者を対象に「飲食店様必見!リピーター獲得と店舗運用改善をめざすLINE活用セミナー」が開催された。本セミナー開催までの経緯を背景に、世田谷区内の飲食店の現状や行政としての支援策、LINEに寄せる期待などについて関係者に話を聞いた。
支援金以外にも飲食事業を継続するためのサポートが必要
――コロナ禍における世田谷区内の飲食店の状況を教えてください。
宮城氏:世田谷区の人口は約92万人と東京23区最多、飲食事業者数もかなりの件数になりますが、その多くがコロナ禍で大打撃を受けました。実際、コロナ対策の緊急融資の申込数は、「小売・卸」に次いで「飲食店」が2番目に多い業種です。世田谷区としても、早急に飲食店への支援が必要だと考え、これまでさまざまな支援策を講じてきました。
――どんな支援策を実施してきたのでしょうか?
宮城氏:一例として、コワーキングスペースの運営など、地域活性化事業を手がける三茶ワークカンパニー株式会社さんと取り組んでいる「SETA COLOR」があります。これは、最大150万円の補助金と専門家によるサポートを提供し、小規模事業者のチャレンジを支援するというプログラムです。例えば、「ECを始めたい」という事業者にはウェブデザイナーを、「販路を拡大したい」という事業者にはマーケターなど、区内で登録している専門家に協力を仰ぎながら計画の実現を目指してもらいます。
実際、飲食店さんからは、「デリバリーを始めたい」などの相談を受けました。特にコロナ禍の流行が小康状態となりつつある中で、「お客さんはコロナ禍前の水準には戻らないが、支援金ももらえない」という最近の状況が飲食店にとっては一番苦しいのではないかと思います。コロナ禍で離れたお客さんを呼び戻し、自力で事業を継続するため、基盤づくりの必要性を感じています。
世田谷区 経済産業部商業課/産業連携交流推進課 宮城正裕氏
LINEの基本的な使い方と導入効果をセミナーでレクチャー
――では、そのような状況の中、LINEとセミナー開催に至った経緯について教えてください。
宮城氏:飲食店にお客さんを呼び込むためには、やはりデジタルツールを活用したマーケティングがひとつ重要だと考えています。特に小規模な飲食店では定期的に来店してくれるリピーターの存在が重要で、そうしたお店のファンをつくるためのコミュニケーションツールとして、真っ先に思い浮かんだのがLINE公式アカウントです。
LINEには月間利用者数9,700万人(2024年3月末時点)という多くのユーザー数がおり、お店の規模や業態を問わずユーザーと接点を持つことができるツールと考えています。コロナ禍で苦しい経営を強いられている飲食店の皆さんには、地元のリピーターを獲得するためにLINEを効果的に活用できるようになってほしいという思いがありました。
しかし、一方で区内の飲食店を含む事業者の約80%がDXに消極的で、かつITツールの導入にも約50%が消極的というアンケート結果が出ていました。つまり、「デジタルツールの必要性を感じていない」、あるいは「苦手」という事業者が多い状況でした。そこで、まずはLINE公式アカウントの導入効果を分かりやすく伝え、興味を持っていただくことから始めようと思い、セミナーについては三茶ワークカンパニーさん、登壇講師としてLINEさんに協力してもらって初心者向けのセミナーを開催することにしました。
――実際、セミナーではどんなことをレクチャーしたのでしょうか?
富永:そもそも、LINEは他社のSNSと何が違うのか、どんな機能があるのか、どの程度の導入効果が期待できるのかなど、多数の事例を交えながらお話ししました。
参加された皆さんに納得いただけたのは、「LINE公式アカウントで友だちを集めることの意義」です。通常、来店時以外に飲食店がお客さんと継続的な接点を持つことはありません。それが、LINE公式アカウントの「友だち」になっていただくことで、飲食店からお客さんに対して情報が発信できるようになります。
LINE株式会社 広告・法人事業本部 バーティカル事業部 事業部長 富永翔
どのように友だちを増やしていくか――。不安に思う参加者もいましたが、LINE上で飲食店の予約が完結する「LINEで予約」、テーブルオーダーシステムが実現できる「LINEミニアプリ」などを通じて、サービス提供の延長線上で自然に友だちを増やすことができるようになっています。
初回来店した人を「ファンの予備軍」として友だち追加してもらい、LINE公式アカウントから継続的にコミュニケーションをとることで、ファン化を促しながら継続的な来店に誘導していく。DXという言葉にすると難しく聞こえるかもしれませんが、身近なコミュニケーションツールであるLINEを活用した集客施策として話すことで、多くの参加者が興味を持ってくださいました。
山口氏:実際、セミナー開催後に実施したアンケートでも、「基本的な使い方が分かって良かった」「今後、前向きに導入を検討したい」というような声が寄せられました。今回、30名の参加募集に対して40名ほどの応募がありましたので、LINE公式アカウントの運用に興味を持っている潜在層はもっと多いと感じています。
三茶ワークカンパニー株式会社 山口智代氏
LINEで実現する新しい飲食体験
――セミナー開催の感想と今後の展開について教えてください。
宮城氏:今回私もセミナーに参加して、LINEというツールが、お店のファンをつくる機能だけでなく、店舗予約やテーブルオーダーシステム、デジタル会員証など、店舗の業務効率化につながる機能が次々にリリースされていることを知りました。
実際、デジタルツールを導入してお店のランニングコストを削減したいと考えている事業者さんは多いため、業務効率化の手段としてもLINE公式アカウントやLINEのサービスが活用できるということもお伝えできればなと思っています。
山口氏:私自身、コワーキングスペースの運営でLINE公式アカウントを活用していて、すごく便利だと感じています。「運用が難しいのではないか」「料金が高いのではないか」と心配される方もいますが、基本を知るだけでもそうした不安は払拭できるので、是非、多くの飲食店さんに活用していただきたいですね。そのためにも、世田谷区さんやLINEさんと連携しながら、第2回、第3回のセミナーも開催していきたいです。
富永:今回、セミナー実施前に世田谷区の飲食店さんと直接お話する機会をいただき、LINEとしても多くの発見がありました。飲食店さんは地元でコミュニティーを形成されている場合も多いので、今回のセミナーをきっかけにLINEの活用に関しても情報交換をしながら進めていただけるとうれしいです。
いまやLINEは月間利用者数9,200万人を超える国内最大のコミュニケーションツールで、業務効率化のための機能やサービスも年々進化しています。予約からテーブルオーダー、決済機能まで有しており、便利かつストレスフリーな飲食体験がLINEだけで提供できます。今後も世田谷区さんと協力して、区内の飲食店さんのお力になれるよう頑張っていきたいと思います。
(取材・文:相澤良晃、写真:小川孝行)
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