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運用テクニック 公開日:2024.08.14

自社の持つデータを最大限に活用し、LINE公式アカウントの運用効果を高めるためのヒントとは

LINE公式アカウント

デジタルマーケティングに欠かせないデータの活用。しかし、近年は個人情報保護の観点から、その利用に規制が入りつつあります。プライバシー保護の機運が高まる中で自社の持つデータを活用し、LINE公式アカウントや広告の運用効果を高めるにはどうしたらよいのか。独自のCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を展開するトレジャーデータ株式会社の執行役員・山森康平氏(以下、山森氏)にそのヒントを聞きました。

1st Party Dataの効率的な運用がカギになる

近年、ディスプレイ広告において「IDFA(Identifier for Advertisers)制限」や「改正個人情報保護法」など、プライバシー保護の動きが加速しています。こうした影響により、ユーザーのインターネット上での行動履歴に基づく手法「ターゲティング」も変化を求められています。

 

例えば、これまで広告運用におけるターゲティングは、主に3rd Party Cookieやモバイル端末識別子に依存していました。しかし、その利用規制が進むことで「効果が見込めそうなユーザーにだけに広告を表示させる」絞り込みが難しくなってきています。また、ユーザーの識別ができなくなることで、コンバージョンの計測も不可能になり、広告投資効果の判断も難しくなるという課題が浮かび上がりました。

 

「このような状況の中で、従来と同水準のROI(投資収益率)やCPO(Cost Per Order)を維持していくためには、自社で保有している顧客データ(1st Paty Data)の活用が重要になります。1st Paty Dataは効果的な広告配信リストの作成にも必要ですし、広告配信プラットフォームのAIに学習させる際にも欠かせません。しかし、『そもそも1st Paty Dataを効率的に収集できない』『部門ごとにデータがサイロ化していて、広告やCRMへの活用が難しい』という企業が多いのが実状です」

トレジャーデータ株式会社 執行役員 山森康平氏

そうした課題を抱えている企業をサポートしているのが、トレジャーデータの提供するカスタマーデータプラットフォーム「Treasure Data CDP」です。「サイト・アプリ閲覧データ」や「会員データ」「購買データ」といった企業が有するさまざまな顧客データを一元管理し、LINE公式アカウントやメールなどのメッセージ配信ツールと連携することで、顧客一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを実現できます。

「Treasure Data CDPは顧客ベースで各種IDを管理するため、例えば広告へのアクションからメール開封、メール開封からLINE公式アカウント、最終的には自社アプリへの引き上げへ……と、顧客体験を損なわない形で段階的にツールを変えてアプローチできます。これによりコストを最小限に抑えつつ、リーチの最大化を図ることが可能です」

Treasure Data CDPは現在、世界75か国、400社以上に導入されています。ベルギーに本社を置く世界最大の酒類メーカー「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」もそのうちの1社。ビールの「バドワイザー」をはじめ、世界100以上の地域で630を超えるブランドを展開しています。同社では2,000以上のデータソースから9,000万以上の顧客プロファイルを管理しており、それらをすべて「Treasure Data CDP」で管理し、広告運用に活用しています。

 

「アンハイザー・ブッシュ・インベブでは、Treasure Data CDP導入前と比べて36%の広告費削減効果がありました。Treasure Data CDPは、世界で最も厳しいプライバシー規制の要求を満たしていますし、Webサイトやアプリのログ、各種マーケティングツール、IoT、位置情報データ……といったさまざまなデータソースとの接続が可能です。そしてITの専門知識がないマーケターや営業の方でも扱える操作性、利便性が評価され、ここ数年、世界中で導入が広がっています」

LINEヤフーが有するデータを安全に活用できる「データクリーンルーム」

企業内に蓄積されているあらゆる顧客データを統合することで、広告配信効果を高めてくれるTreasure Data CDPは、LINE公式アカウントとの親和性の高さも特長です。

 

「2022年から、安全な環境で広告配信効果を分析できるデータクリーンルームの開発をLINEヤフーさんと共同で開始しました。そして2023年4月には『Yahoo! Data Xross』を、2023年7月には『LINE Data Clean Room(LDCR)』をそれぞれリリース。これにより、1st Paty Dataと、LINEヤフーが有しているユーザーデータを掛け合わせて分析ができるようになりました。例えば、LINEユーザーのデモグラフィックデータや興味・関心データ、あるいはLINE公式アカウントのメッセージ配信結果などを、1st Paty Dataに紐づけてメッセージ配信や広告配信に利用することができます」

LDCRを活用したメッセージ配信の効果分析について、山森氏は以下のように説明します。

 

「ある小売店でメッセージを10万3,300通配信したところ、開封数は6万2,700通で開封率は約60%を記録しました。LINE公式アカウントの管理画面で確認できるのはこうした開封率やメッセージのクリック率までですが、LDCRを利用して店頭での購買データを紐づけることで、購買リフト効果の分析ができるようになりました。その結果、メッセージ配信によって購買率が7%アップしていることが判明したのです。

 

また、顧客を①既存ユーザー(過去半年以内に購入)、②休眠ユーザー(過去半年~2年以内に購入)、③新規ユーザー(購入履歴なし)の3つのステータスに分類して配信効果を分析したところ、休眠ユーザーが開封率65.6%、購買率0.77%を記録するなど、今後の伸びしろが大きいことが分かりました。現在は、休眠ユーザーから既存ユーザーへの移行を効果的に促すためのメッセージ配信の内容や頻度を検証しているところです」

LINE広告の効果検証にもLDCRが活躍

LDCRによるデータ分析は、LINE公式アカウントのメッセージ配信だけでなく、LINE広告の運用効果アップにも寄与します。企業の持つ1st Party DataとLINE広告の出稿データを掛け合わせることで、ユーザーの「興味・関心」とインプレッションおよびクリックの相関関係を可視化することができます。

 

「例えば、ファンション系のアイテムを中心に販売している小売店では、『映画』に興味・関心があるユーザーは広告への反応が良いのに対し、『書籍・漫画』『ショッピング』に興味・関心のあるユーザーはあまり反応してくれていないことが分かりました。今後、後者のユーザーへの広告配信を停止することで、費用対効果の改善が期待できます」

LINE広告は、データを基にした効果検証を繰り返すことで、着実に運用成果が高まります。会社の隠れた資産として眠っている顧客データをTreasure Data CDPで統合することで、LINE公式アカウントやLINE広告の運用効果の向上に期待できます。

 

「今後、Treasure Data CDPはLMM(大規模マルチモーダルモデル)の実装も予定しており、さらに機能面が強化されます。“データの民主化”を実現し、誰もがデータを活用したマーケティングができる世界にするためにこれからも機能拡充、改善を続けていきます。どうぞ、ご期待ください」


(公開:2024年8月、取材・文/相澤良晃、写真/高橋枝里)

 

※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です

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